シン星紀エヴァンゲリオンー神も泣くかもしれない   作:サルオ

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ab.彼方の待ち人-6

 

 エヴァがなぜ巨大なのか?

 

 かつてゼーレに意識を乗っ取られた加持は、葛城ミサトに問うた。

 

 それは『祭儀の器』だからだ、とゼーレは言った。津々浦々あまねく人々の注目を集めるため──その注目の数だけの意識を束ねられる。ヒトの向こう、丘の向こう、山の向こう、隠れる事なく衆人は注目する。

 

 ゆえに、巨人であったのだ、と。

 

 そのゼーレの言葉が意味を持つのは、碇シンジが最終号機と共にアルマロスを撃退し、人類補完計画の先へと歩みを進めた世界線。

 

 だがその言葉に意味が生まれたのは、『碇シンジ』がアルマロスになった世界線。

 

 無数のエヴァンゲリオンが、補完計画の完遂を求めて争った大戦があった世界線。

 

 その序章として、ヒトが造り出したエヴァンゲリオンがダデス渓谷に集結していた。

 

 この世界における人類補完計画の鍵を握るため。ひいてはこの世界において、ヒトとして生き残るため。

 

 ヒトは自らの過ちに気付かず、最後の希望に縋り、ただ盲目的に、この地へとエヴァを集結させたのだった。

 

 

 

 

『エヴァンゲリオンαからΛへ。全体の進行速度が落ちてるぞ、どうなってる』

 

『Λよりαへ。うっせーぞバーカ!人狼のコアを使ってる奴らがモタモタしてるんだ。誰だよ、「エヴァを動かすだけなら人狼を使えばいい」なんて馬鹿げた事を言ったヤツはよぉ!シンクロなんて本当に最低限だ!動かせるだけ有難いと思えよな!』

 

 赤い大地を、巨人の群れが闊歩する。一列に並んで進軍する様はまさしく巨人の隊列。大地を踏み鳴らし、進軍する様はまさに圧巻。

 数十体に及ぶエヴァの進軍は『人類の救済』という尊い使命を帯びて、エヴァンゲリオンの群れはその目的地に向かってひたすらに進む。

 

『なぁなぁ!もしもだけどよ、お前「王様」に選ばれたらどーする?』

 

『俺かぁ!俺だったらアレだな、世界中の美少女集めてさぁ!』

 

『『ギャハハハハーッ!!』』

 

『ちょっとアンタらうるさぁーい!女子もいんのよ!?』

 

『あぁ!?ブスは黙ってろよ!』

 

『なぁんですってぇ!?』

 

『うるさいぞお前ら!!遠足じゃないんだ、はしゃいでんじゃねぇっ!!』

 

 NERVアメリカ支部より送られてきた数十体のエヴァンゲリオン。それに搭乗するのは、20歳に満たない年齢の青少年たちだ。

 

 エヴァンゲリオンのパイロット適正年齢は14歳と言われている。だがそれは、もっとも適した年齢が14歳と言われているだけで、その前後の年齢層がエヴァンゲリオンに乗れないわけではない。

 事実、綾波レイから始まったファーストからサードのチルドレンたちは、シンジの世界線ではパイロットとしてシンクロテストを含めた訓練を積んできており、アルマロスとの戦いにおいて十全な結果を生み出してもいる。

 

 このアメリカ支部からの巨人の群れも、パイロットの年齢は様々であった。上は19歳から、下は13歳まで。男女交々といった様子である。人狼化現象により人口が激減した中で、若い子供たちの命は貴重。そのはずだった。

 だがここにきて、『フォルトゥナ』の宣誓があった。その宣誓を聞いたかつての大国、そこに所属するNERVアメリカ支部は、自身の保有する使徒の素体と人狼を用いたコアを製造し、新造のエヴァンゲリオンを数十体と作り出した。そして、それに乗ることのできる適格者も、少なくなった人口からかき集めたのだ。

 

『お前ら、いい加減にしろ』

 

 先頭を行くエヴァが背後を振り返る。

 

『誰が『王』に選ばれるか?そんなのどうだっていい。誰が王になろうと、俺たち全員が望むのは「人狼のいない平和な世の中」だろうが。それ以外を望むって奴がいるなら今すぐ前に出ろ。俺がスクラップに変えてやるよ』

 

 この集団のリーダーと思しき青年の声がオープンチャンネルを通して全機に伝わった。その言葉の持つ重み、そして、この青年の持つ実力が、今の言を決して冗談だと思わせないほどの威圧を帯びさせていた。

 そんな中で、一体のエヴァが前に進み出た。それを見たリーダーがやれやれと頭を抱える。

 

『コールド。またお前か・・・』

 

『隊長。無駄話してる暇なんかない。さっさと行こう。無視すればいいんだ、騒いでる奴らなんか。そもそも『王』の器じゃない』

 

『わかった。わかったから、オープンチャンネルで全員を煽るな、頼むから』

 

『なぜだ?俺の願いも隊長と一緒だ。なら、同じ願いを持つ奴らがまず先行すればいい。それ以外は邪魔だ。俺たちだけで任務を遂行すればいいだろ?』

 

 はぁ、とリーダー格のエヴァが肩を落とす。

 

『お前の意見はごもっとも。だがなコールド。お前はこの時代の後の事も考えろ。人狼がいなくなったとき、俺たちは助け合って世界を再構築しなきゃなんないんだ。今から無駄に争う必要もない。わかるか?』

 

『興味ない。俺が興味あるのは、さっさと人狼共をこの世から消し去る。それだけだ』

 

 そう言うと、コールドと呼ばれた少年のエヴァは部隊の先を勝手に移動し始める。いつものことなのだろう。それを見た隊員全員からため息が漏れた。

 

『何様よ、あいつ・・・』

『ちょっとシンクロテストの成績がいいからって』

『隊長も!なんでアイツをいつも甘やかすんだよぉ。あれじゃ軍規?だって守られねーんじゃねぇの?』

 

『俺だって注意してるさ。だけどアイツは・・・』

 

 コールドに深く、悲しい過去があったことは隊長も知っていた。その過去は、隊長自身が共感できるものでもあった。そして、自分を凌ぐほどの実力も兼ね備えている事も、隊長は理解していた。

 

『困りもんのエースだよ。アイツは・・・』

 

 コールドは新人である。だが、その実力は、かの惣流・アスカ・ラングレーにも劣らない、と隊長は感じていた。

 

『やれやれ・・・行くぞ!このままじゃコールドが『王』になる!それが嫌ならさっさと来い!』

 

 隊長の一言と、すでにだいぶ遠くまで離れているコールドのエヴァを見て、全体がようやく動き始めた。

 

(もうすぐだ。平和な世の中は、もう目の前なんだ・・・・・・!)

 

 隊長の瞳に炎が宿る。それは希望の炎。人類全てを救えると信じて疑わない、澄んだ瞳であった。

 

 

 

 

 NERV米支部の部隊が赤い大地と山脈を越え、惣流・アスカ・ラングレーが『フォルトゥナ』と索敵したと思われるポイントに辿り着いた。事前情報の通り、遠くに青白く光る十字架が大地に横たわっているのを隊長が確認した。

 

 その十字架に磔にされた『フォルトゥナ』も、隊長は山陰に隠れながら目視で確認する。

 

『こちらα。全機用意はいいか?』

 

『いつでもオッケー。てかよ・・・』

 

『ああ、別に戦いに来たんじゃないんだし』

 

『フツーにおしゃべりするんじゃダメなの?』

 

『それが一番望ましいよ。だが、万が一のこともある。戦闘になるようであれば、即座に撤退する心の準備もしておけ』

 

 隊長が全機に指示を出すと、隊長機はすっと山の影から身を乗り出した。

 

 その時だった。隊長のエヴァが、何者かの攻撃を受けて大地に倒れ伏した。

 

『は?』

 

『た、隊長ッ!?』

 

『な、なんだ!?『フォルトゥナ』のヤロウかッ!!?』

 

『ち、違う・・・・・・』

 

 倒れ伏したエヴァンゲリオンから、隊長が全隊員に呼びかける。

 

『プランΩだ・・・ッ!糞、畜生!!他国の奴らだ!『フォルトゥナ』を狙って、待ち構えてやがったッ!!』

 

 隊長の言葉に、NERVアメリカ支部の面々は即座に各々の武器を手に取り、戦闘態勢に入った。

 

 プランΩ。それは『フォルトゥナ』を巡り、他国の軍組織が妨害をしてきた場合にのみ適用される最終手段。『フォルトゥナ』によってヒトの王が選別される、という言葉を妄信し、『フォルトゥナ』を奪う事で時代の覇権を握ろうとする愚か者どもがいた場合の、最も愚かな作戦名だった。

 

 瞬く間に、ダデス渓谷に銃声が響き渡った。エヴァンゲリオンの持つパレットライフル。その銃弾が、銃火が、渓谷のあちらこちらで飛び交った。

 

 つまり──、

 

『敵もエヴァかよ!?』

 

 巨人同士の、醜い争い。

 

 他国の作り出したエヴァ。それも、敵は一カ国だけではないようだ。国ごとに異なったデザインのエヴァンゲリオン達が、渓谷の様々なところから顔を覗かせていた。

 それは恐らくドイツ支部や中国、アジアなどに点在する小さな支部、それぞれから送られてきた精鋭達。そしてソレに乗っているのは、自分たちと同じであろう、年端もいかない少年少女だろう。

 世界中の希望であるはずの子供達が、『フォルトゥナ』という一縷の望みを賭けて殺し合う。

 

『なんだってんだヨォーーーッ!あっ!!』

 

 叫んだ少年兵の乗るエヴァが、その頭を撃ち抜かれた。

 

『ぐぎゃああああああああああ!!痛い!!痛いぃぃいいいい!!』

 

 シンクロシステムゆえにフィードバックされた痛みが少年兵を襲う。そこに駆け寄ってくる一体のエヴァ。

 

 デザインは、他国のもの。

 

『やだぁ!来るな!来るなぁ!母さんッ』

 

 少年の乗ったエヴァの胸に深々と突き立てられるプログレッシブナイフ。コアとエントリープラグを貫かれた。吹き出す血飛沫。それはエヴァ自身と、乗っていたはずの少年兵のものだった。

 

『ジョンッ!!畜生めが!アイツはまだ13だぞ!!』

 

 隊長のエヴァが立ち上がり、少年兵にトドメを刺したエヴァの頭を撃ち抜いた。途端、渓谷に響き渡る悲鳴。それはどう考えても、幼児の叫び声だった。

 

『な、なんだって・・・・・・!』

 

 隊長が思わぬ事態に戦慄した。NERVアメリカ支部は、エヴァンゲリオンのパイロット選定基準を13歳以上と定めていた。

 だが、他国は違う。まだ10にも満たないような少年少女をエヴァに乗せていたのだ。恐らく適格者の数が少なかったのだろう。だからこそ、かき集められたのだ。幼い、本当に幼い子供達が。

 

 戦場に、子供達の悲鳴、断末魔が木霊する。そこかしこでエヴァに乗った子供達が銃で、ナイフで、血みどろの殺し合いをしていたのだ。

 

『な・・・み、みんなぁ!!やめろぉ!!これ以上はやめるんだぁ!!俺たちが殺し合ったって、意味はないだろうがぁ!!』

 

 隊長は必死に叫んだ。敵味方関係なく、これ以上幼い命を無駄に散らさないために。だが隊長の声は戦場の轟音にかき消され、誰の耳にも届く事はない。

 

『頼む・・・やめてくれ!やめてくれぇッ!!』

 

 叫ぶ隊長機の後ろに、敵影が迫る。その手にはプログレッシブナイフが握られており、正確に、エントリープラグのある頚椎を狙って振り下ろされた。

 

『あっ!!』

 

 隊長が振り返る瞬間であった。目の前まで迫っていた敵機の首が、何者かによって切り裂かれた。

 

 ぶしゃあああっと、隊長機に降り注ぐ血飛沫。そして断末魔。その向こうにいたのは、

 

『コールドッ!!』

 

 自身の味方だった。

 

『隊長。俺が行く。援護を頼む』

 

『行くってどこへ!?』

 

『『フォルトゥナ』だ。俺が行く。この馬鹿げた戦闘を止めるには、それしかない。俺が『王』になる・・・・・・!』

 

 言うが早いか、コールドは大地を駆けた。その背中を呆然と見ることしかできない隊長であったが──、

 

 コールドの乗るエヴァに、敵機が殺到する。

 

『マックス!!』

 

 コールドが隊長の名前を叫ぶ。

 

 隊長、マックスは手にしたライフルを咄嗟に乱射した。その弾の大半が敵から逸れていったが、牽制にはなったようだ。

 

 コールドの前に、『フォルトゥナ』までの道が開けた。

 

『いけ!コールドォォオオオ!!』

 

 コールドが駆ける。青白く光る十字架に向かって、脇目も振らず、一目散に。

 

『おおおおおおおおおおおおおおッ!!』

 

 雄叫びをあげ、コールドが十字架に飛びつく。そこに横たわる『フォルトゥナ』の顔に手を添える。

 

『『フォルトゥナ』!辿り着いた!辿り着いたぞ!俺が『王』だ!さぁ、俺を選べ!そして人狼共をこの世から────』

 

 その後の言葉は続かなかった。

 

 『フォルトゥナ』の腕が、コールドの機体の背中から生える。

 

 貫いたのだ。その腕で。やっとの思いで辿り着いた少年諸共、命を摘み取ったのだ。

 

『コールドォォオオオッッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【その姿を、獣に与えてはならない】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『フォルトゥナ』が、この渓谷に集ったすべてのエヴァンゲリオンに語りかける。

 

 

 

 

 

【言葉発する知恵の杯に、獣の血肉を注ぐ事。あってはならない。断じて】

 

 

 

 

 

 『フォルトゥナ』が言葉を発した瞬間であった。戦場に居たほぼ全てのエヴァンゲリオンがその動きを止めて。

 

 

 

 

 

『い、嫌ァァアアああああああああああ!』

 

『うがッ!がががぎぎがががああああ!!』

 

『ぎゃう・・・うぶ、ぶあああああああッ!』

 

 異常な叫びを発していた。

 

『な、なんだ!何が起こっている!?』

 

 隊長が辺りを見回す。視界に映るほぼ全てのエヴァが、悶え苦しんでいる。手足を異様な方向に曲げて、装甲板が弾け飛んでいく。その下からは異様に発達した筋肉。そして、エヴァの口にはないはずの獣の牙が、ぎらぎらと、怪しい光を湛えながら次々と生えてきている。

 

『こ、これは・・・・・・』

 

 隊長が言葉を詰まらせた。

 

『まさか、人狼化、なのか・・・・・・?』

 

 渓谷に集ったエヴァが、次々と、獣の如き姿に変容していく。

 

『ま、まさか・・・・・・人狼をコアに使ったからか!?だから、『フォルトゥナ』の発する電波にやられて、侵食されているのかッ!?』

 

 渓谷からヒトの声が失われていく。代わりに渓谷を満たすのは、夥しい数の獣の咆哮。

 

『俺の、エヴァのコアは、母さんだ。母さんが身を挺して俺を助けるために・・・・・・、だから汚染されないのか!?』

 

 隊長機だけではない。見渡せば、他にも人狼化を免れているエヴァンゲリオンが数体。

 

 だが、今この場において、それが意味する事はただ一つ。

 

『う、うわぁぁあああーーーーッッ!!』

 

 獣の群れに投げ込まれた、餌。

 

 人狼と化したエヴァ達があっという間に群がってくる。

 

『ぎ、ぎぃやあああああッ!!嫌だ、嫌だあ!食われたくない!やめろやめろやめろ!離れろ!離せ、いぎぃ!?ぐぎゃああああ・・・・・・・・・・・・ッ!!』

 

 僅かにヒトの理性を残したエヴァ達は無惨にも食い散らかされ、

 

 ダデス渓谷には、数百にも及ぶ、巨獣の群れが誕生した。

 

 

──────

 

 

「アズマテラスの攻撃には、エヴァのコアを使用します。一度に使用するコアは3つ。エヴァに携帯させることができるのは最大で1ダース。つまり、攻撃のチャンスは最大で4回と考えております」

 

 NERV本部の作戦室に集まった錚々たるメンバー。それを前に、赤木リツコは自身の開発した『大弓アズマテラス』のプレゼンテーションを行っていた。

 

「ですが、アズマテラスの最大の特徴であると共にこの兵器の存在理由は、第一射にて『フォルトゥナ』の『回廊』を使った瞬間移動を無理やり封じ込め、続く第二射で仕留める、というものです。その前提でこの兵器を運用する場合、『フォルトゥナ』への有効打は全部で2回、とお考えください」

 

 作戦室のディスプレイにアズマテラスの概要と運用方法が示される。それをレーザーポインターを使いながら、赤木リツコは説明を続けた。

 

「『フォルトゥナ』の使用するなんらかの『回廊』が、我々の認識する空間とは別次元に存在している可能性はありますが、このアズマテラスの空間断絶とその後に発生する空間圧縮。それを利用すれば、恐らく『フォルトゥナ』の行動を大きく制限できるはずです。ですが、その莫大な兵器としての威力を得る代償として、この兵器は巨大化する必要がありました。エヴァがこれを使用する場合、かつてのポジトロンスナイパーライフル同様、こちらの動きも大きく制限されるとお考えください」

 

 ここまで説明したリツコに、冬月が手を上げた。

 

「弾の補充はできんのかね。本当に、エヴァのコアを使って4回しか攻撃できんのか?」

 

「その点に関しては、非常に限定的ではありますが非常手段を用意しました。一つは、これを使用するエヴァンゲリオン自身のコアを使う事」

 

「それでは話にならん」

 

「もう一つは、側に別のエヴァが居た場合、このアズマテラスは周囲のエヴァのコアからエネルギーを得ようとします。エヴァンゲリオン自身の行動が大きく制限されるなかで、もし仮に護衛として数体のエヴァが近くにいさえすれば、それらのコアを弾としてアズマテラスはエネルギーを無理矢理にでも吸い上げ、使用する事は可能です」

 

「そうか。・・・・・・葛城作戦課長」

 

「は!!」

 

 冬月は作戦室のディスプレイの前で腕を組んでいたミサトに声をかける。

 

「ダデス渓谷に集結してしまった人狼化エヴァンゲリオン、通称"ビースト"。これらの群れを殲滅し、アズマテラスを使って『フォルトゥナ』を殲滅する事は可能かね?」

 

「できます」

 

 ミサトは即答した。

 

「エヴァ00、01の二機を戦場に向かわせ、どちらか一方がアズマテラスを用いるオフェンス、もう一方がそれを護衛する布陣で行きます。アズマテラスの弾の補充は周りに蠢くビーストのコアを用いれば、四射とは言わず、より多くの攻撃ができるはずです。奇しくも、ヤシマ作戦と同じような布陣になりますがコレなら──」

 

「ダメだ」

 

 ミサトの作戦提案を、碇ゲンドウが切って捨てた。

 

「・・・・・・碇司令。なぜですか?理由をお聞かせください」

 

 ミサトは冷静に、ゲンドウに問いかける。対するゲンドウは机に両肘をつき、その顔を手で覆い隠している。

 

「サードチルドレンは重度の人狼化進行が見られる。現段階ではまだヒトとしての理性は残っているが、『フォルトゥナ』に接触した場合、精神汚染レベルが一気に加速する恐れがある。そのような大きな不確定要素を、本作戦に組み込む事は許さん」

 

「ですが司令!それではビーストにも『フォルトゥナ』にも立ち向かえません!アズマテラスの仕様上、単独行動は危険です!」

 

「くどい。エヴァ01を使う事はゆるさん。これは命令だ。『フォルトゥナ』、およびビーストの殲滅作戦はレイと、エヴァ00だけで実行しろ」

 

 反論を許さない強い口調でもって作戦司令室の全員に命令を下したゲンドウは立ち上がると、冬月を伴って作戦室を後にした。

 

 残された面々は途方に暮れる。

 

「そんな・・・・・・レイを見殺しにしろって言うの?碇指令が?」

 

 ミサトはゲンドウのあまりにもあんまりな命令に、言葉を失ってしまう。

 

「碇司令・・・・・・なにを考えてるのよ!この非常事態にッ!」

 

 ミサトが近くにあった椅子を思い切り蹴飛ばした。椅子がガシャンと床に倒れる。

 

 それ以外の音はなく、作戦室を重たい沈黙が包み込んでいた。

 

 

 

 

 

つづく

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