星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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明神阿良也は役作りをする

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役作りとは生まれ変わる事だ。

時に国境も時代も世界すらも超えた別人になる。

 

 

”死せず生まれ変わる”

 

 

その常軌を逸した現象を作り出すのが役者だ。

役者を名乗るにはそれ相応の覚悟が必要だ。

 

 

”人の道を外れる覚悟”

 

 

コツは今まで築き上げてきた人生観を壊すほどの強い体験を意図的に作る事。

 

 

つまり演じるために"何を"喰らうか

 

 

(株式会社 集英社 発行 アクタージュ vol.4 scene30. 読み合わせの字幕より引用)

 

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熊撃ちの猟師さんと共に、山の中を進んでいると、猟師や猟犬の間に突然緊張が走ったのを感じた。

 

俺は猟師さんの指示に従って、木の陰で隠れた。

 

辺りは静かで物音すらしない。しかし、とんでもない緊張感が支配する世界だった。何も起きないのか? 緊張が緩もうとした瞬間、突然、巨大なヒグマが草の影から飛び出してきて、猟師さんに襲い掛かった。

 

猟師さんは眉間を狙って1発撃ったが、頭蓋骨を貫通できなかったようでヒグマの勢いは止まらずにそのまま猟師さんを押し倒した。

 

ヒグマが猟師さんに一撃を入れようとした所で、パートナーの猟犬が飛び出してきて、熊に嚙みつき熊の注意を逸らす。

 

ヒグマからなんとか抜け出した猟師さんは、怪我を負いつつも、ヒグマにもう一撃入れる。 しかしヒグマは倒れる事は無かった。

 

ヒグマは猟師さんを威嚇すると、突然俺の方に襲い掛かってきた。

 

この中で一番弱いのは間違いなく俺。 ヒグマは自分が助かるために一番弱い俺に襲い掛かって活路を開こうとしているのだ。

 

背中を向けてヒグマから逃げたら、ヒグマに追いつかれて俺の人生は終わりだろう。

 

小十郎ならどうするだろう?

 

宮沢賢治の童話、「なめとこ山の熊」では、小十郎は熊撃ちの名手で、熊撃ちには絶対の自信を持っていた。

 

でも小十郎は最後に打ち損じた熊に襲われて命を落とした。

猟師さんが熊撃ちに失敗した時点で、俺も小十郎と同じく死ぬ運命であったのかもしれない。

 

ああ、俺は小十郎の最後のシーンを実際に体験しているのか。

 

俺は小十郎と自分の死を重ね合わせて奇妙な感動に囚われていた。

 

自然界での死とはドラマチックな物ではなく、こんなに唐突で瞬間的にやって来るものなのだな。

 

小十郎は熊達とこんな命のやり取りをずっと繰り返して来たんだ。

 

なめとこ山の熊達は、小十郎に撃ち殺されるのは迷惑であったが、彼に親近感を抱いていた。

俺はこの理由がずっとわからなかった。

 

俺はずっと考えていた。

 

熊達は小十郎の強くても慈愛がある所に親近感を感じたのだろうか? それとも熊の会話を理解できる事に親近感を感じたのだろうか? それとも熊を殺す時に申し訳ない気持ちで一杯になる人間らしい部分なのだろうか?

 

でも俺はこの瞬間に、熊達が小十郎に近親感を覚えていた理由を理解した。

 

小十郎は熊達とこんな命のやり取りをずっと続けていたのだろう。 熊達はこんな戦いを続けて、なめとこ山の王者として君臨する気高い小十郎に対して、敬意と親近感を感じたのだ。

 

小十郎が熊達に親近感を覚えられていた理由は、童話のような可愛らしい理由では無くて、ずっとずっと血なまぐさい、原初からの野生動物が持つ力と暴力に基づく尊敬だったのだ。

 

そんな事を考えながらも、ヒグマはどんどん俺に迫って来る。

 

俺はこれから命を落とす。まさしく人生最後の瞬間だ。

 

「へぇ、足がすくむ。少し後悔しているかもしれない。 自分から死ぬような危険に飛び込んでおきながら、それでも死ぬのは怖いんだ。 これはなかなか面白い発見だ。なるほど。」

 

ヒグマは立ち上がり、俺に対して手を上げ、その凶悪な爪を俺に振り下ろした。

 

「次は・・・ヒグマに殺されて、自分の死を喰ったら・・・どんな気持ちになるのかな?」

 

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