星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星キアラはギタリストを勧誘する

 

------------- 星キアラ視点 -------------

 

千世子ちゃんのMVのために、わたくしは演奏してくれるアーティストに出演交渉を行っていた。

 

みんな大物アーティストだけど、1人を除いて、空前絶後のこのプロジェクトへの出演を快諾してくれた。

 

そして、最後の一人はエレキギターの演奏者だ。この演奏者だけは自分で出向かないとダメだろう。

 

私は、下北沢のライブハウスにエレキギターの奏者を誘いに行った。

 

「ちわ~っす。星歌さん、ぼっちちゃん居ます?」

 

「きららさん、お久しぶり。またぼっちちゃんを観察に来たの? ぼっちちゃんはもうちょっとしたら来ると思うけど。」

 

「お~す。きららちゃん、お久しぶり~。相変わらず超美人だねぇ~。」

 

「おい、きくり!」

 

「きくりさんは相変わらず酔っていますわね。」

 

ライブハウスに入ると、ライブハウス「STARRY」の店長である、伊地知 星歌(いじち せいか)さんと、サイケデリックロックバンドである、SICK HACK(シク ハック)のメンバーである、廣井きくりさんと、清水イライザさんと、岩下志麻さんが居た。

 

「今日は別件ですわ。わたくしがオリジナル曲で千世子ちゃんのMVを作る事にしましたので、その勧誘ですの。」

 

「おいおい、あんたがMVを作るって、とんでもない注目度だろ!そんなのにぼっちちゃんを出すのかよ?」

 

「もちろんですわ。わたくしのMVで、ハジケたギターでヴイヴイ言わせられるのはぼっちちゃんしか居ませんわ。それにどうせ演奏者の顔とかも映しませんし。」

 

「でも、あなたが声をかければ、世界的なミュージシャンが仕事を受けてくれるんじゃないの?」

 

「問題ありませんわ。そっちは手配済みですの。」

 

「は?」

 

「あっ、来たみたいですわね。」

 

「「「「こんちは~。」」」」

 

活動拠点にしているライブハウスに結束バンドの四人が入って来た。

 

「結束バンドのみなさん、こんにちは。」

 

「げっ、星キアラ!!」

 

「山田さん、初見で正体バレはいただけませんわ。ここでは、星野きららとお呼びください。ただのぼっちちゃんの奇抜な行動を観察するファンですわ。」

 

そう言って、ぼっちちゃんを見ると、ぼっちちゃんこと、後藤ひとりちゃんは、伊地知虹夏ちゃんの後ろで抽象画のような、サイケデリックな色合いで震えていた。 相変わらずの表現力だ。 これで陰キャのぼっちじゃなければ、この表現力を使って、芸能界で覇権を取る事も出来るだろうに、実にもったいない。 才能も使わなければただの無駄な能力なのだ。

 

「前みたいに正体不明の夢女子じゃなくて、明らかにキアラさんの格好で来ているじゃないですか。 隠す気ゼロですよね。」

 

「今日は、いつもみたいに、暇つぶしにぼっちちゃんの観察日記を付けに来たのでは無くて、ぼっちちゃんに仕事を依頼しようと思って来たのよ。だからちゃんとした格好で来たのよ。」

 

「ちゃんとした格好って・・・。本来の中身は男では・・・?」

 

「虹夏、深く考えてはダメ。」

 

「わっ、わわわわったしに仕事ですかっかかかっ・・・・。」

 

「わーっ。もしかして、ひとりちゃんに何かの曲でギターを弾いてもらうの?」

 

ヴォーカルの喜多郁代ちゃんが元気に質問してくる。この子もコミュ力高いですわよね。

 

「その通りですわ。 私がニューヨークで靴磨きをしていたら、邪悪な堕天使に拿捕されて、千世子ちゃんのMV用の楽曲を作る事になりましたの。」

 

「「「「・・・・なにそれ・・・・?」」」」

 

結束バンドのメンバーみんなは、びよ~ん。っていう妙な効果音と黒い縦線が入るような雰囲気で話を聞いていた。

 

「それで、ギターパートをぼっちちゃんに演奏してもらいたいのですわ。どうでしょうか?」

 

「それじゃ、意味が全く分からないのですが・・・。」

 

バンドを代表して虹夏ちゃんが聞いて来た。

 

「仕方がありませんね。ちなみに、これは極秘情報ですから絶対に誰にも話してはダメですよ。実は、新宿ガールにインスピレーションを受けて、千世子ちゃんもMVを作る事にしたのですわ。 それで、千世子ちゃんが作詞して、わたくしがそのMVのために、作曲、ピアノ演奏、ヴォーカルをしますので、ぼっちちゃんにエレキギターをお願いしたいのですわ。顔も出ませんし、気楽な演奏ですから、是非ともお願いしたいのですわ。」

 

ちなみに、極秘情報とは言っていますが、本気で情報統制はしていませんわ。 逆に軽く漏れた方が世間に噂と期待が盛り上がって良いので、上手い具合のさじ加減で漏れるようにしていますの。

 

「わっ、私がそのギターっなんて・・・。それにキアラさんならっ、私なんかよりも上手くギターを弾いてくれるプロの人は一杯知り合いがいっ、いっぱい、いますよね?」

 

「その辺の知り合いも居て、今回の収録に呼んだのだけど、問題があるのよ。」

 

「もっ、問題ですかっ!?」

 

「そう。大問題なの。みんな上手すぎるせいで、イマイチインパクトに欠けちゃうのよ。それにそのメンバーだけだと、出来て当たり前で、期待値と話題性に欠けるの。千世子ちゃんのMVには、やっぱり同年代のアーティストも入れたいでしょ? それに、私はぼっちちゃんの破れかぶれのギターがベストマッチするように、曲を書いちゃったから、人選も変更できないのよ。ということで、ぼっちちゃん、千世子ちゃんのMVに出演してください。お願いっ!」

 

そう言って、私はぼっちちゃんを拝んだ。

 

「でっ、でも、私なんて、プロとかに比べて、テクニックとかまだまだですし・・・。」

 

「その辺は大丈夫よ。だってセカンドギターにエリオット・クラフトンを用意しましたから、多少の技術差なんて簡単にリカバリーできますわ! ぼっちちゃんが気楽にギターを弾ける万全のサポート体制ですのよ!」

 

「「「「「「「はっ?」」」」」」」」

 

「それだけではありませんわ。 ベースはジャック・ブルーストで、ドラムはジーン・ベイカー、さらにウッドベースがスタン・クラークスと言う完璧な体制で、ぼっちちゃんをサポートしますの!」

 

「あわわわわっ。無理っ、むりですっ。絶対に無理っ! わっ、私なんてテクニックもまだまだで、ちょっとギターを弾けるだけで、本当にいいいいいいっ、イキがってすいませんでした!」

 

そう言って、ぼっちちゃんは180度旋回をして出口に駆け出そうとした所を私は襟首を持って押さえる。

 

「ぐっぐるしい。くっ、首が締まるっうううううっ。」

 

「相変わらず面白いわね。この面白さをお茶の間に届けられないのが残念だわ。ギターだけじゃなくて、お笑いでも天下取れるわよね? ねえ? ドリフターズに興味は無い? 今の世の中にガールズ版ドリフターズは一周回ってウケると思うのだけど。」

 

「ぐぐぐっ、いっ、いかりや長介になる気はありませんっ。にっ、逃げなきゃっ。」

 

「意外にまだ元気ね。でもぼっちちゃんは、いかりや長介じゃなくて、高木ブー枠だと思うけど。わかる人だけわかる面白さっていうか、マスコットって言うか、居ても居なくても分からないぐらい影が薄いって言うか・・・。 あれでギターも凄腕だし。」

 

「私の粗末なギターはかっ、神様たちの前で演奏できるようなものじゃありませんっ。本当に陰キャですいません!」

 

「へーっ。ぼっちちゃんでもそんな反応になるんだ。ギターの神様なんて知らねぇ! ロックなんだから、俺の前に立ち塞がるやつは俺のギターでどんな奴でも打倒してやるぜ! ぐらいの勢いだと思っていたんだけど・・・。」

 

「そんな生き方ができたら、ぼっちなんてやっ、やっていませんっ。うががががっ。」

 

「まぁ、そうよね。でも、ぼっちちゃんや他のメンバーの方々にもとても良い話だから、話は最後まで聞いてくれないかしら?」

 

「そうだな。キアラちゃんなら悪い話じゃなさそうだし、出てきたメンバーの名前だけでも、とんでもないから、とりあえず話だけは聞いてみたらどうだ? ここで逃げても、気になって夜も眠れないだろ?」

 

そう言って、星歌さんが仲裁してくれた。

 

「あわわわわわっ。」

 

「ぼっちちゃん、とりあえず、話を聞きましょう。」

 

結束バンドのメンバー達も話を聞く態勢になってくれた。

 

「何か飲み物でもいただきながら話しましょうか?」

 

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「さて、落ち着いた所で、なにか質問がある方はいらっしゃいますか?」

 

「質問だらけです・・・。」

 

みんなあまりの事態に、事情が呑み込めないようだ。ちなみに、ぼっちちゃんは完熟マンゴーのダンボールの中で引きこもってツチノコ状になっている。相変わらずの表現力だ。超絶陰キャなので、女優は無理だろうけど、この表現力を生かして、せめてスターズで表現力の講師とかしてくれないだろうか? たぶん大ウケだと思うのだが。

 

「えっと、そんな神様みたいな人達を集めて、何をするのですか?」

 

「千世子ちゃんのMVのための曲を収録するのですわ。」

 

「そのMVは作曲はキアラさんなのですよね?」

 

「そうですわ! 作詞は千世子ちゃんで、さらに私はピアノと歌もやるのですの。これで打倒、新宿ガールを成し遂げるのですわ。」

 

「新宿ガールって、あの話題沸騰のローリング・ハーツのMVですよね。あれは曲に合っていて本当に凄かったです。あのローリング・ハーツのアルバムの表紙を急遽、新宿ガールに差し替えさせるとか伝説すぎます。」

 

「あれは今、人気絶頂。曲のノリも最高だし、バンドにMVに全く死角がない。あれにケンカを売ろうとしているだけですでにヤバイ。」

 

「そうですか?人気とインパクトの一点型で作って来たので、かなり付け入る隙はあると思いますわよ。」

 

「そのために、バンドマンが、みんなひれ伏すようなドリームチームを作ったって訳かい。」

 

「そうですわ。エリオット・クラフトン、ジャック・ブルースト、ジーン・ベイカー、スタン・クラークスの他に、わたくしのお友達のパルファン・クールパレや、あゆみママも居ますの。ぼっちちゃんもお友達枠ですから、気軽に出演してもらって大丈夫ですわ。」

 

「だっだだだだ、大丈夫の意味がわからないっ。お友達ですら世界レベルすぎるっ。」

 

「すごいMVになりそう。でも、そのMVにぼっちがギターをやる理由が分からない。明らかにぼっちが浮いてる。そのメンバーでは明らかに実力不足。ぼっちのテクニックだけでなんとかなる次元を超えてる。」

 

「そうだと思う。確かにぼっちちゃんのテクニックや技量は同世代を大きく超えてはいるけど、そのメンバーと混じって遜色がないとは全く言えない。エリオット・クラフトンがファーストギターで、ぼっちちゃんがセカンドギターならまだ意味がわかるど、逆なのも分からないよ。」

 

「ぼっちちゃんを抜いたメンバーを見て何か思いませんか?」

 

「何って、とんでもないメンバーだよね。ぼっちちゃんを抜いても、このメンバーを見ただけですでに曲がヒットするのは約束されているじゃないか。」

 

「そう。曲がヒットするのは約束されていますわ。そう言うメンバーを集めたのですから。期待も高まるでしょう。でも、それは、期待以上の演奏になるでしょうか?」

 

「期待以上?」

 

「そうですわ。このメンバーを集めて、私が曲を書けば、世界的なヒットは間違い無いでしょう。」

 

「・・・すごい自信ですね・・・。」

 

「自信じゃなくて、事実ですわ。ちゃんとそういう構成と狙いで曲を作りましたから、ヒットは約束されていますの。でも、全ての視聴者が求める物を満足させるには、まだ足りないのですわ。」

 

「何が足りないの?」

 

「新鮮な驚きとインパクトですわ。今のままだと、みんな天才ですが、安定感がありすぎて、永谷園のお茶漬けや、日清のカップヌードルのような、絶対に失敗しない安心感しか無くて、突き抜けたインパクトを残せないのですわ。こんなのがロックだと思いますか? 安パイなロックで本物の感動を届けられると思いますか?」

 

「わたくしが欲しいのはそんなのでは無いのですの。一時の騒動の後に吹っ切れて、完全に保守的だった企業の頭のネジが外れて、獄激辛とか、GIGAMAXとか、頭のおかしいインパクト商品しか出さなくなった、ペヤングぐらいの、ものすごいインパクトが欲しいのですの。そのためのぼっちちゃんですわ!」

 

「ぼっちちゃんへの期待が大きすぎる。」

 

「いっ、生きててすいません!」

 

「でも、そのメンバーだと、インパクト云々言う前に、周囲とレベルが違いすぎて、完全にぼっちちゃんが浮くだろう?」

 

「その辺は大丈夫ですわ。ぼっちちゃん用に楽譜を書いていますの。これを本当の意味で演奏できるのは、世界中でただ一人、ぼっちちゃんしかいませんわ。」

 

そう言って、私はぼっちちゃんパートのぼっちちゃん用に最適化した楽譜を、ぼっちちゃんが入っている完熟マンゴーのダンボールに押し込む。

 

「これ・・・・。弾いてみていいですか!?」

 

おそらく、ダンボールの中で、楽譜を渡したぼっちちゃんが目を輝かせながら言っているだろう。

 

「もちろんですわ。」

 

そう言うと、ダンボールの中から手足が出て来て、ギターを調弦し始める。 そして、スタジオのアンプにギターを繋ぐと、初見でぼっちちゃんのパートを大音響で弾き始める。

 

「すごい・・・。」

 

ヴォーカルの喜多ちゃんを始め、スタジオに居た面々が呆然とする。

 

「・・・これ、本当にキアラさんが作曲したの?」

 

同じく呆然としながら、結束バンドの作曲担当である山田リョウちゃんが質問してくる。

 

「もちろんですわ。この、天才美少女作曲家、星キアラが本気で書いた曲ですわよ。」

 

「キアラさんやアキラさんは今まで、作曲なんてしなかったのに、しかも、クラシックじゃなくて、こんなにすごいロックが作曲できるなんて・・・。」

 

「クラシックも、ジャズも、ロックも、根底に流れる物はみんな一緒ですわ。ミュージックの語源は、ラテン語でミューズ神の御業ですの。音楽への敬意の前にジャンルなんて関係ありませんわ。」

 

「でも、キアラさんは、クラシックベースの演奏しか聞いた事が無いのに、こんなに本物のロックをいきなり作曲するなんて・・・。」

 

「ロックとはある種の生き方だけど、近代に突然生まれた概念でありませんわ。例えば、有名なピアノの魔術師、フランツ・リストは、コンサートではピアノを破壊しまくって、予備のピアノが三台も用意されていましたわ。演奏がアクロバティックすぎて、しょっちゅうピアノを破壊していましたの。聴衆は、リストの超技巧で破天荒なコンサートで、ピアノが破壊されるのを楽しみにしていましたわ。 若者の文化や若いエネルギーはいつの時代にも存在していて、様々な音楽で、様々な形で表現されてきて、そして、今のロックというジャンルが生まれましたの。 だから、音楽の歴史を知っている人間からすれば、ロック以上にロックな音楽を作曲する事も出来ますわ。」

 

「地力が違う。圧倒される・・・。」

 

実際の所、他の出演者達も、最初は渋っていたけれども、完成した楽譜を送ったら、全員が快諾してくれた。そして、ぼっちちゃんの演奏を楽しみにしていると話してくれている。

 

ぼっちちゃんの演奏も予想通りに良い感じだ。・・・でも予想通りなら困るのだ。おそらく彼女は今回の収録でもう一段化けるだろう。彼女自身が知らない彼女の才能を引き出せるかと思うと、私はそのサディスティックな感触にぞくぞくとした。

 

「でっ、ででっ、でもっ、私、こんな凄い人達の前で演奏なんて・・・。」

 

「それは残念ですわ。 でも、呼んだ方々は、ぼっちちゃんとの演奏を楽しみにしていますの。それに、現地のバンドとの交流も楽しみにしていて、来日したついでに、現地のバンドと一緒にセッションしてもいいと言ってくれていますわ。ねぇ、結束バンドの皆様と、SICK HACKの皆様? この神様のような方々と一緒に演奏してみたくはないですか? こんな機会は、もう一生訪れないかもしれませんわよ?」

 

この言葉を言った瞬間に、結束バンドとSICK HACKのメンバーが立ち上がって、ぼっちちゃんの元に集まり、ぼっちちゃんの両肩を拘束する。

 

「ぼっちちゃん、やるよね?」

 

虹夏ちゃん、すごい圧力だ。他の人達も、ぼっちちゃんに絶対にうんと言わせるための圧力がすごい。

 

「えっえっえっ!? みんなどうしたの!?」

 

「ぼっち、お前の犠牲のお陰で、みんなが幸せになる。ぼっち、犠牲になれ。」

 

山田さん、酷いわwwww

 

「ぼっちちゃん、こんなチャンスを逃さないわよね?」

 

「お姉さん(廣井さん)怖いっ。」

 

「ひとりさん、人生には大きな決断をしなければいけない瞬間があるの。」

 

「志麻さんまでっ。」

 

「ひとりちゃん、年貢の納め時だとおもうわ。」

 

「喜多ちゃんっ。」

 

「これは、もう、キアラ嬢の作戦勝ちだね。」

 

「やるっ、やりますから! わ―――ん。助けて~。」

 

ぼっちちゃんは、みんなに詰め寄られて、血を吐いて、目や口の位置の構図がずれている。まさに惚れ惚れする表現力だ。

 

「言質は取りましたわよ。それでは、楽しい収録にしましょうね?」

 

「うわ―――ん。」

 

私は満足しながら、阿鼻叫喚となった、STARRYから出るのであった。

 




まさかのぼっちざろっくから、ぼっちちゃん達、ゆかいなメンバーがゲスト出演です。
本当に、このカオスMVはどうなるのでしょうか!? 続きをお楽しみに!
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