星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
アリサママから劇団天球のペアチケットを2セットもらった僕たちは劇団天球の舞台を見に来ていた。
チケットを僕に渡したアリサママはニコニコしてた。なにか嫌な予感がする・・・。絶対になにか企んでいるよ。あの顔は。
演目は「セロ弾きのゴーシュ」。宮沢賢治の児童文学が元で、子供にも安心して見せられる舞台となっていた。
今日はその舞台の千秋楽(最終日)の日曜日。
舞台を見に来たメンバーは僕と千世子ちゃん、そして景ちゃん。ペアチケットを2個もらっているから1人分余っていた。
そんな訳で、劇場の前に行くと、柊雪こと、雪ねぇちゃんが待っていて合流し、4人で観劇することになった。
雪ねぇちゃんは、いつも朝にジョギングしてる公園で、いつもブランコでぶらぶらしていた。
ブランコで一人寂しくしている様は、前世の私を思い出す感じだったので、この前話してみると、母子家庭という関係と、家に居られない事情があるとのことだった。
そして、映画が好きで映画を撮る事を目指して阿佐ヶ谷芸術高校への入学を目指している事を聞いた。
僕は、カメラを任せてみるとかなり撮り方のセンスが良かったのと、雪ねぇちゃんが阿佐ヶ谷芸術高校の授業料を自費で賄いたいとの希望から、子役の契約を結んでカメラマンや編集などをやってもらう事になったんだ。
最近は景ちゃんがアリサママの演技レッスンで忙しくなってきたので、雪ねえちゃんの加入はすごく助かった。景ちゃんも面倒見が良い雪ねぇちゃんに良く懐いてるからいろいろ良かったよ。
そんな訳で、雪ねぇちゃんも誘って合計四人で劇団天球の舞台を見に来ていたのだ。
「えーーポップコーン無いの!? そんなっ、僕っ、ポップコーン食べたかったよ~。うわーーん。」
「アキラ君、映画館じゃないので席での飲食は禁止だから、ポップコーンも無いんだよ。代わりにフライドポテトとか食べよ。ね? ね?」
「アキラちゃんは、雪ちゃんをからかって遊んでいるだけよ。嘘泣きだし。」
「景ちゃんは何か食べる? ケロッ」
「私は大丈夫ですっ。お芝居の舞台すごく楽しみっ!」
「じゃあ、席に行こうか?」
「えっ? えっ? えええーーーっ!」
僕達の席はS席でも前の方の席で非常に良い席だった。これは楽しみ。
僕達4人が席に着いたら、周りの席がざわざわって、ざわめいた。
僕は劇が始まるまで席でパンフレットを見ながら大人しく座っていた。
今日の演目である「セロ弾きのゴーシュ」は、次のような物語である。
町の楽団でセロ(チェロ)を担当してるゴーシュは下手なままで楽団の団長からいつも叱られていた。
ゴーシュは家でチェロの練習をしていると、ネコがやってきてシューマンの『トロイメライ』を弾いて欲しいとリクエストする。しかし、からかわれたと思ったゴーシュは『印度の虎狩』という曲を演奏して、ネコを追い出してしまう。
次の晩にチェロの練習をしていると、かっこうがやってきて「音階を学びたい」とねだる。ゴーシュは繰り返し音階を練習して、音階の感覚を掴んだがかっこうもまた追い出してしまう。
さらに次の晩にはタヌキがやってきて「愉快な馬車屋」という曲を一緒に演奏しようと言い、彼は申し出を受けてセッションをし、リズム感を得る
最後の晩は、野ねずみの親子がやってきて、お母さんねずみが子ネズミの病気を治して欲しいとお願いし、子ネズミのためにチェロを弾き、誰かのために音楽を奏でるという意味を知る。
そしてゴーシュは演奏が上達し、聴衆を魅了して、楽団の団長や仲間たちから賞賛されるという物語。
ゴーシュがいろんな動物たちに演奏を聴かせる事でゴーシュの演奏技術がステップアップして、最後は大団円な物語だね。
演出はもちろん、巌裕次郎。
キャストは、ゴーシュ役は劇団天球のベテランの団員さんで、ネコの役が巌のじっちゃんの秘蔵っ子である明神阿良也、かっこうの役が三坂七生、たぬきの役が青田亀太郎と劇団が子供向けに作っただけあって、役者も若手が揃えられていた。
劇が開幕した。ゴーシュ役の役者さんは、ベテランらしい安定した芝居で気難しいゴーシュをコミカルに演じながら舞台を回した。
そしてネコ役の明神阿良也。彼の役は音楽を愛する大きな三毛猫。擬人化したネコでありながらも、表情、仕草などちょっと動くだけでネコと判る素晴らしい芝居だった。まさにネコが乗り移っているようなそんな芝居。おそらくこの芝居のために、ネコをじっくり観察して、ネコの気持ちも理解したんだと思う。 巌のじっちゃんが彼を気に入る訳だ。まさしく、演劇界の麒麟児にふさわしい圧巻の演技だった。
かっこう役の三坂七生は、愛嬌のあるかわいいかっこうを演じた。音階を体いっぱいで表現し、何度もゴーシュと音を合わせる。前日はネコで怒ったゴーシュだったが、かわいいかっこうの前に、一緒になって音階を弾いていく演技がすごく楽しかった。
たぬき役の青田亀太郎はコミュカルな演技をしてタヌキ役をみごとに演じた。彼の演じるタヌキ役は観客一体となって小太鼓で演奏し、観客と共に盛り上がった。
最後は、席の観客をゴーシュの演技を聞く実際の観客に見立てて、演技を行い大団円で幕を閉じた。
子供向けながらも、涙あり、笑いあり、シリアスありで巌裕次郎らしい舞台でみんな大満足だった。
劇が終わって帰ろうとしたところで、劇団の人が来て巌裕次郎が会いたいとのことだった。
これはまぁ、アリサママと巌裕次郎が仕組んでいたんだろうな。
僕たちは了解を伝えて、舞台裏の楽屋になっている大部屋に移動した。