喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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ゴリラとバランサー

 

 

 昼の街は賑やかである。

 リコリコの建つ場所には無い騒々しさだ。

 俺と千束は地下鉄への入口となる場所で待機している。待ち人は勿論、昨日の夜を騒がせたトランクス少女たきなだ。

 今日は彼女のパンツを見繕いに来た。

 これ……俺がいていいの?

 荷物持ちっていうより拷問じゃないか?……と最初は思わされた。

 だが、千束がそれを把握してないワケが無い。

 

 コイツ……下着選んだ後は自分のショッピングを始める気だ。

 それも、俺の金で!!

 ウォールナット護衛の追加報酬で!!

 

 最悪だよ。

 ミズキさんの誕生日プレゼントを買う前に消費されなかったのは幸いだったが、これから俺自身に使う予定もあったのに計画がすべて台無しだ。

 クルミに依頼した『仕事』の報酬分でもあるのに。

 

「テン」

「あ?」

「にしし、似合ってるよ!」

「何が?」

「テンの服」

「いや、これオマエが買ったヤツだし。何なら昨日の夜に着てけと命令されたヤツだから当たり前だろ」

「素直じゃないなー」

「果てしなく面倒くさ」

 

 俺の私服姿が称賛される。

 それは別に悪い話ではない。

 でもコレ……オマエが着ろって選別したヤツだから、似合うって言われるに決まってるだろ!?昔から俺のファッションセンスはどうとか言っていつも服選ばせてくれなかったのオマエじゃん!!

 おかげで違和感しかない。

 服に着られてる感が全力で否めん……!

 

「それでー?」

「………」

「ん?ん?ん?」

「……悔しいが可愛いと思う。初対面だったら絶対気を惹かれてた」

「んふふー♪」

 

 心底遺憾だが、千束の服の感想を正直に告げた。

 いや、外見は可愛いと思うよ。

 元の素材が良い上に、コイツは自分の魅せ方を知っているから服もまた自身の個性を紛れさせず、最大限活かす方向性で統一させている。

 あー、いかん。

 コイツは千束、あの千束だ……。

 よし、ただのクソ小娘に見えてきた。

 

「それにしても、だ」

「ん?」

「正直、たきなの私服が気になって仕方がない」

「…………なんで?」

「いや、見た目はもろタイプだから。恋愛対象じゃないとはいえ、少し期待しちゃうんだよ」

「――――」

 

 そう言うと、千束は片手を背後の虚空で彷徨わせた。

 手先の動きは、まるで何かを探すようだ。

 何してんだ、コイツ。

 

 やがて、あっと声を上げる。

 

 

「今日は銃、置いて来たんだった」

 

 

 ……………………………ひぇ。

 な、何で今銃を探してたの?

 それで一体何をしようとしてたんですか!?

 表情は笑顔なのだが、明らかに目が笑っていない。殺意にも似た昏い感情が瞳の奥で燃え滾っているような剣呑な色をしている。

 う、うわー、もう可愛くない。

 俺が意識するまでもなく可愛くない。

 俺の中で危険な存在に認識が変わりつつある。

 

「あ、危ないからやめような?」

「テンのタイプって、たきなか」

「え?」

「たきなでしょ?」

「え、いや、ち、違うよ?」

「へー。じゃあ、どんな人?」

「へ?」

「どんな人?」

 

 そんなに気になる話題か!?

 そんな目をしながら訊ねる内容じゃないでしょ!

 お、おお俺のタイプ次第で殺されるのか……こ、ここは媚を売って千束と言っておくか?いや、「うわキモー」とか「真面目に答えろ」って逆上されるかもだし、ミズキさんとか?でも普段から有り得ない、って反応を返してるしな……。

 

 よし、ここは奇を衒ってやろう。

 俺は意を決して、口を開いた。

 

「く、クルミ……みたいな子かな?」

 

 ど、どうだ?

 恐るおそる千束の反応を窺うと………。

 

 

「……へえ」

 

 

 いやああああああああああああ!!!?

 何も変わってない!

 それどころか、何か瞳の色がどす黒い気がするんですけど!?

 は、早く!!

 早く来てくれ、たきな!

 この状況を綺麗サッパリに破壊してくれ!!

 

「――お待たせしました」

 

 来たっ!?

 その声に、俺は振り向――く前に顔を手で掴まれて固定された。

 千束さんだけが、たきなの方を見る。

 え、何これ。

 まさか、今日の俺の首の可動域を設定中か?今日はここまでしか動かしちゃダメって話か?

 ご命令とあれば従いますよクソご主人様。

 

「おー、新鮮だな」

「問題ないですか?」

 

 二人の会話に耳を全集中させる。

 え、新鮮ってどんな感じ?見たい見たい!

 俺も見せてよ。

 

「……銃持って来たな、貴様」

「ダメですか?」

 

 や、待て!

 その銃を千束にだけは渡すなよ!?

 しかも、たきなが使ってるの実弾だから確実にマズいよね。俺、罪状はわからないけど千束に処刑されちまう!!

 

「ところで、天さんはどうしたんですか?」

「あー……コイツ、たきなをエロい目で見てるって自白したから」

「おい、嘘も休み休み言え」

 

 俺は力づくで千束の拘束を振り払う。

 固定されていた首を回しつつ、たきなの方へ振り向いた。

 そこに――ザ・部屋着の服装のたきながいる。

 ううううん!思ってたんとちゃう!

 

 ……というか、何か顔を赤くしてこっちを見てくれないんだけど。

 

「そ、そうですか……」

 

 あ、これ嘘を信じ込んでる。

 もう終わった……オレノジンセイツンダッタダッタッター……。

 落ち込んでいると何故か千束にボディブローを受けたが、俺の鍛えた腹筋のせいで逆に顔を歪めて拳を痛そうに抱いている。

 生憎と頑丈さだけが俺の自慢だ。

 

「それじゃ、たきなも来たし行くか?」

「ソーダネー」

「千束?どうしたんですか」

「別に。今ちょっと世界終われば良いと思っただけ」

 

 うわ、根に持つなコイツ。

 この後にどんな仕打ちが待っているのだろうか。

 

 

 

 

 そんな俺の考えは杞憂に終わった。

 むしろ、ご褒美タイムが始まりつつある。

 

 立っているたきなに、千束は早速目についた二種類のスカートを手に、彼女に似合うか交互に見比べている。

 俺はそれを黙って後ろで見つめていた。

 時折、千束が俺に意見を求めてくるが、これは別に本当に聞いてはいない。単に俺が一人だと周囲に訝しがられない最低限の演技だ。

 珍しいぞ、そんな気配りできたなんて。

 まあ、俺も本気にしてないよ。

 だって、センス壊滅的とか言われたし。

 

 たきなに数着持たせ、試着室に押し込んだ千束がいい汗かいたとばかりに額を腕で拭う。

 

「ふふ、たきな良い素材だし期待高いわ」

「たしかにな」

「キミは見るなよ」

「何で!?」

「大丈夫!後で千束さんファッションショーで存分に目に焼き付けちゃるから」

「えっ、それは別に要らなゴガッ!!」

 

 顎に掌底打ちを食らってよろめく。

 おま、店内でそんな事するなよ…………!

 俺が苦悶している間に、たきながカーテンを開けて試着姿を披露する。何度も見ようと試みたが、その都度クソご主人様に臑を蹴られたり顎に拳を食らわされた。

 ねえ、痛いよ。

 最近、めちゃくちゃ多くない?

 

「めっちゃ可愛い!」

 

 結局、最終的な物しか見れなかった。

 可愛いけど、可愛いけど……過程が見たかった!

 

 悲嘆にひとり拳を握って悔しがっていると、たきながおもむろにこちらを振り返る。

 何だ?

 

「ど、どうですか?」

 

 え、それ俺に訊いてくれるの?

 よし、ここは真剣に答えよう。

 

 

「何故あと数年も早く生まれてくれなかったんだ?……絶対に結婚申し込んでたのに」

 

 

 ダメだ、千束に殴られ過ぎて頭がショートしていた。

 脳内で用意していた言葉と、口から出た物が丸きり違う。

 完全に欲望に走っていた。

 そして、とてもヤバい事を口走っていた。

 千束から電光石火の速さで膝を蹴られた、はいスミマセン!!!!

 

 ヤバいなー絶対に引かれたー。

 怖いけど、相手の反応を見るべく俺はたきなに視線を移す。

 

「どうも」

 

 少し照れた様子で、たきなが返してくれた。

 あれ、満更でもない?

 ……もう、年の差とか良いか。いやだめだ、俺は分別のある大人だぞ。現代では堅いとか言われるかもしれんが、せめて成人するまではダメだ。

 変な気分になっているからだ。

 よし、千束を見て落ち着け……フーッ。

 

「よし」

「よし!じゃねえよ」

「何を怒ってるんだ、千束?」

「その菩薩みたいな穏やかな顔やめろ!」

 

 何が不満なのか分からんようだ。

 結局、たきなは最後に試着した物を購入と同時にそれに着替えて行動する事になった。

 いや、良いけどさ。

 やっぱり俺、場違いじゃね?

 

 それからも、乙女の必需品を買い揃えて行く勢いで店を回っていく千束とたきな。いや、どちらかと言えば前者が引っ張り回している感じだが。

 

「たきな、リップグロス持ってるー?」

「千束、そろそろ本来の目的を……」

「あ、そうだった。下着だった!」

 

 ちら、と千束が俺に目配せした。

 はいはい、なら俺は適当に他所で時間を潰すか。

 

 そう思って、二人から離れた時にスマホが震動した。

 画面を見れば――『楠木』の二文字の相手からの着信だった。

 ふぇぇぇぇ(泣)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二時間後、俺は電話越しに怒られていた。

 

『…………』

「いやー、すまんなホントに」

『たきなも怒ってるんですけどー』

「本当に申し訳ありません……!」

『私の時より真剣味あるように聞こえるけど?』

「それじゃ、仕事なので失礼します」

 

 俺は強制的に通話を切る。

 現在、回送電車に乗っていた。

 そして、車両には俺だけではなく多くのリコリスが同車している。武装し、誰も彼もが緊張感を保って準備を整えている中で長電話など堪えきれない。

 

 やれやれ、困ったものだ。

 

 楠木司令からの唐突な連絡の内容は仕事だった。

 武装した連中が各方面からある駅に集合しており、そこに集合したところを叩く予定だ。

 リコリス数十名を用いた徹底制圧戦。

 俺は現場指揮兼リコリスの盾として、現場近くにいたので楠木司令から任命された。

 何も光栄じゃないが、コレをやらないとライセンスを剥奪するとか脅されたのでやるしかない。

 

 し、失敗しても俺の処遇が……。

 

「テン兄、緊張してる?」

「これでもしてるよ」

「そっか。実は私も」

 

 一人のリコリスが俺に話しかけてきた。

 この子は、何年も前から交流のある本部所属の子だ。

 すっかり大きくなって…………!

 たしか、今年で十八になるそうだ。

 

「ベテランの君でもか」

「うん。だって、これが終わったら私は引退だしね」

「っ……そっか、頑張ったな」

「あはは。やめてよ、まだ仕事前なのに」

「……それでもお疲れ様」

「うん、ありがと」

 

 涙目で彼女が頷く。

 そうだ、引退すれば命の危険はもう無い。

 本部や支部の職員になる以外にほとんど進路は無いが、それでも危険な前線から退ける事は恥ではなく生き残った者としての誇りとして後進のリコリスたちに映る。

 リコリスの仕事は常に危険だ。

 制服を着れるという理由もあるが、途中で命を落とすのもあって精々が十八、それが現役の歳とされる。

 彼女はそれを立派に果たしたのだ。

 

「それじゃ、最後の任務はバシッと決めないとな」

「うん。でも……」

「ん?」

「テン兄は、嫌じゃない?……殺しはしないって聞いたよ」

「…………」

 

 鋭いな。

 でも、仕方がない。

 DAの仕事は気に食わないが、それで実際に守られている命もある。歪んだ平和に変わりはないが、それを俺一人の文句で捻じ曲げる力がない以上はどうしようもない。

 俺は現場指揮。

 実際に手を汚すのはリコリス。

 非常に不愉快ではある。

 だが……やる以外に無い。

 

「俺が駄々こねてもな」

「……そっか」

「それじゃ、みんな頼むぜ」

 

 予定の時刻が近づく。

 

『目標、地下鉄に到着したそうだ。武装を完了し、待機中……総員、警戒態勢。何処か物陰に伏せておけ』

 

 通信機を介して、全リコリスに告げる。

 俺もまた扉の傍の壁に身を寄せた。

 もうすぐ到着する………三、二、一……………

 

 

 

「――――――ッッ!!」

 

 

 駅に到着するなり、銃弾の雨が車両を襲った。

 窓が弾けるように砕け散り、頭上やすぐ横を鋭く空気を焼き裂いて弾丸が飛んでいく。

 少しでも頭を出したら即座に吹っ飛んでたな。

 通過していく車両へとひたすら撃ち、車内の人間を鏖殺するつもりで相手は銃撃を行っている。

 

 電車が停車し、敵の一斉掃射が止まった。

 

 電車の扉が、ゆっくりと自動で開く。

 ここか。

 

「『今だ。―――やれ、一斉攻撃』」

 

 俺の合図に合わせて、リコリスたちが身を乗り出して駅ホームにて構える目標たちに向けて発砲する。

 員数を重ねた人海戦術。

 それが一斉に撃てば、逃げる場所などほとんど無い。

 俺も窓から顔を出せば、次々と斃れる敵が見えた。

 

 一人だけ、物陰へと素早く逃げる影がある。

 

「『一人、柱の影に逃げた。回り込んで仕留めろ』」

 

 俺の指示に従い、何人かがホームに躍り出る。

 その時だった。

 

 

 

 

「そうか――おまえらかっ!!」

 

 

 ぞくり、と背筋が凍った。

 響いた愉快げな男の声に本能が危険を知らせる。

 

「まずい、何か―――!?」

 

 その予感が的中し、一瞬の後にホームの天井が爆発した。

 連続的に、端から次々と爆ぜていく。

 まさか、予め設置してたのか……!?

 

 衝撃と瓦礫を警戒して身構えた俺は、視界の隅に一人の少女の姿を見た。

 飛散した大きな瓦礫に頭上を覆われ、驚愕に目を見開いている。さっきの、これを期に現役から退けると話をしていた子だ。

 

「まずい……!」

 

 俺はそちらへと走った。

 間に合え――――――!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???side

 

 

 

 

「……終わったか」

 

 独り言ちて、瓦礫の中から這い出る。

 オレはコートについた土埃を払い落とした。

 

 待ち伏せして電車を襲撃……中から制服姿のガキから反撃を受けたと笑えない冗談みたいな状況だったが、仕込んだ爆弾で全て吹き飛んだ。

 それにしても、またオレだけ残っちまった。

 

「ッ、痛てーな」

 

 崩落した地下鉄は粉塵が漂い、瓦礫の山で視界が塞がれている。

 おまけに停電して真っ暗だった。

 下敷きとなった人間の数は計り知れない。

 オレの仲間の数はそれ程ではなかったが、巻き込んだ敵勢力の数が多かった。予想外の遭遇ではあったが、先んじて天井に爆薬を仕込んでいたのが功を奏した。

 これで追撃の心配は無いな。

 だが、それも時間の問題だ。

 

 いずれ、あの制服のガキ共を使嗾した連中からの追跡の手はすぐに放たれる。

 

 肩や腕に受けた銃の傷が痛む。

 ガキのくせに容赦なく撃つもんだ。

 そんな感想に独り笑っていると、少しずつ目が暗闇に慣れてくる。

 瓦礫の山の間を歩き出し、脱出を試みた。

 

 非常用の電灯がいくつか復活する。

 暗いよりは良い。

 これで歩きやすくなった。

 

「ひひっ、それでも大失敗だな」

 

 ふと奇妙な音を聞き咎める。

 

「あ?」

 

 行く手の瓦礫が、震動していた。

 どういうわけなのか耳を澄ましていると、低い地鳴りのような唸り声が聞こえる。

 やがて――瓦礫の一部が持ち上がった。

 

 

「――逃さん…………!!」

 

 

 片腕で瓦礫を持ち上げる人影が現れた。

 脇には血塗れのガキを抱えているが、その人影は怪我をしているようには見えない。

 それを見て、オレは一目で理解する。

 

 バケモノが、現れたと。

 

 

「あんだ?テメー、何者だ」

 

 

 俺が尋ねても、バケモノは答えない。

 人一人をすっぽり覆えそうな瓦礫を押し退けて、血塗れのガキをそのまま地面に下ろす。

 仰向けに寝かせて、半開きだった瞼を手で撫でるように閉ざした。

 

 オイオイ、あの崩落で無傷か?

 嘘だろ。

 

「…………さて」

「おまえがガキを率いてる親玉か」

「そうだな。引率係だ」

「へえ。……にしても、おまえも若いな……もっと上がいるだろ?日本のバランスを狂わせてるヤツは」

「それは――オマエが知る事じゃない」

 

 バケモノがこちらに振り返る。

 外見年齢は、二十歳前半ってところか。

 体格は細見だが、あの瓦礫を支えた筋力……相当な怪力だな。

 足腰は人並み外れているが、他はどうだか。

 このまま逃してくれなさそうだし、一戦やるしかないか……?

 

「おい、テロリスト」

「あん?――げっ!?」

 

 立ち上がるや、バケモノが片手で何かを投擲した。

 音から判別するに……拳大以上のコンクリートの塊だ。とんでもない質量の剛速球に、オレは慌てて横へ飛び退いて躱す。

 馬鹿力にも程があんだろ。

 人がやっと一息矯めてから投げれる物を即行で放てるとか映画かよ。

 

「いっ!?」

 

 感心していたオレに、息つく暇も与えんとバケモノはすぐそこまで踏み込んでいた。

 コイツ、速――――!?

 

 

「オマエは捕える事にした!!」

 

 

 男の拳がオレの腹部めがけ捻り出される。

 あの怪力を見た後だからか、体が咄嗟に片腕でガードした。

 だが、それすら後悔した。

 

「い゛っ……!」

 

 防御した腕が、砕ける音。

 そのまま押し出される拳に負けて、体ごと後ろへと吹き飛ばされた。

 あまりの威力に線路上を跳ね転がった。

 慌てて起きると、オレを追いかけてバケモノは走って来ている。

 

 確かに、こりゃ強力だ。

 

 でも、所詮は人間。

 至近距離で――銃には勝てねえだろ!

 脇のホルダーから銃を抜き、オレはバケモノに向けて撃った。

 この距離では躱せない。

 その読み通り、銃弾が頭部に当たってヤツの上体が後ろへと仰け反る。

 

 呆気ない…………?

 

 

「―――痛ぇよ……!」

「は?」

 

 銃弾を受けたバケモノが、上体を引き戻す。

 その左やや上の額で、オレの撃った銃弾が止まっていた。細く血が着弾箇所から流れているが、あの出血量から見ても皮膚を軽く削っただけで骨まで達していない!

 この距離なら威力的にも脳をブチ撒ける筈だぞ!?

 どこの映画の人造人間だよ。

 

 バケモノは立ち止まり、額の銃弾を払い落とす。

 それから腰の銃を抜き取り……破損していると見るや地面に投げ捨てた。

 

「一つ訊く。……なぜこんな事をした?」

 

 バケモノがオレに尋ねた。

 

「オレを捕まえるんだろ?だったら、それをしてから訊けよ」

「……ああ、そうだな」

 

 バケモノが拳を構えた。

 銃は効かない、加えて肉弾戦じゃ明らかに強い。

 

 さーて……どう逃げるか、殺すか、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

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