シン星紀エヴァンゲリオンー神も泣くかもしれない   作:サルオ

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番外編 綾波レイたちの子守り

 

 宇宙空間に揺蕩う、ネルフLUNA。その生活居住区にある公園に、碇ミライを連れてきたのは綾波レイ・トロワ、カトル、そしてシスの三人だった。

 常に宇宙空間にあるネルフLUNAには日光が常時照射されているが、ネルフLUNAはその採光窓を調節することにより、地球の日本時間に合わせて『夜』を意図的に作り出していた。

 

 今の時間はお昼の1時を少し回った程度。天候はもちろん晴れ。絶好のピクニック日和であった。

 

「は〜い!ミライちゃん、着いたよ!あったかいねェ〜!」

 

「でぃぶーっ!」

 

 ベビーカーからミライを抱っこして下ろしたのは、一番幼い(といっても見た目だけの)シスであり、ここに来る途中もミライを抱っこしたくて仕方ない!といった様子だった。ミライも比較的見た目が幼い事もあり、シスに抱っこされると嬉しそうに笑った。

 

「ちょっと!小さな私!あまりミライを振り回さないでよ!」

 

 ベビーカーを押していたのは綾波レイ・カトル。カトルはベビーカーのロックをしっかりと掛けると、ベビーカーに載せていた荷物を次々に下ろしていく。

 

「ちょっとバカ姉!早くシート広げてよ!地面に荷物を置けないじゃない!」

 

「まかせて」

 

 最後の綾波レイ・トロワは、肩にかけた大きめのトートバッグからピクニックシートを取り出すと、バサァッと広げた。トロワがシートを広げ終えると、カトルは肩に下げた大きな荷物たちをシートの四隅に次々に下ろしていく。人口の風が凪いでいるのだ。シートが飛ばされないための処置であった。

 

「こらーっ!小さな私!ミライを抱えたまま走り回らないでッ!」

 

「きゃー怒られちゃったー♪」

「ぷぁーーー♪」

 

 二人とも実に楽しそうだ。日の光の下で走り回る事に夢中で、カトルのお叱りを受けてもシスははしゃぎ続けていた。

 

「あぁ、ハラハラする・・・。ミライを落としたら絶対に殴り飛ばしてやるわ・・・」

 

「カトル、お弁当、どうする?」

 

 カトルよりひと足先に靴を脱いでシートに上がったトロワが、カトルに聞いた。トロワは自分の大きなトートバッグからお弁当箱をいくつも取り出している。中身は手で摘めるよう、簡単なサンドイッチがぎっしりと入っていた。

 

「あ、ああ。そうね・・・少し休憩してからでいいんじゃない?少し喉が乾いたわ」

 

「そう。・・・・・・はい、これ」

 

「あら。ありがとう」

 

 トロワが水筒からお茶をコップに注ぐとカトルに差し出してくる。それを受け取ったカトルはぐいっと一息で飲み干すと、ようやく靴を脱いでシートに座り込んだ。

 

「はあ、暑い・・・なんで「調節」できるのにこんな気温にしているのかしらね?今は地球では冬でしょ?」

 

「寒いとミライが遊べない。わたしが頼んで、暖かめにしてもらったの」

 

「暖かめ、って何度くらい?」

 

「30度くらい?」

 

「・・・貴女がバカ姉だって改めて実感したわ」

 

 カトルはため息を吐きながらトロワから水筒をひったくると、自分のコップにお茶を注いで飲み干した。

 

 温い風が公園を吹き抜けていく。遠くでは、ミライを膝に乗せたシスがブランコに乗って遊んでいた。

 

「・・・・・・平和ね」

 

「そうね」

 

「地球では、今頃、碇君たちが暴れ回ってるころよね」

 

 そう。こうして綾波レイたちがのんびりしている間も、地球では鈴原トウジとヒカリ、その家族の奪還作戦が進行中だ。地球から遠く離れたネルフLUNAも、いつ敵が襲ってきてもおかしくない状況にある。

 

「普通の時間が、ミライちゃんには必要。それが、今のわたしたちの任務」

 

「ん?」

 

「碇くんに、頼まれたから」

 

 鼻息荒く、トロワが両拳を握る。それを横目で見たトロワは再びため息を吐いた。

 

「そこまで気合い入れなくてもいいと思うわよ?」

 

「・・・?カトルは、入れないの?」

 

「気合いっていうより、シスがミライを落っことさないかの心配の方が大きいわ・・・」

 

 遠くのシスとミライは、今度は滑り台に挑戦しているようだ。膝の上に乗ったミライが滑り台をすべるときに、楽しそうに「きゃーーー!」と大声を出していた。滑り台はミライのお気に入りのようだ。

 

「ねぇ、カトル・・・」

 

「何よバカ姉」

 

 遠くで遊ぶ二人の姿を見ながら、カトルはお茶を注いで口に含む。

 

「わたしも、赤ちゃんが欲しい」

 

「ぶーーーーーっ!!」

 

 姉のあまりにも唐突な発言に、カトルは口の中のお茶を盛大に吹き出した。

 

「・・・・・・?ダメ?」

 

「げぇほ、ごほッ!だ、ダメっていうか、話題が唐突にすぎるのよ!」

 

「カトルは、赤ちゃん欲しくないの?」

 

「いや、そりゃ、私も欲しいけど・・・・・・」

 

 カトルは顔を赤らめながら、自身の姉から目を逸らす。カトルも赤ん坊は可愛い。ミライでさえが可愛すぎて食べてしまいたくなるほどだ。それが自分の子供であったら、一体どれほどのものだろうか?

 

 だが子供が生まれる前には、準備がいる。碇シンジとすでに肉体関係を持っているカトルであったが、いざ「子作り」という意味でその行為を考えてみた場合、何処となく恥ずかしさが漂ってくるのだ。

 

 それに・・・・・・。

 

「今は、ミライが私たちの子供。でしょ?」

 

「そうね」

 

 トロワが顔にかかった前髪をかきあげる。青から黒へとグラデーションのかかった髪は、カトルをして「綺麗な髪」と思うほどに美しい。だが、自分の銀色の髪も負けたものではないとカトルは思った。

 

「カトルーーーーッ!!」

 

「なによー」

 

「ミライちゃん!うんちーーッ!」

 

「わかったわ!こっちに連れてきて!」

 

 シスがミライを抱っこしながらピクニックシートまで走ってくる。シスからミライを受け取ったカトルは、手慣れた様子でシートにミライを寝かせると、バックからお尻拭きと新しいオムツを取り出した。

 

「貴女もそろそろコレくらいやれるようになってよね?小さな私」

 

「うぇぇ、ヤダ。臭いもん」

 

「じゃあ、そろそろお弁当を・・・・・・」

 

「せめてオムツ取り替えてからにしてくれない!?バカ姉!!」

 

 公園の片隅で、綾波レイたち、いや碇一家の団欒は続く。今はこの平和な時間を過ごす事こそが、彼女たちに与えられた任務。

 

 それは誰に命じられるまでもない。彼女たち自身が自分に課した任務。心穏やかな、願いの具現そのものであった。

 

 そして早く、ここに碇シンジとアスカ。そして旧友である鈴原トウジとヒカリも交えて、この時間を過ごしたいと、綾波レイたちは強く願うのだった。

 

 

 

 

 

つづく

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