星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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山野上花子は制作発表会に出席する2

 

------------- 山野上花子視点 -------------

 

制作発表会の会場に着くと、私は有無を言わさずにスタイリストさんの所へ連れていかれて、髪や服をセットされてメイクを施された。

 

そして1時間後、そこには見事に化けた私が鏡の前に座っていた。女は、こうも化粧で化けるのだ。私はある程度顔が良い事は自覚していたので、出来上がった上っ面を他人のように冷静な目で見つめた。

 

そこからしばらく経って準備ができたようで、私が演出を行うサイド甲の控室に案内された。

 

そこでは、すでに主演である夜凪景や王賀美陸、朝野市子、白石宗、烏山武光などのメンバーが揃っていた

 

「あっ、演出の方ですねっ。」

 

夜凪景が話しかけてきた。この子があの人の娘・・・。テレビなんかで見るよりもはるかに美人でかわいい。

 

・・・・正直な話、この子が主演なら、演出なんて引き受けなかったのに・・・。

 

「・・・・はい。今回、演出を担当することになりました、山野上花子です。よろしくお願いします。」

 

「黒山墨字や明神阿良也とやり合うのだからしっかりやってくれよ。」

 

王賀美陸が言った。

 

「・・・はい。ベストを尽くします。」

 

そんな事知ったこっちゃないと喉から声が出かけたけど、私は堪えて静かに話した。

 

「山野上さんはすごい原作者なんですから大丈夫ですよっ。」

 

そんな様子を見て、夜凪景は天真爛漫に答えて場を明るくした。彼女の天性の女優とも言うべき才能の一端を見た気がする。

 

私以外のサイド甲のメンバーは、それぞれ打ち解けている。私はそんな様子を壁にもたれかかりながらじっと観察していた。

 

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しばらくすると、ADさんが私達を呼びに来た。

 

私達は、舞台の袖に移動する。 舞台袖の反対側には、サイド乙のメンバーが待機しているのが遠目に見える。あれが百城千世子か・・・。こちらもTVの画面で見るよりもはるかに美人だ。生で見るとこの世の造形とは思えない。

 

女性の司会者が舞台に上がると、羅刹女の説明をを始めて制作発表会が始まった。 ここで、私が演出として紹介されてしまうともう引き返せない。

 

たかだか舞台の制作発表会なのに座席は満席で、ものすごい量の記者や業界関係者が集まっている。TV局のワイドショーで生放送されるらしい。そして、舞台裏では、Youtubeとニフニフ動画の生放送がモニタリングされており、そちらの視聴者数も全世界で800万人を超えている。すごい注目度だ。

 

私は柄にも無く緊張している。

 

鏡を見て、自分の顔を見る。いつもの自分だ。自分の精神状態が顔に出にくい事に感謝した。

 

司会者の呼びかけと共に、私たち甲サイドのメンバーが呼ばれる。その呼び出しに応じて、夜凪景を先頭に王賀美陸が続き、最後に私が歩いて舞台に立つ。

 

夜凪景は胸を張って堂々と舞台に立った。 そして、キャストが順に紹介されて、そして最後に、原作者の私自らがサイド甲の演出を行う事が紹介されると、会場にどよめきが走った。

 

そして、百城千世子と夜凪景へのインタビューが始まる。 特に話題はどちらが優れた女優かを決める人気投票に集中した。

 

「ズバリ、お二人は今回の人気投票をどう受け止めていますか?」

 

「投票という形は舞台の後にも続くエンタメですから、とても楽しみです。でも、私は票よりも誰かの人生に残る恐怖と美を刻みたい。結果は後からついてくるものですから、最終的に『怖かったのにまた観たい』と思わせた方が勝ちでしょう?」

 

拍手とカメラのフラッシュ。完璧な回答だ。エンタメというのを知り尽くしている。映画監督としても名を上げたのも頷ける。本当に彼女は高校生の年齢なのだろうか?

 

しかも、その瞳の奥は夜凪景を射抜く剣の光で満ちている。カメラでアップされて抜かれれば、観客にも分かるだろう。彼女は本気でそれをやっているのか、話題作りと人気投票に向けた布石なのか、私には判断が付かなかった。 ただ、Youtubeやニフニフ動画で弾幕が出て盛り上がっているであろうことは、会場の盛り上がりを見て肌で感じた。

 

「私は票が欲しいです。だって地獄を生ききったら、観客はちゃんと『助けて』って手を伸ばしてくれるはずだからですっ。」

 

夜凪景の意外な票のおねだりと、観客を地獄に突き落とす宣言を前に、会場が一気にどよめいてヒートアップする。

 

そのセリフを聞いて、百城千世子が夜凪景を睨みつける。夜凪景はそんな百城千世子に口角を上げながらメンチを切った。お互いに蹴り合い、殴り合いの大喧嘩が始まるような雰囲気だ。こいつら本当に何をやっているの?

 

そんな様子を烏山武光はオロオロしながら見ていて、王賀美陸は面白がり、白石宗は頭を抱えて、朝野市子がにこにこしている。

 

「朝野さん、あれ、あのままでいいの? 仲裁した方がいいんじゃ?」

 

私は小声で聞いてみた。

 

「何を言っているの?あんなの子猫がじゃれ合っているような物じゃない。お互いに本気でベストを尽くしたら、片方はこの舞台に立つ前に不慮の事故で亡くなっているわよ。あっ、これ、もちろん冗談なんだから。ハイエンドいちごギャグよ。」

 

芸能界の酸いも甘いも知り尽くしているような人間にそんな冗談を言われても、全く冗談に聞こえない。勘弁してほしい。

 

そして、後日知った事だが、このやり取りもしっかりとマイクで拾われて、放送されていたらしい。羅刹女一番ヤベエやつ選手権スレに朝野市子も無事にランクインしていた。

 

夜凪景と百城千世子はお互いに丁々発止のやり取りをして、会場の盛り上がりは抑えられなくなっている。

 

そして、目玉焼きにかけるのが塩コショウか醤油なのかで二人の意見が合わず、きのこの山とたけのこの里のどちらが好きかで、昼ドラと殴り合いが始まりそうなところで、突如会場が暗くなった。

 

突然、舞台のスクリーンに覆面を付けて、紫色の背広と帽子を着た怪しい人物が浮かび上がる。

 

「フッフッフッ。大変盛り上がっているではないか。猿君。」

 

「ミスターX!」

 

「ミスターXさん!? 何しに来たんですかっ?」

 

「フッフッフッ。」

 

突如、ミスターXまで現れて、私はお腹がいっぱいになって、頭痛がしてきた。 もしかして、星アリサが言っていた胃が痛くなるってこう言う事なのだろうか?

 

私は、演出を引き受けた事を本気で後悔し始めた。

 




突如現れたミスターX。今度は一体、何をやらかそうと言うのでしょうか!?
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