星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

97 / 387
星アキラはレッドカーペットを歩く1

 

新しく年も明けた2014年の3月、僕はロサンゼルスに渡米していた。

なんと、僕がアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされたからである。

 

ちなみに、今年は王賀美兄さんも主演男優賞でノミネートされているので、日本人のダブルノミネートとして日本でも、すごく話題になっているみたいだね。

 

アカデミー賞というのは、「アメリカ映画の祭典」と呼ばれる映画賞で、基本はアメリカ映画を対象とした賞だ。

ノミネートの基準は、ロサンゼルス郡内の映画館で7日以上の期間で、1日に3回以上上映されていて、有料で公開された40分以上の長さの作品が対象となる。

ちなみに、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)による賞だからアカデミー賞。

 

選考場所がロサンゼルスって地域で偏っている? いや、これはアメリカ映画の発展を目的に、キャスト、スタッフを表彰して、成果や苦労を讃えるための賞だから、偏っているのは当然。アメリカ映画の中心はハリウッド(ロサンゼルス)だからね。

 

映画賞の歴史としては、カンヌ ベルリン ベネチアの3大映画祭よりも古くて、一部の国際賞を除いてアメリカ映画に関わっていなければ、ノミネートされる機会すら無いのだから、ノミネートされるだけでも、とても栄誉な事だね。

 

僕がノミネートされた理由は、もちろん『ナショナルクリミナル4』の演技が評価されたからで、この出たとこ勝負で作成した映画は、最終的にハリウッドに巨大なインパクトを与えて、アカデミー賞にノミネートされるまでになった。

 

ちなみに、僕は助演男優賞でノミネートされているけれども、他に監督さんが監督賞と撮影賞もノミネートされていた。

 

一時は脚本賞という話もあったみたいなんだけど、撮影の仕方が広まると自然と立ち消えになったね。あの脚本ではこれは仕方が無いね。

 

『ナショナルクリミナル4』は、比較的低予算で作成した映画が大ヒットした他に、ハリウッドの常識を打ち破った斬新な撮影方法や、チーム編成、マーケティング手法など、古くて新しい風をハリウッドに吹かせた事が高く評価されたみたいだ。

 

やっぱり、膨大な予算をかけて、何度も撮りなおしするハリウッドのシステムを快く思っていないアカデミー会員さんも結構居るみたいで、その撮影手法なども広く評価されてのノミネートとなった。

 

他の理由としては、NC4 meetsというミームを生み出した事も高く評価されている。

 

これは、『ナショナルクリミナル4』はなぜか暇になると観に行きたい映画となっている事に起因する。

 

『ナショナルクリミナル4』を観た人たちは、面白い映画だなと思いつつ、映画に満足して終了。と思いきや、暇になると何かの拍子でまたこの映画が観たくなるみたいなんだ。

 

これは個人差があるみたいなんだけど、日々のストレスと、安心して楽しめるというちょうど良いほのぼの感が合わさって、この映画を観ること自体がリラックスして、ストレスを解消して脳の報酬になるらしい。

 

おそらく、子供が『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』なんかを何度も観るのと変わらない感じじゃないのかな。

この辺は、心理学者の先生たちが盛んに調査していて、ハリウッドも大注目の研究だね。

 

それで、暇になると、この映画を観たくなって、つい映画館に足を運び、この映画を観て満足する人が多かったんだけど、ある日カリフォルニアの男性が、「何度見ても楽しいし、なにかスカッとするんだよな。この映画」って劇場で独り言を言ったら、近くに座っていた人も「そうなんだよな。不思議な魅力があるんだよな。」って言って、映画そっちのけで、映画館で映画談義を始めて、それが周りの人を巻き込んで大盛り上がり。付近の人間も、みんな何度も観ていたらしい。 そしてその体験をこの男性がSNSに投稿したら、各地の映画館でも同じような事態が続出。

 

『ナショナルクリミナル4』を観ながら映画談義をするのがスタンダードになりそうなところで、流石に上映中に観客が好き勝手に喋るのはどうか?ということで、ロサンゼルスの映画館が、NC4 meets用の上映と、普通の上映に分けて上映を実施。

 

そしたら、うわさを聞き付けた映画ファンたちが、NC4 meets用の上映に殺到して、上映をそっちのけに映画談義を実施。

 

結局のところ、SNS全盛のこの時代、ネットの繋がりの他に、リアルな人の繋がりを求めている映画ファンが多かったという事だ。

とは言っても、映画サークルとかに縛られるのもご勘弁。ちょっと映画好きな人とライトに映画談義をしたいって人達にマッチしたみたいだね。

 

このロサンゼルスの映画館では、館長が観客に混じって、ポップコーンやジュース片手に映画談義をする事態になり、この流れが全米に波及。

 

そして映画と全然関係ない所で、意図せずに、『ナショナルクリミナル4』は映画好きの集いの場を提供する事になった。

上映後は一期一会で、気があった人達とバーや喫茶店などで映画談義の延長戦をやるという流れが定着していた。

 

アメリカの映画関係者にはこのミームも肯定的に捉えられていた。

そもそも、映画館に来るお客さんが増える事も歓迎だし、映画ファンが増加する事も歓迎なのだ。

そして、映画を作っている人はみんな映画オタクである。

 

ハリウッド関係者もNC4 meetsを体験する人が爆増して、良さを確認した後に、この流れをいかに次に繋げるかが模索され始めていた。

 

そんなわけで、芸術性があるとか、技術がすごいとか、脚本が素晴らしいとかじゃなくて、脳に緊張を強いないで適度にだらだらと面白くて爽快という、謎のラインにぴったりと収まったこの映画は、内容以上にハリウッドで評価される事になってしまった訳だ。

 

もちろん。売り上げも想定以上に落ちていない。 製作費が6千万ドルなのに、すでに全米で4億ドル以上の興行収入を上げていて、5億ドルは確実で、もしかしたら6億ドルに届くかもという話まで出ていた。

 

そんな、いろんな方面から注目の映画を作った助演男優として、僕がアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされたのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。