星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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黒山墨字は台本作成に悩む

俺は配役が決まって、方向性も決まったがそもそも舞台の台本と構成をどうするかで悩んでいた。

 

若草物語のあらすじは前に話した通り、以下の内容だ。

 

19世紀のアメリカ、南北戦争中のアメリカで暮らす、マーチ家の物語。

 

マーチ家では父が戦地へおもむき不在のなか、優しい母と四人姉妹(メグ、ジョー、ベス、エイミー)は手を取り合ってつつましく暮らし、立派な「小婦人(リトル・ウィメン)」になるべく、姉妹は様々な経験を通して、失敗しながらも奮闘し、成長していく家族の物語。

 

この物語は、四姉妹のありきたりな日常を通して家族の絆や自分の生き方、お互いを助けあう大切さなどを説く物語になっている。

 

小説自体は、章で構成された小話の集合体で、それぞれの章はなんてことも無い四姉妹の日常が綴られている。

父親不在の1年の間の出来事を元に四姉妹の成長が書かれていく。

問題は、これが起承転結のような物語になっていない点だ。

小説の各章を読むと、四姉妹それぞれの性格や考え方が分るようになっており、それがまとまって1つの本となっている。

 

俺は、印象に残る話をピックアップした台本を書いていた。

しかし、全く持って筆が進まなかった。

 

しばらくした頃に俺の事務所に星アキラと一人の少女が訪ねて来た

 

「黒山さん、こんにちは~。アリサママから様子を見てこいって言われて冷やかしに来たよ♡」

 

「それで、こちらが最近、僕のチャンネルの映像制作を手伝ってくれている柊雪ちゃん。僕は雪ねぇちゃんって呼んでいるよ。今後監督とか映像作家を目指しているから連れて来たんだ。」

 

「始めまして。柊雪です。よろしくお願いします。」

 

「それで台本はできたの?」

 

「だめだ。行き詰まっている。」

 

俺は書けている部分をアキラ達に見せた。

アキラ達は二人でパソコンの画面をスクロールしながら台本を読んでいた。

 

「うーん。駄作だね。」

 

星アキラは俺の台本を一刀両断にした。

 

「それは判っている。それをどうすれば改善するかだ。」

 

「雪ねぇちゃん、どう思う? 原作の小説は読んでるんだよね?」

 

「はい。正直に言っちゃっていいんでしょうか?」

 

「いいよ。ここでオブラートに包んでも、誰も得をしないし。」

 

「なんていいますか、すごく薄い感じになっちゃっていると思います。原作だと文字なのに、美しい彩色が付いた絵のように姉妹の心情や動作が生き生きと浮かび上がるのに、この台本だと、ただあらすじをなぞっているだけに見えます。」

 

「それは台本だとセリフだけで、小説と違って地の文や心情の説明も無い。特に心情の表現は役者に任されるところが大きいから、簡素に見えるのは仕方がないと思うが。」

 

「確かにそうかもしれません。でも若草物語は150年も読み続けられてきて、今でもファンが沢山居る物語ですよね。小説を読むと、なんていうかただの日常的な話ではなくて、彼女たちの生き方に共感して、強烈に引き込まれる魅力があるんですよね。この台本だとそれがイメージできないというか・・・。」

 

「そうか! 共感か! 若草物語は少女のための物語だ。 俺から見ると、「こいつらめんどくせー」みたいな話でも女性から見ると、全く違った見方や考え方があるのか!」

 

「おい、アキラ、こいつを借りるぞ!」

 

「貸してもいいけど、ちゃんと遅くならない時間に家に帰す事と、送迎することを約束してね。無いとは思うけど雪ねぇちゃんを襲ったりしたら警察呼ぶから。雪ちゃんも、何か怪しい事されたら、すぐに僕か警察に電話してね。約束だよ!」

 

「わかった。わかった。それじゃお前はとっとと帰れ!」

 

星アキラは帰って行った。

 

それで俺は残った柊雪に原作の小説を見せて、それぞれの文でどういう感想を抱くのかを聞いて行った。

 

当初の俺の台本は、俺は四姉妹の家庭生活を介して、家族との絆を劇の中心にするつもりだった。だからガラスの仮面と同じく、ベスの病気をクライマックスとして家族の繋がりを表現するつもりであった。

 

だが、柊雪の感想を聞いているうちにむしろ、個性豊かな四姉妹を、それぞれを自立した正当な一人の人間として扱い、お互いに協力し、または意見をぶつけ合って、家族として、それぞれの立場を認め合うと言う、四姉妹それぞれの大人の女性への成長と、対になるように、少女のままでいたいという心情や心の葛藤という描写が劇のキーとなる事が判った。

 

そして、そういった大人への成長や自分の置かれている立場の制限に、いつの時代でも数多くの少女が共感するからこそ、若草物語は150年以上も読み続けられた偉大な物語となっていたのだ。

 

最大の問題は、四姉妹の参加メンバーの誰一人として、大人の女性なんて理解しておらず、そのうち二人は女性ですらないが、あのメンバーなら何とかするだろう(笑)

 

さっきまでの行き詰まりは解消して、俺は脚本に集中した。

 

俺が脚本を書いている最中に、柊雪はお茶を出してくれたり、いろいろ手伝ってくれた。

監督や映像作家を目指しているのであれば、高校生になったらうちでバイトしないかな?

 

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