星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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黒山墨字は相談する

行き詰った俺は、巌裕次郎のおやっさんに相談することにした。

 

「はははっ。そんな理由で星アリサは若草物語を演目に選んだのか。これは笑える。」

 

「おやっさん、笑いごとじゃねぇんだよ。このメンバーでどうやって若草物語をするんだよ!」

 

「あの劇場がスターズ所有になって、改装される事は知っている。星アリサがうちに連絡してきて、うちの劇団の劇場使用の便宜を図るので、お前がここに来たら協力してくれって星アリサから頼まれているからな。」

 

「もっとも、星アリサが突然演劇をやるという理由が判らなかったが、ガラスの仮面が原因とは。はははっ。事実は小説よりも奇なりっていうのは、こう言うことを言うんだな。」

 

「ちくしょう。あのババァにはお見通しかよ!」

 

「はっはははっ。まだ40代でババァ呼ばわりとは、星アリサもかわいそうだな。」

 

「どれ、お前の考えた配役を見せてみろ。」

 

 

メグ: 四姉妹の長女。非常に女らしくて美しく、家庭的で金持ちの家庭教師としてマーチ家の家計を助けている (キャスト未定)

 

ジョー: 四姉妹の次女。 作者自身がモデルで、男勝りで直情型の性格。男の子のように生きることを望む (星キアラ)

 

ベス: 四姉妹の三女。 非常に内気な性格で病弱なため、学校には通わずに自宅で勉強している (百城千世子)

 

エイミー: 四姉妹の四女。 金髪の巻き毛が自慢のおしゃまな女の子。 ベスと仲が良いが、ジョーと張り合っている(夜凪景)

 

マーチ夫人: 四姉妹の母親。 良妻賢母で娘たちを適切に導く存在 (星アリサ)

 

 

「確かに、大衆が考える役に対する適正で考えると、こういう配役になるだろう。 時代の流れに反して世間の目を顧みずに、男として振舞おうとしている生きるジョーと、自由人の星キアラは生き方や考え方が似ている。おそらく、大衆もぱっと見ると、そう思うだろう。でもしっくりと来ない。そうだろう?」

 

「その通りだ。男勝りで直情型の性格なのに、星キアラが自由に演じられるとは思えねぇ。何かが違う。」

 

「ジョーと星キアラの動機が違いすぎる。星キアラは、星アキラが多くのしがらみから解き放たれて、自由に振舞いたいために作られたキャラクターだ。 それに対してジョーはどうだ? ジョーがマーチ家の息子として振舞おうとしているのは、そんな風に自由に振舞いたいからか? 違うだろう。」

 

「ジョーが息子として振舞おうとしているのは、男手が居ないマーチ家のためだ。 四姉妹の精神的な支柱として男になろうとしているんだ。だから、動機が180度逆だ。星キアラにジョーの役をキャストしても、表面的には演技できるだろうが、観客が考えている以上の出来にはならないだろう。」

 

「つまり、『サプライズ無しで思っていた感じだったね。』程度の演劇になる。見る人が見れば面白いだろうが、名作じゃねぇ。」

 

「星キアラはもっと自由を望む抑圧された役にキャストするべきだ。この中だとわかるか? ベスだ。」

 

「ベスは学校にも通わずに、体も弱く、鍵盤が黄ばんで古びたピアノを更新したいけれども、それもできない。四姉妹の中で最も自由を望む人間だ。 同時に、星キアラは最も自由を望むとともに、自由が抑圧されるストレスを最も表現できるキャラクターだ。 星キアラはベスにキャストするべきだろう。」

 

「エイミーは夜凪景で構わない。末っ子という意味もあるし、体格的な面もある。ジョーとも張り合ってもらう必要もある。 ジョーが星キアラの場合、星キアラは夜凪景の恩人だろ? いくらメソッド演技の天才でもまだ幼い夜凪景では、100%の演技はできねぇ。 ベスを星キアラに配役した場合には、エイミーは夜凪景で決まりだろう。」

 

「そうすると、百城千世子をメグかジョーにキャストする訳だが、もちろんジョーにキャストする。」

 

「ジョーというのは、作者自身のモデルで、ある意味若草物語というのはジョーの視点で展開される物語だ。ジョーは四姉妹の中では最も革新的で、最も自分自身を変化させたい人物となる。 突如現れた夜凪景のライバルであり、演技を客観視した上で、今の演技には飽き足らずに演技を成長させたい百城千世子にはうってつけの役だろう。」

 

「見てきたように、各役者の特性を言い当てるんだな。」

 

「正直な話、お前に若草物語の仕事を依頼する前に、星アリサから相談を受けていて、いろいろ話を聞いている。お前が相談に来るだろうから、相談に乗って欲しいと頼まれていたよ。」

 

「けっ、あのババァ、相変わらず意地が悪いな。」

 

「マーチ婦人は星アリサで決まりだ。確かに性格的にはどうかと思うが、母親らしい事ができなかった自分を鑑みて、誰よりも星アリサがマーチ婦人を演じたいだろう。そこは理解してやれ。」

 

「それで最後は長女のメグだが、四姉妹の全員が舞台未経験ではまずいだろう。うちの明神阿良也を貸してやろう。星アリサにも許可はもらっている。」

 

「俺の考える配役はこうだ。」

 

 

メグ: 四姉妹の長女。非常に女らしくて美しく、家庭的で金持ちの家庭教師としてマーチ家の家計を助けている (明神阿良也)

 

ジョー: 四姉妹の次女。 作者自身がモデルで、男勝りで直情型の性格。男の子のように生きることを望む (百城千世子)

 

ベス: 四姉妹の三女。 非常に内気な性格で病弱なため、学校には通わずに自宅で勉強している (星キアラ)

 

エイミー: 四姉妹の四女。 金髪の巻き毛が自慢のおしゃまな女の子。 ベスと仲が良いが、ジョーと張り合っている (夜凪景)

 

マーチ夫人: 四姉妹の母親。 良妻賢母で娘たちを適切に導く存在 (星アリサ)

 

「ちょっと待て、何で明神阿良也なんだ!? 四姉妹中二人が男とかヤバいにもほどがあるだろう? ギャグでもやる気かよ!」

 

「別におかしい事は無かろう? シェイクスピアが演劇を書いたエリザベス朝の時代は舞台では、女性の役を演じるのは声変わり前の少年俳優の役割だったぞ。この頃のイギリスでは女優が職業として認められていなかったからな。だから俺の得意なシェイクスピアの舞台でも女装男優を使う事があるのは知っているだろう?」

 

「それは、知っている。知ってはいるが、シェイクスピアの演劇をする訳じゃないんだぞ! こっちは児童文学で道徳を説くんだ! 道徳を説くやつが半分は女装した男とかおかしいじゃねぇか!」

 

「別におかしくは無いだろう? お前若いくせに頭固いな? 道徳は時代と共に移り変わっていくんだ。 もちろん19世紀から今にも通用する道徳も沢山あるだろう。しかし、19世紀のまま今には通用しない道徳もかなりの部分あるはずだ。」

 

「今は、人が人として自由に自分を表現できる時代だ。お前も星キアラを見ていれば判るだろう。19世紀のカビの生えた道徳にやみくもに拘る必要は無いだろう。」

 

「それに、星アリサは今回の演劇で儲けを全く考えていないぞ。あいつが望んでいるのは、舞台に参加する役者達の成長だ。 阿良也が女装して舞台に立てる機会なんて、今後はほとんど無いだろう。俺は阿良也に今回の舞台で役の幅を広げてさらに成長して欲しいし、他のメンバーも阿良也に影響を受けて成長するだろう。」

 

「そもそも、このメンバーに埋もれないで長女ができるやつが居るか? 下手な配役をしても食われるだけだろ? 毒を食らわば皿までだ。」

 

「でも星キアラはともかくとして、明神阿良也は男という事で反発もあるんじゃないのか?」

 

「別に四姉妹の半分が男の舞台が嫌なら観に来なければいいだけだ。チケットを買うか、買わないはお客さんの判断だ。 しかし考えて見ろ。歌舞伎の女形も当然男だ。男だからこそ、男が考える理想の女性像を体現できる。お前が考えている以上に世論の反発は無いと思うし、反発があっても多くの擁護が成されるはずだ。もちろん反発があれば俺も擁護する。」

 

「一番根本的な話だが、お前はこの舞台を観てみたくないか?」

 

「わかった。わかった。降参だよ。俺もこの舞台を見てみたいよ。ほとんどの人間がそう思うはずだ。 特に、普段から舞台を観ている観客なんかは、なんとしてもこの舞台のチケットを手に入れたいと願うはずだ。」

 

「星アリサの許可もあって、そこまで話が付いているのであれば、これで決まりだろう。」

 

こうして若草物語のメインキャストは決まった。

 

しかし、後々、冷静に振り返ってみると、巌裕次郎のおやっさんに上手く丸め込まれただけで、実は危険人物が増えて、余計に心労が増しただけだったことに気が付いて悶絶した。

 

 




昨日の感想で、この長女が明神阿良也という配役を当てた方がいました。
感想の返信は誤魔化したのですが、この配役をやっぱり当てちゃう人も居るんだと思いました。
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