彼岸花と迷い犬   作:黒ゴマアザラシ

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いつか海の見える部屋で 前編

千束は、見てしまった。

たきなのスカートの中に隠れていた物を。

女の子の武器であり、男の夢と希望が詰まっている、パンツだ。

彼女と過ごして今まで気にも留めていなかったが、ひょんなことから千束はそれを目撃してしまう。

たきなが履いていたパンツ。

それは、トランクスだった。

たきなと、それを提供したミカの事情聴取により、リコリスだったたきなに足りていない女の子としての自覚が如実に表れた事件である。

今までは寧ろその無知さ加減が、教え込んでいるという優越感により興奮を煽っていたのだが、この三ヶ月、たきなに目新しい変化はない。

DAの悪いところだ。

一つの価値観に染め上げて、他の視点を切り捨ててしまう。

その点では、たきなは優秀なリコリスだったのかもしれないが、今は違う。

今の彼女は、DAのリコリスじゃ無い。

千束達と共にいる、喫茶リコリコのリコリスなのだ。

故に、千束は強攻策に出たのだが…。

「おまたせしました」

千束達の最寄り、北押上駅の一角でたきなを待っていた千束は、現れた彼女の姿を見る。

制服を禁止させ、私服で来いと云ったが肝心のコーデはと云うと…。

「お…おお~。新鮮だな」

「問題ないですか?」

たきなの私服はあまりにもラフすぎた。

部屋着でも使わないようなTシャツとジャージ。

選んだのがミカであるのは明白だった。彼の美的センスは、トランクスをたきなに進めた時点で察していたが、ここまでとは思わなかった。

だが、千束の胸中には別の感情があった。

「銃持ってきたな貴様?」

「駄目でしたか?」

「抜くんじゃねぇぞ」

たきなは銃を仕舞っている学生鞄まで持ってきていた。

制服だとリコリスとして活動できないのは知っているだろうに。

(あ、でも織田作は銃使っちゃってるな)

先月のDA本部訪問で千束自身も明確な基準がズレ始めてきているが、たきなにまで浸透させるわけにはいくまい。

(ここはきっちりファーストの私がきっちりしないと)

珍しく、先輩リコリスとしての自覚が芽生えた千束だった。

「千束その衣装は自分で?」

「衣装じゃね……ん?」

たきなとの買い物のために必死でコーデした選りすぐりの私服達を変装用の衣装と勘違いされてはたまったものではないが、言い切る前に千束はある人物を見つけてしまった。

噂をすれば影。

特別にDAから許可をもらってこそいるが、銃を携帯している犯罪者もどきが一人。駅前を歩いていた。

人混みの中を歩く赤銅色の癖のついた頭髪をした長身の男。

夏なのに羽織っている長袖の外套が千束の目に留まった。

「…あれ、織田作?」

織田だ。

千束が織田作というあだ名で呼ぶ彼が、町中を歩いていたのだ。

「え? どこですか?」

「ほらあそこ」

「あ、ホントだ」

指さすとたきなも彼を捉えた。

千束の記憶にも、彼がこの日はシフトが休みなのは把握していた。もとよりあまり客足が少ない店なのと、リコリスとしての活動を優先することもあるため、千束もたきなも自由時間は意外と多い。

だが、織田が休日に何をしているのか、1番長い付き合いの千束ですら知らなかった。

「……休日ですし、声をかけない方がいいんじゃないですか?」

「いいや、気になるね」

「え?」

好奇心が千束の胸を踊った。

厳密に言えば千束には跳ね上がる胸などないが、気分がそうさせる。

いつも何を考えているのかわからない織田が、普段どう過ごしているのか知りたい。

店で見せる顔以外の姿を見ることができるまたとないチャンスだ。

「ちょっと追っかけてみよう」

「え? 買い物はどうするんですか?」

「だーいじょぶだって、ちょっとだけ~」

好奇心のまま、千束とたきなは織田の後をつけることにした。

尾行開始から数分後。

「なんでこんなことに…」

たきなが、不機嫌そうな表情で呟く。

二人の目の前には、織田の姿がある。

駅から少し離れた薄暗い繁華街へと入って行く。

太陽はもう上がりきっているのに、路地裏の中は密林のように光が遮られており、湿気による暑さや空調のダクトから流れる熱風が不快感を募らせる。

その中を、織田は迷いなく進んでいく。

まるでここを自分の庭であるかのように。

「あ、見失うよ」

「うぅ」

二人は慌ててその後を追いかける。

入り組んだ道。

織田は何度も角を曲がり、そして、ある建物の中に姿を消した。

「あの建物って……」

「…雀荘、ですか?」

二人が辿り着いた建物は、古びた外観をした雀荘だった。

店の前には、古びた看板が立てられており、糊の痕跡から雀荘の文字か辛うじて読み取れる。

「へぇ…織田作って結構俗っぽい趣味してるんだね」

「あの、入るんですか?」

「もちろん」

「えぇ……」

渋々ながらもたきなはついてくる。

電源の入っていない自動ドアをこじ開けると、店内は煙草の煙で充満しており、カウンターで暇を持て余す店員と、卓の前で一喜一憂する男達が目に入った。

平日の昼間だというのに、多くの客がいるようだ。

「…ここ、違法の店じゃないですか?」

「今は制服着てないから銃抜かないでね」

変に暴走しないたきなを抑えようと小声で制止するが、二人の声は店内の喧噪に揉まれてかき消える。

だが、二人の存在に気づいた店の亭主らしき男が、「おい」と声をかけてくる。

「ここは子供の来るところじゃないよ」

「あ、すいません」

「えぇ~? 私ぃ、こう見えて二十歳なんですけど?」

「変な嘘つかないでください」

千束の大根役者のような演技にたきなは突っ込む。

だが、男はそんなやりとりを無視して、千束達に詰め寄る。

「とにかく、出て行ってくれ! 変な噂が立ったらどうするんだ」

違法の店である手前、後ろめたいことが多すぎるのか、それとも単純に子供が来たのが気に食わないのか、男は怒鳴りつけるように言う。

だが、店の奥から「おやっさん」と、千束達が聞き慣れた低く柔和な声が響いた。

「その子らは俺の連れだ。入れてやってくれ」

現れたのは織田だった。

紫煙が立ちこめたテーブルから立ち上がった彼は、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。

「なんだそういうことなら」

織田の顔を見るなり、男は不服ながらも納得したようで、そそくさと奥に戻っていった。

残された千束達は、互いに顔を見合わせる。

織田は、相変わらずの無表情だ。

千束達の前で立ち止まると、織田は言った。

「全く、お前ら買い物に出かけたんじゃなかったのか?」

「いやー待ち合わせたときにたまたま織田作を見かけちゃって」

千束は悪びれる様子もなく答え、たきなは呆れた顔でため息をつく。

織田もまた、彼女達にここがバレたくなかったのか、額に手を当てながら頭を抱えていた。

同時に、店の奥から織田の名を呼ぶ声がこだまする。彼はすでに卓についていたらしい。

「すみません。すぐに出ま」

「ちょちょちょ、少し織田作が打つところ見てこうよ」

千束は、「いいでしょ?」と織田の肩を揺さぶった。

「……仕方ない」

諦めた織田は、ため息まじりにそう呟いた。

「手短にすませるから、あまり他の客に迷惑かけないようにしろよ? あと、あまり目立つ行動もな」

「はーい」

「わ、わかりました……」

二人を連れて、卓へと向かう。

織田の卓には、すでに三人の男がいた。

「織田君、遅かったじゃないか。待ってたんだよ?」

一番奥に座っている細身の眼鏡をかけた男が、織田に微笑みかける。

織田は小さく会釈しながら、空いている席に腰を下ろした。

織田の隣に座る織田よりも背の高い筋肉質な男が、織田に声をかける。

「おや、今日は可愛い子を連れているねぇ」

「……ええ」

織田は適当に返事をすると、隣にいる千束とたきなの方を見た。

「同じ店で働いてる同僚です」

「どうも~」

「こ、こんにちは……」

二人はぎこちなく挨拶をする。

千束は愛想よく笑顔を振りまいているが、たきなはまだこの環境に慣れていないのか、挙動不審になっている。

彼の横では、煙草をくわえたまま織田を睨むように見つめる大柄な男がいる。

「……誰だよ、そのガキが来る場所じゃねえだろ」

低い声で、織田を問いただす。

「すみません。これが終わったら連れて帰るので、手短に」

「ああ!?」

織田の一言に、男の口元から上る煙が怒りで揺れ動く。

「織田さん、早く始めましょう」

「……そうだな」

正面に座る、線の細い優男の言葉を受け、織田は静かに卓の上に牌を積む。

織田は一通り配り終えると、自身の前に積んだ山の中から一枚をつまんで、自分の前に置いた。

そして―――

パチン、と、乾いた音が店内に響く。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「いや~やっぱり見立て通りだったね~」

「よくわかりませんでしたけど、勝ったんですよね?」

「うん、それも大勝ち!」

半荘を終えて、野次馬根性丸出しの二人を連れて店から追い出したはいいものの、この二人は私から離れる素振りが無い。

おもに千束なのだが。

千束はただ観戦していただけなのに、まるで自分が麻雀を打ったかのように満足げな笑みを浮かべていた。

一方たきなは、終始きょとんとした表情で、千束の後ろを歩いていた。

薄暗い繁華街から少し出た大通りの中央、濡れた落ち葉のように彼女達は付いてくる。

「織田作なら絶対勝てるって思ってたよ。なんてったって未来が見えるもんね?」

千束の言葉に大きなため息が一つ。

私があの店に通っていたことを千束達に隠していたのがその最たる理由だ。

私には5~6秒先の未来が見える。

手番の周りが早い麻雀ならば、次に引く牌や、相手の待ちがわかるのだ。

つまり、最短で手を作れる上、直撃を受ける可能性がほぼない。

この異能力を知っている千束が、店から早々と出ようとしなかったのはそのため。その上、私が千束達を店から出したいため相手を飛ばすしか無い。

異能を使えばたやすく行われるこの状況にこそ、私をつれて店から出た理由だろう。

「織田作~、今月ね、ちょ~とピンチなんだよね」

千束は、隣を歩く私にすり寄るようにして近づくと、甘えた声を出す。

「だからバレたくなかったんだ。特に千束に」

「も~そういうこと云う人は~たきな!」

「はい?」

「織田作の反対側に回って」

「わかりました?」

「それで織田作の腕に抱きついて」

「こ、こうですか……きゃっ」

私の腕がたきなの肩にぶつかってしまう。彼が動いたのでは無い。

千束もまた、私に近づくと腕を組んだからだ。

「ちょっと、千束?」

「なんだこれは?」

「よぉーし、出発、進行ー!」

戸惑う声を無視して、私とたきなを引きずるように歩き出す。

おとなしく引きずられるしかなさそうだ。

そのまま、俗に云う両手に花、ある界隈だと百合の間に入るという原罪として処されることになる状態のまま、駅近くにあるショッピング街へと辿り着く。

特にここは若者向けの衣服を取り扱っている店が多く、平日にも関わらず多くの人で賑わっていた。

「そういえば、たきなも織田作もいつも同じ服着てるよね」

賑わいの中、私の腕にくっついたまま千束はそんなことを言う。

「気にしたことなかったな」

「普通そうでしょ?」

私は単に無頓着なだけだが、たきなは違う。

リコリスとして日夜、犯罪者やテロリストを始末してきた彼女にとって、お洒落をするという発想すら無かったはずだ。

云われてみれば、千束もたきなも今日はリコリスの制服では無い。

千束は半袖の赤い外套の下に黒のTシャツとショートパンツを履いていて、一見暑そうだが夏らしい服装だ。

たきなはというと、まるで部屋着でそのまま出てきたようは風体だ。

「ね~買おうよ。たきな絶対似合う!」

「そうでしょうか?」

「織田作も買おうよ」

「俺はいいって」

「え~」と、千束は不満そうな顔をする。

「だって織田作、夏なのにそんなコート着て暑くないの!? 見てるこっちが暑いしなんなら今抱きついてるんだけど?」

「もうずっと着てるからな」

ヨコハマでは年がら年中この外套を着ることが当たり前だった。

諸外国が先の大戦によって生み出した数々の治外法権により、戦時中以上の治安の悪さを誇った魔都ではいつでも銃を隠し持てるように重ね着をするのがもはや社交辞令のようなものだったのだ。

とはいえ、ここ東京はそうじゃない。

何年連続だが知らないが、私を挟んでいる少女達リコリスの活躍によって世界一の治安の良さを誇る場所だ。

習慣になっているとはいえ、良い機会のなのかもしれない。

「そうだな。服はよくわからないから千束が選んでくれ」

「では私も、よくわかりませんし」

「えっ!?いいの!?お~!やった~!テンション上がるわ~!ははははは!」

先程までの不機嫌さが嘘のように千束の表情が華やぐ。

彼女は私から離れると、両腕を組んで楽しげに笑いながら、私の前を歩く。

「じゃあ早速行こうよ~、ほ~ら~、たきな~、早く~」

「はいはい……」

千束のペースに乗せられたたきなが苦笑しながらその後ろに続く。

「織田作さん、行きましょうか」

いつの間にか腕を放していたたきなに呼ばれる。

先月から、千束のことをさんをつけなくなったのを思い出す。並んで、千束と同じように私のことを織田作とも呼んだ。

わざわざ『さん』をつけてくるところに、私のもう一人の友人の面影を感じて思わず口元が緩む。

「ああ、そうだな」

「も~二人が来ないと意味ないでしょー!」

振り返った千束が私達に向かって叫ぶ。

私達は顔を見合わせると、彼女の元へ歩き出した。

 

 

―――

――

 

それから1時間ほど、私は試着室のカーテンを開けた。

狭苦しい個室から広い店内に一望できる。

その一番目立つところに千束とたきなが立っていた。

まるでランウェイを歩く芸者を待ち望むような視線が突き刺さる。

「おぉ!」

「結構印象変わりますね」

二人の反応は上々だ。

半袖の白いTシャツの上に濃い赤色のジャケット、黒のズボン。どちら薄手の生地だからか、行きしなに纏っていた衣服と比べて随分と身軽なる。

何より、使い古して傷んだ外套と違い、新しい衣服には清潔感があった。

「いいね~、やっぱり織田作は背が高いから映えるね~」

さながらファッションデザイナーの監修のごとく千束が満足げにうんうんと肯く。

たきなもまた、私の姿をまじまじと見つめていた。

彼女も千束セレクションの夏服に身を包んでいる。

灰色のポロシャツと白いスカート。

これだけだとシンプルに見えるが、私の衣服と比べて細い装飾が施してある。

女性が身につける物と云うのは、総じて男と違って凝っているようだ。

「たきなも似合ってるじゃないか」

「…ありがとうございます」

相変わらず顔に感情があまり出てこないたきなだが、声色が満更でもないことを物語っていた。

たきなが千束達に出会って三ヶ月。

最初こそあわやとなるところもあったが、収まるところに収まったようで何よりだ。

「じゃあー今度は化粧品見に行こっかー」

「あの千束、そろそろ本来の目的を…」

「え?」

たきなの言葉に、千束が固まる。

「あ……」

声をこぼした彼女はぎぎっと油の切れたブリキ人形のような動きで首を回した。

私の方を向く。

状況が一切飲み込めないが、たきなが口にした本来の目的とやらを未だに聞いていなかった。

そもそも、どうして二人が街にでかけていたのかも知らないのだ。

「えっと…ね、織田作。こっからは別行動できない?」

ぎこちない声でされた提案に、「何故」と尋ねるがまともな回答は返ってこない。

「いやその…とにかく! ちょっとたきなと二人っきりで買い物したいの!」

「別に良いが、何をしに行くんだ?」

「織田作さん、今日は千束が私のぱ――」

「ちょちょちょちょっ!! たきなダメダメ!!」

慌てて千束が彼女の口を塞ぐ。

なんだ? 今、何かを言いかけた気がしたが……。

「と、とにかく! 私達ちょっと別のところ見てくるから織田作も好きなところ行ってて!!」

何にせよ、二人がそうしたいというのなら、それに従うしかない。

私は千束に逆らえないのだ。

まったく、付いて来いと言えば、今度は来るなと、我儘なお姫様を相手にあぁでもないこうでもないと云われている気分だ。

「わかった。じゃあ、また後でな」

「うん! ありがと~!」

そう言って、千束はたきなの手を引いて、人混みの中に消えていった。

残されたのは私一人だけだ。

とりあえず、この場から離れよう。

 

服の会計を済ました私は、そのままの格好でショッピング街を歩く。

平日の昼下がりとは言え、さすがは東京の中央。

人の往来はそこそこ。

真新しい衣服を連れて歩けば、私も東京の一員になれたかのような錯角を覚えた。

せっかくの休日、一人の時間だ。

私も自分のしたいことをすることにしよう。

千束達と分れた服屋を出た足で私が向かったのは本屋だ。

この手の書店に足を運ぶ機会はあまりない。

基本的に図書館や古本屋ばかり選ぶ私の感性がズレているのだろうが、案外、こういう新しい物が入りやすいこのショッピング街ならばあるかもしれない。

店に入ると、キズ一つ無い本や雑誌が所狭しと並べられていた。

どれも真新しく煌びやかで、まるで宝箱の中に入った宝石を眺める感覚に近い。

だが、その輝きは私が探し求めている物では無い。

私は店に並べられた本棚の前に足を止める。

視線を上げれば純文学と書かれた札が立て掛けられており、店の店員達が手描きで作ったポップが目に入る。

数々の有名な作家の名前が連なっている。だがその空間はあまりにも狭い。

やはり若者向けの書店では、この手の小説は人気が無いのだろう。

新鮮さと若々しさを発しながら歩くここの人々が、過去の人間が書いた文字の羅列に興味を持つなどよっぽどの変わり者。

もっとも、その変わり者が私のわけだが。

だが、探さないという選択肢は無い。

もしかしたら、ここは店員達により厳選されているだけなのかもしれないのだから。

それならば、あるいは、あるかもしれない。

と、淡い希望を胸に私は敷き詰められた本達と向き合うことにした。

が、それは儚い望みに終わる。

「……ないか」

やはりなかった。

落胆のため息が落ちる。

私が昔、何度も何度も読み返した本。

上巻、中巻、下巻と分れていたその本を、私は故合って無くしてしまった。

そのうち、二つは読んだ。

読み返しすぎて、文章をそのまま書き写すくらい出来そうなほど読み込んだ。

だが、下巻だけが見つからなかった。

結局、読むことは叶ったが、最後の数ページが切り取られていた。

――ならばお前が書け。その資格がお前にはある。

――小説を書くことは、人間を書くことだ。

――どう生き、どう死ぬべきかということをな。

 

この世界なら見つかるかも知れないと思った。

そうすれば、諦めもつくとだろうと。

 

いつか、いつか、何でも出来るようになった時に、

私は――

 

「…俺は、俺にはもう」

「織田作さん!」

突然、名前を叫ばれた。

振り向けばそこには見知った顔がある。

たきなだ。

長い髪を揺らしながら、彼女は私の元まで駆け寄ってくる。

 

「ちょ! たきな! 止まって!! お願い!! 待って!!」

その後ろを千束が追いかけてくる。

何故、彼女がここにいるのかは分からないが、何かあったのだろうか? たきなが私の目の前に立つ。

ずっと私を探して回っていたのか、体力のある彼女が肩で息をしていたのが想像できた。

それほどまでして私を探していた理由とは一体なんなのだろう。

「あの……織田作さん」

「…どうした?」

絶え絶えの息を整えながら真剣な花色の瞳が私を貫く。

その眼差しから放たれる意志の強さに、思わずたじろいでしまう。

千束は買い込んだ荷物が邪魔なせいかまだ遠く、たきなを制止する声を店中に響かせることしか出来ていない。

こだまする声を振り切るように、たきなは云った。

 

 

 

 

 

「織田作さんは、私にどんなパンツを履いてほしいですか!?」













サクラ:フキせんぱーい! また例の物まねやってくださいよ~!

フキ:はぁ? なんでだよ。

サクラ:だってめっちゃ再現度高いんですもん! ね、ヒバナもエリカもみたいっすよね!

ヒバナ:見たい見たい! 頼みますよフキ先輩!

エリカ:私も…ちょっと見たいです。

フキ:えぇ~、ったくしゃーねーなー。一日一回だけな

サクラ:やったー! じゃあどうぞ!

フキ:………………二度目はなくってよぉ!!

楠木:何をしている貴様ら。

全員:ぎゃああああああああああ!!
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