喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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一応、各ヒロインルートを(勿論IFという形で)書き出す予定ではあります。

最近はちょっとクルミルートも頭の中で湧き始めてたり。
ただ、ミズキさんだけが浮かばない……あの人隙がありそうで全く隙が無いから。


十話「Repay evil with evil」
好奇心は俺を殺す


 

 

 

 

 

 

 

 藤宮天side

 

 

 

 午前中のリコリコは静かだった。

 やはり、『たきなスペシャル』中止は痛かったか。

 俺がいない間の賑わいだったのだが、算出された売上をたきなに見せられた時は三度見くらいした。かつてない繁盛に思わず変な声が出たくらいだ。

 今も赤字には至っていない。

 たきなエルの力は本当に貴重だ。

 

 まず、発言力が違う。

 

 俺の立場は、リコリコ内において店長は例外としてカースト制度に表すならば確実に最下位だ。

 公然と千束の奴隷扱いではあるが、その実周囲もまるでさも俺をよく使えるヤツだと思い込んで色々と面倒を持ち込む。断ると意味不明みたいな顔をされるのがその証拠だ。

 まるで、たきなとは天地の差の扱い。

 

 実際に、たきなが行った策は俺と殆ど同じ。

 だが――俺の場合は、誰も聞く耳を持たなかった。

 店長は改善しようと志を共にしてくれたが、あの千束とミズキさんが全く従ってくれないのだ。

 何が違うんだろ。

 天使と奴隷?

 あ、歴然とした違いでしたねチクショウ!!

 

「……にしても暇だな」

 

 あれからDAの連絡も無い。

 そもそも、だ。

 たきなは真島討伐作戦に参加しているらしい。

 本来なら楠木さん経由でも俺に声がかかる筈だ。

 だが、俺に対しての指令は一度も無かった。虎杖司令とも余計な諍いはしたくないだろうし、その辺で楠木司令が動かないのも疑問に思える。

 一体、どういう事……ん?

 

 一人思考していると電話が鳴る。

 

 受話器を手に取って応答した。

 

「はい。喫茶リコリコ」

『藤宮。私だ』

「それじゃ分からないので、次から虎杖だと名乗りましょうね」

『分かっているなら話を進めるぞ』

 

 うん、スルーされた。

 友だちいないだろ、アンタ。

 

 それにしても珍しい。

 あれ以来、ぱったり連絡の一つも寄越さなかった。

 虎杖司令には、一応いつもの千束に関する情報や俺個人の活動報告をするのだが、その時にすら何も無かったのに何故今なのだろう。

 まさか、内通者容疑があるからか?

 作戦直前まで行動を封じて情報漏洩を避けるとか。

 

「それで、何です?」

『貴様は真島討伐作戦に関与するな』

「………は?」

 

 なんだって?

 思わず失礼な声が漏れた。

 真島討伐作戦への関与を禁ずる――という事は、21番にもまた同様に関われないという事だ。

 折角こっちが決意を固めたのに。

 

 わざわざ裏切りが無いかの証明に、俺へと命令を降した本人から矛盾する新たな指令に言葉を失う。

 

『理由は分かるか?』

「いえ」

『先日、貴様が21番と接触している姿が確認された。どんな遣り取りがあったかは不明だが、行動を共にした上に戦闘にすら及ばなかった辺りなどを踏まえてこれ以上近付ける方が我々にとって不利益と判断したからだ』

「………」

 

 あ、アレかー!!

 その日にお咎めが無かったから油断していた。

 21番と一時弱のデートをしていた事だ。

 目撃されたら危険だと冷や汗をかいていたが、ここでそのツケが来るとは。内通者としての嫌疑が益々深まったとあって、俺を遠ざける方針に変えたのか。

 理由も納得と言えば納得。

 なので、こちらから特に反論は言えない。

 で、でも指輪が……それに。

 

「分かりました」

『ほう?物分りが良いな』

「いえ。俺に拒否権は無いようですし」

 

 指令は関係無い。

 21番は間違いなく俺へと向かって来る。

 クソ上司の教育ならば、そこは揺らがない。確実に俺との戦闘に発展する事態となるだろう。

 或いは、そうなるよう事を運ぶ筈だ。

 真島の動き次第ではあるが。

 

「連絡事項は以上ですか?」

『貴様には監視を付けてある。不審な動きがあれば、その時はおまえも真島と同じだ』

「……了解」

 

 ぶつり、と通話が切られた。

 俺は受話器を置いて頭を抱える。

 

 いやいやいやいや!!!!

 

 これ、21番が俺に向かって来る以上はどう考えても無駄だ。関与するなと言われているのだから、出会った時点で裏切りと見做される。

 決着を付けようと付けまいと危険だ。

 まずリコリコに居られるどころの話ではない。

 

 上手くやらないと他の皆にも被害が波及する。

 ここは、今日からでも別のセーフハウスに移って注意を逸しつつ――。

 

『――ばっちこい!!』

 

 その時、脳裏でミズキさんの声が響いた。

 ……そうだ、他人に頼っても良いのか。

 迷惑かけるって言った時に、そう返してくれたんだっけ。

 

 後で、店長に相談してみよう。

 ついでに、クルミにも。

 

「21番をクリアしても、虎杖司令に殺されかねないな」

 

 も、問題が増える増える。

 運命って、実は俺の事かなり嫌い??

 いやいやいやいやいや!

 大丈夫、俺には大天使たきなエルが付いて……最近は堕天使になったんだっけ……。

 

 まあ、これ以上は流石に無いだろ。

 そしたら、今度こそ神にも嫌われてるレベル――――

 

 

 

「リコリコは閉店しますっ!」

 

 

 

 ………………………嫌われてた。

 

 俺は鼻の頭を揉んで、頭の中を整理する。

 えー、実質虎杖司令から死刑宣告を受けた直後に看板娘からリコリコ閉店という名のトドメを頂いた。

 え、え、え!?

 神様、俺のこと嫌いすぎない!?

 いや、まさか堕天した事で唯一の加護でもあったたきなエルからすら見放されたとか!

 

 つまり、現在俺は………無職か!!!!

 

 戻って来た千束の後ろから、次々とクルミやミズキさん、それと奥で何かしていた店長が戻って来る。

 店長以外は明らかに愕然としていた。

 いや、でしょうね。

 この店を誰よりも愛しているのは千束だ。

 その本人が閉店を宣言するなんて予想だにしないだろう。いや、俺は予想していたけどこんなにも早いとは思わなんだ。

 

 しかし、良いのだろうか。

 

「あんまり私の事でみんなの時間取るのも悪いし。この店は最後まで楽しい場所じゃないとね」

 

 ちら、と俺はクルミを見た。

 クルミは申し訳なさそうに顔の前に片手を挙げて謝ってくる。

 どうやらバレたか。

 さっきまで俺が依頼した千束を救う件に取り組んでいたのだろう。慮外の事態だが、これは仕方がない。

 

「千束は良いのかよ、それで」

「元々そうするつもりだったのよー。むしろ考えてたより長かったくらい!ねー、ミズキ?」

「…………」

「…………」

「ふふ」

 

 店長とミズキさんが互いを見合う。

 本人達も彼女の沙汰に思うところがあるようだ。

 

「テンも一応想像してたでしょ?」

「こんな早く終わるなんて思わなかった」

「えー、テンは何か困るの?」

「当たり前だろ。働き口探さないと……」

「奴隷のテンなら大丈夫だって」

「おい、奴隷のって付けた理由は何だ??」

 

 何も安心できないんだけど。

 しかし、開店しておよそ十年が経つ。

 そこそこ人気で、長い付き合いの常連さん達ができる程には愛された店だ。

 閉店という単語に深い感情を抱くに価する名残惜しさがある。

 

 しかし、まあ……看板娘の状態を考えれば当然か。

 

 この店が始まり、そして続いたのは店長がいるからではなく、看板娘の千束がそうしたいという願望あっての事だ。

 リコリコにとって最も大事な部分なので、彼女自身がそう決めたのなら誰も変える事はできない。

 

「さあ!皆もたきなを見習って、自分の道に戻り給え!――Hey,you!ミズキは何処へ行きますか?」

「へっ!?……こ、婚活サイトで知り合ったバンクーバーのイケメンに会いに行こうかしら」

「ワオ!どれどれ……うわ、ムキムキだな」

 

 え、俺も見たいみたい!

 隣から画面を覗くと、そこに鋼のように鍛え上げた肉体を光らせる偉丈夫がポージングしていた。

 ん、いや、ボディービルダーかな?

 肉体的にはクリアか。

 後はこの人は果たして、ミズキさんを人格的にも経済的にも包み込める存在か否か、だな。

 

 あとは、酒癖の悪いミズキさんを受け止められるか!!!!

 

「ヘイ、クルミは!?」

 

 質問の矢が次はクルミへ飛ぶ。

 クルミは椅子からゆっくり下りて深く嘆息した。

 

「ボクはこの国じゃおまえがいないと命が危ない」

「アンタDAに狙われてるしね」

「この国からは離れるよ」

 

 語りながらも、クルミの顔は少し曇っていた。

 その表情を見て、思わず俺とミズキさんも口を噤んでしまう。

 そういえば、そうだ。

 クルミもここの生活を楽しんでいたように見える。

 当初はただの一時的な避難先。

 でも、常連とゲームで遊んだり、仕方なく店の仕事を手伝ったり、千束にダル絡みされて、たきなに尻を叩かれて店番に駆り出され、ミズキとはしょっちゅう喧嘩してもその表情は、人間関係にもドライな性格のクルミにしては人間味があって明るかった。

 

「なら、ドイツにしなよ!」

 

 ドイツ?とクルミが聞き返す。

 げ、コイツはまた。

 

「またボードゲームか」

「本場だよ?大きなコンペもあるし!」

「なら、おまえも来いよ。旅券くらい作ってやるぞ、そこの奴隷と一緒に新婚旅行って事で」

「そこ奴隷じゃなくて、せめてフィアンセって言えや」

「ヤダ、照れる〜」

 

 バシバシと隣から肩を叩かれる。

 痛い、無駄に鍛えてて痛い。

 

「でも、先生が寂しがるから。やっぱダメー」

「…………」

 

 ど、どうだろうな。

 喜んで俺たちを送り出しそうな予感がある。

 何なら危険から遠ざけるために是が非でも国外に叩き出す強硬策すら取りそう。

 現に……俺は骨折られて監禁生活させられそうになったしな!?

 

「いつか、たきなを誘ってあげて?」

「…………ああ」

 

 クルミが諦めたように笑う。

 仕方ない。

 千束の意思は強く、誰にも曲げられない。

 いや、彼女の身の上を知れば誰だって彼女の思い通りにさせたいと思ってしまう。

 ……俺は別だよ?

 立場が許してないだけで、嫌な事は嫌っていつも反発してるだけだから。立場が奴隷じゃなければ余裕で裏切ってるから。

 

 

「それじゃ、片付け始めましょう!」

 

 

 千束が拳を上に突き上げておー!と声を上げる。

 

「因みになんだが、千束さん?」

「ん?」

「俺には訊かないの?これからどうする〜とか」

「は?」

 

 興味本位で質問してみた。

 あと二ヶ月と差し迫った期間で、果たして俺の処遇に対してはどう思っているのか。

 実は素直に奴隷から解放してくれたり?

 

 そんな甘い考えを思い浮かべていたら、真正面から首筋に抱き着かれ………ぐぐぐ首が絞ま゛る゛ぅうううううううう…………!!!!

 

「最後の瞬間まで逃さないよ?――絶対に」

「う゛、う゛ぇ?」

「残り時間で、たっぷり錦木千束様の物だって教え込むつもりだから」

 

 …………………………ごめんなさい。

 む、無理。

 やっぱり早まりました!

 好奇心は猫を殺します!!

 

「それとも、もう次の女を見つけた?」

 

 首が絞まりすぎて、もう喋れないので店長に助けを求めた。

 

 

 店長の方を見ると……て、店長!?

 無言で何処かに行かないで下さぁぁぁぁぁぁぁぁあい!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たきなside

 

 

 

 薄暗い中、壇上だけがライトアップされる。

 講堂に集ったリコリス達の注目がそこに集まった。

 壇上に設置されたスクリーンに映し出されたのは、これから倒すべきDAの敵――真島だ。

 監視カメラを見上げる剣呑な瞳。

 獰猛な獣のような瞳をしながら、そこには深い知性が宿るような忌々しい目だった。

 

『四月の武器取引に始まり、地下鉄襲撃、リコリス殺害、警察署襲撃……これら全ての首謀者が――真島と呼ばれる、この男です』

 

 多くの仲間を有し、数々のテロを成し遂げた悪党。

 その手腕の高さは、ここまで派手に動きながら、何ヶ月もDAの攻撃から逃れ続けつつ攻勢にも転じている流れから皆に知れている。

 もう、ただの敵ではない。

 リコリス達にとっても同朋の仇。

 そして、私にとっても――千束の命に繋がる手がかりだ。

 

『世界中を股にかける戦争屋だ。我が国でも十年前に確認されている。皆もよく知る――電波塔事件だ……全員処刑したと思っていたがな』

 

 モニターに幼い千束が映し出された。

 あんな頃から、ファーストの制服を………。

 そうか。

 確か、水族館で訪ねた時は電波塔事件の時から非殺傷弾を使用していたらしい。

 真島が生きているのも納得だ。

 それにしても、真島が地方ですら騒がれたあの電波塔事件に関与していたのか。アラン関連といい千束との因縁も深い……道理で、単身家を訪ねたりするワケだ。

 

 また真島は千束を狙うかもしれない。

 もしそうなら、情報を聞き出してから殺そう。

 

『真島は国内外複数のマフィアから依頼を受け、延空木を狙っている』

『その依頼者の一人を捕縛し、真島の潜伏先が割れました』

『保有する戦力は二百弱。全滅を避けて複数箇所に散っていると思うが、真島はここだろう』

 

 モニター画面が再び変わる。

 港に停められた大型の船――それが潜伏先だ。

 だが、それよりも私の目を引いたのは、隣にアップされたもう一枚の画像だ。

 

 そこに、白黒の頭髪をした女性が映っている。

 

『先日もファーストリコリスの一人と同行した複数名のリコリスを単身で返り討ちにしている、この女。真島が保有する戦力でも特筆すべき人間だ……恐らく、コイツも真島の右腕としてヤツに付き添っている』

「………」

『だが怯むな。ヤツらを全力で攻撃する』

 

 この、女が……。

 この女と吉松がいるから、千束と天さんが苦しむ。

 絶対に消さなくてはならない。

 私が助けるんだ、二人を。

 

 

『見つけ出し―――殺せ』

 

 

 必ず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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