モンスター娘に愛される   作:うろ底のトースター

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俺たちの住まうこの地の環境は、摩訶不思議なでき方をしたらしい。水の見当たらない砂漠もあれば、その隣に大河の流れる密林があるし、熱気に溢れる火山の隣に氷に包まれた凍土がある。

正しく、環境の坩堝。

今後は便宜上、この環境をそれぞれ『地方』と呼ぶことにする。

今回は林の点在する草原『原生林地方』に住まう友人の話だ。


オオナズチ娘に愛される

ん?ああ、きみか。どうやら早速僕のあげたノートを有効利用してくれてるみたいだね。結構結構。それで、用事って?

 

暇だから話を聞いて回ってる?いいね、とてもいい。面白そうだ。後で僕も読ませてもらってもいいかい?うん、ありがとう。君こそ僕の親友さ。

 

さて、僕と彼女の馴れ初めだったね。さて、どこから話そうか───。

 

 

 

僕が彼女と初めて会ったのは、驚くかもしれないかど僕の()()だ。

 

僕は昔から目が良かった。いや、おかしかったと言うべきかな。人と違うものが見えていたんだよ。皆が赤と言った花の色が、僕には青にも黄色にも、ましてまだ名前のついていない色に変わって見えた。

 

そんなわけで、僕は皆から疎まれていたんだ。よく分からないことを言う奴だってね。両親も僕を気味悪がってたよ。

 

僕の活動の範囲は、自然と家の中に限定されていった。そのときの友達は、スケッチブックと色鉛筆だったね。

 

そんな風に絵を描きながらダラダラと毎日を過ごしていたある日、両親が家を出払っていたときに、彼女に会った。

 

「あー・・・もしかして、見えてる?」

 

その台詞から、きっと僕以外は見えてないんだろうと察した。

 

見える僕を不思議に思ったのか、それからしばらく彼女と話すことになってね、僕にとっても久しぶりに対等に話してくれる相手だったから、うん、楽しかったよ。今でも覚えてるくらいには。

 

それにしても驚いたよ。なんせ彼女、あのオオナズチだったんだ。

 

信じたのかって?もちろん信じたさ。何せ僕の目に写る彼女は、今まで見てきた何よりも神秘的で美しかったんだ。もちろん、()()()()()()()()()()だけどね。

 

ともあれ、それからだね。彼女が僕の家に入り浸るようになったのは。なんせ消えることができるんだから、家族は誰も気が付かなかったよ。家も無駄に広かったし。

 

それから、私はずっと彼女の話を聞いていた。私が語れることなんて少なかったからね。

 

彼女が出会った多くのモンスターたち。彼女見た多くの光景。彼女の見た人の営み。彼女の見た、広大な世界。

 

・・・僕はね、見たくなったんだ。彼女が見たその世界を、僕の目で。そして描きたいと思った。見たままを、美しく神秘的に。

 

だから、僕は家を捨てた。そして旅に出たんだ。彼女に連れられて。

 

躊躇い?なかったよ。元々、家族に対して特別な感情なんてもう持ち合わせていなかったし。街だってなんの思い出もないただの場所。故郷なんて呼べない殺風景な場所なんだ。

 

むしろ、外へ出られることが嬉しかったよ。確かに家の出入りは自由だったけど、そうじゃない。街の外、もっと広い場所に出られるのが嬉しかったんだ。

 

独りじゃないってことが、すごく嬉しかったんだ。

 

一人じゃなかったろって。君、周りに人がいるのに感じる孤独が、一番辛いものだよ。

 

話が逸れたね。外へ出た僕らは、そこから世界を巡った。彼女が辿った軌跡を追うようにね。

 

彼女にとってはつまらない旅になるんじゃないかと思ったけど、どうやら、過去と今とで違いがあったみたいで、まるで喜劇を見る子供のように目を輝かせていたよ。僕も同じだったろうけどね。

 

楽しかった。雪を見たり、溶岩を見たり、見上げるほどの大樹を見たり、端の見えない砂浜と果てなどないかのような海を見たり。

 

そして僕らは、星を見た。

 

知ってるかい?砂漠の夜は寒いんだよ、雪山と同じくらいにね。

 

さすがにそんなこと僕も彼女も知らなかったからさ、2人で身を寄せあって、震えながら過ごしたよ。でも、そのときの星空はとても綺麗だった。

 

雲ひとつない快晴。星々が目まぐるしく色を変えて僕を楽しませてくれた。いつか、僕らは寒さなど忘れて星を魅入った。

 

うん、平坦に言うのなら、ロマンティックだったんだ、その夜は。

 

僕は外へ連れ出してくれた彼女を好いていたし、彼女もきっと同じだった。

 

焚き火に照らされたお互いの肉体。月と星々だけが僕らを見ている。

 

肌を重ねるのは、時間の問題だったわけだ。

 

 


 

 

「君のご希望には添えたかな?」

 

「勿論だ。話しにくいこともあっただろうに。ありがとうな」

 

「とんでもない。過去を思い出すことは、時に何より楽しい暇潰しになる」

 

暇潰し、そう言われて思い出す。そういえばもうすぐ彼女の狩りが終わる時間だ。

 

「ただいま〜」

 

間延びした柔らかな声。それを聞いて、彼は嬉しそうに笑った。

 

「おかえり」

 

「玄関に靴があったけど。あなただったんだね」

 

「お邪魔してる」

 

捲られた袖から紫色の鱗が見える、独特の瞳を持った優しげな女性。彼女こそ、この男の妻であるオオナズチだ。古龍だからだろうか、物腰が柔らかで常に余裕がある姿が、多くのモンスターたちの憧れになっている。

 

彼女は原生林地方の顔役も務めており、新入りにここのルールと住居を教えたり、相談に乗ったりしている。ギギのやつも何度か訪れているらしい。

 

何を()()したのやら、最近のギギは積極的すぎる。

 

「どんなお話していたの?」

 

「君と僕の馴れ初めの話だよ」

 

「あらーちょっと恥ずかしいかも」

 

俺という客人がいるにも関わらず目の前でイチャイチャと抱き合う2人に、相変わらずだなと苦笑した。

 

「2人とも、アツアツすぎて聞いてるこっち恥ずかしかったよ」

 

「でしょ〜」

 

上機嫌に笑みを深めた2人。このままじゃ人前でおっ始めるそうな勢いだ。

 

「それじゃあ、邪魔者はさっさと退場しようかな」

 

「おや、君の馴れ初めは聞かせてくれないのかい?」

 

「全部終わったら読ませてくれって言ったのはお前だろ?楽しみに待ってな」

 

「おっと、そうだったね」

 

男は肩を竦めた。

 

「なるべく早く頼むよ。僕らはもうすぐ旅に出るからね」

 

なるほど、保存食作りに精を出していたのはこのためか。こいつは一箇所には留まっていられない性分であり、オオナズチは既に彼なしでは生きてはいけなくなっている。いつかは出ると思っていたが、ようやっと、だろうか。これもオオナズチの透明になれる脳力あってのことだ。

 

しかし、彼らが旅に出るには一つやっておかなければならないことがある。

 

即ち、顔役の跡継ぎ探しだ。

 

「新しい顔役が決まったのか?」

 

「うん。僕らの次に古い彼女たちに頼んだよ」

 

そうか、それなら納得だと、俺は頷いた。

 

丁度いい、次は彼女たちに聞きに行こう。

 

次を少しばかり楽しみにしながら、俺は赤い夕焼けを背に家路を辿るのだった。




お久しぶりです。1話投稿して放置していたクソカスゴミカス、泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞでお馴染みの作者です。ティーダじゃないです。

しばらくぶりに書きたくなって書きました。楽しんで頂けたなら幸いです。

もう少しオオナズチらしさがだければなと少し反省・・・。舌の長さはR-18に行きそうで断念しました。

それではまた、いつかの更新の際に。
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