星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは驚愕する2

「アリサさん、変わりましたよね。 前はメソッド演技をあれだけ毛嫌いしていたのに。」

 

今まで黙って僕たちの話を聞いていた千世子ちゃんがアリサさんを睨みつけながら口を開いた。

 

「メソッド演技で心を壊したご自身の経験を元にメソッド演技に頼らないスターズを作ったんじゃなかったんですか?」

 

「そうね。その通りだわ。 メソッド演技で演じる人物の内面をいくら演じた所で観客には判らない。 観客が見ているのは役者の姿であって、決して役者の内面では無いの。だから内面だけを演じても無意味だわ。 そう思ったから、外面の表現を重視した役者を育てる事で、自分自身にダメージを与える事がない役者を育てたかったの。 私みたいに苦しまないように。」

 

「でもそれは同時に外面だけで演じるのを肯定するものでは無いわ。 外面を演じるのに内面の充足が必要であれば、役者は内面も演じるべきだわ。」

 

「千世子、今の貴方は本当に外面だけを演じているの? 違うでしょ? 観客の視点から見た視点を元に、あなたは客観的に演じているけれども、結局それを認知して演技を見せているのはあなた自身のはずよ。」

 

「例えそうだとしても、アリサさんが今さらメソッド演技の指導をするのは納得いきません。」

 

「そうね。あなたにはメソッド演技の指導や内面の指導は全くしてこなかったものね。そこに突然、自分には与えられなかったメソッド演技を得意とするライバルの誕生、納得が行かないのは判るわ。でも千世子、よく考えてみなさい。」

 

「あなたは、いま百城千世子のすばらしい演技はできるわ。でも百城千世子以外の演技はできるの? 確かにアキラを真似られるわ。でもそれはアキラの外づらを真似ているだけで、別に星アキラを演じられる訳ではないでしょう? あなたが今演じられるのは百城千世子だけであって、百城千世子から外れた役を演じる事はできないでしょ? 千世子、あなたは本当にそれでいいの? あなたはそれで満足しているの? それはあなた自身が一番良くわかっているはずよ。」

 

「そういう風に私を育てたのはアリサさんじゃないですか! そのためにアリサさんは私をスカウトしてここまで育ててくれたんですよね! どうして今さらそんな事を言うんですか!」

 

千世子ちゃんは激高していた。こんなに激高している千世子ちゃんを演技以外で見たのは初めてだった。

 

「千世子、あなたは勘違いしているわ。メソッド演技法は数ある演技に対する考え方の一つにすぎないわ。別にメソッド演技法は演技する上での絶対的な方法論でも無ければ、銀の弾丸でも無いわ。」

 

「演技に対する役者のアプローチは千差万別で、数多くの役者は自分で学んで自分に合った演技法を取り入れていくの。そこに優劣は無いわ。」

 

「景ちゃんはこれからどんどん演技力を上げて、様々な役を演じて強いライバルとして、何度もあなたの前に立ち塞がるでしょう。 だから百城千世子、あなたは夜凪景を喰いなさい。あなたが夜凪景を喰えた時、あなたは本当の意味で百城千世子以外の役を演じることができる役者になれるわ。」

 

「俳優は大衆のためにあれ。これは私がスターズを立ち上げた時の考えだわ。今でもこの考えは間違っていないって、自信を持って言えるわ。」

 

「期待しているわよ千世子。スターズを立ち上げた時の私の考えが正しいって、証明してちょうだい。」

 

下を向いて黙って聞いていた千世子ちゃんは顔を上げて、アリサママを睨みつけるとそのままレッスン室の扉を開けて、外に駆け出して行った。

 

「アキラ、千世子のそばに居てやりなさい。千世子には少し時間が必要よ。」

 

「わかったよ。でもこれだけは言わせて。 やっぱりアリサママって、月影千草に負けないぐらいの役者キチガイだと思うよ。」

 

僕は呆然としている景ちゃんを横目に、千世子ちゃんを追ってレッスンルームを飛び出した。

 

「それにしても、ガラスの仮面か・・・。ふふっ。いい事を思いついたわ♪」

 

千世子ちゃんを追って飛び出した僕は、その後にアリサママが邪悪な笑みを浮かべている事に気が付かなかった。

 

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