星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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イギリスに拉致られたぼっちちゃんと赤毛連盟

 

------------- 後藤ひとり視点-------------

 

エリオット・クラフトン邸。 ロンドン郊外に佇む、レンガ造りの静かな家の2階の奥の小部屋。かつて物置として使われていたその部屋は、今やひとりの少女の聖域となっていた。

 

そう、そこは、ぼっちちゃん専用の「英国引きこもりギタールーム」

 

部屋の床にはギターエフェクターが6台。ピックの缶は紅茶の缶に擬態し、壁には手作りのコード進行マップがびっしりとしている。

 

コラボとアリシアでチャンネル登録者数がスーパー爆上がりして、さらにクラフトン家に居候しているともなれば話題性と承認欲求の満たされ具合も抜群となり、ある意味、ぼっち人生という引きこもりニートとしては、人生で一番幸せな時間を過ごしていた。

 

そして、そんな物置部屋の中心には・・・。

 

「・・・ポロロ・・・(=最高)」

 

ピンクのZO-3を抱え、くるくる回転チェアで360度無音回転している後藤ひとりの姿があった。

 

「ひとりちゃ~ん? ティータイムよ~?」

 

階下から、優しく呼びかける声がする。

 

それはこの家の女主人、エリオット・クラフトンの妻であるエルザさん。

 

元ジャズピアニストであり、現在は庭いじりと紅茶研究に人生を注ぐ、おっとり系天然マダムだ。

 

「・・・ポロン!(=今行きますっ)」

 

返事はもちろんギターのリフである。もはや日本語をしゃべる事すら面倒になっているのは、ぼっちちゃんだけの秘密である。

 

階下のサンルームでは、今日もエルザ特製のティーセットが用意されていた。

 

紅茶はアールグレイ、スコーンにはクロテッドクリーム、そしてピック型のクッキー。

 

「今日はこのクッキー、『Dメジャー9』って名付けたの。どうかしら?」

 

ポロン・・チャラララ(=それ、超好みです)

 

「ふふふ、音がキラキラしてるわね。美味しいって意味ね、きっと」

 

エルザさんは、ぼっちちゃんの“リフ語”をほぼ完全に翻訳できる数少ない存在となっていた。 ある意味、音で感情をダイレクトに感じられる分、日本語の表現力が残念な日本での生活よりも、むしろ家族より意思疎通できている。

 

「今日のお天気はね、曇り時々小雨ですって」

 

チャラン・・・チャラン・・。(=出かけなくてよかった)

 

「昨日、エリオットがひとりのことを“リズムで話す魔女”って言ってたのよ」

 

ポロンポロロン!(=それは褒めてますか!?)

 

「たぶん褒めてるわ」

 

「そういえば、ひとりのお友達たちが、今日来るって連絡くれてたわよ?」

 

・・・ジャカジャカジャカジャカジャカ(=私の部屋から一歩も出たくない!!!)

 

「そう思うと思って、お部屋にラベンダーティーとピック15枚、置いておいたわよ」

 

ポロロ…!(=エルザさん!もう・・・私の女神かもしれない・・・。)

 

「でも、せっかくお友達がわざわざ日本からここに来てくれるのだし、イギリスに来たんだから、たまにはお外に出て観光に行くのがいいわよ。」

 

ボロロロロ・・・ボンッ・・ジャッジャッ!(=外出なんて都市伝説です!)

 

その様子を見ていたエリオット・クラフトンは、静かに言った。

 

「おいエルザ、ヒトリは俺よりお前と会話成立してるな」

 

「まあ、女同士だもの。言葉なんていらないわ」

 

チャン・・チャラララン(=その通りですですっ。)

 

「・・・リフで家族が増える時代が来たか。」(ぼっちちゃんは、もはやクラフトン家の子供状態になっている。)

 

その時、玄関のチャイムが鳴った。

 

 

------------- 伊地知虹夏視点 -------------

 

私は勇気を出して、チャイムを押した。

 

するとインターホンから女性の声が聞こえて来た。ぼっちちゃんじゃないみたいだ。奥様かな?

 

「Good day. What can I do for you?」(どのようなご用件ですか?)

 

「We’re Hitori Gotoh’s friends! We came to pick her up and go sightseeing!」(私達ぼっちちゃんの友達です。ぼっちちゃんと観光に行くために迎えに来ました!)

 

私は、高校で習った英語でなんとか来訪目的を伝える。

 

「Oh, welcome. Just a moment — I’ll let Hitori know you’re here.」(いらっしゃい! 今、ひとりと会話を替わるわ。)

 

「ひとりちゃーん!迎えに来たよ~!一緒に観光に行こうよ!」

 

喜多ちゃんがぼっちちゃんを観光に誘う。

 

ジャカジャン・・・チャラララジャン!(=観光なんていらない。私はこの天国で絶賛引きこもっています。)

 

「いや、リフで拒否しないでぇぇぇぇぇ!」

 

「Hitori, your friends came all the way from Japan just to see you. It wouldn’t be fair to treat them like that, would it?」(ひとり、せっかく友達が日本からはるばると迎えに来てくれたんだから、その対応はかわいそうよ。)

 

ジャ・・ジャン・・・。ジャジャン。(で、でもっ。私、この家で引きこもっているのが一番の幸せだし・・・。)

 

「Hitori, no. It may feel easier right now, but if you shut yourself off from your friends, you’ll regret it one day. Please, at least let them in and hear what they have to say — just for a little while?」(ひとり、だめよ。今はそれで良くても、友達との繋がりを拒否すると、必ず後悔するわ。せめて家に入れて、お話だけでも聞きなさい?)

 

チャッ、チャチャッ、ジャカジャカ・・・・・・・ポーン。(うっ・・・・。エルザさんがそう言うのなら・・・・・仕方が無い。)

 

「Now, now please, everyone, do come inside.」(さあさあ、皆さん、家に入ってちょうだい。)

 

「・・・あれ?でもひとりちゃん、エルザさんとめっちゃ喋ってない?」

 

「ぼっち、コイツ、言葉が通じないのを良いことに一周回ってコミュ強になっていやがる・・・。」

 

「コミュ力の使い方、なんか間違ってるよね!?」

 

私達はエリオットさんの家の玄関のドアを開けようとするけど、なぜか鍵がかかっていた。

 

ポロロン・・・ポロン・・ポロロロロ・・・。(=いらっしゃい。でも玄関のドアは開けない)

 

「「「音でツンデレすな!!」」」

 

観光以前に、引きこもりになったぼっちちゃんを連れ出すのは意外に大変かもしれない。

 

 




イギリスで引きこもり生活を謳歌しているぼっちちゃんでした。
もはや言葉を話すのも面倒になっている引きこもりニートと化していますww
そして、おそらく収入もとんでもない額になっているので、余裕で引きこもりを続けられる、ネオニートと化していますw

結束バンドのメンバーはこんなぼっちちゃんをどうやって連れ出すのでしょうか。

それから、忙しくて更新が遅れていてすいません。これからしばらくは文字数が少なくても小刻みにアップしていくようにしますので、よろしくお願いいたします。
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