本編に戻ります
事件の起こりとは、常に唐突であるのが世の常である。しかし事件の要因は常に1つ。自らの目的や理念を追い求める者同士の意見のすれ違い、またはぶつかり合いだ。そのすれ違いがいつ、どこで起こるのかは誰にもわからない。
あるいは神の視点でもって世を見渡すことができるのであれば、その起こりを調停することもできるのかもしれない。だが、人は神ではない。自らの手の届く距離、目で見える範囲で判断して、自身にとっての『最善』を選び取るしかないのだ。その結果が例え『最悪』に繋がっている道だったとしても。
かくして、歴史の輪は再び回り出す。地球環境の改善と共に、己が目的を達成しようとする者達が動き始める。
そして、人類が『神』または『運命』と呼ぶ存在もまた、『いたずら』という形で人の世に種を蒔く。その種がいつ芽吹き、実をなすのかは、それこそ『神のみぞ知る』事であった。
──────
「こ、これは・・・・・・」
深夜。
ネルフJPN技術開発局先端技術部マネージャーである伊吹マヤの研究室にて、マヤはあるデータの観察記録と、そこから導き出される事実に戦慄していた。
あり得ない事では無い、とは思っていた。だが、起こらない方が良かったというのが、マヤの本音だ。
彼女は机の上で腕を組み、その上に頭を乗せた。責任が重すぎる。この事実を公にするにはまだ早すぎる。しかし当事者達には伝えなければならない。
「でも、これを、私が伝えなきゃいけないの・・・・・・?」
責任者とはそういうものだ。それは理解している。前任であった赤木リツコの跡を継ぎ、3年もの間ネルフJPNの技術部を引っ張ってきたのだ。未熟ゆえに部下を振り回し、結果上手くいかず、色々な迷惑をかけた事もある。また、部下の尻拭いで方々に謝罪に行った事も一度や二度ではない。みんなが嫌がる事を率先して行い、ケジメをつける。それが責任者というものだ。頭ではわかっているのだ。
だが、それはある意味で仕事だったからできた事だ。ネルフJPNという組織に所属する人間同士が、居住スペースも含めて公私混同しやすい環境である事は否めないが、それでも仕事でやらなければいけない事とプライベートの時間をしっかりと分けることはできる。少なくとも、伊吹マヤはそういう風に努めてきた。
マヤはゆっくりと顔を上げ、パソコンのディスプレイに映し出された2名の名前を確認する。
『碇シンジ』
『惣流・アスカ・ラングレー』
ディスプレイに表示された文字は変わらない。マヤは再び机に突っ伏した。
コンコンッ
「・・・ッ!誰!?」
ノックの音に、マヤが飛び起きた。
「私よ。マヤ。コーヒー持ってきたのだけれど・・・」
「あ、先輩。今開け・・・・・・」
そこまで口にしたところで、マヤの言葉は止まった。視線をディスプレイに落とす。ここに映し出されている情報を、リツコに見せるべきか、一瞬悩む。
「・・・・・・・・・マヤ?」
「・・・先輩」
ややあって、マヤはポツリと言葉を漏らす。
「私、責任者なんです。だから、全部私がやらなきゃいけないって事は、わかってるんです・・・」
「・・・どうしたの?何かあったの?」
「でも、怖くて・・・。今まで当たり前だと思ってた事が壊れるのが、ホントに怖くて・・・。どうすればいいかも、わからなくて・・・」
ドアの向こう。リツコが何かを察した気配がした。
「・・・・・・開けてちょうだい。マヤ」
「先輩の手を煩わせるのは・・・」
「確かに、今の私はアナタの部下で、アナタは責任者よ。アナタが今何に悩んでるのか、それを部下に話していい内容なのか、私にはわからない。でも、だからといって、後輩の悩みを聞いてあげちゃいけないなんてことはないでしょう?」
毅然としたリツコの声が、ドアを通り越してマヤの胸に収まる。マヤの胸の支えはまだ取れないが、マヤはそっとドアノブに手をかけた。
ドアを開けた先に、リツコが2人分のマグカップを両手に持って、微笑みを湛えていた。
「おつかれ様。少し冷えてしまったけど」
リツコからマグカップを受け取り、マヤはそれに口をつける。コーヒーは確かに温くなっていた。ほんの少しだけだが。
ほぉっと、マヤの口から温かい吐息が漏れた。
「おいしいです・・・」
「そう。よかったわ」
マヤはリツコを招き入れた。自分はデスクの椅子に座り、その横にリツコが立つ。ごく自然な動作だった。2人の間で日常的に行われる所作。そこに言葉など必要ない。
リツコがディスプレイの文字を見つけて、驚愕に目を開く。
「これは・・・・・・!」
「・・・・・・言わなきゃ、ならないですよね?」
「・・・・・・・・・そうね。確かに、これはアナタが言わなくてはならない事だわ」
「ですよね」
マヤが苦笑を浮かべる。
「でも私にも、責任の一端がある。同行するわ、私も・・・」
「・・・・・・ありがとうございます」
2人の胸中に、共通の、苦い決意が宿る。
これは、間違いなく歴史を動かすだろう。世紀の発見という偉業、それと、身近な人の人生の破綻という結果を伴って。
──────
「それ、マジ?」
「残念ながら、マジだ」
翌朝、ネルフ総司令であるミサトを最初に訪ねてきたのは、防諜部の加持リョウジであった。
「月の表面だ。今まで観測されていなかった亀裂が発見された。今はまだ大したことはないらしいが、新しい月が安定していない可能性があるらしいぞ」
「もう大丈夫って言ったのは誰だったかしらねー・・・」
「まぁ、リッちゃん達だって金星行ったりエヴァ全機のオーバーホールやったりと大忙しだったからな。それくらい大目に見てやれよ」
「まあ、それは構わないんだけど。ただねぇ、ま〜たあの子達に頑張ってもらわないといけないってのが心苦しくてねぇ・・・」
「苦しいのはお前の財布、だろ?」
「うぐぅ・・・・・・!」
「アスカとシンジ君の旅行のセッティングや宿泊費。それに3人の綾波レイの食事改善。ほとんどお前の個人的な出費だって聞いたぞ?彼らだってもう大人だ。それくらい、彼ら自身にやらせてみればいいんじゃないか?」
「・・・・・・そういうんじゃないのよ」
ミサトは椅子の背もたれにどっと背中を預けた。
「もう、こんな地球の危機なんてこりごり。あの子達には、普通の高校生として人生を楽しんでほしいのよ。あの子達は、もう十分にがんばったじゃない。仕事が欲しいってなら話は別だけど、もう、あんまり苦労かけたくないのよ・・・」
「・・・まぁ、気持ちはわからなくはないがな。ただお前、私生活でもだいぶ節約してるみたいじゃないか」
「・・・誰のせいだと思ってんのよぉ」
「準備金くらい、俺のほうで用意するぞ?」
「そぉいう事言うんなら、アンタからさっさと聞きたいセリフがあるんですけど?シンちゃんの方がよっぽど男前だわ、こりゃ」
ミサトの嫌味に、加持は苦笑で返すしかない。
「で?アンタの用はこれで終わり?」
ミサトが軽く目を瞑りながら加持を促す。
「・・・防諜部としての報告がある」
加持の雰囲気が変わった。ミサトは目を開けて加持の眼差しを真っ向から受け止める。
「聞かせて」
「ドイツネルフ。いや、もはやユーロ全体の意志といっていいかもしれない」
「・・・・・・」
「洞木ヒカリ、およびEVA・EUROII・ウルトビーズの返還を求める声が強くなってきている」
「・・・このタイミングで?」
洞木ヒカリ。シンジ達の同級生であり、第3新東京市立第壱高等学校に通う17歳の少女。だったのだが、アルマロス騒乱の際に実の姉であるコダマを失い、そこから彼女の運命は一変した。ユーロ軍に薬物洗脳を施され、彼女はEVA・EUROII・ウルトビーズのパイロットとなったのだ。洗脳はアルマロス騒乱の最中に解けたうえ、アルマロスにトドメを刺したのが彼女だった事もあり、一時はユーロの英雄として祭り上げられた。だが、『アルマロスを倒した者が次のアルマロスになる』という特性により、自己意識をアルマロスに侵食されたヒカリは凱旋パレードにて多くの民間人を虐殺。全世界を巻き込んだ最終戦争を引き起こした張本人として歴史に名を残す事になる。
アルマロス騒乱の後、彼女の身柄については各国でさまざまな議論が展開された。中には公開処刑を望む声も上がったが、アルマロスの特性は誰にも想定できない事態であり、彼女の引き起こした一連の事件は不可抗力であったとの意見も上がった事で、その二つが真っ向からぶつかり合う状態となっていた。
だが、そんな議論も途中で頓挫する事になる。言うまでもないが、原因は月の消失に伴う地球環境の激変で、各国は1人の少女に構っている場合では無くなったのだ。そのどさくさに紛れてネルフJPNは彼女を『保護観察対象』として掻っ攫った。その後は、同じくアルマロスの影響を受けたトウジと共に病院に搬送され、適切な治療を受けた。彼女の体調面は既に快復しており、現在は隔離病棟にて『経過観察』を受けている状態である。
「嫌ね〜。月の騒動の時は見向きもしなかったってのに、それが治まった途端これだもの」
「葛城」
「わかってるわよ」
ミサトのシャキッとしない態度に加持が釘を刺す。もちろん、ミサトも本当に投げやりになっているわけではない。ただここに来て、懸念材料がさらに増えた事に愚痴をこぼしたくなっただけだ。
「リョウジ」
彼女が加持をこう呼ぶ時。それは決まってプライベートに近い関係で話をする場合である。つまり、ここからの話は『部下としての加持』ではなく、対等な人間同士で話し合いたい、という事を表している。
「ユーロの上層部の状況は?奴らは、その話をどこまで本気で実行しようとしてるの?」
「その点についてはユーロに相田ケンスケを潜り込ませているが、正直微妙だな。奴さん達の間でも、返還後の意見は分かれている、ってところか」
「なら少なくとも、洞木ヒカリとウルトビーズをユーロに連れ帰るってところまでは本気みたいね」
「そうだろうな。その後の処遇をどうするかは未決のまま。まずはユーロに連れ戻す事が第一の目的だろう」
「『返還を求めてる』ってのが嫌らしいわね。公開処刑するため、とか、罪人を引き渡せって言ってくるなら、まだこっちも止めようがあるけれど・・・」
「ああ。ウルトビーズは元々はドイツネルフで建造されたもんだ。それを返すよう要求するのは、別におかしな事じゃない」
ミサトが椅子の背もたれにボフッと体を預け、天を仰ぐ。
「私の推測だけど、まずウルトビーズの返還は、ネルフJPNの戦力の一極化を防ぐためでしょうね。全地球使徒探査殲滅ネットワークの二の舞にならないように、お偉いさんがたも必死なんでしょーよ」
全地球使徒探査殲滅ネットワークとは、もともとは3年前のネルフ決戦の直後、姿を消したエヴァ量産型を発見、即殲滅するためのシステムで、簡単に言えば地球軌道上に武装した3体のエヴァを配備し、地球全域を監視するためのシステムであった。これは全世界各国の制空権の制圧と同義であり、各国首脳陣の猛反発を食らったものだが、ミサトはエヴァンゲリオンの武力を背景にした恫喝じみたやり方でこの防備計画を押し通した。ただしこのネットワークシステムは、アルマロス騒乱の際には全く機能せずに崩壊した。この事実は、ネルフJPNをよく思わない各国に良い口実を与えてしまったのだ。「お前の作戦に従ったにも関わらず、これだけの犠牲を出すとは何事だ」と。ネルフJPNへの反感は強まり続け、エヴァンゲリオンの放棄を求める声すらも上がっている。ユーロの要求であるウルトビーズの返還も、ネルフJPNの戦力分散を目的としたものだろう。
「・・・・・・ウルトビーズはともかく、ヒカリちゃんは返したくないわね」
処刑の可能性が残っている場所に、
「だが厄介なのは、洞木ヒカリの家族だ。彼らは現在ユーロによって拘束されている。要は人質だ」
そう。ウルトビーズのパイロットになる直前、ヒカリの家族はドイツネルフによって拘束されていた。本来はおとなしい性格のヒカリがエヴァに乗ったのは、姉であるコダマの仇討ちともう一つ、家族が人質に取られているという理由もあった為だ。
不意に、部屋の扉がコンコンとなる。来客だ。
「どうぞ」
ミサトが入室を促すと、入ってきたのは碇ゲンドウ副司令代理であった。
「葛城司令。これを」
ゲンドウは加持を横目にミサトのデスクに近づいて、分厚い書類を彼女に手渡した。表紙には『仮称ネルフLUNA建造計画案』と大きく書かれていた。
※
「渡りに船と言うべきか、弱り目に祟り目と言うべきか・・・・・・」
「・・・何があった?」
「とても。とても厄介な事が」
ミサトの独り言に疑問を覚えたゲンドウの問いに、加持が苦笑しながら簡単に説明した。
「なるほど。月の表面に亀裂、か。確かに、月の異常発生に対してはネルフLUNAの建造は有効。しかし世界情勢的にはネルフLUNAは悪手となる可能性が高い、か・・・」
ゲンドウがかつての冬月のように直立不動で腰の後ろで手を組み、加持の説明を噛み砕いて飲み込む。
ネルフLUNA建造計画とは、新生した月の観察、および非常時の対処を目的とした、超巨大宇宙ステーションの建造計画であった。シンジの最終号機を筆頭に、ネルフ主導で作り出されたこの新しい衛星は、現状、彼ら以外には非常時に対応できる手段を持っていない。だが地球から月までの距離は膨大で、迅速な対応が求められる場面においては、どうしても初動が遅くなる危険性があった。その解決策としてネルフJPN内で考案されたのが、地球と月の中間にエヴァンゲリオンを収容、および整備可能な宇宙ステーションを建造するというもの。つまりネルフの宇宙空間支部とも言える『LUNA』の建造計画であった。
しかし、この計画には一つの懸念事項があった。全地球使徒探査殲滅ネットワークと同様の問題である。ネルフLUNAの目的・対象はあくまで新生の月であるので、地球全域を監視する先述のネットワークシステムとは設計思想が根本から異なるのだが、各国はそうは捉えないだろう。「また各国の遥か上空にエヴァを配備するのか」。そういった猛反発を喰らう事は火を見るより明らかであった。
ゲンドウがサングラスの位置を直す。
「ユーロからの声明は?」
「まだ未発表ですね」
「ならば先にネルフLUNAの建造計画を大々的に発表すべきだ。数ヶ月前まで地球全体の問題だったのだ。各国が対応策を持たない以上、ネルフLUNAは認めざるを得ないだろう」
「・・・・・・」
ミサトは渋い顔でゲンドウの顔を見上げた。彼の言い分はわかる。だが、
「・・・・・・そのかわり、洞木ヒカリとウルトビーズは確実にユーロに取られるわね」
交換条件だ。ネルフLUNAが戦力の一極化を目的としていないのなら、洞木ヒカリ、EVA・EUROII・ウルトビーズは返還しても問題ないだろう、とユーロが反論する道筋は既に見えている。しかしミサトは、その選択肢をなるべくなら取りたくなかった。
人情。そう、人情だ。作戦課長であったミサトは、作戦立案に際して人情をなるべく排除した作戦を立てる事を心掛けてきた。最優先目標を達成するためには必要不可欠な事だ。だが、つい先程加持に漏らした通り、「彼らに普通の高校生活を」というミサト自身の本音もある。
その葛藤を、加持も、ゲンドウですらも感じ取っている。
その上でゲンドウが放つ次の一言は、
「渡してしまえばいい」
実に彼らしい一言であった。
「葛城司令。司令がそのように悩む理由は私にも少しは理解できる。だが最終目標を見誤る事は見過ごせない。人類全体にとって月の存続は最重要課題だ。それをたった1人の少女のためだけに、計画の進捗を大幅に遅らせるつもりか?」
「だけど処刑の可能性もあるのよ!?そんな所に洞木ヒカリを送り込まないといけないって本当に理解しているの!?」
正論。ゲンドウが正論をかざす故に腹立たしい。ミサトの葛藤は理論ではなく、ミサト自身の感情を発端としているのだから。
「・・・加持君」
ゲンドウが加持に問い掛ける。
「はい」
「洞木ヒカリの処刑は確定事項なのかね?」
「ん?それはまだですが?」
「ならば余計だ。確定的に対処しないといけない事を、未確定の情報に足を引っ張られて滞らせる。司令としては愚かの極みだ」
「〜〜〜っ!」
言いたい事言ってくれるじゃない!
そんな言葉が喉の辺りまで出かけるのを、ミサトは必死に抑えた。
「葛城司令。前司令として一つ助言しよう。こういった優先事項の決定に於いてどうしても切り捨てたくない心情が邪魔をするときは、優先事項を一つ下げるのだ。最高の結果を求めるのではなく、最低の結果にならないように先手を打つ事を心掛けたまえ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ミサトの中の反論を、必死に抑える。
やがて、ミサトは大きく息を吐いた。
「渡しましょう。ユーロに」
苦々しい思いを隠しもせず、ミサトは決断を口にする。
「ただし、『両ネルフ間の定期的な技術交流』。これを交渉のテーブルに載せる。パイロットである洞木ヒカリのパーソナルデータは私たちネルフJPNにとっても重要。なぜなら歴史上、アルマロスになって唯一帰還した人間なのだから。そのデータを提出し続けてもらいましょう。こちらからも出すけどね。加えて、『月の異常に対してネルフJPNの想定以上の事態が発生した際、既存のエヴァンゲリオンであるウルトビーズの応援を寄こすこと』。この二つをユーロがどこまで飲めるか。あとは向こうの反応を見るしかないわね」
その言葉に、ゲンドウも加持も頷く。
「俺としては、もう少し落とし所を調整したい所だがな」
「ならそれはアンタが考えて。時間が惜しいわ。マヤとリツコも呼ぶわよ」
ミサトがデスク上の電話の受話器を手に取って、技術部に繋ぐ。
「私よ。マヤとリツコをすぐに司令室へ・・・・・・・・・え?もう向かってる?」
タイミングよく司令室の扉がノックされる。十中八九、マヤとリツコだろう。
(今日は千客万来ねぇ・・・)
自分達から来たのだ。きっと悪いニュースを持ってきたのだろう。悪い報告こそ迅速に。大切な事だが、聞かされる側のストレスは相当なモノだ。
ミサトの予想通り、入室してきたのはマヤとリツコだった。マヤの表情は暗い。加えて、後ろのリツコは入室した途端、タバコを咥えて火をつけた。
「ちょっとリツコ?いくらなんでもその態度は・・・」
ミサトが注意しようとした時だった。
「葛城司令。喜んで?世紀の大発見よ」
「はぁ?どゆこと?」
マヤが、重い口を開く。
「葛城司令。人類は進化します。補完計画とは全く違う、群体としての人類の進化です」
その言葉に、司令室に居た全員が凍りついた。
──────
「リリスはもういない。エヴァの新造は難しいだろうか?」
「難しい、ではなく無理だ。全く別のアプローチが必要だろう」
「日本の戦略自衛隊の開発した、『あかしま』だったか。あれは面白いな」
「幸い、エヴァンゲリオン製造のノウハウ自体は残っている」
「ならば、それで行こうか」
今宵も世界のどこかを月は照らす。その光は優しく、この星に寄り添い、見守っている。
その月明かりが遮られる場所。
暗雲の中、己の利権を追い求める者たちの脈動が、徐々に、確実に、運命の歯車を回し始めていた。
つづく