星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
「いや、まだお前の絵を見ていないぞ。 フェアじゃねぇじゃん。」
王賀美陸が言う。気が付いたら、みんな期待のまなざしを私に向けていた。
「私は最初に砂漠を描きましたが・・・。」
「絵も芝居も同じだ。魂がこもっていないと分かるもんだ。不愉快だ山田花子。本気で描け!」
「山野上です。」
映画のシーンかと思ったのにw
リッキー、超かっけえのに、苗字を間違えて台無しだよw
王賀美陸は小学校でかわいい子をいじめちゃうタイプだなw
山野上花子以外、みんな完全に山田花子を定着させようとしていて大爆笑だよww
苗字を間違えて説得力が無くて草w
みんなわざとやっているからなぁ・・・。
花子ちゃんが感情がなくなった山野上ボッドでワロw
これは、「山野上です。」が流行語になりそうww
山野上ですって答える山田花子さんが闇落ちしていて草生えるwww
私は筆を取って、全てを黒く塗りつぶす。周囲から驚きの声が漏れる。
そして自分の心の赴くままに赤、オレンジと色を乗せていく。
今このキャンバスはこれしか表現できない私の心。これしか表現できない私の憤り。これしか表現できない灰になりたい私。
私の心全てが燃え盛るように、体全てが灰になるようにキャンバスに色を乗せていく。
すげえ!これが山野上花子の芸術!
本当に芸術家としての恐ろしさがあるな
この雰囲気は言葉を挟んだり中断しちゃいけない空間だよ
こんなの触れないよ!こんなのに触っちゃったら体が燃えちゃうよ!
怖っ。人間は炎を制御して来たけど、制御できない炎は恐怖でしかないわ。
燃え盛る炎は深層に刻まれた恐怖と怒りそのものだな
やっぱり、山野上花子の芸術家としての能力はすごい!
そして、あっと言う間に巨大なキャンパス全体に炎の海が完成した。
「なっ・・・。すごい!」
「炎・・・! 恐ろしいな、おい! 俺達の絵を全部飲み込みやがって!」
「私のモチーフは炎なんです。本気で描くといつもこうなる。だから描きたく無かった。ごめんなさい。」
「私はいつも何かにずっと怒っている。ずっと燃えているんです。だから皆さんがせっかく描いてくれた絵を台無しにしてしまうんです。」
「火焔山はいつも山田花子さんの頭の中にあったんですねっ。だから私達はそれを芝居で表現すればいい。そう言う事ですよね。この舞台って。」
「ええっ。ええ。そうです。そうなんです。でもそれを言葉にできなから困っていて。 あと、山野上です。」
「キャンバスに自分以外の存在を認めない。その傲慢さと美しさが良い。」
「でも、一人で燃え続けるのは大変だし、山田花子さんがかわいそうですっ。」
「山野上です。」
「ところでこの後、私の打ち合わせがあって人を待たせているのですが、こちらが思いのほか長引いてしまって・・・。 その人をここに呼んでも良いですか?」
「ええっ!? ええ。大丈夫ですが。・・・長引いてすいません。」
夜凪景の何の脈略も無い申し出に私は戸惑う。そうすると、夜凪景はスマホで誰かに電話をし始めた。
「え、ええ。そうですっ。 スターズ事務所の6Fの多目的ルームに来てもらえれば・・・。受け付けは大丈夫で、マネージャさんに案内してもらいますので・・・。」
しばらくすると、部屋の扉が開いて大人しそうな女性が入って来た。
「こ、こんにちは。」
「あっ、絵麻ママさん!来てくれたんですねっ!」
夜凪景のその言葉に私は息を飲んだ。 安原絵麻。 走れケイティを始めとしたアニメのイラストレーターで、ポップアートの分野でも世界的にトップレベルの新鋭アーティスト。
芸術家としての彼女の絵のスタイルは私とは真逆に無駄を削ぎ落して本質を追及するスタイル。彼女の代表作である『奇跡の12分』はMoCAに常設展示されているぐらいのやばいアーティストだ。 正直、私も彼女の絵を見た時に、自分とは方向性が違う物の、魂の本質を映し出す絵に圧倒されている。
安原絵麻は私の絵の前に来ると私の顔と私が描いた大きな絵をマジマジと見た。
「山野上花子さんの絵ね。怒りの感情表現で圧倒されるわ。それで、景ちゃんは私に何をして欲しいの?」
安原絵麻がまるで母親が子供にやさしく聞くように柔らかい声で夜凪景に聞いた。この言葉だけですごく穏やかな性格である事が伝わって来る。
「この山田花子さんは、せっかく私達が力作の絵をこの下に描いたのに、炎で塗りつぶしやがりましたっ。だから、絵麻ママには、さらにこの炎の上に何かを書いて欲しいのですっ。」
「山野上です。」
「えっ、山野上さん、いいんですか!?」
そう言って、安原絵麻は私を見る。
「はっ、はい。描いていただけるのであれば、お願いします。」
私の絵に皆の落書きをさせて、その絵を炎で塗りつぶしたのは私自身だ。今更、自分の絵の上にさらに別の人の絵が描かれる事に反対する理由も無かった。それに私自身が安原絵麻の絵に興味がある。
そうすると、安原絵麻は意を決したのか、少し鋭い目つきになって私の絵を見た。 芸術家が創作活動に入る時の、役者が役に入る時と似た、冷たい空気が一瞬部屋に宿る。
「マネージャさんにお願いして、道具係の部署から画材を借りて来ましたっ。」
そう言って、夜凪景とそのマネージャが画材を持ってきて、安原絵麻が画材を選別して次々と道具を置いて行く。刷毛、筆、ヘラ、絵具、溶剤。「準備」がやけに丁寧で、見ている側の呼吸まで整っていく。
「おいおい、本格的だな。こんな小っこい女が、この完成された炎の絵に何か描けるのかよ!」
おい、バカ! 王賀美陸、ちょっと黙っていろ!
「王賀美さん、お久しぶりですね。 前に会ったのはアカデミー賞の受賞会場でしたね。」
「はっ? いつお前と会ったんだ?」
「あの時は、ビワハヤヒデのコスプレをしていたので、分からなかったかもしれません。」
「おっ、お前! あの時のウマ娘の一人かよ!」
王賀美陸が口をパクパクさせている。よほどアカデミー賞にトラウマがあるようだ。
「絵麻ママさんっ! いつもの絵麻の絵画教室のノリでお願いしますっ!」
「そうね。そっちの方がみんな楽しく絵をみてくれそうだし、それじゃ、まだ炎の絵も乾いていないし、ウェット・オン・ウェット。つまり濡れているうちに描いちゃおう!」
場が凍り付く。 今ここにあるのは漆黒をバックにした炎の絵だ。 こんな暗色が強い状態で上書きに絵の具を乗せてしまうと、周りの絵の具の色が混じって大変な事になってしまう。
「それ、今すぐドライヤーで乾かして・・・・。」
私がそう言いかけた時に、安原絵麻はニコッとしながら口を開いた。
「大丈夫。大丈夫。乾く前に描くのは、人生と同じだよ。 迷っていると固まっちゃうからね。」
私はその言葉に大きく戸惑いを覚えた。それは炎を上げたまま固まって動けなくなった私の人生への痛烈な皮肉にも聞こえる言葉であったから。
名言キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
絵麻ママ降臨!
流石は絵麻ママ、いい事言うなぁ!
山田花子にボロボロにされた景ちゃんが親に言いつけていて笑うw
完全に子供のケンカに親が参戦で草生えるww
親というか神というか・・・。
山野上花子の炎の絵の上に安原絵麻とかヤバすぎだろ!いくらになるんだよ。
ここで絵麻ママの登場は神展開すぎる!
絵麻ママの神絵に期待しか無い!
この絵はいくらになっても手に入れなければ!(石油王)
石油王もキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
「それじゃ、この燃え盛る炎にちょっと道を開けてもらいましょうか。」
そう言って、安原絵麻は白いメディウムを刷毛に付ける。
「ちょっとだけね。ほんのちょっと。キャンバスが『描いていいよ』って言うくらいで。」
安原絵麻はほんのちょっとと言いながら、私が戸惑うぐらい大胆に、漆黒の炎の海に刷毛でザッザッっと白い絵の具を乗せていく。
あ~っ。絵麻ママやっちまったな。
これじゃ漆黒の炎が台無しだよ。
修復不可だな。
数百万クラスの絵が絵麻ママのせいで大惨事だよ!
もう駄目だな。これは。
終わった。完全に終わった。どこがほんのちょっとだよ。
白でベタベタじゃないか!
もういくら絵麻ママでもここからの巻き返しは無いでしょ
大失敗だよ。きっと絵麻ママも内心では後悔しているよ
「はっ、あれだけ大口を叩いておきながら、完全に山田花子の絵がぶち壊しじゃないか!」
「山野上です。」
王賀美陸、少し黙っていろ。 ランサーみたいな顔をして、出て来る言葉はただの慢心王じゃないか! 慢心したランサーなんてだれも欲しくない。 こいつ、誰にケンカを売っているのか分かっているのか?
それに刷毛が通った所から、炎の赤がわずかに柔らかくなる。火の痛みが光の熱に変わっていく。
この白色は、私の炎への否定では無く驚きだった。自分の炎が、怒り以外のまだ別の表情を持ち得る事への。
そこから安原絵麻はフタロブルーを米粒ほど、2インチ平刷毛の角に取る。それを炎の上に薄く薄くのばしていく。
深い青、夜明け前の沈む色。 絵の上部にそっと青を置き、刷毛を寝かせてくるくると回す。炎の上に空が乗る。 なのに炎は負けない。空の下でなおも燃え続ける。
「いいね。炎があるから、空はもっと美しく見えますね。」
いや、良くないよ、絵麻ママ! 今更空を入れて誤魔化そうとしても手遅れだよ!
空も適当でワロタwww
これで良いとか言っちゃう絵麻ママの感性がヤバイw
山野上花子の大きな絵とか、一千万弱はするだろうに、完全に大破しちゃったよ。
もうダメだなこれは。
失敗して空で現実逃避をして草生えるwww
空を入れていい感じにしても、この絵はもうダメだよw
安原絵麻は炎の中心を見つめる。
ある一点。私の炎が激しくて最も深い位置にある核となる部分。 まるでそれは私の心臓のように見えた。
「ここだね。ここに風を通そう。刷毛で軽くなぞるだけで炎の動きが変わっていきます。」
溶剤を付けた1インチ刷毛で、炎の流れを撫でる。 なぞるのではなくて、方向を少しだけ変える。
上へ上へと方向性が無く暴れていた炎が、それだけで斜め上に旋回して渦を巻き始める。
はっ? 筆でなぞるだけで炎に風を通した!?
なにこれ!? ちょっと刷毛でなぞっただけで炎の印象がガラッと変わった。
マジかよ!?
何この魔法!? 絵の具無しで炎の流れが変わっとる!
えっ? 刷毛でちょっと炎の向きを変えるだけで、こんなに絵の印象が変わるの!?
ちょっと溶剤を付けた刷毛で手直ししただけで、憎悪の炎が生き生きとしてワロエル・・・いやワロエナイ。
で、でも、真ん中の真っ白なエリアはもう、修復不可能だよ! やっ、やっぱり失敗作だよ!
ついに絵麻ママの魔法が出て来たな。
私の炎が私の意思を離れて、別の生命のために動き始める。それが怖い。それが美しい。 見ている誰も声が出ない。 ただ、安原絵麻の筆使いを黙って見ていた。
続いて、安原絵麻はチタニウムホワイトの絵の具を出すと、その上にカドミウムイエロー・ライトを針の先ほど、ほんのちょっと混ぜた。 チタニウムホワイトの金属じみた冷たい白は急速に温度を上げて、炎の中心のような熱を帯びる。
「今回は、ここに光の心臓を置きましょう。生き物はね心臓が大事なの。それは私も同じなのよ。さあ、みんなの命を息吹をここに集めましょう。」
そう言って、安原絵麻はパレットナイフを取って、最初に白を入れたエリアと炎の渦の中心にざっくりとした線を描く。それは胸の光でそこからの首のアーチ、そして頭頂の光となった。
たった数回だけナイフでなぞっただけ。たったそれだけで炎の中に神秘的な鳥が浮かび上がる。
「ほら。大胆を恐れないで。絵の具はね、勇気を嫌わない。勇気の中に命が宿るのよ。 ね? ちょっと勇気を出せば簡単でしょ?」
えええっ、ちょっとナイフを動かしただけでフェニックスが現れた!?
全く簡単じゃないです・・・・。
勇気でなんとかなるのか・・・。(困惑)
どうして、あの絵が一瞬でこうなるの。
天才の遊びすぎてワロタwww
相変わらず簡単じゃなくて大草原wwww
勇気だけじゃどうにもならなくて草w
俺の美術の成績も勇気でなんとかなって欲しいww
マジでヤバイ。鳥肌が立った。
「あっ、あっ、あっ。」
この慢心王の王賀美陸は、今更、安原絵麻のヤバさに気が付いたのか? ラインハルト・フォン・ローエングラムがヤン・ウェンリーの魔術に気が付いて、口をあんぐりと開けちゃうのに通じるぐらいの間抜けさだ。
そこからは怒涛の展開だった。扇筆で、赤。先端に黄色。光側に白。
一気に安原絵麻は筆を入れて、鳥を仕上げていく。 私を怒りに飲み込む炎の舌がフェニックスの羽に変わっていく。燃えながら羽毛の秩序を手に入れて、羽の一枚一枚が絵の推進力になっていく。
うわっ、飛び出す! フェニックスが飛び出す!
躍動感がありすぎ!
こう言うのを芸術っていうの!?
フェニックスに圧倒される。
あの恐ろしい怒りの炎から、こんな鳥が生まれるなんて信じられないよ!
すごすぎる。それ以外の言葉が出ない
もう、俺、このフェニックスに魅入られている。
怒りの炎から生み出された、このフェニックスの生命感!
絶望の炎と再生するフェニックスの対比と構図がすばらしすぎる!
仕上げに細い筆を入れた。 安原絵麻は影を黒で取らなかった。青と赤で作っている。 闇を彩色として扱った。
「闇は悪い物じゃない。闇があるから光もわかる。これは人生も同じですね。」
そんなジョークを言いながら安原絵麻は目を入れた。小さな点。その点に白い光が乗る。
フェニックスがこちらを見る。 全員が理解した。 これは絵の上塗りじゃない。これは私の絵を奪う行為ではなくて、私の炎を別の物語に渡すための絵だ。
「・・・私の炎がこんな顔をするなんて・・・。」
私はキャンバスを見上げたまま、低い声が出た。
安原絵麻は笑いながら真っすぐに答えながら、筆を渡してくる。
「君の炎は自分の身を焼くだけの炎じゃない。君が生きるために燃やしてきた炎だ。だから誰かが生まれるためにも使えるんだよ。・・・ってきっとボブ・ロスさんも言ってくれると思いますよ。」
安原絵麻は真っすぐと私を見て来る。
「・・・こんなのずるい。」
そう言って、安原絵麻から筆を受け取ると、炎の端にほんの少しだけ、深い赤を置いた。フェニックスの翼の影が、さらに立体になる。
その光景に、誰もが息を止めていた。
そして、私がもう一度優しく筆を入れると、その瞬間に場の空気が解けて凍っていた時間が流れ始めた。
マジで神回。
共同制作の奇跡
すげぇ。絵麻ママすげえ。そして山野上花子もすげぇ!
感動した!
絵麻ママも凄いけど、山野上花子もやっぱりすげぇよ!
芸術家同士で通じる所もあって感動した!
奇跡の神コラボ!
・・・いったいこの絵はいくらになるんだろうか・・・。
お互いに即興で描いたとは思えないクオリティでヤバすぎて大草原大炎上。
神々が描いた絵かな?
最後に安原絵麻は、ナイフでハイライトを少しだけ置いた。 羽根の縁。胸の中心。尾の先。眩しい。見ているだけで胸が熱くなる。でも、それは苦しい熱じゃない。
そして、安原絵麻は筆をおいてニッコリとした。
「できた。ほら、ここに幸せなフェニックスが住んでいる。」
「・・・やっぱりずるい。こんなの反則よ。」
「反則はね、上手に使うと芸術になるの。あとね、絵は真剣に描くけど、顔は真剣にしなくていいわ。眉間にしわ寄せると、鳥が怖がっちゃうから。」
私は小さく吹き出した。 涙が一滴頬を伝って床に落ちる。
笑いながら泣くのは悔しいからじゃない。 救いの無い自分の炎に未来が少し見えたからだ。
王賀美陸がぽつりという。
「この炎、完成していなかったんだな。」
私は頷いた。
「全てを憎悪で燃やす尽くすために描いたのに、終わらなかった。・・・でもそれでいい。」
「山田花子にこんな顔をさせるなんて凄げえな、安原絵麻。その名前は覚えておくぜ!」
「山野上です。」
安原絵麻の前に、おまえは私の苗字を覚えろ!
「これで完成。もしね、気に入らなかったら、次のキャンバスでまた幸せな事故を起こせばいい。 それじゃまたね!」
またね~!
絵麻ママ、バイバイ!
さようなら~。
バイバイ!
最高の神回だった!
今回もいつもの神回すぎる。
絵麻ママ、最高!
さいなら~!
バイバイ(*´︶`*)ノ"またね
面白かった!
花子女史は最後まで生放送されている事に気が付かなくて草www
このあと、私はこの絵を絵麻さんにもらう事になる。 その後も私と絵麻さんは芸術家としてのキャリアを歩んでいき、この絵は最終的には数億円を軽く超える価値となったが、美術館などの展示に貸し出す事はあったけど、生涯に渡って私はこの絵を手放す事は無く、私の死後に国立近代美術館に寄贈されて、常設展示される事になる。
そして、未来で沢山の人が、今日の私と同じ感動を味わうのであった。