ペロロンチーノが帰ってきた。


世界はその祝福に喝采をあげた。
誰しもが笑顔となり、彼を迎え入れた。

墓の中に彼は入ったのだ

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鳥かごの中で

 

ペロロンチーノが帰ってきた。

 

 

世界はその祝福に喝采をあげた。

誰しもが笑顔となり、彼を迎え入れた。

 

 

**

 

「すげえ……楽しかったなあ……」

 

ペロロンチーノは仲間と一緒に作ったナザリックの自室で寝転んだ。

片付けという片付けをせず、画面に写って嬉しいかわいいものやイラスト、上下に並べると裸の幼女に見えるような見えないようなマンドラゴラのイラストを出しっぱなしにしていた部屋はペロロンチーノがいなくなった間にしっかりと整理整頓されており、さっぱりした部屋には肌色っぽい野菜の絵が左右に並んでいる。

 

「飯がなあ、やばいよなあ……」

 

ナザリックの食事はやばかった。

元々はゲームユグドラシルの、飲食ボーナス目当てのコックのはずだが、きっと上流階級でも食べられないだろう美食が毎日振る舞われるのだ。気のせいか少し腰回りが柔らかくなっているようなきがする。

 

「フォアグラになりそう……」

 

ユグドラシルでもセンスのいる飛行しながらの狙撃を百発百中で当てていたユウガでかっこいいバードマンの姿はおそらくもう崩れていそうだ。

 

ペロロンチーノはギルドアインズ・ウール・ゴウンに所属していた。

けれどリアルの厳しさであったり、ある程度皆でやりきってしまったことの満足感であったりが原因で徐々にログインするメンバーが減りだしていった。みんなとの日々が楽しかったはずだが、人が少ない曜日なんかはどっぷり時間の取られるゲームではなく、ライトなエロゲで時間を使ってしまったりして、段々と遠のいてしまっていたのだ。

 

それがなんの因果だろうか、ユグドラシル終了が決まってからまたログインしてくれないかとメールがギルマスのモモンガさんから来て、せっかくだからシャルティアのスクショを取りまくっておこうと思いログインしようとして……頭の奥から激しい痛みを覚えて気がつけば俺は異世界にいたのだ。

 

「異世界転生なんてなあ……マジであるんだもんなあ」

 

突然死したのではないかと思う。

だが、その自分の意識はバードマンになっており……知らない街? 中で意識が目覚めたのだ。

ここはどこですか、GMコールがつながらないんですけど。

ゲームのことは何も伝わらなかったが、街の人は不思議そうな顔をしながらもここがどこか教えてくれたのだ。

 

『アインズ・ウール・ゴウン魔導国ですよ』

 

その後のことは細かくは覚えていない。

なんだかとんでもないところに迷い込んでしまったような不安な気持ちになって、街をウロウロしているうちに兵士達に職質。

名前を伝えたところなんだか急に扱いが変わって豪華そうな応接室に案内されたと思ったら、姉ちゃん、ぶくぶく茶釜のつくったNPCのアウラとマーレがやってきたのだ。

 

姉ちゃんは結構人気の声優で、プロとして働きだしてからはちょっと疎遠になりかけていたものの、ユグドラシルをきっかけにまた仲良くなることができたのだ。

そんな姉の作った姉弟は自分たちを模したキャラになっていて、それが生きて動いていると……自分の過去より遥かに立派な姿でなんとなく姉の美化のようなものを感じたりしてしまう。

 

その後はモモンガさんと再会して、突然死したと思ったらここだったんですと伝えたら皆が泣きだしたりして。

彼ら全員から(約1~2名除く)から戻ってきてくれてありがとうと感謝と深い思いを捧げられた。

 

感じていた迷い込んでしまったような怖さは消え、またあの楽しかった日々を送ることができるんだって喜んだ。

なにせ俺たちのリアルの世界といえば荒廃しきっており、逃げ場のない毒の世界で僅かなリソースをみんなで奪い合いながらせせこましく生きていたのだから。

 

それを思えばユグドラシルをリアルにしたよりずっとすばらしいこの世界は幸福そのものと言っていいだろう。

 

「シャルティアの結婚式素敵だったなあ……」

 

モモンガさんがこの世界に来てからすでに100年が経過しているらしく、ネクロフィリアと設定した性癖をぶち込みまくったあのシャルティアはモモンガさんの第二の妻になっていた。

娘が嫁いでくれて感動のような寝取られたような微妙にもやもやする気持ちに「結婚式はあげたんですか?」と聞けば『そういえばあげてないです』といわれてじゃあやりましょうと即式が整えられた。

 

あんな素敵な結婚式は初めて見た。

父親として送り出してくださいといわれれば感極まってしまって、涙をボロボロ流しながら鼻だってたれてたかもしれないけど、そんな状況ながらもシャルティアが嫁に行くのを心から祝った。

でもモモンガさん爆発しろって思ったけど。

 

「その後は……その後は……」

 

そのくらいで段々と現実感を感じるようになった。

これは夢じゃない。

肌の感覚も匂いもあり、痛みがある。

これはゲームの延長でも死ぬ前の走馬灯でもない。

 

どこかふわふわした酔っ払いっぱなしの気分のまま毎日を過ごしていた。

それが崩れたのは一言ぼやいた瞬間だった。

 

「ずっとナザリックの中にいるし外にでかけたいなあ~。ずっとナザリックじゃ窮屈じゃん?」

 

その瞬間感じたのは殺意だった。

ずうっとニコニコしていたはずのモモンガさんの妻のアルベドから背筋が凍る恐怖を感じたのだった。

 

「い、いやほら、ちょっと運動不足感あるし、最近飛んでもないんだよね……」

 

なんてごまかしたが、彼女から感じたものにペロロンチーノは命の危険を感じた。

なぜ、どうして。

そうしてようやく現実を見る気になったのだ。

 

ナザリックは俺をどう思っているか。

 

モモンガさんを含めたほぼすべての存在が俺にこのままここにい続けてほしいと願っており、アルベドと……ほか1名、パンドラズ・アクターだけが俺に別の感情を抱いてた。

アルベドは殺したいと思っており、パンドラズ・アクターは逃げたり去ってモモンガさんを傷つけようとするなら殺す、だろうか。

 

ペロロンチーノは一般人だった。

たっちさんのように犯罪と向き合ったり武術をなれっていたら別かも知れないが、初めて目の辺りにした暴力の気配にぶるってしまった。彼らの視線が恐ろしく、それにさらされるのが怖くて避けるようになり、避けるようになっても見えないところから狙われている用に見えた。

逃げ場を求めてうろつき、見てしまったものも悪かった。

 

可愛らしいプレアデスの一人、エントマが人を喰うところを見たのだ。

彼女に気づいたペロロンチーノにエントマは明るい声で、『お仕事を褒められて生きの良い人間をモモンガ様にもらったんですう』と答えた。嘆き絶叫する少女を痛みでなぶるように足先からかじりつくエントマはあまりにもおぞましかった。

 

可愛い女性は助けなければいけない!

 

そんな遊びの心情は一切浮かばなかった。

あるのは自分は食われたくない、という気持ちだけだった。

 

『モモンガさんが! なぜ! モモンガさんがっ!!』

 

もしも、ペロロンチーノが例えばモモンガと一緒に転移をして、一緒に女の子を助けるためと兵士を打っていたのであれば【そういうもの】として心のなかで処理ができていた。異形化もあり、バードマンとして、敵対する人間を簡単に処理できたかもしれない。

けれど、死の恐怖を感じ続けていたペロロンチーノにとって、喰われている人間は自分自身のように思えた。

信頼している信頼したい、すがりたい友人のはずのモモンガが行った人食いはペロロンチーノの心を恐怖させた。

 

こわい、こわい、こわいっ!

 

『ペロロンチーノさん元気ですか? 俺はですねえ……』

 

不意につながるメッセージ。それが監視のようにも釘を差したようにも聞こえる。

モモンガは頻繁にペロロンチーノにメッセージを送ってくる。

それは仕事の中で少しでも友人と接したいという気持ちの現われだったのかもしれないが、こちらのことを全く気にせず自分たちの冒険を話し続けるモモンガがまるで機械のように思えてきていた。

 

改めてアルベドが企画したという外出はパンドラズ・アクターを連れたものであり、自由という言葉を感じることができない決められた道を歩くツアーだった。

今この瞬間に飛び出せば逃げられるんじゃないだろうか。

しかし飛び出すために足に力を入れた瞬間にアルベドが、パンドラズ・アクターがこちらを警戒して動くのだ。

ワールドアイテムを抱えている二人に狙われればどうしようもない。

諦めざるを得なかった。

 

そして、アルベドとパンドラズ・アクター同伴の外出が二度三度と続くうちにペロロンチーノは外に出ることを諦めた。

 

「辛い、こわい、辛い……逃げたい……」

 

ずうっとずうっと部屋にこもっていたい。

けれど、そうすると心配の声がかかる。

アルベドが、パンドラズ・アクターがやってくる。

 

『外は怖いですか? 大丈夫です、私がついておりますし、そう、蘇生の魔法もございます』

『モモンガ様がご心配しておいでです。ペロロンチーノ様』

 

モモンガさんに心配されるようなことをすると二人が様子を見にやってきてしまう。

ペロロンチーノは何でもないふりをすることを強いられた。

だが、モモンガとの会話もまた苦しいものだった。

 

『ペロロンチーノさん、バードマンって寿命が短いじゃないですか。よかったらおすすめの寿命のない種族になりませんか? 俺のおすすめはアンデッドです! なんて』

 

このナザリックにおいて死はこれ以上の苦痛を与えられないという意味で【慈悲】である。

どうやら自分には逃げ道がないようだった。

 

チクチクと逃げ場がなくなっていく。

愛するNPCであったはずのシャルティアも第一の味方ではない。

彼女もまたモモンガと同じようにナザリックの中にい続けることを望んでいる。

 

誰もがみんな、この墳墓で永遠に眠れと望んでいる。

一部は生きたまま、一部は死んで。

 

鳥かごのような墓の中で、それでもペロロンチーノは死にたくないと願った。

 

けれど、墓の中にいる。

 

 





なおモモンガさん的には「あーやべー、100年分もあって話しきれないー! 一秒ごとに精神が沈静化される~!」で、「ペロロンチーノさんもナザリックを気に入ってくれてるっぽいうれしー!」でかなりすれ違っている模様。

まあ永遠に逃さないという意味では変わらない。



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