喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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千束誕生日スペシャル!


Happy Birthday!
どうか続きますように


 

 

 

 

 

 

 千束side

 

 

 9月23日。

 それは私の誕生日だ。

 厳密には生まれた日ではなくDAに登録された日。

 だけど、この日を誕生日としてテンが祝ってくれるので、私にとっては大切な日だ。

 でも、疑問に思うことがある。

 

 私は今日も今日とてリコリコで働いていた。

 15歳を迎えてもやる事は変わらない。

 常連さんに美味しいスイーツと楽しい時間を提供する。

 

「ねえ、先生」

「ん?」

「テンってさ、何でこの日はいつも休みなの?」

「ああ、それか」

 

 先生が苦笑する。

 やっぱり理由があるのか。

 

 毎年、私の誕生日となる日はテンも暫くリコリコに姿を見せない。早朝から家も出ていくし、理由を聞いても答えてくれないのだ。

 めちゃめちゃ不審。

 前にミズキに聞いても舌打ちされたし……何で?

 

 先生も、これは教えてくれる気配が無い。

 一体、彼は何をしているんだろうか。

 誕生日プレゼントも毎年用意しているけど、それは毎回予約したと言っているから、早朝から出かけてまで済ませる用事でもない。

 ちなみに誕生日ケーキまで作ってくれる。

 でも、作るのに時間はあまりかからないし前日の夜には済ませてあるんだって。

 

 だったら、マジで何してるの!?

 気になるじゃん!

 

「先生、教えてよー」

「天は話さないのか?」

「教えてって言っても『調子に乗るな』とか意味分からない事しか言わないし」

「アイツらしいな」

 

 先生がコーヒーを淹れる。

 それをカウンター席でぶつくさと不貞腐れていた私に差し出してきた。

 む、これで機嫌を取るつもりか。

 話題だって逸らす意図がある。

 でも、生憎だけど今日の千束さんは頑固だ!

 これでも引かないぞ!

 主人としてテンの様子は逐一把握していないとね!

 

「何してるの?」

「……」

「言っても良いんじゃない?じゃないと、有り難みも分かんないでしょ」

「ありがたみ?」

 

 ケッ、とミズキがまた変な反応をする。

 天のしている事がそんなに不快なのかな。

 

「千束」

「ん?」

「テンはな、朝早くから寺や神社を巡ってるんだよ」

 

 え、寺や神社を回る?

 私の誕生日なのに神様相手に熱心な事だ。

 

「そんな暇あるなら私の相手しろー!」

「違うさ、千束」

「………?」

 

 何が違うのだろうか。

 慈愛の女神みたいな笑みを先生が浮かべている。

 

 

 

 

「天はな、千束がまた次の誕生日を迎えられるようにって毎年色んな願掛けをしてるんだよ」

 

 

 

 先生の言葉に私は耳を疑った。

 ミズキの大きな嘆息も聞こえたけど気にならない。

 驚くしかなかった。

 私の誕生日に彼がしている行為の意味が、普段の態度からはあまり考えつかない物だった。

 いつも憎まれ口で私を邪険に扱う。

 優しい時は優しいけど、大抵は鬱陶しがられる。

 

 私が次の誕生日を迎えられるように。

 

 そんなお願いを、毎年しているんだ。

 ……いつから。

 

「いつから?」

「千束の体について知ってからだ」

「じ、じゃあ」

「君と会って一年、それからずっとだ。初詣の絵馬にも自分ではなく千束の事を毎回書いてるよ」

「おっさん、盗み見はいかんぞ」

「ミズキも見てるだろう」

 

 私の知らないところで、そんな?

 それからリコリコでちゃんと仕事をしていたかはうろ覚えだ。

 気付いたら閉店になっていた気分。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 扉を開ければ、美味しそうな匂いがする。

 もう既にご馳走を用意してくれているようだ。

 

「よう、お疲れ」

「……今日も豪華だね」

「え、そうしないとブチギレるか泣くだろオマエ」

「もうそんな子供じゃありませぇん」

「顔真っ赤にするほど否定する事かよ」

「へっ?」

 

 私は思わず顔を両手で覆った。

 ぬおおおおお、い、いつの間に!?

 別に何も考えてなかったのに。

 

「千束」

「な、なに!?」

「おめでとう」

 

 テンはそれだけ言うと、皿への盛り付けを再開する。

 その背中を見て、私はニヤニヤしてしまう。

 何もない顔して、私の為に午前中から方方を巡っていたのだと思うと抑えきれない。こんな素っ気なくて邪険に扱われても、何も不快に感じなくなってしまう。

 

 私のこと、大好きかよ!

 

「テン、ありがと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 藤宮天side

 

 

 

 俺の飯を美味そうに食う千束を正面から眺める。

 十五歳になっても、美味しい物を食べた時の表情は全く変わらないものだ。

 いつになったら、大人のレディになるのやら。

 

「テン?」

「ん、いや何も」

 

 止めていた食事の手を動かす。

 朝の疲れが出たかな。

 少し気を抜くと、肩がずっしり重くなるような感覚がある。

 

『僕はやりたい事最優先だから!』

 

 重ねてはならない。

 千束は千束、あの子はあの子だ。

 似ていようが別人。

 

 それでも、あの子の分まで生きて貰おう。

 

 あの子といい、千束といい、俺には一生できないような生き方をしている。

 誰かを慈しみ、喜びを分かち合う。

 こういう人間がいなければ、俺はずっと機械のままだ。

 いずれ千束との時間が終われば、その時こそ藤宮天としても終わる。

 

 どうせ本質は変わらないのだ。

 

「千束」

「ん?」

「来年は何が食べたい?」

「えー、そういうのは秘密にしといてよー」

「今聞いておけば、来年には忘れてるだろ」

「甘く見るなよ、この千束さんを!」

 

 はいはい。

 太陽みたいに明るい笑顔の千束に、俺は切に願う。

 

 

 どうか、程々に続きますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

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