星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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新宿少女は踊る1

 

------------- 柊雪視点 -------------

 

「クロちゃん、これからおねーちゃんと仕事って本当?」

 

「全然そんなふうに見えないんだけど。」

 

平日午後の人が少ない電車の中で連れてきた夜凪家の双子が墨字さんをいぶかし気な目で見る。

 

今日は双子の学校を終わった後に、双子を連れての景ちゃんの撮影だ。

 

昨日は、景ちゃんと千世子ちゃんのVTuber撮影の手伝いで星家に行って、夕食の時にこの話題に双子が乗って来たので、社会見学を兼ねて一緒に連れてきている。

 

姉の撮影は、レイ君とルイちゃんにも大きな刺激を与えるし、大人に混じって現場を体験しておくのは、子供の教育的にもいろいろ良いので、なるべく双子は連れて行くようにしている。アリサさんからも、双子が行きたがったら、積極的に現場に連れて行くように言われているし。

 

アキラ君も子役になる前はこんな風に現場に遊びに来ていたらしい。・・・この双子、そのうち子役とかでデビューするのだろうか? それとも、将来はスターズの役員とかになるのだろうか? そのうちアキラ君が会長になって、その後にどちらかが社長を継ぐような未来もあるかもしれない。

 

「あのクロちゃんがまともに仕事をするなんて、夢みたいな事もあるもんだなぁ。」

 

「でも、本当にこれから撮影するの? スタッフの人達も居ないし、全然撮影って雰囲気じゃないんだけど?」

 

「本当だよ。ほら、カメラも持っているだろ?」

 

「普段使っている奴とは違う、おもちゃみたいなやつじゃん! それに撮影ってもっと沢山の人でやるんじゃないの?」

 

「今回は、そういう撮影だから・・・。」

 

「でも、クロちゃんがお姉ちゃんを撮影するのは初めて見るかも。」

 

「墨字さんは凄いわよ。こんなカメラでも大丈夫。それに今回は、このカメラじゃないと撮影できないやつだしね。面白いと思うわよ。」

 

「クロちゃんは、最近は雪ちゃんのヒモ状態だから、素直に信用できないと言うか・・・。」

 

「誰がヒモじゃい!誰が!」

 

「だって、雪ちゃんが真面目に働いている時も、パチンコとか行っているし、CMぐらいしかなんか作らないし、今回のやつもCMだし、明らかに雪ちゃんに養われているとしか見えないし。」

 

「ぐぅ・・・・。」

 

墨字さんは最近の悪行を双子に指摘されて、墨字さんはぐぅの音しか出なくなっていた。というか双子の言動が正論すぎる。小学校低学年の双子に言い負ける大人ってどうなのだろうか?

 

「元々墨字さんは、カメラ一つで世界を回って来た、世界有数のドキュメンタリー映画監督だから、人を撮る力は本物だよ。」

 

そう言って、私は双子にもアクションカメラを渡した。

 

「二人にもお姉ちゃんを撮ってほしいな。」

 

「「うんっ!!」」

 

二人は目を輝かせてカメラを受け取る。お姉ちゃんを撮る手伝いができるのが嬉しいのだろう。

 

「お前と千世子、どっちの芝居が上だ?」

 

突然、墨字さんが景ちゃんの火薬庫に爆弾を放り込んだ。

 

「なっ、何?その質問。千世子ちゃんは私よりも先輩だし、とってもすごいし・・・。」

 

「で、どっちの芝居が上だ?」

 

景ちゃんの目が泳いで、外を見る。 ちょうど中野と新宿の間で、新宿の外れの街並みと共に、総武線の電車から見える位置に百城千世子が映った大きな看板が見えた。

 

「私と千世子ちゃん、どっちが役者として上かなんて、そんなの私が決める事では無いと思う。でも、私は絶対に負ける気は無い。」

 

景ちゃんが墨字さんを真っすぐと見つめる。そこに迷いは全く無かった。そこに彼女の役者としての成長と純粋なプライドが見える。

 

「ところで、墨字さんは、ずっと放っといたのに、突然私を撮るだなんて。」

 

「それは、お前が良い役者になったからだろ。」

 

「ふ――ん。」

 

あっ、景ちゃんが喜んでいる。かわいい。

 

「次は~、新宿、新宿。」

 

車掌さんのアナウンスが入る。

 

「本番の合図ね。」

 

「「えっ!?」」

 

驚く双子を尻目に私は、景ちゃんから上着とマスクを受け取って、カメラとカチンコの準備をする。景ちゃんは上着を脱ぐと目立つ白いワンピース姿になった。

 

そして、景ちゃんは今回のCM対象の商品である、世界的な音響機器メーカーである、『BASE』のヘッドホンを耳に付ける。

 

こんな世界的なメーカーのMVを請け負うなんて、ちょっと前のスタジオ大黒天では考えられなかった事だ。

 

墨字さんもイヤホンを耳に付けて曲を流し始める。 墨字さんと景ちゃんの耳には、今回のMVのテーマミュージックとなるイギリスのロックバンドの曲が流れている。

 

私のカメラは、画を合わせるための墨字さんと同じタイプのアクションカメラと、この撮影を()()()()()()のハンディカメラの2台体制になっている。

 

私の予想が正しければ、この撮影はとても面白い事が起こる。撮影をただ見ているだけなんてつまらない。私の映像作家としての血が騒いでいる。

 

「えっ、夜凪景!?」

 

「撮影!?」

 

「嘘っ!?」

 

「柊雪も居る!」

 

「これから撮影するの!?」

 

「すげぇ!! 本物の夜凪景と柊雪だ!」

 

「すごい。顔小っちゃい。綺麗。」

 

「夜凪景と柊雪もテレビで見るよりもずっと美人だ。」

 

同じ車両の乗客たちがざわつき始た。

 

「ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。これから、撮影を行いますので、可能であれば新宿で降りる方は、別のドアから出ていただくようにお願いできないでしょうか。」

 

電車が空いている時間帯だったので、新宿で降りる乗客たちは私の言葉に従って別のドアから降りる準備をしてくれた。

 

「お前の芝居を世界に届けるのはこの俺だ。」

 

「うん。よろしく。」

 

景ちゃんがそう言うのと同時、電車は新宿駅に到着した。

 

私は一番に、新宿に到着した電車のドアから飛び出すと、撮影を開始と共に、カチンコを構えた。

 

「よーい、スタート!」

 

カンと言うカチンコの音と共に、さあ、MVの撮影開始だ。

 




この時期にMV撮影をする墨字さんと、景ちゃん。
そして、その裏側を撮影しようとたくらむ雪ねぇちゃんでしたw

羅刹女に向けて、スタジオ大黒天陣営も本気を出して来たようですが、どうなるでしょうか。乞うご期待です!
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