星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは演劇の配信をたくらむ2

「この舞台、ネットで無料配信しようと思うんだけど、みんなどう思う?」

 

僕がこの発言をした瞬間、会議室は静まり返った。

 

「いや、無料配信なんてしたらみんなチケットを買ってくれなくなるじゃないですか!」

 

イベント関係部署の部長さんが発言した。

 

「そうなの? だってスターズが買った劇場は1200席ぐらいの中規模の劇場だよ? 満員でも14日分の公演でのべ16800人しか見れないんだよ? 今のチケットの倍率を分ってて言っている?」

 

「それは分かっていますけれども、もっと別の方法が・・・。」

 

「そりゃ、チケットの価格を不当に高くすれば、チケットの倍率は落とせるけど、スターズの評判も悪くなるし、お勧めしないなぁ。」

 

「そうであっても、舞台の無料配信なんて前例がありません! DVDやBlu-rayの売り上げはどうするんですか! それに無料で配信しちゃったらわざわざ舞台に観に来てくれる観客にも失礼じゃないですか!」

 

「その分は考えているよ。舞台の初日から最終日前日までの公演はYoutubeとニフニフ生放送の有料放送で放送して、千秋楽の最終日だけ生放送のみの無料放送だよ。それで気に入ってくれた人はさらにDVDやBlu-rayも買ってくれるよ。最終日以外に舞台を見てくれた人で舞台を気に入ってくれた人は無料配信も見てくれると思うよ。そして最終日の人はその配信を生で見られたというプレミアムが付くことになるよ。」

 

「それでもTVではなく、ネットで配信するなんて・・・。」

 

「逆に確認するけどさ? 舞台のカメラマンや現場監督なんかはどうするつもりなの? 結局は制作会社に外注するんでしょ? その費用はネット配信をすることで無料になるよ。 配信部分の製作費はYoutubeとニフニフ動画が持って、代わりにこの二社は有料放送を見る視聴者から新規会員とプラットフォーム使用代が入るという寸法だよ。そして有料生放送の収益はスターズに入る。」

 

「もちろん、TV放送してもいいよ? TV局を入れれば動画の製作費はあっち持ちで、それなりのお金が取れるよね? でもそれって無料放送で録画自由だよね? それこそ本末転倒じゃないの?」

 

「であっても、有料放送だけで良くて、最終日に無料放送する理由は無いんじゃないですか?」

 

「あるよ。 そもそも若草物語の舞台は僕達の成長を促すための舞台だし、少なくともチケットが買えない人にスターズの不手際を責められたり、評判を落とすための舞台ではないはずだよ。」

 

「現状の方針だと舞台上演して、DVDとBlu-rayの発売だよね? メディアの発売までは舞台を見た人だけしか舞台の内容を知らない訳だ。 舞台を見たごく少数の人と舞台を見れなかった大多数の人たちが出来て、その大多数の人たちが貯めたフラストレーションはスターズに向かう訳だ。そしてメディアの発売時にはもう熱が冷めてしまっている。大多数の人には、若草物語は舞台を見れなかった苦い思い出しか残らない訳だ。 少なくとも今のままだと、収益はともかくとして、この舞台がスターズのためにはならないって言い切れるね。」

 

「僕たちにいま必要なのは、いかにみんな共通の体験をしてもらうのかと言うのと、いかに話題になるかという事だよ。」

 

「例えば、家族の中で一人だけ生で舞台を見て来た人が居たとする、その人は家族に舞台が面白ければ、感想をしゃべるだろう。 家族も行ってみたいと思うかもしれない。でもこの舞台のチケットは入手困難で期間限定だ。 だけど最終日に無料生放送があればどうだろうか? 家族みんなで舞台を見てくれるかもしれない。そうすれば舞台を生で見れた人はわずか、16800人かもしれないけど舞台を体験した人はその数十倍、数百倍に膨れ上がる訳だ。そして家族全員が共通の体験を共有する。そして間違いなくスターズを肯定的に捉えられるはずだよ。」

 

「でも無料にしてしまうと、これ以外の舞台をやっている人達も無料でやるように圧力がかかって、迷惑をかけるんじゃないですか?」

 

「そのための有料放送だよ。僕は演劇の有料放送は新しい取り組みだけどかなりの収益になると睨んでいる。今回の若草物語であれば最終日が無料であっても、最終日以外の日でかなりの収益が上がるんじゃないかな。」

 

「舞台の有料放送で収益があげられるってわかれば、追随する劇団なども出てくると思うよ。ただ、無料放送が定番化するのはまずいね。劇団の収益が下がる可能性があるから死活問題だよ。」

 

「僕達の若草物語は14日間しか公演しないから、最終日を無料にしても大した影響は無いけど、季節毎に同じ演目を公演している劇団などは、不味い事になるよね。」

 

「そこで、今回の無料放送はアメリカのスタンフォード大学と総務省傘下の公益法人が共同で行う研究として、有料放送と無料放送が両立した場合の、収益率と満足度や感想などを調査する目的の社会実験を建前として、無料放送を行う事にするよ。」

 

「この辺はネッコフリックスの創業者とゴーグルのHQの人たちに話したら、すごく興味があるみたいで、ノリノリで大学の研究室を紹介してくれたよ。教授の方も是非やってみたいってさ。公益法人の方は、スタンフォード大からの協力要請で、まぁ、天下り組織だし仕事をやっている風に見えるので、肯定的にとらえてくれたみたいだねぇ・・・。税金をもらう実績になるし・・・。この辺については、僕は世間知らずのかわいい子供だから、良く判らないや(  ̄3 ̄)~♪」

 

「この関係で、有料放送と無料放送終了時に任意でアンケートを取る予定だよ。そしてこのアンケート内容はスターズの今後の経営戦略上の大きなノウハウになるはずだよ。」

 

「どうだろう? これだけのメリットがあってもダメかな?」

 

「もういいだろう。今回はアキラ君の勝ちだ。そこまで考えているのであれば、有料放送での配信と最終日の無料放送をやる方向で検討しても良いだろう。」

 

専務さんが言った。

 

「それに、イベント担当の君も大変になるかもしれないけれども、これは日本の演劇界や芸能界としても非常に先進的で刺激的な取り組みだ。新しい時代にふさわしい野心的なプロジェクトを自分の手で成功させて見たくはないかね? 君もこういう事をしたくて古い体質の芸能事務所ではなく、スターズに入ったんだろ?」

 

「そうですね。もしかしたらこの舞台は、日本の芸能史に残る舞台になるかもしれません。歴史に残る仕事を自分もやってみたいです。」

 

「さて、アキラ君のインターネット配信のプランは判った。 でもYoutubeとニフニフ動画の2社両方で配信するのはなんでだ?」

 

「理由は3つあるよ。 1つ目はリスク分散のため。1社だけだと片方がこけると終わりだけど2社協力の形だと、片方が辞めても対応できるよ。また両社にとっても制作費用が半分ずつになって、リスクが減るんだよ。」

 

「2つ目はシェアの問題。こういった有料放送のノウハウはニフニフ動画が一日の長であるけど、Youtubeも追い上げているよ。この二社が水面下で争う方が放送のクオリティが上がるね。」

 

「3つ目はリソースの問題。特に最終日の生放送はアクセスが集中して配信が止まる危険性があるんだよね。 両社で分散すればアクセスも分散して放送が止まるリスクを減らせるんだ。また最悪の場合片側が止まった場合には、もう片方に誘導するように話は付いているし、 両社ともにこれは汚点になるので意地でも止まらないように頑張ると思うよ。」

 

「この辺を考慮して、2社で協力するように依頼したんだよ。」

 

「両社にとっても、絶対に見逃したくないコンテンツと実績だろうからな。あい分かった。それではそこにいる2社の担当者と具体的な話をさせてもらおう。」

 

「しかし、大方の予想とは違って、アキラ君が二代目社長になっても実はスターズは安泰そうだな。」

 

「え~。実は社長って面倒くさそうでいやなんだよね。専務さんがクーデターをしかけて僕とアリサママをスターズから追放してくれない? その後に僕達が小さい芸能事務所に拾われて、その事務所を大きくしてスターズに復讐して、ざまぁ見ろって言うのはどう? 面白そうじゃない?」

 

「おそらくその話は世間的にはものすごく面白いだろうけど、僕がクーデターを起こすメリットや動機が全く無いじゃないか。 周りの事務所やテレビ局が勝手に気を利かせて干してしまった王賀美君と違って、アキラ君とアリサさんは普通にそれができる力があるから、二人を追放しちゃったら、スターズのみんなは二人に付いて行ってスターズの方が先に終わっちゃうよ。それに僕も、もう社長はこりごりだよ。」

 

「アキラ、専務さんをからかうのはいい加減にしなさい。 アキラの提案は判りました。 後はこちらのお二方と話すからアキラは戻っても良いわよ。」

 

「は~い。それじゃ帰ります。 お二方、それではよろしくお願いいたします。 (o_ _)o ペコリ」

 

「「こちらこそよろしくお願いいたします。m(_ _)m」」

 

こうして僕は目的を達成して会議室から退室した。

 

「あれが星アキラ・・・。まじでヤバいな。本当に11歳か?」

 

イベント担当部長の独り言に、会議に出席していた現場担当のスタッフたちはしきりに頷いていた。

 

こうして、僕達の舞台は前代未聞のインターネット配信が行われる事となった。

 

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