星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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和歌月千は羅刹女の稽古に入る

 

------------------- 和歌月千視点 -------------------

 

私はスターズの会議室の前で佇(たたずん)でいた。

 

オーディションを経て自分の力で勝ち取った出演権。スターズのオーディションを経て、3万人の中から一人選ばれた私は一瞬天狗になりかけたけど、すぐにデスアイランドで景さんや千世子さんとの差に愕然としてから、そんな慢心も吹っ飛んで、アキラさんのアドバイスを受けて様々なオーディションを受けて色々な役をこなすようになっていた。

 

ある意味、若手俳優の頂点とも言えるスターズという事務所は、事務所に任せていても仕事を入れてくれるけど、私は演技力アップのために一般のオーディションも良く受けた。

今回の羅刹女のサイド乙でも沙悟浄での参加は、そう言った私の努力が認められたものだと思っている。

 

そして、今日がサイド乙の演出者と出演者の顔合わせ日だ。これだけ話題の舞台だけに、正直緊張感はあるけど、是非自分の力を試してみたい。私は気合を入れた。

 

「よし!見てろ!」

 

「何を?」

 

「わぁ! ちっ千世子さん!」

 

気が付いたら後ろに千世子さんが立っていた。武道の経験者である私が後ろに立たれても、全く気配を感じなくて、鳥肌が立った。

 

百城千世子。 言わずと知れたF4と言われる芸能界のトップカーストに君臨する4人の俳優の一人。

 

スターズの星アキラの相方。この世の物とは思えない美貌と、この世の物とは思えない演技力の持ち主で、もはや存在自体がファンタジーとも言える。夜凪景がリアルを突き詰めた生身の人間の化身と言うなら、彼女は妖精の化身とも言える。まさに夜凪景と全てにおいて対極に位置する女優だ。

 

「千世子さん、まだ入っていなかんですか!? もうみんな来ていますよ。」

 

「うん。私も和歌月さんと同じだよ。」

 

「え?」

 

「高ぶる気持ちを鎮めるのに時間がかかった。」

 

「何を言っているのですか?百城千世子のくせに。」

 

本当に何を言っているのだろうか。千世子さんとアキラさんは自身の感情や気持ちに演技が全く影響を受けない人物として有名だ。その辺のエピソードは事欠かない。常に感情やコンディションに左右されないプロフェッショナルだ。

 

私達が入ると、突き当りの上座の席に頬杖を突いた男性が座っていた。

 

「演出の黒山だ。いろいろあって巻き込まれた。・・・が仕方ねぇと思っている。よろしく。」

 

黒山墨字。信じられないほどに繊細な作品を撮る映画監督。最初はあの柊雪の師匠という事で、作品が広まり始めて、今ではすごく熱心なファンが居る。

 

私も作品をみたけど、本当に美しい情景と繊細さ、そして人間とは何かを考えさせられる作品ばかりで、今回の舞台演出にも期待が高まる。何よりも、F4を一躍有名にした舞台の若草物語を手掛けた演出家でもある。

 

対面には、羅刹女役の百城千世子さんと孫悟空役の明神阿良也さんが座っている。

 

この二人は、あの巌裕次郎の演出の元、ニューヨークのブロードウェーで男女逆転のロミオとジュリエットを演じて、トニー賞を受賞しているコンビだ。 映画俳優としてだけではなく、舞台俳優としても超一流と言える。こんな所に私も入って芝居をするのか。絶対に足を引っ張らない。私は私らしい芝居をして見せる。

 

「あー、阿良也、演劇の稽古ってこの後どうするんだっけ? まず飲みにでも行くか?」

 

「その前に読み合わせだろ?」

 

「確かに。8階に移動するぞ。」

 

そう言って墨字監督は窓の無いレッスンルームに移動すると、電気を消して蝋燭の光を部屋の中心に置いた。

 

「修学旅行みたいでワクワクするわね。」

 

「百物語りじゃないのか?」

 

何これ?有名な演出家ってみんなこうなのだろうか?

 

「これを火焔山と見立てるのか。」

 

「そうだ。」

 

「これが火焔山の再現・・・。でも、これじゃ台本が見えないのでは?」

 

「お前、真面目ちゃんだな。もうすでにセリフぐらい頭に入っているだろう?」

 

「まあ確かに・・・。」

 

「百戦錬磨の集まりだ。問題無いだろう。ざっと通しでやってくれ。」

 

この日から、私にとって火焔山のような人生で一番熱い日々が始まった。

 

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その頃のサイド甲

 

「コーホー、コーホー。」

 

「許さない!ダースベイダー!」

 

「すごい! ダースベイダーとルーク・スカイウォーカーの熱い殺陣だ・・・。でも羅刹女役と孫悟空役がこんな事やっていていいんですか? 山野上さんも演出なんだから何か言ってやってください!」

 

「ははっ・・・・。ははははっ。」

 

「花子ちゃん、台本が間に合ったのはいいのだけど、景ちゃんに京都に連れられてからずっとこんな感じだけど、京都で何かあったのかしら?」

 

「こんなんでサイド甲は大丈夫なんだろうか?」

 

「これは大化けするのか、思いっきり転ぶのか予想が付きませんね・・・。」

 

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その頃のサイド丙

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁアリサママ! 痛いっ! 痛いよ! 眼の中に入れても痛くないプリティな息子をこんな痛めつけて良心はいたまないの!? ぎゃぁぁぁぁぁ。」

 

「なにがプリティな息子よ。神様GO!で赤字間違い無しのスーパー赤字マネーマシーンが完成するって自慢していたから、ついにアキラも赤字を出せる真人間になるって安心していたら、家のお金を増やしまくってどうするのよ! 誰がこの意味不明なお金の税務処理をすると思っているの!」

 

「うぎゃぁぁぁぁぁ。それは恵比寿と大黒天と弁天と毘沙門天と布袋尊と福禄寿と寿老人と稲荷神と大国主と天照大神と吉祥天とラクシュミーとガネーシャとクベーラとフォルトゥナとデルメルとフレイとフレイヤとハトホルとベスとイシスとミカエルとラファエルと帝釈天と福助と招き猫と達磨大師がいけないんだよ! 僕はサーバーとか持ち出しで赤字にする予定だったんだ! それなのに、あの神様ズが徒党を組んでお布施システムの裏を突いて、意味不明な所からお金が湧いて来て儲かりまくるなんて反則だよ! 僕は悪くないよ! これはセキュリティ事故だよ! 神様ズがチートすぎるんだよ!!」

 

「何を訳の分からない事をいっているの!! さらに強化よ。(ポチッ)」

 

「ぎゃぁぁぁ。締まる!締まる! この緊箍呪、孫悟空の頭に着けていた本物と同じようになんで頭が締まる機能が付いているの!? お芝居なんだから、締まっている感じだけ出しておけばいいじゃん!」

 

「NASAの知り合いに作ってもらった特別製よ! アキラにメソッド演技を教えるために、泣く泣くアキラに痛みを与えているの。母の愛を受け取って?」

 

「さっ、サイコパスママ・・・。 現実に痛いのはメソッド演技じゃないよ! うがぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「あら、あら、やっぱり子供のしつけは大変なのね♪」(薬師寺お姉様)

 

「これはいい映像が撮れるわ!」(雪姉)

 

「わははっはっ。楽しそうだな。」(巌裕次郎)

 

アキラ君がアリサママに天罰を受けているのを見て笑っている巌裕次郎の横では、青田亀太郎と三坂七生がガクブルしていた。

 





いよいよ始まる羅刹女の稽古。

各チームで三者三様の立ち上がりですが、王道を行くサイド乙に対して、その他2チームの落差がヤバイ感じです。

そして神様が天罰を下さないので、代わりにアリサママに天罰を下されている珍獣君。
こんなので無事に羅刹女の開演ができるのでしょうか!?
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