星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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王賀美陸は本当の羅刹女を知るかもしれない

 

---------- 王賀美陸視点 ----------

 

「何度も言いますが王賀美さん、山野上花子はいいですよ。美人ですし。」

 

「黙れ、天知、座禅中だ。」

 

俺は、夜凪景を待つ間、寺で寝転がって漫画を読みながら座禅をしていた。

 

「なら寝転がらないでくださいよ。ちゃんと座禅をしているのは私だけじゃないですか。」

 

「禅とは、心の在り方だ。俺の心は座禅をしている。」

 

「興味深い話ですね。その話、広げてもいいですか?」

 

「お前、自分がタダで済むと思っていないか?3日後の夜凪次第では俺はお前から全てを奪うぞ? もう二度とお前の犠牲にならないように。」

 

「いや、奪うのは私ではなく、星アリサでは? こんな妙な話になっているのは、全て星アリサの策略ですよ。私はそれに巻き込まれた哀れなプロデュサーです。」

 

「あのクソババアから何か奪える訳が無いだろ! あんなに素直でいいやつだった星アキラをあんな珍獣にした女だぞ!」

 

「あの珍獣化は、星アリサ自身も全く望んでいなかったと思いますよ。星アリサ自身も昔の星アキラに満足していたようですし。ただ、経営者の才能はあっても、役者の才能は無いから早期に役者の道を諦めさせようとしたら、大惨事が引き起こされて大爆死した訳ですし。そもそも星アリサに復讐する気は無いのですか?」

 

「怒りはあるが、別に。そもそも役の制限をする星アリサが面倒でウザかっただけで、日本の芸能界には見返してやっていい気はするが、星アリサをどうしたいとかも無いしな。それよりも山野上花子の話だ。」

 

「山野上先生の何がご不満で?」

 

「山野上は演出経験が無いどころか、脚本家でも無いらしいじゃねぇか。」

 

「はい。今の彼女の本業は小説家です。10代の頃から名のある画家でしたが、20代で突然、芸大に入って彫刻を学び、その後なぜか芥川賞を受賞しています。そんな多才な彼女が自らの脚本で舞台化する事に何かご不満でも?」

 

「色物を混ぜるんじゃねぇよ。だからこの国の芸能界は退屈なんだ。」

 

「星アキラと明神阿良也を相手に、正面から対決できる機会にワクワクしているクセに、何を言っているのですか?」

 

「あ゛あっ、何だと?」

 

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「どうしましたか?武光さん*。約束の時間にはまだ大分早いですが。」

*烏山武光:同じチームの猪八戒役

 

「王賀美さんに芝居を教えてもらおうと思いまして・・・。」

 

「芝居なら教えねえぞ。飽き飽きしているんだよ。お前のような奴の直談判には。」

 

「不躾なお願いだと重々承知していますが、俺はどうしても・・・。」

 

「俺は誰かに教えを請うた事はねぇ。必要な物は持っている人間から奪うか、あるいは始めから持っていた。羨ましいか?」

 

「ええ。少し寂しい気もしますが・・・。」

 

「スターと言うのはそれだけ寂しくて孤独な物でな。だからこの対決を楽しみにしてきたのだが、この分では駄目そうだな。」

 

「夜凪は、羅刹女をマスターしてくると自信満々にどこかに行きましたが・・・。」

 

「・・・ああ、無意味に3日を過ごして戻って来るだろう。3日程度ではどうにもならない事は、俺には良く分かる。」

 

「なら、なぜ夜凪を待っているのですか?」

 

「ガキと言えども、一人の女が俺を喜ばせようと願っている。お前、その願いを無下にできるか?」

 

「・・・・!?」

 

武光思考:(アカデミー賞の助演女優賞を取った役者に対して、慢心しすぎている・・・。すごい。これが慢心王か!。 ここであえて慢心する事で・・・・、まともなフラグが立つ気がしない。普通は、失敗した事を考えてもっと謙虚に立ち回るのに・・・。これが、生まれながらのスター、王賀美陸。次元が違いすぎる!)

 

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「で、時間になっても来ませんね・・・。」

 

俺は、約束の時間まで夜凪景を待っていたが、結局来なかった。代わりに白石宗と朝野市子が現れる。

 

「一応、約束の日と聞いていたので。」

 

「やっぱり景ちゃんは来ていないの?」

 

「なんだ?朝野、やっぱり来ていないってどう言う事だ?」

 

「いや、なんとなく景ちゃんなら、すっぽかすと思ったのよ。」

 

「ああ゛っ! すっぽかすだと!! ふざけるな! あのクソ女め!」

 

俺はムカついてアメリカに帰る決意が固まった。

 

「どこへ行くのですか、王賀美さん!? 待っていればきっと夜凪も・・・。」

 

「君が抜ければこの舞台は成り立たない。僕は君との芝居を楽しみにしていました。」

 

「・・・ああ、俺もだよ。白石さん。残念だ・・・。」

 

そう言って、俺は夜凪景に失望して、ハリウッドへ戻るために空港へと向かった。

 

「バカね。景ちゃん達の手のひらで踊らされるなんて・・・。でも面白そう。白井さん、私達も空港に急ぎましょう!最高のエンタメが始まるわ!」

 

俺は、空港への車に乗った後の朝野市子の会話を聞く事は無かった。

 

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「王賀美さん、これで何度目のドタキャンですか!」

 

「やはり理由はスターズとの確執ですか!?」

 

「舞台の羅刹女はどうするんですか!!」

 

空港に着いたら、なぜかすでに報道陣がスタンバイしていて、俺は報道陣に囲まれて質問責めされる事になった。天知あたりが報道陣に漏らしやがったな。動きが早すぎる。日本中からこんなに期待されると示すことで、俺の良心を刺激する作戦だろう。こんな事で俺が考え直すと思ったら大間違いだ。

 

「うるせえな。何でお前らにそんな事を教えねぇとなんねぇんだよ!」

 

そう言って、俺は搭乗窓口へ入場しようとした。

 

「王賀美さん、考え直してください! 俺はこの舞台を諦めたくない!」

 

遅れて来た烏山武光が後ろから叫ぶ。

 

「俺達は演じる事が仕事! 他の事は関係無いじゃないですか! すいません。若輩の身で生意気な事を・・・。でも俺はこの舞台に賭けているんです!お願いです!行かないでください!」

 

熱い男だ。こういう男は嫌いじゃない。

 

「武光よ、これは自慢でも何でもないんだが、俺は努力という物をしたことがねぇ。街でスターズにスカウトされて、翌年には主演映画で賞をもらい、そのまま今に至るだけだ。」

 

「え?」

 

「・・・なのに俺の人気は上がるばかり。ある日、流石に考えた。そして気が付いたんだよ。みんなありのままに俺を愛してくれている事に。俺はその事に感謝して、自分に一つの努力を課した。」

 

「俺が俺であり続ける事。それが俺がやっている唯一の努力だ。」

 

「・・・王賀美さん・・・。」

 

そう言って、俺は搭乗窓口からアメリカへ戻る事にした。羅刹女の舞台は期待していたが、こんな結末に終わるとは残念だ。

 

そう言って、体の向きを変えようとした瞬間、「ざわ・・ざわ・・。」と報道陣や野次馬のざわつきが大きくなる。

 

俺はその方向を見ると、百城千世子と明神阿良也が居て、まるでモーゼのように人の海が割れていた。

 

「そんなんで帰っちゃうの? 私と遊んでよ。 王賀美さん。」

 

そう言って、百城千世子が前に進んで来る。

 

「百城千世子・・・・。」

 

「これからもっと楽しくなるのに、今帰っちゃうなんて勿体ないよ。」

 

「悪いが、もう時間が無い。お遊びはまた別の日にしてくれ。」

 

「ちょっと遅刻した女を待てない男はモテないって、そう教わらなかったのか? 王賀美陸は役だけじゃなくて、礼儀もなっていないらしい。」

 

「明神阿良也! ふざけるな!」

 

真向から喧嘩を売って来た明神阿良也に俺は怒りをぶつける。そして、一触即発になろうとした瞬間。

 

「やれやれ、王賀美さんは、本物の羅刹女を見せてあげると言うのに、しっぽを巻いて逃げ帰るのですか?」

 

「来たな、山岡士郎。 いや星アキラ!」

 

人々の中から山岡士郎に扮する星アキラが出て来た。

 

俺の背中に冷や汗が流れる。 ・・・こいつ、いつから人混みに紛れ込んでいたんだ? 気を付けていたのに、全く分からなかった。

 

「何を言っているんだ! 約束の日時に間に合っていねぇじゃねえか!」

 

「いやいや、王賀美さん、俺は約束の時間にちゃんと間に合わせましたよ。」

 

「間に合ってねぇじゃねえか! 夜凪景はどこだよ!」

 

「王賀美さん、誤解があるようですね。俺は日時は指定したけど、場所は指定していませんよ? ちゃんと場所を確認しなかった王賀美さんが悪いのではないのですか?」

 

「・・・っ!ムカつく奴だなお前! じゃあ、夜凪景はどこに居るんだっ!!」

 

「王賀美さんこそ、何を言っているのですか? ここに居ますよ?」

 

「はっ?どこに!?」

 

ジャ、ジャジャジャジャ、ジャジャジャ。 ジャ、ジャジャジャジャ、ジャジャジャ。

 

何だこの音楽は!? 突如、空港のフロアにスターウォーズの『帝国のマーチ』が流れ始める。

 

そして、俺の対面にある何かの扉がピカピカと光始めた。

 

空港に着いた時から、周りに報道陣に囲まれていたから、こんなSFチックな扉が俺の近くに存在したなんて気が付かなかった。

 

そして、扉からシューとドライアイスの煙が立ち登り、キュイーンとすごい勢いでドアが開いた。

 

「・・・コーホー。コーホー。」

 

空港のフロアが薄暗くなり、左右に白いストームトルーパーを従えたダースベイダーが出て来る。凄い威圧感だ。俺はまるで、ベイダー卿を迎える銀河帝国の一兵になった気分だ。

 

「コーホー。コーホー。」

 

ダースベイダーがゆっくりと俺の前に歩いてくる。それだけで、凄い威圧感とプレッシャーを感じる。そして、俺の前に来て対峙した。

 

「・・・・・・・。コーホー。コーホー。」

 

「・・・・、なっ、何だよ。」

 

しばらくの沈黙の後に、ダースベイダーが口を開いた。

 

「コーホー。コーホー。・・・・ああ、腹が立つ。腹が立つ。」

 

「はあ? 何だよ?」

 

俺がそう言った瞬間に、ダースベイダーは腕を伸ばして、触れても居ないのに首を掴んで、俺を持ち上げて投げ飛ばした。ワイヤーなんかが仕込まれていない、ガチで謎の念動力だ。

 

「てめぇ!」

 

おれは転がって、受け身を取って、もう一度立ち上がる。

 

「・・・・ああ、腹が立つ。腹が立つ。あの人は毎年毎年、妾のところへ・・・。」

 

ここで、ようやくダースベイダーが羅刹女のセリフを言っている事に気が付いた。

 

「おまえ、何で羅刹女のセリフを・・・。うっ、ぐわっ、あぐっ・・・。」

 

俺が話しかけると、また謎の念動力によって俺の体は持ち上げられて、そのまま柱に叩きつけられる。

 

「くそっ、うっ、おえっ、ゲ~~・・・。」

 

念動力が均等にふわっと体が吹き飛ばされたせいか、大したダメージは無かったが、俺は柱にたたきつけられた時に、おまけで念動力で腹を押されて、さっきまで食べていたハンバーガーを思わず吐いてしまう。

 

「・・・・・・ああ、腹が立つ。 私というものがありながら・・・。ああ、この怒り、どうしてくれよう!」

 

セリフが終わるのと同時に、ドーーーンと雷が空港に落ちて、空港のフロアが停電する。

 

・・・コイツ、怒りで空港まで停電させやがった。大惨事だぞ!損害賠償をさせられても知らないぞ。

 

偶然の落雷が目の前のダースベイダーのせいだと信じて疑わないぐらいに、目の前のダースベイダーはキマっていた。

 

俺は、この暴挙を止めるべく立ち上がって芝居に応えることにした。

 

「おい、俺だ。孫悟空だ。扉を開けてくれ!」

 

今度はダースベイダーは俺を攻撃して来ない。どうやらこれが正解のようだ。こうして俺と、ダースベイダーは羅刹女の奇妙な芝居をアドリブで続けて行く。

 

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「凄いわ。なんて言う怒りと恐怖。これが本当の羅刹女なのねー。(棒)」

 

「どうやら、王賀美さんも本当の羅刹女を知ったようだね。」

 

しばらく芝居に没頭していると、百城千世子が棒読みでセリフをぶっこんで来やがった。さらに星アキラの山岡士郎がドヤ顔をしているのが許せない。

 

「なんちゅう羅刹女を見せてくれたんや、なんちゅう物を・・・。こない上手い羅刹女は見た事があらへん。これに比べたら、山岡はんのアユはカスや。」

 

全く関係がない老婆が、山岡士郎をさらっとディスりながら、人混みの中でボソっとつぶやく。

 

「おい、これのどこが羅刹女なんだよ!そもそも、ダースベイダーは男だろ!全然羅刹女とちげーじゃねぇか!」

 

俺が根本的な部分を指摘すると、百城千世子がいたたまれなくなったのか、目を反らした。

 

「百城千世子、お前いま、目を反らしただろ! 絶対に、このダースベイダーの羅刹女がおかしい事に気が付いているよな!?」

 

「な、ナンノコトかしら?」

 

「白々しいぞ!お前。普通は、すげえ羅刹女の演技で俺を納得させる展開だろ!なんでダースベイダーなんだよ! ぐわっ!」

 

そう言うと、また俺はダースベイダーに念動力でゲロを吐いた所にまで吹っ飛ばされた。

 

「・・・これは大惨事だな。」

 

明神阿良也が他人事のように言う。自分のゲロに汚れながら立ち上がると、またあの老婆が口を開いた。

 

「これはあの予言のとおりじゃ!」

 

「おばあさん、なにか知っているの?」

 

星アキラとその老婆がなにやら会話を始める。

 

「うむ。『その者、青きジャージを纏いて金色のゲロに降り立つべし。失われた大地との絆を結び、ついに清浄の地でシャワーを浴びて綺麗になる。』という、東京都大田区にある風の谷に伝わる伝承じゃ。まさかその伝承をこの目で目撃する事になろうとは・・・。」

 

「そんな伝承が・・・。大田区民すげぇ! やっぱり王賀美陸とダースベイダーの邂逅は予言されていんだね!」

 

「頭がおかしくなるわ! もう付き合いきれん。今日は厄日だ・・・。」

 

そう言って、俺はホテルに戻る事にした。

 

「あら? 王賀美さん、結局、アメリカへ帰るのを止めるの?」

 

百城千世子が俺に聞いて来た。ちなみに俺はゲロまみれなので、遠巻きに警戒されている。

 

「こんな恰好で飛行機に乗れる訳がねぇだろ。仕切り直しだ。仕切り直し。あのエセ・ダースベイダーに目に物を見せないと気が済まなくなった。今度は舞台でメッタメタのギッタギタにしてやる。」

 

俺はダースベイダーを指さしながら言った。

 

「・・・・・・・。コーホー。コーホー。また遊ぼうではないか。」

 

羅刹女の演技をした後のダースベイダーはやたらとフレンドリーだった。

 

「はっ、それじゃあな!楽しい見世物だったぜ!あばよ!」

 

俺は、王賀美陸らしく、ゲロまみれでも恥じる事無く、映画のワンシーンのように堂々と空港を後にした。

 

・・・ちなみに、すぐにゲロの匂いで気持ち悪くなったので、空港のアパレルショップで服を買って、青いジャージは捨てた。

 

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僕は、王賀美兄さんのゲロの後始末をしていた。

 

うーむ。どうして僕の周りにはこんなにゲロで体を張る人が多いのだろうか・・・。

いや、ゲロの原因の大半は景ちゃんのような・・・。

 

そんな事を考えつつ、さっきまで会話していたおばあさんに声をかけた。

 

「薬師寺ばあちゃん、羅刹女の主要メンバーがそろい踏みだったけどどうだった?」

 

「薬師寺お姉様でしょう? アキラちゃんは、相変わらず躾けがなっていないみたいねぇ・・・。」

 

「怖っ。それで、薬師寺お姉様、どうだった?」

 

「・・・これは暴れ甲斐がありそうですねぇ・・・。たぶん、母が生きていたら血が滾ったでしょうね。」

 

そう言って、薬師寺ばあちゃんは周囲を見渡す。

 

「こんな極上の天才達を喰えるなんて、アリサちゃんはなんて良い役をくれたのかしら。今頃母は、この舞台に出られなくて、あの世で地団駄を踏んでいる事でしょうね。そうね。今年の母のお墓へのお供え物は、あの小娘たちの首にしましょうか。」

 

「薬師寺お姉様、少しお毒が強いですわよ。」

 

薬師寺ばあちゃんのあまりの毒々しさに思わず僕は縮みあがって、キアラ口調になってしまった。

 

もう、この人が羅刹女でいいんじゃないかな?

 





周囲の人には、ダースベイダーの念動力で吹っ飛んだのはSFXと王賀美陸の演技と思われていたので、面白い羅刹女の宣伝として大うけでした。

ちょっと前の話で、景ちゃんがダースベイダーの衣装を手に入れているのが、伏線になっています。

ちなみに、念動力でリッキーを動かしていただけだったので、派手に見えつつも、体へのダメージは大した事は無かったようですが、つい、お腹を押してしまって、ダースベイダーのゲロ仲間が増えてしまったようですw

あと、東京都大田区は羽田空港がある区ですね。
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