星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
------------- 山野上花子視点 -------------
「ミスターXさん?なんの御用ですか?」
突如乱入して来たミスターXに夜凪景が丁寧に聞く。
「フッフッフッ。君達の素晴らしいライバル関係は見せてもらった。・・・しかし、爽やかな汗と青春のライバル関係なんて、面白くは無いのではないかね? 君達もこんなオールドスクールな展開には飽き飽きしているのではないかね?」
「別に飽きていませんが・・・。あと、私達の青春に勝手にケチを付けないでくださいっ!」
「王道にして、頂点じゃないの? 高校野球に飽きる人とか居るの?」
二人とも見事な返しだ。羅刹女にこれ以上の妙な展開は、原作者の私も不要に思える。
「美しい友情だ。しかし、景君、君は、千世子君をトラックで轢かせて、千世子君を異世界送りにする事で、羅刹女の人気投票で有利に戦おうとしていなかったかね?」
「はっ、どうして!? その計画は、誰にも言っていなかったはずなのにっ!? トニーのラジコンコンボイ指令官まで用意していたのがバレていたのですか!?」
夜凪景は意外にノリがいい。この状況で、さらっとミスターXに合わせるなんて、並みの女優じゃ無理だろう。
「そんな!? 景ちゃん、そんな計画を!?」
百城千世子が全身でショックを受けた様子を表現する。こっちもノリでやっているのがバレバレだ。バレバレなように白々しい演技をしているように見える演技が超一流と言う、もう玄人向けすぎて意味不明な状況になっている。
「フッフッフフ。 そう言う千世子君も、景君を寝ゲロで葬って、アクシズ教の女神の所に飛ばそうとしていたでは無いか。」
「千世子ちゃんがそんな事を!?」
夜凪景の方も、超一流の役者だけあって、驚く演技がものすごい。もっとも、役者の技量の無駄使いだが。あと、殺し方が微妙にリアルなのは止めろ。
「やっぱり、景ちゃんと私は似た者同士みたいね。」
「本当にそっくりですね。お互いを暗殺しようとするなんて、千世子ちゃんにさらに親近感が湧きましたっ!」
「同じ事を考えるなんて、やっぱり私達は親友同士なのね。」
「友情は永遠ですねっ! 私と千世子ちゃんはズッ友です!!」
「もちろんよ! 景ちゃん! 死がお互いを分かつまで私達の友情は永遠よ!」
ものすごく爽やかで濃厚な友情ドラマが目の前で繰り広げられている。しかし、お互いに暗殺しようとしていて、ズッ友は無いだろう。
「ミスターX! 残念ですが、私達の友情は永遠なのですっ! 私達を疑心暗鬼に陥れようとしても無駄ですっ!」
疑心暗鬼どころか、お互いに暗殺しようとしていたって自白しているじゃないか。ある意味、疑心暗鬼の余地が無くて分かりやすい事は分かりやすいが。
「そうよ! 景ちゃんとの友情は死ぬまで永遠なの! そう死ぬまで。 あくまで死ぬまでの期限付きだけど、永遠なのよ!」
百城千世子、お前、明らかに親友の暗殺を諦めていないよな? 死ぬまで友情が永遠だから、すぐに殺そうとしているよな? フラグがビンビンに立っているぞ。そろそろ、お願いだから、誰か突っ込め。この流れを止めろ。
「素晴らしい友情だ! フッフッフッ。 しかし、友情だけでお腹は一杯にはならんぞ? 羅刹女にはやはり不満があると見える。」
原作者を目の前にして、羅刹女に不満があるとか言ってしまう、こいつもすごいな。原作者としてキレ散らかした方が面白いのかもしれないが、こちらには、もうそんな元気は無い。顔に出ずに無表情な所が唯一の救いだ。
周りには無反応のクール美人に見えているかもしれないが、かなり限界が近い。胃が痛くなって来た。こんな所で星アリサの心境なんて、分かりたくもない。
「えっと、何が不満なのでしょうか?」
「わかるぞ。昨今の潮流に乗り遅れるのが怖いのであろう?」
「潮流ですか?」
「潮流?なんの潮流なの?」
「フッフッフッ。ざまぁだよ。ざまぁ。 婚約破棄されてざまぁ。勇者チームを裏方で支えていたのにクビになってざまぁ。貴族の跡取り息子なのに、スキルがダメと誤解されてざまぁ。世はまさに大ざまぁ時代! 猿君もざまぁの無い羅刹女の展開に不満なのだろう?」
「別にざまぁが無くても不満は無いけど。あと、私は猿君じゃなくて、千世子よ。」
「ざまぁなんてしたら人間関係が悪くなっちゃうので、いい子はそんな事しちゃだめですっ。あと、私は景ですっ。」
「千世子君、景君、やはり、ざまぁを望んでいたか! 図星だったみたいだな。フッフッフッ。」
「だめですっ。全く話が通じません。」
「コナン君や金田一君に無理のあるツッコミ所満載の推理をされて、勝手に冤罪になっちゃう犯人って、こういう気分なのね。」
お前ら、被害者ぶっているけど、私は、お前らにもツッコミを入れたいぞ。
「やはり、羅刹女にはざまぁが必要なようだな。」
原作者的には、ざまぁは不要なのだが、ここで言っても、全く話が進まないだろうから、無表情で受け流しておこう。
「ざまぁ界の大スターと言えば、サイコロステーキ先輩をおいて他にはないだろう。何の脈略も無く登場して、空気も読まずに、ベラベラとしゃべり、何の根拠もない自信に満ちていて、フラグを立てまくった挙句、あっさりとサイコロステーキにされる高速フラグ回収。このような、ざまぁ界において、サラブレッドとも言える、特上のイキリ噛ませ犬こそ、羅刹女に最も必要な要素と言っても過言では無い。」
過言です。完全に不要な要素です。そんなのを登場させちゃったら、物語が変わってしまうわ。
「君達も尊敬するサイコロステーキ先輩に勝るとも劣らない、イキリ噛ませ犬が欲しいのではないかね? そんな君たちの願いを、私の闇のゴルフ組織が叶えてあげようと言うのだ。」
「いらないですっ。」
「不要ですが、あなたのセリフで、ろくでも無いフラグが立ったのは分かるわ。」
ノリノリなのだが、ミスターXは、ここに原作者が居るのが見えないのだろうか? それに、時代の潮流がざまぁとか、この国はもうダメかもしれない。
「フッフッフッ。だが、これを見てそんな事が言えるかな?」
ミスターXから映像が切り替わる。そこには捕らえられた星アリサが映っていた。
「千世子、景ちゃん、助けてっ。ミスターXに捕らえられてしまったの。このままではキャディー研修を受けて、闇のキャディーとして活躍してしまうわ!」(日本最高の女優で大手芸能事務所の社長による迫真の演技)
「フッフッフッ。このままでは、闇のキャディーとして、大統領や首相のゴルフのサポートをしてしまうかもな。ついでに、政治もサポートして、世界の裏側で暗躍する黒幕になってしまうかもしれないぞ。」
「それ、今とあんまり変わらないじゃない。」
「この前、大統領が来日した時に、首相と一緒にご飯を食べていましたよね? みんなでいったい何をやっていたのですか?」
ツッコミ所が多すぎて、色々と大渋滞している。
百城千世子や夜凪景以外にも、これだけ、一流どころの役者達が雁首そろえているのだから、ツッコミ不在はダメだろう。
お前ら役者は、台本が無いと動けない無能か? 誰かツッコミをしてほしい。 お願いだから。 誰かここに割り込んでツッコム勇者は居ないのか? もう頭がおかしくなりそうだ。私は顔には表れにくいが、立っているのも辛くなっているんだ。 私はお前らの舞台の演出家だぞ? 私の意図を汲んで、誰かツッコミを入れろ。 お願いだから。 ほんと、お願いします。
気が付いたら、私は無表情で立ちながら、頭の中で懇願していた。
「あなた達、なんて薄情な子達なの? 私はあなた達をそんな子に育てた覚えは無いわ!」
「いや、そんな子に育てられた記憶しか無いのだけど・・・。」
「あっ、それ、私も解釈一致ですっ。やっぱり千世子ちゃんは、死ぬまでは私のズッ友ですね。」
だから、死ぬまでとか、条件を匂わせるのを止めろ!
「フッフッフッ。それでは、星アリサを闇のキャディーにしても良いのだな?」
「あっ、流石にそれはまずいかも。」
「それは、私の身にも、ろくでも無い事が降りかかりそうなので、止めてくださいっ。」
お前ら、これだけ振り切っておきながら、意外に保身はちゃんとしているんだな。
「フッフッフッ。素直でよろしい。 それでは、闇のゴルフ組織が総力を挙げて結集した、特上のイキリ噛ませ犬チームを紹介しようではないか。いでよ!サイド丙(ひのえ)の諸君。」
そう言って、舞台裏からぞろぞろと人が出来て来た。サイド丙? もう一つチームがあるの?
見ていると、先頭は星アリサ、続いて星アキラが続く。そしてなんと、薬師寺真美が出て来て、三坂七生と青田亀太郎、柊雪が出て来た。
会場に驚愕の声が木霊する。
柊雪の演出なのかな?と思って見ていたら、さらに遅れて一人の老人が出て来る。 驚愕の声を超えて、もはや怒号が会場を支配している。
なんと、最後の演出家のポジションに、柊雪と共に巌裕次郎が収まった。
そして、スクリーンに、サイド丙のキャストがデカデカと表示される。
------------ サイド丙 ------------
主演(羅刹女):星アリサ
孫悟空:星アキラ
三蔵法師:薬師寺真美
沙悟浄:三坂七生
猪八戒:青田亀太郎
映像演出:柊雪
舞台演出:巌裕次郎
この陣容に、期待感どころの話ではない。 あまりの情報過多と話題性の多さに、もはや会場は大パニックだ。
これが、敏腕プロデューサー、天地心一の力なのかと、ステージに居る天地心一を見ると、顎を落とさんばかりに驚いている。お前、この舞台のプロデューサーなのに、知らなかったのかい!
司会者も知らなかったらしく、同じく大パニックになって、噛みまくっている。 もはやアドリブで回せるとかそう言うレベルを超えている。
「千世子、売られた喧嘩を買いに来たわよ。」
舞台の中央に立って、星アリサが百城千世子を見下ろす。ここに来て初めて、百城千世子が気圧されたような表情を見せた。
「景ちゃん、最高の女優を目指すなら、私を踏み台にしてみなさい。」
夜凪景が震えている。ビクッと震えながら、星アリサを睨んで笑顔を見せている。間違いなく、あの夜凪景がビビっている。
ツッコミ所が増えすぎて、じゅわ~っと胃酸が私の胃を溶かしているのを感じる。胃が熱い。血を吐くかもしれない。
何事にも動じて居なさそうな無表情のクール美人が、突然血を履いてぶっ倒れたら、みんな驚くだろうか? それともただ単に、この無限増殖しているツッコミ所に、ツッコミが1つ増えるだけなのだろうか?
もう何が何だか分からない。 頭がフットーしそうだよおっっ。
以上、山野上花子嬢が壊れ始める様子でした。
山野上花子嬢の明日はどっちだ!?
そして、突如現れた、特上イキリ噛ませ犬チームのサイド丙とは?
二人の前に、高層ビルよりも高い踏み台が現れる!
特上イキリ噛ませ犬チームを踏み台に、百城千世子と夜凪景はざまぁを達成できるのか!?
次回をお楽しみに!