星アキラは自由に生きたいっ   作:Magical forest

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星アキラはレッドカーペットを歩く3

 

----------------- 王賀美陸の視点 -----------------

 

アキラ声「何言ってんの? 星アキラだよ。 星アキラ。 子供の頃はホテルの部屋で一緒に寝た仲なのに、僕を忘れちゃったの?」

 

「はぁ?星アキラは男で内気で静かな男の子だろ!? お前のような金髪碧眼の女じゃないのだが!」

 

「大体、何だ!その恰好は!! ウイッグにカラーコンタクトで授賞式に望むなんて聞いたことが無いぞ!!」

 

星アキラが『ナショナルクリミナル4』で活躍したと言う話は聞いていたし、助演男優賞にノミネートされた事も知っている。

 

だが俺はビッグになってスターズを見返すために、喧嘩別れしたスターズの動向はなるべく耳に入れないようにしていたし、芸歴では先輩ではあったものの、実質的には弟分であった星アキラが活躍したと聞いても、あまり注意を払っていなかった。

 

そもそも、ビッグになってスターズを見返すと言うのは俺の役者人生のモチベーションそのものだ。 この体験がハングリー精神となって今の俺を支えている。 俺の中では、スターズは常に悪役であってもらわなければいけなかった。

 

だから、当然俺は星アキラが活躍したという、『ナショナルクリミナル4』も意図的に避けていた。 しかし、その不勉強さがここで俺を苦しめるとは・・・。星アキラに何があったんだ?。

 

「見てっ! 日本のトップクラスの衣装作家さんの作品なんだよ! TYPE-MOON 10周年記念のセイバーのロイヤルドレスのコスプレなんだよ!!」

 

星アキラは自分が着ている純白のロイヤルドレスを見せつけるようにくるりと一回転して、いたずらが成功した子供のような魅力的な笑みを俺にうかべた。

 

報道陣は俺たちの会話で、この美少女が星アキラだってわかると、「アキラ・ホシ!」「アキラ!」「ホシ!」などと群衆に情報が伝播するように口々に呟くと、回転して衣装を見せつけている星アキラに怒涛のフラッシュや中継をしているテレビカメラの焦点が一斉に合う。

 

それはまるで津波のような光景だった。 俺が降りて注目を浴びるのとは種類が全く違う、何倍もの驚きと、とんでもない注目を周りの記者や観客から引いている。

星アキラは、すごく女性的な、しなやかな動作をしつつ、瞬間瞬間に闘争を生き抜いてきたようなスキのない男性的な凄みが入り混じり、会ったばかりなのに、とんでもない魅力的な人物に見えた。

全員の視点が星アキラに釘付けになった。

 

この瞬間、舞台の主役は俺から星アキラに移った。 星アキラは俺がカリスマによって記者や群衆の注意を引くのとは対照的に、記者や群衆を興味と感嘆、そして熱狂の渦にぶち込んだ。瞬発的に熱せられた人の感情が、音のように自分の肌にぶつかって振動していくのを生まれて初めて体感した。

 

周囲で取材している記者や観客、TV関係者などのアカデミー授賞式前のお祭り気分は最高潮になり、興奮して前に出ようとしている記者や観客たちを警備員が必死に取り押さえている。

 

「ちょうどいいから、僕達の同行者を紹介するね!」

 

星アキラはこの周りの熱狂を何も感じていないように、ただ世間話のように俺に同行者を紹介してくる。

 

「まずは百城千世子ちゃん。 スターズの後輩で、今日は両儀式のコスプレをしてくれているよ。 この桜色と黒の着物は西陣織の特注品だね。 今回、唯一衣装作家さんの作品じゃないよ。」

 

「王賀美先輩。よろしくお願いします。 私も王賀美先輩を目指してスターズで育てられてきました。 このような場でお会いできてすごく光栄です。」

 

半身は派手な桜色、もう半身は黒の下地に桜色の見事な花の刺繍が入った着物を着て、落ち着いた佇まいを見せる、まさしくザ・日本の美少女が俺に挨拶をしてくる。

星アキラとは全く違ったタイプの美少女。 これだけの美少女を俺はハリウッドでも見た事が無かった。

 

「ああ、よろしく頼む。」

 

俺はあまりの状況に飲まれて、ついて行けなくなっていた。

 

「続いては、同じくスターズの後輩の夜凪景ちゃん。 メソッド演技の天才でアリサママから直々に指導を受けているよ。今回はアルクェイドの活発な彼女らしい白色のドレスを着てくれているよ。」

 

「私は原初の真祖アルクェイド・ブリュンスタッド。王賀美君の映画もなんども観たわ。 今回の映画も素晴らしかったわね。 是非主演男優賞を受賞してね!」

 

「おおぅ。」

 

このイカレタ女は、完全に役に入り込んでいた。 こんな状態で役に入り込むとか相当な危険人物だ。

真祖とか言っていたから、おそらく吸血鬼かなんかの役なんだろう。 やさしい会話とは裏腹に人外の気配がビンビンして、その演技を見破るために赤い目の奥を覗きこもうとすると、物理的に喰われるような原始的な恐怖を俺は感じた。

(注:景ちゃんは真っ赤なカラーコンタクトと金髪のウイッグをしています。)

 

「最後に明神阿良也だね。 あの舞台演出家の巌裕次郎の秘蔵っ子で、この年で巌裕次郎の舞台の主役を任されるぐらいの逸材だよ。 今回は蒼崎青子のドレスで、青色で一番大人っぽいドレスを着てくれているね。」

 

「ちなみに、男だから惚れちゃだめだよ。」

 

「本当にマジで男なのか!?」

 

「本当です。イギリスでは僕ぐらいの年の子が女優として女装するのは常識って巌さんが言っていました。」

 

「絶対に違うだろ!!」

 

もはや我を忘れて、俺はツッコミしまくっている。 誰よりもグラマラスで男を吸い寄せそうなこの女が男!? もう意味不明だった。

このウルトラハイエンドな美少女達の中で誰が一番好みかと聞かれれば、おそらく1番に上がるであろう、男性の理想像を凝縮したような、この美女が男!? どうなっているんだ!?

 

俺の頭はパニックを起こしかけた。

 

「そんな訳で、王賀美兄さんが居なくなった後でも、僕達スターズは元気にやっているんだよ!」

 

「元気って何だ!? 俺が居ない間にスターズに何があったんだ!?」

 

「いろいろあったんだよ。いろいろと。」

 

「いろいろってなんだ!? 何があったらこうなるんだ!?」 あまりのツッコミ所の多さに、俺のツッコミは全く追い付かなかった。

 

俺は星アキラ御一行と一緒にレッドカーペットを歩き会場の中に入る。

 

星アキラ御一行はカメラマンや記者たちの注目の的だ。

 

アカデミー賞のメインカメラマンも星アキラ御一行を追っている。

おそらくスイッチャーもディレクターの指示で、星アキラ御一行の一挙手一投足を全世界に放映しているだろう。

 

こんなんで無ければまさにVIP扱いなのだが・・・。理由が理由だけに・・・・。

 

そして、ハリウッドですら見た事の無い美少女四人を男一人で引き連れている俺へ、男たちの激しい嫉妬の視線が大量に刺さる。

いや、ハリウッドセレブの女ですら俺に嫉妬の視線をよこしてくる。 女でもこの集団とお近づきになりたいのだろう。

 

本当に勘弁して欲しい。この連中のうち二人は男だ。 つまり、この集団は男三人に女二人という、ごく一般的な人口比率の集団なのだ。

 

俺がなぜこんな目に遭わなければいけないんだ!?

 

俺はアカデミー賞の授賞式を前にストレスで頭と胃が痛くなっていた。

まさか、このショックで俺がハゲるなんて事は無いよな・・・?

 

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