星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラは通訳する1

 

若草物語も終わって、しばらく経った秋の日。ゴーグルのCEOのテリー・ペイザさんが来日するので、会いたいと僕にアポイントを入れて来た。

僕もOKだったので、会いに行ったらあった場所は日本の公共放送の控室だった。

 

夜のニュースに出演するんだけど、時間がちょっと開くので僕に声がかかったようだ。

普通の人なら公共放送の中で会うなんて難しいんだけど、俳優で入館証を作ってある僕であれば普通に入れるからね。

 

守衛所でマネージャと一緒に入館証と要件を伝えて、担当者に確認の後に対象の控室を聞いて入室する。

 

控室は大きめの会議室で秘書さんとゴーグルのマネージャ、ボディーガードさん達が居た。

僕はテリー・ペイザさんと握手しながら挨拶を交わした。

 

「こんにちは。アキラ君。メールでやり取りは何回かしているけれども、直接話すのは初めてだね。テリー・ペイザだよ。」

 

「こんにちは。Mr.ペイザ。星アキラです。」

 

「君の出演した若草物語を見たよ。すごく感動した。特にジョーと君が演じたベスのピアノが素晴らしかった。君がYoutubeのプラットフォームで日本のTop Youtuberとして降臨してくれて嬉しいよ。」

 

「Mr.ペイザのバックアップもあって、無料放送が成功しました。すごく光栄です。」

 

「君みたいな歳でそんな畏まった言葉使いしないでくれ。テリーって呼んでくれ。」

 

「じゃぁ僕もアキラで。」

 

最初のうちはお互いに畏まっていたけれども、テクノロジーの話でだんだんと崩れて来て、最後の方にはくっそくだらない話をしてお互いに爆笑していた。

テリー・ペイザは内向的で恥ずかしがり屋で人付き合いが苦手なタイプって聞いていたからこの反応は意外だった。

イメージ的には、神経質で人付き合いが苦手な天才数学者ってイメージだったんだけど、シャイな普通のお兄さんって感じだった。

 

そもそもこの辺の理由でインタビューも滅多に受けないのに、インタビューできるとか日本の公共放送もすごいな。

 

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「テリーの兄者、そんな感じで、顔の動きに合わせて、画面のカートゥーンの表情が動くシステムが欲しいんだ。多分そろそろ、どっかで開発していると思うんだけど、フェイストレッキングは機材が重すぎて、簡単にできないんだ。」

 

「カートゥーンでお喋りできれば僕みたいなシャイな人間でも顔を見せなくてもいいから便利だね。でも沢山のカメラやセンサを付けるのだと、すごくコストがかかるね。」

 

「そこでディープラーニングだよ。トロント大学のヒントン教授達が去年(2012年)のILSVRCで優勝したDeep CNNだよ。カメラに映った人の顔の表情を学習させればいいんだよ!」

 

「なるほどね。眉毛の角度のベクトル演算とかのプログラムを作っても死ぬし、誤検知もすごそうだけど、コンピュータにいろんな顔の特徴量を抽出して、それぞれのパーツに連動させて学習させればいいのか。計算機の処理能力向上と共に顔認識とかにも使えそうだね。ディープラーニングはゴーグルでも研究中だよ。」

 

「するどいね。スマフォとかで顔認識用のAIプロセッサが現れてそれを流用すれば、カートゥーンでお喋りする放送が簡単に出来る時代が5年後ぐらいに来ると思っているんだ。」

 

「どうだい?アキラ君、うちでプロジェクトやってみないか?アキラ君なら普通にゴーグルでサービスを完成させられると思うんだけど。」

 

「ゴーグルも去年、ディープラーニングの教師無し学習で猫の認識に成功しているもんね。でも、うーん。まだハイスクールも出ていないし止めておくよ。それにテクノロジーの流れから考えると、僕が作らないでもそのうち出来そうな気がするんだよね。出来そうに無かったらまた考えるよ。」

 

「なら、うちのAI研究のチームを紹介するよ。今度アメリカに遊びに来ないかい? ラボの人たちも君の話を聞きたがると思うよ。」

 

「行く行くっ。」

 

「多分、ディープラーニングで翻訳とかの他に、囲碁とかチェスとかも研究しているんだよね。」

 

「アキラはすごく鋭いよね。」

 

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「そういった感じで、僕はシャイで人の前で話すのが苦手なんだ。アキラは役者だろ?何かいい方法は無いのかな?」

 

「場数を踏んでリラックスして望めればいいんだけど、難しいよね。やっぱり仲の良い人じゃないと人前でうまくしゃべれない人は、それなりに居るよね。でもテリーの兄者は僕と初対面で喋れるよね。どうしてだと思う?」

 

「それは、匂いって言うか、君が親しみやすい感じがするからかな?」

 

「それじゃちょっと面白い実験をしてみようか? 後ろのボディーガードの人に演技をするからテリーの兄者を守るのはいいんだけど、僕に襲い掛からないように伝えてもらえる?」

 

「いいよ。」

 

僕は気配を変えて、テリーを下からのぞき込むようにして、軽くニヤっと笑った。

それだけで、後ろのボディーガードの人はテリーの前に立ちはだかった。

 

「やっぱり、テリー兄者のボディーガードってすごく優秀だよね。襲い掛からないようにお願いして良かったよ。」

 

僕は前の状態に戻って、おちゃらけて言った。

 

「一瞬の表情だけで、すごい寒気したよ。どうやったんだい?」

 

「羊たちの沈黙のハンニバル・レクターを一瞬演じただけだよ。こんな人の前で饒舌に喋れるかい?」

 

「どんな人でも無理だろうね。」

 

「僕も彼を表面だけ真似ているだけで、あの映画史に残る名演までは出来ていない訳なんだけど、それでも同じ人間なのに、話しかけやすさが全く変わるよね。結局は程度の問題なんだよ。テリーの兄者が僕に普通に喋れるのは、僕がテリーの兄者を精神的に傷つけないという事をおそらく理解しているからだね。波長の合う人間との会話というのは楽しいものさ。」

 

「君は僕と波長が合うように演技しているの?」

 

「もちろんだよ。そして逆にテリーの兄者も僕と波長が合うように演技をしている。後ろの秘書さんもマネージャさんもボディーガードさんも多かれ少なかれ、みんな演技をしているんだよ。」

 

「僕はそんな演技をしている自覚なんて無いんだけど。」

 

「人はみんな場面に合わせて演技をしているんだよ。嘘と同じく、相手のためを思ってやる演技もたくさんあるね。 演技でもいいから人付き合いが上手い人を演じて見るのも一つの手だね。 別な人間を演じるのはドキドキしないかい?」

 

「確かに、自分を見て欲しいとか頑張るよりも、ずっと面白そうだ。」

 

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しばらく話し込んでいると、秘書さんがテリーの兄者に話しかけてきた

 

「アキラ、すごく困ったことになったんだ。夜のインタビューは生放送だったんだけど、僕達の方で用意していた通訳の人が電車の事故で足止めを食らって間に合わなそうなんだ。代わりに通訳をしてくれないかな?」

 

 




連載再開しました。

ディープラーニングを筆頭に2012年頃から始まった第3次AIブーム。
その勢いはすさまじく、機械翻訳や自動運転などに瞬く間に応用され、5年後の2017年にはiPhoneXに、AI動作するニューラルエンジンを実装したバイオニックチップが搭載され、高価な機器が無くても、iPhoneX以上があればVTuberとして活躍できる時代になりました。
この辺の技術で飛躍したのがにじさんじさんですね。

こう言ったAIもわずか10年の間に各段の進歩を遂げています。
次の10年はどんな新しい技術が私達を楽しませてくれるのでしょうか。
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