シン星紀エヴァンゲリオンー神も泣くかもしれない   作:サルオ

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ak.黒い森の決闘

 

「おいおい・・・・・・コイツぁ・・・」

 

 黒い森を抜けた先、唐突に開けた景色の向こうに、その荘厳な建物は聳え立っていた。

 

「清涼な森の中に、心療内科などの施設を設ける事はあるが、これは・・・・・・」

 

「ああ。あまりに豪華。ついでに言えば、セキュリティのレベルも段違いだな」

 

 驚く加持の横で、剣崎キョウヤもサングラスを軽く指で抑える。事前情報として建物の在処は知ってはいても、実物を見るのは剣崎も初めてだった。

 

 そして──、

 

「そんでもって、コイツはなんの冗談だ?」

 

 巨大な施設の前で立ち尽くす二人に突き付けられているもの。

 

 それは、巨大な槍の穂先であった。

 

「俺たちは、君たちの家族を助けに来たつもりだったんだがね?」

 

『余計なお世話や、加持さん。悪う思わんとってくれ。ワシらも必死なんや』

 

 加持と剣崎の目の前に立つのは、四つの腕を持つ異形のエヴァンゲリオン。夜の闇においても月光によって白銀に輝く、エヴァンゲリオン・ウルトビーズであった。

 

『加持さん。それに、隣の人も、本当にごめんなさい。私たち、もう本当に、引き返すことはできないの・・・・・・だからッ!!』

 

 ヒカリの悲壮極まる叫びと共に、巨大な十字槍が振り上げられる。

 

 加持は剣崎に目配せするが、剣崎は頭を振った。

 

(流石に無理、か・・・・・・)

 

 加持が作戦の失敗を覚悟した瞬間だった。

 

《ヒカリィィイイイイイイイイ!!》

 

 加持たちの遥か背後、夜の闇に、アスカエヴァ統合体の叫びが広がった。

 

『アスカ!?』

 

 ウルトビーズが視線を向けた先で、アレゴリック翼の妖精の粉のような光が煌めく。空を切り裂く轟音とともに、加持と剣崎の背後、アスカエヴァ統合体が飛来した。

 

《ヒカリ!待って!アタシたちは・・・・・・》

 

 アスカの叫びに、ウルトビーズの手が止まる。

 

『わかる・・・・・・わかってるよ。アスカ。でもね、もう手遅れなの。私たち、どうあってももう逃げられないの』

 

 錯覚、だろうか。ウルトビーズの目尻が月光を反射して薄く光った。それはまるで、エヴァが流した涙のように見えて。

 

『惣流・・・スマンなぁ。来てくれたこと、ホンマはめっちゃ嬉しいねん。ただな・・・・・・』

 

『アスカ、これを見て』

 

 ヒカリの言葉に続き、アスカへとオープンチャンネルが繋がれた。映し出された映像にはヒカリが映り込んでおり、目に涙を浮かべながら、プラグスーツの首元を晒した。

 

 そこにあったのは、黒地に赤い紋様の入った、首輪だった。

 

《な、何よ・・・・・・それ》

 

 嫌な想像がアスカの脳裏に過ぎる。そして、その想像は当たっていた。

 

『これ、DSSチョーカーって言うんだって』

 

《DSSチョーカー・・・?》

 

『相田くんの手土産って言われたわ。ネルフJPNで開発された、処刑用の爆弾だって』

 

《・・・・・・・・・・・・は?》

 

 突然の言葉に、アスカの頭の中が真っ白になる。そんな爆弾が、自分の家だと思っていたネルフJPNで開発されていた事。それを相田ケンスケが持ち出した事。そして、なによりその爆弾が、親友の首に装着されている事。

 

 それらの情報をアスカは整理できず、しかし胸にふつふつと湧いてくるのは怒りと憎悪。

 

 あまりの怒りに気付けばアスカは、エヴァ統合体としての足を振り上げて大地を蹴り飛ばしていた。

 

《加持さん、それ、ホントなの?》

 

 問われた加持は真っ直ぐにアスカを見上げる。バイザーによってアスカエヴァ統合体の目は隠されていたが、加持はその目を真っ直ぐに見つめていた。

 

「ネルフJPN、というより、俺たち防諜部が作り上げた代物なのは事実だ。・・・・・・お前たちには意図して話していなかったが、ネルフJPNも綺麗事だけじゃ済まないこともある。裏切り者の排除や、ある意味では誠実さの証として使用されていたが、実際に爆破された事はなかったはずだ。まさか相田が持ち出していたとは思わなかったが・・・」

 

《な、なんで・・・なんで教えてくれなかったのよッ!!》

 

 自分の家。そこに隠されていた暗部。家族とすら思っていたネルフJPNに隠されていたという事実が、決して小さくない衝撃をアスカに与えていた。

 

 理屈ではわかる。頭でも理解できる。だがどうしようもなく、アスカは『裏切られた』と思ってしまったのだ。その感情だけは、納得できようがない。

 

 そして、その首輪が、今まさに親友とその夫の首に掛けられている。それがどうしようもなく、アスカから理性を失わせていた。

 

《・・・・・・ヒカリ》

 

 地の底から這い上がるような、底冷えするようなアスカの声。

 

《だいじょうぶ。だいじょうぶよ。そんな首輪、アタシがなんとかして外して──》

 

『私たちが受けた命令は、『今この場であなた達を殺す事』。できなければ、すぐにこの首輪は爆破されるわ』

 

《───ッ!!》

 

 アスカの怒りは霧散する。その代わりに去来したのは、絶望感。どうしようもなく、今この場で、親友と殺し合わなければならない運命に対して、アスカはなす術を持たなかった。

 

『惣流。この会話も聞かれとる。もうこれ以上の問答は無用や。ワシらだけやない。ワシらの家族も、下手したら殺される。ホンマ、ごっつう腹立つが!スマン!ここで加持さん共々、死んでくれや・・・・・・!』

 

 トウジの苦痛に塗れた悲鳴。それと共に、ウルトビーズが槍を構え直した瞬間だった。

 

 

 

 

 

「アスカ!今から全力で施設を攻撃しろ!手加減抜きで、だ!!」

 

 

 

 

 

『『《・・・・・・・・・は?》』』

 

 アスカ、ヒカリ、トウジの声が重なる。加持の言っている意味が、まるでわからない。アスカ達はヒカリ達の家族を助けるために来たのだし、それはヒカリ達も知った上での妨害行動であった。

 

 その前提を叩き壊す、加持の意図がわからない。

 

「早くしろ!!時間が無い!でなきゃ全員死ぬぞ!!」

 

《で、でも加持さん!?》

 

『させへんでッ!!』

 

 狼狽するアスカにウルトビーズが槍を突き出した。それをすんでのところでアスカは躱す。

 

『アスカ!ごめんなさい!』

 

《なによ、なんなのよ!?加持さん!アタシにヒカリ達の家族を殺せってぇの!?》

 

「お前が施設を全力で攻撃すれば、ウルトビーズは守りに入るしかなくなる!両肩の『天使の背骨』は使えないはずだ!撃てば周辺が吹っ飛ぶからな!全力で、ウルトビーズに施設を守らせるんだ!その間に俺たちがなんとかする!!」

 

《!!!》

 

 加持の意図を汲んだ瞬間、アスカはアレゴリックの翼を広げて高く飛翔した。夜空に浮かぶ月を背後に、アスカエヴァ統合体の両腕から『ゼルエルの腕』が伸びる!

 

『まさか、正気なんか!?』

『アスカやめて!?』

 

 二人の悲鳴を無視し、アスカは鞭のように『ゼルエルの腕』をしならせて施設へと襲い掛かった。

 

『こんちくしょーがッ!!』

 

 ウルトビーズも腰のアレゴリックユニットを使って素早く飛翔すると、持っていた槍を振るって『ゼルエルの腕』を弾き飛ばしていく!

 

『アスカぁぁああああああ!!』

 

 憎悪の籠ったヒカリの叫びが、夜空に木霊した。

 

「今だ!行くぞ、剣崎!!」

「くそ!相変わらず無茶苦茶なヤツだ!」

 

 加持と剣崎が、施設の閉じられた門を飛び越える。途端、施設全体に空を割らんばかりの警報が鳴り響いた。

 

「こっからはお前の『能力』がカギだ!期待してるぞ、剣崎!」

「ここまでの強行手段は想定してない!フォローをサボったら俺がお前を撃ち殺すぞ!?」

 

 施設上空では月を背景に二体のエヴァが剣舞を舞い、地上では警備兵が蟻の巣を突いたようにワラワラと飛び出してくる。

 

 これは賭けだ。ヒカリとトウジの作戦行動の穴を突いた、成功率の低い賭け。もし彼らの会話をネルフユーロのジル司令が今この瞬間も聞いているのなら、ヒカリとトウジが作戦に手を抜いた瞬間に彼らの首は吹っ飛ぶ。

 

 だが仮に、もしも手を抜く余裕もないくらいの猛攻を仕掛けられたら?ウルトビーズが全力で施設を守らないといけないような状態に陥ったならば?

 

 ジル自身も迷うはずだ。彼らとしても簡単にウルトビーズは失いたく無いはずで、仮にヒカリとトウジを殺したとしても、その瞬間にヒカリ達の家族は、アスカエヴァ統合体と加持たちが救出するだろう。その人質に価値が無い、とジルが判断すればお終いだが、少しでも価値があるとジルが判断したならば。

 

 一縷の希望ではあるが、少なくともヒカリ達の家族を救う事はできるはずだ。

 

 ただし、この作戦の穴は、人質を奪われた瞬間にトウジとヒカリが殺される可能性があるという点だ。ウルトビーズのパイロットがヒカリ達しかいないのならば易々と殺される事はないだろう。だが実際には彼らの首には爆弾が取り付けられており、ジル司令の性格からすれば、それは決して脅しで付けたものではないと考えられる。

 

 だが、そこまでの解決策を考えていている時間は無い。ここからは先は全て、速さが物を言う。だからこその賭け。

 

 ヒカリとトウジの命を風前の灯火としながらも、奇跡が起こる事を期待した、穴だらけの賭けだった。

 

 

 

──────

 

 

 

「ど〜思うネ?真希波・マリ・イラストリアス博士ェ〜?」

 

 シュバルツバルトに向かうVTOLの中で、ネルフユーロのジル司令は気怠げにマリに語り掛けた。

 

 その猫撫で声に顔を顰めつつ、マリはぶっきらぼうに答える。

 

「どう、とは?どういう事かにゃ?」

 

「いや、さっきから彼らの会話。ああ、鈴原夫妻ネ。その会話を聞いてるんだけどサァ、まどろっこしくて面倒くさくなってきたんだヨネ」

 

「・・・・・・だから?」

 

「もうサ、ポチっとやっちゃおうかなぁって」

 

 ジルはポケットからスティック型の起爆装置を取り出して、それを押すフリをする。それを見たマリは流石に大きくため息を吐いた。

 

「いくらなんでも短絡的に過ぎるにゃあ。ジル司令にしては大局が見えてなさすぎじゃない?」

 

「そ〜お?ぶっちゃけ、鈴原夫妻の代わりはいるんだヨ。ウルトビーズに乗れる人材は用意してある。そーするとだよ?彼らに言う事を聞かせるために取っていた人質家族にも、あんまり価値は無いんじゃないカナァ〜って思えてきちゃってネェ」

 

「代わりなだけで、即戦力にはならないんでしょ?今ウルトビーズが動かせなくなったら、相田ケンスケ問題はどうするのかな?ケンスケ君がシェムハザで反旗を翻したら、それに対抗するのはオルタナティブ・エヴァンゲリオンだけになるよ?それで勝てる?」

 

「・・・・・・無理だ、ネ」

 

「でしょ?シェムハザ一機ならまだしも、彼はいまや「使徒製造機」なわけで。ATフィールド持ちの使徒の軍団に、エヴァ無しでやり合うのは無理があるんじゃないかにゃ?」

 

 マリの正論に、今度はジルが顔を顰めた。頭ではわかっている。だがこの数時間で起きた、様々な計算外。ケンスケの起こした『メモリアル・インパクト』の与えた衝撃に加え、日本で暴れ回っていたエヴァンゲリオン最終号機を囮としたネルフLUNAのユーロカチコミ作戦。どーにもジルの計算外が起きすぎている。それが無性にジルを苛立たせていた。

 

「真希波博士〜。一発ヤラしてくれない?イライラしてしょーがないンダ」

 

「絶対ゴメンだね。しかもここ機内じゃん。寂しく端っこのほうで一人でやってなよ」

 

「つれないナァ。昨日は燃え上がったじゃない?」

 

「私は生きるために腰振っただけ〜。あの時はジル司令に殺されたくなかったからね」

 

「じゃあもう一回くらい・・・」

 

「今はこっちにも銃がある事をお忘れなく〜」

 

C'est dommage(残念)・・・」

 

 軽く舌打ちを打ちながら、ジルは機内から窓の外を眺めた。外に見えるのは漆黒の闇ばかり。なんとも詰まらない風景であった。

 

 イライラする。無性に。確実に。まるで自分が、気付かないうちに糸に絡み取られているような感覚。思うように動くことができず、そのままの流れでどこかへと連れていかれるような、なんとも言い難い不快感。わかっていながら今の自分にはどうしようもない状況が、さらにジルの精神を追い詰める。

 

 明らかにイライラしているジルを横目に、マリは口を手で隠しながら、薄く笑みを浮かべていた。

 

 

──────

 

 

 剣が舞う。槍が弾く。火花が夜空を彩る。まるで線香花火のように。

 

 アスカは腕から生えた『ゼルエルの腕』を固定し、二刀の剣として振るう。その猛撃を、ウルトビーズは見事な槍捌きで弾き飛ばしていく。

 

 すでに二体のエヴァの中では数十合の刃のせめぎ合いが繰り広げられていた。

 

 隙を見て地上に突撃しようと仕掛けるアスカに対し、ウルトビーズは防戦一方だった。

 

『このままじゃ埒がアカン!ヒカリ!撃つで!』

 

『ダメよトウジ!もし仮に施設に当たりでもしたら・・・』

 

 その時は、施設は跡形も無く吹き飛ぶだろう。

 

 だがそれでも、自身の間合いでゴリゴリと攻めてくるアスカに対し、長物の槍は分が悪い。なんとか自分の間合いの内側にアスカが入ってこないよう、防ぐのが精一杯だった。

 

 アスカがそれを見て、さらに高度を上げるべく飛翔した。高度を得たアスカエヴァ統合体が、重力を上乗せして加速し、ウルトビーズに襲いかかる。

 

 それこそが、ヒカリとトウジの待ち望んだ瞬間であった。

 

『今よ!トウジ!』

『食らえやぁ!!』

 

 両肩から伸びた腕、その先端に取り付けられた2砲の『天使の背骨』が上空に向かって火を吹いた。打ち上げられた二条の赤い流星が、夜空を切り裂いて駆け上っていく。

 

 それをアスカエヴァ統合体は、重量加速をそのままに、大きく迂回して躱した。

 

『んなッ!?』

 

 トウジの驚愕の声を無視し、アスカエヴァ統合体はウルトビーズの脇をすり抜ける。眼下には守るべき家族の収容される施設が──、

 

『させないッッ!!』

 

 ヒカリの怒号と共に、ウルトビーズの槍が背後からアスカを襲う。アスカはその身を捩り、ゼルエルの腕でどうにかそれを受け止めた。

 

《ゔ、ぐう・・・!》

 

『アスカ!許さない!アスカがそこまで私たちを、家族を殺したいっていうなら!今この場で私があなたを殺す!!』

 

《良い気迫ね、ヒカリ・・・・・・!でもね、アタシこそ、ヒカリを殺す覚悟はあったのよ!》

 

 二刀の刃が受け止めていた槍を捌き、突進してきたウルトビーズの腹を突かんと差し迫る。それをウルトビーズは咄嗟の判断で身を捩って回避した。ゼルエルの腕がウルトビーズの装甲を削り、火花を散らしながら二体のエヴァが空中で激突する。

 

『ううああああああ!!アスカッ!!』

 

『ヒカリィィイイイイイ!!』

 

 アスカエヴァ統合体がゼルエルの腕を仕舞い、至近距離から放たれた掌底がウルトビーズの顎をカチ上げる。

 

『うおっ!?』

『く・・・、あ?』

 

 シンクロシステムにより、顎に与えられた衝撃がヒカリとトウジの脳を揺らした。ウルトビーズの体から力が抜ける。

 

《うぉぉおおりゃあああああああッ!!》

 

 アスカはウルトビーズの腰を抱き抱えると、そのまま空中で回転し、ウルトビーズの巨体を漆黒の森に向けて放り投げた。

 

 脳に受けた衝撃に加えて、投げ飛ばされたことにより距離が開けた二体のエヴァ。

 

(これで時間を稼げる!今のうちに、加持さん達を援護しながら人質の救出を・・・・・・)

 

『ずあああああああああああああッッ!!』

 

 一瞬の隙をついて作戦を組み立てたアスカの背後から、鬼のような気迫と共にウルトビーズが槍を構えて迫る。

 

(そんな!嘘でしょ!?思いっきり脳を揺らしてんのよ!?)

 

《復帰が早すぎる!ヒカリ!あんた・・・》

 

『家族を!私たちを!易々と殺させてたまるかぁーーーッ!!』

 

 この戦闘に入ってから、初めての攻勢。殺意の乗った一撃が、アスカに迫る。

 

《くっ!!》

 

 アスカは咄嗟に迫る槍を蹴り上げた。胸を狙っていた槍の軌道が大きくズレる。槍はアスカエヴァ統合体の頬を薄く切り裂き、再び二体のエヴァが激突した。

 

『ああああああああああああああ・・・!!』

『舐めんや、ないでぇぇえええええ!!』

 

 激突の勢いを利用し、ウルトビーズが自分諸共に施設を飛び越して、黒い森に突っ込んでいく。

 

 スドォォオオンッ!という轟音と共に、二体のエヴァが森に墜落した。

 

 

 

 

 

 

 施設内ではすでに戦端が開かれており、夥しい数の銃弾が飛び交っていた。

 

 その銃撃の嵐の中を、加持と剣崎は突き進む。

 

「私兵の数は、ざっと100ってところか?」

 

「恐らくな。表向きは医療用施設だ。駐屯人数にも限りがあるんだろう」

 

 すでに施設内に侵入した二人は、銃弾の雨を潜り抜けず、悠然と廊下を突き進んでいた。

 

 剣崎の能力。人の身のまま『使徒』の肉体を移植され、宿った力。

 

 ATフィールドが、彼ら二人を守っていた。

 

 絶対領域であるATフィールドを貫通する銃弾は存在しない。故に加持は手にした拳銃で、ノコノコと廊下の角から顔を出してきた雑魚の頭を正確に撃ち抜いていく。

 

「全部をやる必要はないよな?」

 

「当然だ。それでは時間がかかり過ぎる。加持は出てきた敵だけ仕留めていればいい」

 

「オーケィ。だがな。このあと人質を救出したとして、それからどうする?洞木ヒカリと鈴原トウジのDSSチョーカーは俺ならなんとかできるが、その前にスイッチを押されちまったらひとたまりも無い」

 

「それについては『彼女』に期待するしかない」

 

「お前の言っていた内通者、か」

 

「ああ。恐らく彼女ここに現れるはずだ。その時こそ──、」

 

 剣崎と加持が、施設最奥の部屋の前に辿り着く。

 

「状況が動くぞ。覚悟しろ。加持」

 

 

 

 

 

つづく

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