星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは電子ピアノを手に入れる

3ヵ月の寝たきり生活を終えた僕は、リハビリ生活を始めた訳だけれども、端的に言ってすごく暇だった。

 

最初は腕を持ち上げるだけでプルプルする有様で、軽く動かすだけで激痛が走ってちょっとのリハビリで満身創痍で死んだようにベッドでピクピク眠っていた。

 

でも若い体はあっという間に回復し、上半身ぐらいなら普通に動かせるようになった。

 

歩くのはきついけど・・・・。

 

リハビリは午前中の2時間だけ。歩き回る体力は無く、残りの時間はベッドの上ですごくすごく暇だった。

 

こういう時は究極の暇つぶし兵器「スマートフォン」通称「スマフォ」が出撃して、暇すぎて瀕死の瀬戸際にいる僕の救出ミッションが実行されるはずなんだけれども、自殺を実行した前科のある僕にネットにアクセスする文明の利器は与えられなかった。

そりゃそうだ。僕でもそうする。

 

そういえば千世子ちゃんがスマフォを持っていたので見せてもらったら、iPhone4だった。うわぁって思った。リンゴさんよ。前世で毎年変わり映えしないなんて言ってリスナーとネタにしてすまんかった。ちゃんと進化していたんだな。毎年機種変で高額なぼったくりをしても、僕はお前を認めてやるからな。(謎の上から目線)

 

病院の連中は僕が暇すぎて自殺するとは思わないんだろうか? 思わないんだろうな。僕も思わない。

 

暇すぎてこんなくだらない思考に囚われていると、アリサママが面会に来てくれた。

 

「今日は大人しくしているようね」

 

「わー面会に来てくれたんだ! アリサママ愛しているよ♡」

 

僕とこう言ったやり取りをすると、アリサママは必ず戸惑った表情をする。

 

そりゃ、実直、素直、キングオブ良い子の息子が突然こんな性格になったら戸惑うわな。

 

でも前世を思い出して僕の性格は変わってしまった。もうあの純粋素直で可愛い星アキラちゃんは居ない。前世のコミュ障配信者の喪女に乗っ取られてしまったのだ!(ばばーん)←効果音

正確には前世を思い出しただけだから、僕は僕なんだけれども、僕の人生観は間違いなく180度変わっていた。

 

最初は自殺前のように真面目にやろうかとも思った。でも自殺前の時点であの真面目な性格には無理があった。そもそも真面目過ぎて思い詰めて、自殺にまで至っているんだから、さらに無理を重ねて前の性格で行こうとしても、遅かれ早かれ破綻するのは目に見えていた。

 

だから自殺と昏睡で性格が変わった事にして、前世と融合した今の自分を出すことにした。

アリサママは病院の先生にも相談したようだけど、別に検査には異常が無いし、精神も安定していて、日常生活に支障があるようにも見えない。一連の出来事で性格が変わったとしか言いようが無いみたいだった。

 

「千世子ちゃんの仕事はどう? 順調?」

忙しい中、面会に来てくれたアリサママと他愛の無い話をした。

 

自殺未遂前までは、アキラ君にとっての世界の中心。彼女の寵愛を得るためだけに生きていた僕が、今アリサママとニュートラルに話してみると、不器用な人だなという感想しか湧かない。

 

アキラ君はアリサママから愛されていない訳ではない。忙しい中、ちょくちょくこうしてお見舞いに来てくれて、こうしてコミュニケーションを取ろうとしてくれるところを見ると、息子に対しての情も深いと思う。

 

でも、割と無表情で客観的な物言いをするからすごく分かりにくい。いや、ビジネス相手ならいいんだけど、「仕事一筋で子供との接し方が分らない父親かよ!」ってツッコミをしたくなることがすごくある。

 

これでは、自殺前の僕が思い詰めてもしょうがないと思う。

 

子供の事を愛しているのに上手く伝えられなくて誤解を生むという、良くある昭和ドラマのシナリオみたいな人だった。

頑固一徹、24時間働きますよ。仕事最優先。職場は奉公先。でもそれは実は家庭の母子を守るために一生懸命に働いていました。最後に父親の思いを知って和解と。

 

うーん。今時でもアレンジすれば、ありそうだけれども、終身雇用が崩壊しつつあり、働き方が自由になりつつある今では、共感は得られにくいかな?

家事を手伝ってくれる旦那さんは神。異論は認める。

 

「アリサママ、昭和の男の働き方ってどう思う?」

「何の話よ?」

 

そもそも元がグレートデリシャス名女優なんだから、理想の母親を演じてくれればそれで良かったんだけど、子供への情を演技として演じた思いなのか、それとも母親としての本当の情なのかが判別が付かなくて、リアルに自分自身の子供と接した場合、自分自身の振る舞いをどうしたら良いのか分からないんだろうね。

 

だから自分の子供にも、他の子役の子と同じようにビジネスライクに接していた。

ある意味、彼女も僕から逃げていたわけだ。それで自殺を契機にお互い歩み寄って関係が変化しつつあるのが今だね。

 

アリサママとの関係はぎくしゃくしながらも前進していた。

好きなものは好き、嫌なものは嫌とはっきり言って、アリサママもそれを受け入れてくれた。

いびつだけれども、こういう母子関係も普通にありだと思う。

 

「何か欲しいものは無いの?」

 

「スマフォ」

 

「それはダメって言ったでしょ」

 

まぁこう言われるの判っていた。

 

「じゃあ電子ピアノとクラッシックの楽譜買ってもらえる?どちらにせよ暇すぎて死にそうなんだよママン。」(ぴくぴく)←瀕死の効果音

 

「ピアノのレッスンは前にやっていたけれども、そんなに上達しなかったから、演技指導を優先して辞めちゃったじゃないの。またやりたいの?」

 

「そうだよ。マジでやる事無いから、指のリハビリを兼ねて趣味としてまたやりたいんだ。」(どや顔)

 

「判ったわ。手配しておきます。」

 

息子の気まぐれで欲しがった電子ピアノなんだから、ちゃっちいおもちゃみたいな、安物が来ると思っていたら、翌日にライブなどで持ち運び可能なタイプのハイエンド機種(約60万)が届いてマジで仰天した。前世のピアノ生歌配信で使っていたやつよりも高級機種だった。

 

やっぱりアリサママ、僕の事が好きすぎでしょう。

 




星アキラ君、復活したら何か性格が変わっていました。
これには星アリサもびっくり。
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