星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
------------ VTuberの中の人 下北沢STARRY PAさん視点 ------------
「へぇ~音戯アルトちゃんなんだ。彼女、マフィアのペット感とふわっとした甘い声がいいよね。」
私がコーヒーを吹きかけた事も気にせずに目の前でアキラ君が布巾でフキフキしながらイライザさんと会話を続ける。
白いシャツにコーヒーの染みが付いているみたいだけど、全く気にしていないみたいだ。・・・それが逆に怖い・・・。
「知っているのデスカ!?」
「もちろんだよ! 僕はVTuberのみんなから珍獣師匠として尊敬される師匠なんだよ。 音戯アルトちゃんももちろん存じ上げているよ。 そっか~。 イライザは音戯アルトちゃんが推しなんだ。」
「サスガデス!! 珍獣アキランは伊達じゃないデス!」
星アキラは、音戯アルトの事を知っているの!? 登録者数桁が私と4桁以上違うのだから知らないで欲しかった・・・。
「音戯アルトちゃんのどこがいいの?」
「良くぞ聞いてクレマシタッ!! カワイイ声なのにどこか治安の悪さを感じさせるトーク! 圧倒的なゲーミングスキルでどんなホラゲもFPSも淡々とこなす様子は深夜にまったり見るにはちょうど良いと評判のVデスッ!!」
「笑うと少し声が低くなるのがいいよね。」
「アルちゃんの事をワカッテイマスネ! ソウナンデス!! 特にやらかした時は・・・・。」
イライザさんがオタク特有の早口トークでマシンガンのように音戯アルトちゃんの良さを語りまくる。
落ち着いて!イライザさん!! あなたが熱く語っている相手は下手したらチャンネル登録数がもうすぐ億に届きそうなYoutuberであり、VTuberなのよ! 先生の前で自分の子を褒めまくる親バカの母親を見る子供のような居たたまれなさがあるわ。
あと、アキラ君が私の事をチラチラと見てくる事も気になる。 あれ、絶対に気が付いているよね?
配信時は、声を作って少し高めに発声しているからイライザさんは気が付いていないけど、本職のアキラ君を欺ける訳ないよね。
もちろん、私が音戯アルトだというのは黙っていてくれているみたいだけど、否な予感がビンビンにする。
「闇に祝福された魅力で、もうあれは小悪魔通り越して悪魔だよね。」
「ソウデス!! あのカワイイふりをして淡々と弱い物をなぶり殺しにしていく姿勢が良いのデスッ!」
・・・ものすごく推しを褒めているのに、善人とは思えない会話を堂々と喫茶店の中で繰り広げるのは止めて欲しい。
「これっ・・・・・・・・・・・・・。」
久乃木さんが音戯アルトのポスターを指さして何かを伝えようとしている。
「音戯アルトちゃんのママ(絵師さん)は、夜宵うるめさんですね。みーちゃんって言う、私の友達のCGクリエーターの後輩なんですよ。何度か絵を見せてもらった事があります。企業で働いているのであまり名前は出て来ませんが、仕事が丁寧で眠そうな目の描写が得意なんですよ。」
「へー。美沙姉さんの後輩さんなんだ。どうりでアバターが動きがスムーズだと思った。」
「走れケイティの制作にも参加しているのよ。」
アバターの絵師さんまでバレてる~!! 身バレが怖くて、個人活動とかしないで、あんまり名前が表に出てなくて、アバターを作るのが上手そうな人を探してお願いしていたのに、絵麻さん達の知り合いだったの!? ヤバっ。世界が狭すぎる。
衣装を作る時とかにチャットで会話するけど、確かにアニメ関係の仕事をやっているって言っていたけど、絵麻さんの友達の後輩って・・・。音戯アルトの中の人が私だって言わないよね? アキラ君におそらく身バレしている時点で余計な心配だとは思うけど・・・。
その後、久乃木さんが無言でスケッチブックを取り出すと何かを書き始めた。 絵麻さんもそれを見ると自分のスケッチブックを取り出して何かを書き始める。
「そういえば、音戯アルトちゃんは、音へのこだわりが凄いよね。」
「流石デスッ! アルちゃんはゲームによって機材を変えたりするぐらい音への拘りが凄いネ。この前もマイクのミキサーを新調していたネ。」
「特にフォートペックスでの音が綺麗だよね。あれってなんのマイクを使っているの?」
「ああ、あれはKALME(カルメ)のNightEdge(ナイトエッジ)ですね。スーパー・カーディオイド(超単一指向性)でゲームの音を拾ったり、雑音が入らなくて良いです。爆発音と銃声を避ける周波数フィルタリングをかけて、低音域感度が高くて息成分がクリアに聞こえるセッティングで、銃撃戦の中でも音戯アルトの小声だけクリアに入るようにセッティングしていますね。・・・あっ。」
あまりにも自然にアキラ君が私に話を振って来るので、私の音響オタクスイッチが入ってしまって自然に回答してしまった。
やらかした・・・。久乃木さんと絵麻さんが何か書き始めた時の、一瞬気が抜けたタイミングで、いつものダリ姉と同じ間の持って行き方だったから、条件反射的に答えてしまった。配信者本人以外、音響オタクでもこんなの回答できる訳ないのに・・・。当のアキラ君はニヤニヤしている。
「PAさんスゴイデス!! それにもしかして、アルちゃんの配信も見ているのデスカ!?」
「今後スターリーで配信ライブをした時の音周りの勉強のために、たまに見ていまして・・・。」
「PAさんぐらいになると、そこまで分かるのデスネ! 流石はスターリーのPAさんデス!」
「やっぱりPAさんは凄いね。」
「ははっ。はは。」
私は乾いた笑いを浮かべる。
「しかも、イライザはただの視聴者じゃないんだってさ。」
廣井さんが話を振って来る。
「一応本人には認知してもらってイマス。」
「えっ、そうなんですか!?」
「視聴者参加型のゲーム企画に参加してからアルちゃんとはすっかりゲーム仲間デス! フォートペックスでは伝説のデュオと呼ばれていマスヨ!」
「伝説のデュオ! もしかして寿司侍さんですか?」
「知ってマスカ? はい。もちろん!」
「チームの一人が早々と抜けちゃってピンチの中で二人で勝ち取ったビクトリーは忘れられマセン!」
「私も覚えています! あの逆転劇。 ダリ姉とのコラボ動画を除くと、あの時の動画が今でもダントツ1位で・・・。 はっ。」
「PAさん、めっちゃ詳しいじゃん。」
廣井さんが話しかけて来る。
「いえいえ、たまたま見る機会がありまして・・・。」
あぶない~。興奮してついやらかす所だった。
「アルちゃん仲間が居て嬉しいデスヨ~。」
「あははは・・・。」
「お待たせしました。音戯アルトドリンク2つと、秋色ダリアドリンクが2つ、ジン・ストライカードリンクが1つの合計5つになります。」
イライザさんと廣井さんの音戯アルトドリンクと、久乃木さんのジン・ストライカードリンクが来た。 アキラ君と絵麻さんは秋色ダリアドリンクのようだ。
こうやってドリンクを並べると、ストロベリージュースがベースのジン・ストライカードリンクや、ブラッドオレンジとアイスティーベースの秋色ダリアドリンクに比べて、水色のバジルシードドリンクがベースの音戯アルトドリンクのなんと毒々しい事か。
しかも上のトッピングは、どす黒いゴマアイスの上に、鮮やかな赤いタコさんウィンナーである。完全にカエルの卵の海の底から強襲してきたクリーチャーだ。さらに制服にあるピンクのネクタイ成分はお寿司の”ガリ”で表現されている。
・・・このドリンクはどこを目指しているのだろうか?
確かにアバターの色にオマージュしているが、殺伐とし過ぎている。私にドリンクのレシピを変更する権利は無かったけど、ちゃんとドリンクの出来はチェックしておくべきだった。
「サスガ、音戯アルトのドリンクデスッ! 音戯アルトの殺伐とした世界観が見事に再現されてイマス!」
イライザさんが大喜びしているけど、私の配信のイメージって、こんななの!? ファンなら、『音戯アルトのイメージはこんな変なのじゃない!』って怒る所じゃないの?
「これ、海の悪夢では? そもそも音戯アルトって海が関係あるのか?・・・味は思ったよりも甘く無くて助かっているけど。」
廣井さんがもっともな疑問を呈する。当然だけど、音戯アルトに海は関係ない。そもそも、カエルの卵に見える水色のバジルシードドリンクが海なのかも疑問だけど、普通の色でも売れないのに、どぎつい水色のために在庫が余りまくったバジルシードドリンクを使って原価を下げようと言う魂胆が透けて見える。
タコさんウィンナーとガリも原価が安そうだ。 ジン・ストライカーや秋色ダリアであれば、もっとちゃんとしたドリンクを作ろうとしたんだろうけど、弱小Vではこの扱いである。
「治安悪すぎで草」
アキラ君も大爆笑していた。
明らかに飲めて味も良さそうな他のドリンクに比べて、この扱いである。ちなみに私は飲みたく無かったので最初からコーヒーセットを注文している。
「きくり!コースターは誰デシタカ?」
「あ―――。違う子だね。」
「あちゃ~。私もデス。」
「店員サン! 同じものをもう2つクダサイ!」
「あっ、僕も音戯アルトドリンクを一つください。」
「え?」
「かしこまりました。」
「イライザ、そんなに喉が渇いていたの?」
「Nooo! そんな訳がないデショ! コラボカフェと言えば特典のランダムコースター! ぶっちゃけ、こっちがメインでドリンクはおまけデス! 今日はアルちゃんコースターを手に入れるまで頼むのヨ!」
「マジか・・・。」
そして、3つのオドロオドロしいドリンクが運ばれてくる。3つも揃えば明るく夢が詰まったVチューバ―ドリンクと言うカテゴリとは思えないほどに、禍々しいオーラか毒電波が発しているかのような雰囲気が醸し出される。複数個は明らかにオーバーキルだ。
アキラ君はこの3本の地獄ドリンクをスマホで撮影して喜んでいる。
「治安悪化しすぎて大草原www」
アキラ君も楽しそうでなによりだ。
ちなみに、アキラ君がこの回で音戯アルトコースターを当てて、それをイライザさんに進呈した事で、音戯アルトドリンクの大量注文という悲劇はなんとか回避された。
久乃木さんのジン・ストライカーコースターは絵麻さんが当てて、久乃木さんにあげたので久乃木さんもニコニコである。
・・・この時の私は知らなかった。アキラ君が大爆笑をしながら音戯アルトドリンクを撮影して、それを『治安悪化ドリンク』としてトイッターにアップしていた事を・・・。そしてこの治安悪化ドリンクがバズって、大量に売れてしまう悪夢のような未来を。
それから世間話をして、気が付いたら絵麻さんと久乃木さんが音戯アルトのファンアートを描き上げていた。 ・・・なぜに!?
久乃木さんはさらにジン・ストライカーのコラボカフェアートと、絵麻さんは秋色ダリアのファンアートも描き上げていた。
こんな短い一瞬で、二人とも2枚も絵を描いちゃったの!?
「ワーーーーッ スゴイです! すごくカワイイデス!」
イライザさんも絵を見て感動の嵐だ。
アキラ君がどこかに電話をかけると、コラボカフェの支配人とおぼしき、ビシっとスーツを着た人が二人の絵を受け取って、一礼して去って行った。
後日、トイッターに、ジン・ストライカーと秋色ダリアと共に、音戯アルトのポスターの左右に、額縁に入った安原絵麻と久乃木愛の直筆ファンアートが飾られている様子がアップされてしまう。
二人の絵とともに、治安悪化ドリンクも合わせて音戯アルトが注目と話題を集めてしまい、私の胃はどんどん痛くなっていくのであった。
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「さて、いい時間だし、そろそろカフェを出て、晩御飯に行こうか。イライザさん達も奢るよ。」
「ワ----イ。ヤッターーー!」
「ああ、私は遠慮させて・・・・。」
「音戯あ・・・PAさんも一緒に行くよね?」
「はい。ご一緒させていただきます。」
中の人と言う弱みを掴まれている私は、アキラ君の圧力に耐えられずに、夕食に着いて行く事になってしまった。
「ドコニ行くのデスカ?」
「コラボカフェつながりで、この近所に食事メインのグルメ漫画のコラボカフェがあるから、そこに行こうよ。」
「「「ワ―――イ。」」」
喜ぶみんな。
・・・しかし、この時私達は知らなかった。 グルメ漫画にそこら辺のホラー漫画よりもはるかに怖いホラー要素がある事を。
ドカ食いダイスキ!もちづきさんコラボカフェに連れていかれた私達は、圧倒的な血糖値と脂質を前に至り、死神と会話する幻想を見るのであった。
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その後、音戯アルトのポスターの左右に、絵麻ママと久乃木ママの絵が載ったトイートを見て混乱に陥る女性が一人。
夜宵うるめさん(音戯アルトのママ)「安原先輩と久乃木先輩、どうして!どうして!?(恐慌)」
今回の流れ弾によって、話の流れを知らなくて、何の脈略も無くヤバイ先輩sから投下された音戯アルトの生ファンアートの前に恐慌状態に陥って、右往左往していたとさ。
めでたし。めでたし。
なお、もちづきさんコラボカフェでアキラ君はオムライスを注文して、絵麻さんと久乃木さんの3人で分けたため、なんとか乗り切りました。(3人で1Kgのオムライス3478kcal)
きくりさんはゆで卵と揚げ物カレー(3702kcal)で爆死、イライザさんは超大盛トルコライス(5422kcal)で爆死、PAさんはカロリー1/2マヨによって、カロリーが半分の半分の半分・・・・。になったカロリー1/2理論による魔法のから揚げ丼(38kcal、約1Kg:元3615kcal)でカロリーが少ないのになぜか爆死と、その後は死屍累々だった模様です。