星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラ達は演劇を見に行く2

楽屋になっている大部屋に着くと、中には劇団員が揃っていてびっくりした。

 

僕たちは劇団員にじろじろ見られていてアウェー感がすごい。うーん。何を企んでいる事やら。

 

「巌のじっちゃん久しぶり! 5年ぶりぐらいだね。」

 

「アキラ君、いや、アキラ、本当に久しぶりだな。」

 

巌のじっちゃんとはアリサママが心を壊すまではすごく仲が良かった。

僕も巌のじっちゃんの孫みたいに可愛がってもらったが、アリサママが心を壊したら暗転。

 

アリサママは巌のじっちゃんに連絡を取る事も無くなり、僕が子役の仕事を始めて少し経った時に、TV局で会ってちょっと話したきりだった。

そんな訳で、巌のじっちゃんと話すのは本当に久しぶりだった。

 

舞台のチケットをもらった時から気が付いていたけれども、おそらくアリサママは巌のじっちゃんと連絡を取り合っている。別にケンカしていた訳でもないので、和解したとかそういうのとはちょっと違うニュアンスなんだけど、この事はアリサママが自分の人格を壊したトラウマを乗り越えた事を示していた。

 

「ところで、僕達をこんな所に呼ぶなんて、アリサママと巌のじっちゃん何を企んでいるの?」

 

「なんだ。アリサから聞いていないのか? お前達は、4か月後の夏休みにみんなで舞台をやるんだぞ? だから、うちの団員も一緒に出演して、レッスンもするから、その顔合わせだぞ。」

 

「げっ、なんつー事を考えているんだ。アリサママ。僕たちを舞台に立たせるなんて、やっぱり最近はガラスの仮面の月影千草をライバル視して、演劇狂いでも競う気になったのかな? サイコパス度は間違いなく勝っていると思うんだけど、それだけじゃ物足りなくなっちゃったの?」

 

「ちなみに、舞台をやる事にしたのは、アキラが株で儲けすぎた事で処理が大変すぎて心労が溜まった時に、そのアキラへの腹いせで思いついたらしいぞ。」

 

「うわっ、最悪じゃん。アリサママにはママとしての自覚が必要だよ! ママなら大いなる愛で子供を包み込むぐらいの優しさが必要なんだよ! こんなふうに子供に腹いせをするママなんて最低だよ!」

 

「いや、話を聞いていると、アリサのストレスの原因はほとんどお前だからな。ちょっと話すだけでも、ものすごいクソガキに育ったなお前。星アリサが普通の母親なら、お前のやらかす事一つ一つに、間違いなく卒倒して救急車で運ばれていたぞ。胃の不調や頭痛ぐらいで済んでいるのは、かなりの精神力だと思うぞ。」

 

「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしいってみんな言ってるじゃん。僕はちょっとわんぱくなだけだよ! みんな失礼だな ヽ(`Д´)ノプンプン」

 

「お前どうして、そのキャッチフレーズ知っているんだ? そもそも今は昭和じゃないぞ。平成何年だと思っているんだ? マジでお前は昭和のクソガキだな。(´∀`*)ワハハハハハ」

 

「それじゃ劇団員を紹介するぞ。まずは三坂七生だ。今回はかっこうの役を演じていたぞ。」

 

「三坂七生です。よろしくお願いします。」

 

「続いて、青田亀太郎。今回はたぬきの役だ。」

 

「みんな、よろしくーっす。」

 

「こっちが、明神阿良也。今回はネコの役だな。そして、お前達と一緒に舞台に出演することなる。」

 

明神阿良也は、僕たちに近づいてきて顔を寄せてきた。

 

「この子はすごく匂うのに、他の3人は全然匂いがしないんだね。」

 

「えっ匂い?」

 

匂うと言われた景ちゃんは服とかに鼻を突けてクンクンとしている。すごくかわいい。

 

「巌のじっちゃん、匂いって何? 多分物理的な意味じゃないよね?」

 

「役に入り込む役者の匂いだ。こいつは野性的なカンで役にのめり込むので、そう言った役者を匂いで表現しているんだ。だから、役に入り込む演技スキルの高い人間が臭いって表現されて、役に入り込まない人間は匂わないって事になる。」

 

「初対面の人間、特に女の子に匂うとか言っちゃうのかなりやばいよ。巌のじっちゃんもちゃんと教育した方がいいんじゃないの?」

 

「自由人のアキラにそんな事を言われるなんて、阿良也も相当ヤベェな。ワッハハハハ」

 

「この子は見た事は無いんだけど、そこの君とこの君は特に匂いもしないで演じているよね。どうして?」

 

明神阿良也は本当に不思議そうに首をかしげる。おそらく役に入り込まないで役を演じられる事が本当に不思議なんだろう。

 

「君というよりも星アキラかな?よろしく。 こっちが百城千世子ちゃんで、こっちが夜凪景ちゃん。 それで、この子が柊雪ちゃん。雪ねぇちゃんは監督とか映像作家をめざしているから役者じゃないんだよ。」

 

「ならアキラって呼んでいい?」

 

「いいよ。僕も阿良也って呼んでいい?」

 

「もちろん。」

 

「それで僕と千世子ちゃんが匂わない訳だけど、聞く感じだとおそらく、演技の方向性かな。ざっくりというと、僕と千世子ちゃんは自分自身が演じている訳では無くて、観客の視点が演技に落とし込まれているせいだと思う。つまり、自分が役を演じているんじゃなくて、観客が見たい役を見せているんだ。だからおそらく匂わないんだと思う。もっとも僕と千世子ちゃんでもかなり演技の考え方は違うけどね。」

 

「うーん。良く判らない。自分自身は演じていないんでしょ? アキラはそれでいいの?」

 

「いいよ。別に。僕は楽しいし。演技の考え方や方向性は人それぞれなんだから、阿良也は同族の演技者を匂いで見分けているだけじゃないのかな?」

 

「やっぱり良く判らない。じゃあ、今回俺が演じていた『セロ弾きのゴーシュ』のネコはどういう感想だったんだ?」

 

「阿良也のネコは素晴らしかったと思う。きっとネコの役を演じるために毎日猫を観察して、ネコの気持ちになり切っていたんだろうね。そしてゴーシュの『印度の虎狩』を聞いた時の表現も素晴らしかった。音楽を愛する知的なネコという表現。非の打ちどころが無かったね。」

 

「ありがとう。」

 

「でも同時に僕はこう思うんだ。『印度の虎狩』を嫌ったネコは音楽が好きなくせに、すごく残念だなって。」

 

「どういうこと?」

 

「シューマンのトロイメライは実際の曲だけれども、『印度の虎狩』は存在していない曲だよね。なんで宮沢賢治は存在していない曲名をわざわざ童話の中で出したんだろう? もしかして宮沢賢治が本当に聞きたかったのは、トロイメライではなく、『印度の虎狩』だったんじゃないかと思ったね。」

 

「それじゃ、宮沢賢治が聞きたかった『印度の虎狩』を弾いてみてよ。君はピアノが上手いって聞いたよ。」

 

部屋にあったグランドピアノを指さしながら、阿良也は僕を挑発した。

 

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