星アキラは自由に生きたいっ 作:Magical forest
翌日から撮影が再開された。
父親である黒幕議員の情報を垂れ込んだ僕は、キヌスと意気投合して捜査に協力しながら東京巡りをするという、ケガをした女優さんの代役を務めるシナリオになっていた。
今日は、葛飾区の下町での撮影だ。
渡された台本はとんでもないものだった。
アキラ&キヌス『面白い話をしながら下町を歩く』
セリフの指定が無しかいっ。バラエティーの撮影じゃないんだぞ!
仕方がないので、僕とキヌスの兄貴は普段通りのジョーク満載のくだらない会話をしながら下町を歩いた。なぜか監督さん達にはバカ受けで、評判が良かった。
アキラ&キヌス『面白そうな店で一緒にご飯を食べながら事件の話をする。』
途中でスケジュールがご破算になったからって、店の許可とか段取りとかはちゃんと取っといてよ! 演じている最中の役者に店まで決めさせるなんて、完全にぶらり旅じゃないか! 確かヒロインが居た時には銀座の寿司屋とかでの撮影だったよね? ちょっとアドリブで開き直りすぎだよね?
事件の話もどこまで進めて話せばいいの? 100%アドリブのせいで、役者の演技が監督さんからアウト・オブ・コントロールじゃないか!
仕方がないので、僕は良い雰囲気の駄菓子屋さんを見つけると、そこに撮影交渉。無事OKをもらった。ついでに遊びに来ていた子供たちにもエキストラで出演してもらう。
僕は駄菓子屋の軒先の鉄板に腰をかけて、キヌスと一緒にもんじゃ焼きを食べる。
なんだろう・・・・。ハリウッド映画じゃなくて、自主製作映画でも撮っている気になってきたよ・・・。周りの撮影スタッフはプロ揃いで、さすがハリウッドって感じはするんだけど。
晴天の秋空に、軒先の季節外れの風鈴がマッチして非常に良い味を出している。
奥では駄菓子を食べる子供と、駄菓子屋のおばあさんの昔ながらのやり取りが行われていた。
「まず具材を載せてちょっと炒めて、こうやってわっかを作るんだ。そしてこのベビースターって言うこのヌードルもどきのお菓子をわっかに入れて、このスープを流し込むんだ」
「なるほど。こうやってスープを入れるんだね。」
「ああっ、液がわっかから漏れちゃっているよ。キヌスは意外に大雑把だね。」
「こんなの初見じゃわからないよ」
「結局ぐちゃぐちゃに混ぜちゃうから、一緒なんだけどね。」
「じゃあ、最初っから全部混ぜちゃえばいいじゃないか」
「まぁ、ちょっと煮詰めて粘度を高くしたいからだろうけど、謎の伝統だよね。生地が鉄板に広がるのが嫌なんだろうね。ほら。一緒にもんじゃを作っているけど、僕のもんじゃと結合しちゃったじゃないか。」
「なるほどね。しかしこれ、混ぜ合わせた後はあまり食欲をそそる見た目をしていないね。」
「ゲロみたいな見た目?」
「これから食事をするから、俺が配慮したのにダイレクトに言うなよ。」
「日本人もみんなそう思っているから大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なんだ!?」
「ほら、一緒に食べるサラダせんべいによっちゃんイカ、あんず棒も買ってきたから機嫌を直して。最後にお好みでこの薄くて怪しいソースで味を調整して食べるんだ。」
「見た目に反して意外に美味いな。」
「まぁ、この食品添加物で舌が麻痺するほどのジャンク度は最高だよね。たまにフラッシュバックして食べたくなる。」
「アキラの食レポは全然美味しそうに聞こえないな。」
「そう?もんじゃ焼きにヘルシーさを求める日本人なんてほとんど居ないんだろうし、共感してくれる人も多いと思うよ。」
「ところで、君の父親の議員の事なのだが・・・。」
「あの不倫して、母親と離婚した挙句、犯罪の片棒を担ぐまでに堕ちたあのおバカ議員の事?」
「君は父親に対してすごく辛辣なんだな。」
「あれとは血は繋がっているけれども、別段思い入れは無いかな。立派な職業に就いていても、子供に見切られているようじゃもうお終いだよ。」
「君の父親が逮捕されるかもしれないんだぞ?」
「逮捕される理由があることをしたからでしょ? 賄賂とかならともかく、人身売買の片棒をかつぐなんて、堕ちる所まで堕ちたね。」
「待て、君は父親が国際的な人身売買の犯罪に関わっている事を知っているのか?」
「前は賄賂ぐらいで満足していたのに、最近は明らかにヤバい外国人なんかが周囲に増えたからね。そりゃちょっと調べるってものだよ。」
「証拠はあるのか?」
「不正な口座のお金の動きは押さえているよ。でも父親は不正な口利きをして圧力をかけているだけで、直接的に人身売買や麻薬の販売をしているわけではないからね。間接的に推測はできても、直接関与した証拠はないかなぁ。」
「今追っている犯罪組織との接点が必ずあるはずなんだ。協力してくれないか?」
「いいよ。親の間違いを正すのは子供の役割だ。悪いことをしたならちゃんと報いを受けさせないとね。」
「普通は逆じゃないのか?」
「古い伝統だね。時代は常に変化しているのさ。」
こうして僕たちはアドリブで協力関係になるように、シナリオを持って行った。