喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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一騎打ち?そんなもん知らん

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミカside

 

 

 天たちが突入した。

 子ども達が次々と自らの因縁に決着を付けようとしている。あの子たちに会うまでの私なら、それを見守るだけだっただろう。

 だが、私も動かなければならない。

 もう傍観者でいたくはない。

 

 親として、二人の行く末を守る役目がある。

 

 私も車から武装を取り出そうとして――誰かに肩を叩かれた。

 驚いて振り返ると、見知った顔がいた。

 開店当初から常連客である明山さんと、最近よく通うようになった9番と天に呼ばれる男だ。

 前者はゆったりとした私服、後者も同じだった。

 

「じゃあ、私は行くよ」

 

 明山さんが微笑みながら去っていく。

 その足先は――電波塔へと向かっていた。

 思わず呼び止めようとしたが、それを9番に止められる。

 何をするつもりだ、彼は……いや、この二人は。

 

「店長さん、お話があります」

「……改まって何だ?」

「聞いてるとは思いますけど、俺は13番……藤宮天の元同僚です。『ナンバーズ』ってご存知ですよね」

「アランの男が育てた兵士だろう」

 

 9番がうなずく。

 天以外に存在する3〜30番まで存在する優れた少年兵。

 数多くいる子の中から番号で呼ばれ、その能力を高く買われていた。

 私がDAの司令を務めていた際に、この会社を襲撃する中で最も警戒すべき戦力として挙げられていたのを覚えている。

 後に、証拠隠滅の為に回収した資料などから詳細も知った。

 

 孤児を集めて優秀な兵士を作る。

 

 まるでDAのようなやり方だ。

 会社の起源は、やはり不明である。

 今思えばアラン機関が関与していたのだろうと納得できる程に、ほとんど情報が何の証拠力も無い僅かな痕跡だけを残して消滅していた。

 そこで働いて、生き延びた者は少ないが……優秀な『ナンバーズ』は幾人か逃げ延びている。

 それぞれ追跡の叶わない海外へ逃げたか、9番のような巧妙に気配を消して国内で生きる者もいる。

 

「それが今、関係あるのか」

「明山さんは1番なのはご存知ですか?」

「いや、1番と2番の資料は無かったから知らない。彼もそうなのか」

「はい」

「………それが?」

「これから同僚の誼で、13番と21番の件が決着した後の処理をします」

「処理?」

 

 仕事柄、その言葉には不穏な物を感じてしまう。

 思わず私が睨むと、彼は苦笑した。

 

「少し話しませんか?」

「悪いが今は忙しい……」

「『クソ上司』とやらの教育、についてです。藤宮天を縛り続ける例のヤツ」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クルミside

 

 

 千束の心臓の在り処を見つけて、ボクらは踵を返していた。

 今は引きずり出したミズキの操縦するヘリに乗って、東京上空を移動している。たきなにも連絡し、千束の現状を追跡調査していた。

 千束は旧電波塔にいる。

 そこに吉松がいるのは確かだ。

 人工心臓を調べていく過程で、吉松が新たに改良された心臓を入手している事は把握したので、これから千束と会う事自体は僥倖だ。

 でも、たきなは不穏に感じたらしい。

 彼女もそちらへ向かった。

 

『さっき、ドローン飛ばしてたけどアレ何よ』

『作戦だよ。ボクと天の』

『何それ、教えなさいよ』

『秘密だ』

 

 ボクはヘリから飛ばしたドローンを旧電波塔に向かわせている。

 間に合わせないといけない。

 既に事態は開始されているのだ。

 

『リコリコ解散って言ったのに、またこうなるとはね〜』

『良いのか?バンクーバーの男は』

『おまえがアタシを引きずり出したんだろうが!?誰、生き別れって言ってたけどアンタ誰とアタシの娘よ!?』

『幻想だ』

『幻想でもアンタみたいな娘がいてたまるか!』

 

 酷い言われ様だ。

 

『解散しても、こうして団結できる』

『……アンタらしくない台詞ね』

『ボクを何だと思ってるんだ』

『天の次くらいに、アンタはあっさりリコリコを捨てそうなヤツだったし』

 

 それは確かにそうだ。

 リコリコに匿われた当初のボクならば、何の憂いも名残も無く去れた。

 だが、あそこでの日常は悪くなかった。

 空港に来た時に、後ろ髪を引かれて……天からの依頼にだって『千束を幸せにしろ』なんて小っ恥ずかしくて実益も無い報酬の為に躍起になって働くなんて。

 以前のボクが聞いたら笑うだろう。

 

『天こそ、リコリコを愛してるだろ』

『アイツはそんなんじゃないわよ』

 

 どういう事だ?

 

『アイツを繋ぎ留めてたのは、あくまで千束よ』

 

 …………。

 それは否定しようのない事実だ。

 

『そういえば、店に天もいなかったって話よね』

『ああ』

 

 ミズキの顔が険しくなる。

 その気持ちは、恐らくボクと一緒だ。

 旧電波塔内は、もはや真島が占拠していると考えて間違いない。フィールドを先に陣取ったのなら、招く相手には罠を仕掛けるのが普通だ。

 最初から不利が約束されている。

 千束と天は正面から突っ込むしかない。

 多少の理不尽も跳ね除けられるポテンシャルがある二人だが、真島もまたここまでDAを翻弄した人間であり、21番なんてリコリスが通じない程に厄介だ。

 容易には事態を解決できない。

 特に21番の件は……。

 

『千束は大丈夫なわけ?』

『千束の実力は、ボクよりミズキも知ってるだろ。……というか天の心配はしないのか』

『アイツはリコリコ辞めた男だし』

『ボクらもだろ。……辞めた?』

 

 ミズキの声色はやや不機嫌気味だ。

 

『店を出る前に言われたのよ』

『それは閉店するからじゃないのか?』

『違うわよ。あれはリコリコが再開しようが本気で閉まろうが、もう帰って来ないって調子だった』

『そうか……』

 

 そこまでの覚悟が……。

 辞めるというのは初耳だった。

 ただ、21番と戦う際に必要になる物を頼まれて用意はしていたので、戦闘自体に驚きは無い。

 問題は、彼が生き残るかどうか。

 藤宮天が――活きるかどうか。

 勝って13番となっても意味がない。

 千束を幸せにするとボクに約束したアイツの気持ちを疑いたくはないが、不安が尽きないのもまた正直な話だ。

 

 藤宮天の上司――アランのエージェントは、洗脳教育のスペシャリストだった。

 DA本部が保有するデータベースをハッキングして得た情報からもそれが知れた。

 

 幾ら時間を経ても影響は強く残る。

 

『これから自滅するかもしれない男の心配なんてしないわよ』

『あれだけ発破かけてたのにか?』

『やるって時にアタシ達に一声もかけないし』

『……ま、天の居場所は把握してるし、アイツが殺人機械にならない仕込みならボクがしてる。任せろ』

『任せろ、って……アンタに!?』

 

 何も天も無策というワケじゃない。

 ミズキには辞めると意思表明したように、閉店宣言の前から頼まれていた物がある。

 既にミカを介して届いているだろう。

 後は『仕掛け』をボクがタイミング良く作動させるだけだ。

 

 これが失敗すれば、天は死ぬ。

 

 こんな大役を最後で任されるとは。

 正直、こういうのは千束に任せたいんだよ。

 でも、アイツらが前線に出てそれぞれのやるべき事に打ち込んでいるのなら、裏方のボクやミズキがサポートするのが連携というもの。

 千束はたきなに任せた。

 だから、ボクが天を何とかしよう。

 

『アンタって心理学でも修めてるワケ?』

『知識としてはな。……まあ、幼少期から体の奥底まで仕込まれてる天の場合は無理だ』

『どういう事……?』

『要は『首輪』の新調が必要ってヤツだ』

『アンタそんな趣味あったの?』

 

 伝わらないか。

 まあ、ミズキに伝わっても意味は無い。

 ボクは手元のパソコンに集中する。……これは一世一代、と言っていいのか分からないが大博打なのは間違いないだろう。

 これが成功したら天は無事だ。

 成功してもボクが千束に殺されかねないけど最悪は天を生贄に捧げればどうにでもなる。

 どっちにしろ、失敗は駄目だ。

 

『何よ、アンタまで死にそうな顔して』

『本当に死ぬかもしれないからな、ボク』

『アタシ巻き込むなよ』

『……そうか、ミズキを巻き込めば生き残れるかもしれない』

『何するつもりよコラ!!』

 

 こっちに向かってミズキが怒鳴る。

 そうだ、巻き込めば行ける。

 二人とも瀕死にはなるだろうが、生き残れることは間違いない。

 

 これだ――天とボクらが生き残る道!

 

 

 

『――ボクらで天を奴隷に戻すんだよ』

 

 

 

 ミズキに、何いってんだコイツ……という顔をされた。

 だろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 21番side

 

 

 何度目かのライフルでの狙撃。

 否、狙撃というには近くで狙撃手が姿を晒すという極めて滑稽な攻撃ではあるが、相手が相手なので仕方ない。

 それによって藤宮天のショットガンが破損する。

 舌打ちした彼を、逆方向から同様に狙撃手が撃つ。

 その一弾が右肩を掠める。

 

「ぐ……」

 

 瓦礫の上で彼の体が揺れる。

 負傷が多くなってきた。

 体力的にも消耗しているし、彼の武装も減ってきている。

 万事僕の思惑通りに進んでいた。

 どれだけ否定しても、やっぱり君は13番だ。

 

 この場にいて貰った仲間の殆どが全滅した。

 さんざん投入した爆弾類で、お土産売り場のコーナーは瓦礫の山になっている。

 倒壊した二、三階のフロアの物も積み重なっていた。

 かなりの物量で攻めたので被害も甚大である。

 そして、その一画。

 瓦礫の山の上に人影が佇んでいた。

 その姿に、僕は笑みが堪えきれない。

 

 

「ほら。君は戻ってきてる」

 

 

 そこに悪魔がいた。

 脊柱の垂れる人の頭部を片手に握りしめた男を、それ以外にどんな言葉で形容すればいいか。

 これ以上なく正鵠を射ているだろう。

 敵は容赦なく抹殺していく。

 生き残る為に、人間を肉壁――盾にして銃弾を防いで次の人間を仕留めたり、または盾にした人間の口に手榴弾を突っ込ませた状態で仲間へと蹴り飛ばし爆破させる。

 昔の通り、まさに非道。

 藤宮天という化けの皮が剥がれ始めた。

 その下から出るのは、やはり生存本能に忠実な獣だ。

 そして、刷り込まれた殺人の術理。

 生き残る為に殺す、生きる為に殺人を手段とする。

 追い詰めた甲斐があるというものだ。

 

「どう?久しぶりの感覚は」

 

 彼は答えなかった。

 ただ、呼吸を整えるので必死らしい。

 絨毯爆撃に似た攻勢から懸命に逃れようとしていたが、無事では済んでいない。背中には破片が幾つか突き立っているし、左腕は至近距離で手榴弾が炸裂した事で火傷を負っている。

 常人がミンチになる攻撃密度なのだが……。

 流石はナンバーズの最高傑作だ。

 だが、その精神は無防備になった。

 よほどの覚悟を決めて来たんだろうけど、藤宮天として築いたモノがボロボロ、昔を彷彿とさせる壊滅的な戦場の渦中にある彼は生き残る為に『昔』へと戻ろうとしている。

 もう一押しだ。

 

「あとは――」

 

 仲間は残り二人。

 これ以上は追い詰めるだけの戦力になり得ない。僕も片足が満足に動かせない以上、もう白兵戦で天には敵わない。……やりようはあるけど。

 つまり、切り札を切るしかない。

 この状況で僕が死ぬだけ。

 13番が帰って来るのは、それだけだ。

 

「残り、5分だよ」

 

 僕の声に、藤宮天が振り返る。

 その瞳は、本当に昔のようだった。

 

「さ、ここからだ」

 

 藤宮天が走り出す。

 また別のヤツを狙いに行ったらしい。

 少しして、銃声と仲間の悲鳴が二つ上がった。

 ……もう仲間は全滅した。

 でも、大丈夫さ。

 後は僕一人でも片が付く。

 

「こっちだよ、13番」

 

 僕の呼びかけに答えるように、僕の方へと歩いて来る。

 虚ろな目は、ほとんど意識が無いことが分かる。

 僕は拳銃を向けて一発発砲した。

 彼の肩に命中し、その衝撃で後方へと倒れる。体力的にもかなり消耗しているのか、立ち上がるのに苦労しているようだった。

 それでも止まる気配は無い。

 僕を殺すまでは動き続ける。

 それでこそ、追い詰めた甲斐がある。

 

 前回とは違う。

 

 前回は、僕が全く反抗せず逃げ続けたがために13番に考える隙を、感傷に浸る余裕を与えてしまった。

 だから、失敗した。

 僕がいなくなって、13番が変わってしまう原因を与えた。

 今度こそ、成就させる。

 

 彼は13番に戻って、僕は延々と彼の傷となって生きる。

 誰の物にもならない。

 赤いリコリスなんて眼中になくなる。

 一生、僕だけの物だ。

 

「ほら、おいで」

 

 藤宮天が、否、13番がゆっくり歩いて来る。

 片手に拳銃一丁。

 僕の方へと銃口を向けて、照準を定めた。

 この距離ならば外さない、もう回避はできない。――引き金を引けば、僕は死ぬ。

 13番にも迷う様子がない。

 

「………ん?」

 

 ふと、いつの間にかドローンが一機だけ屋内で飛行しているのに気付いた。

 黄色を基調とした機体のカメラが、僕らを撮影している。

 何だ、アレ……。

 まあ、関係ないか。

 

 とにかく、僕は成功しそうだ。

 ボスの方は……どうだろう、赤いリコリスを無事に倒せただろうか。

 ボスの中では僕が13番を完成させて生還するつもりだっただろう。僕も最初はそのつもりだったが、予想以上に藤宮天もまた強かった。

 だから、最終手段の――僕もろとも藤宮天を葬る策に出た。

 爆弾は、その一押し。

 

 これはあの男――吉松と考えたプランだ。

 

『これで藤宮天は死ぬ。間違いない』

『僕と爆弾の命が連結しているとなれば、必死になるよね。助けようとすれば不利な状況が余計に不利になるし、その内に自分が生き残るべく殺そうとするしかなくなる』

『間違いない。キミの願いは叶う』

『何でオジサンはそこまで頑張るの?』

 

 吉松は13番の事も視野に入れていた。

 あの赤いリコリスには執着していたが、13番の方は確実に完成するという自信があるのか、余裕な態度を崩さない。

 確かに道具は揃っている。

 僕や、赤いリコリスの削られた寿命、そして予定される殺さなくては殺される戦場。

 彼が赤いリコリスに囚われてから、間違いなく最大の苦難が訪れる。

 

 そして、塗り変えられて僕一色に染まる。

 

『これで私も肩の荷が下りる』

『肩の荷が下りる?』

『生前、キミの上司と約束したからね。13番の面倒を見る、と』

『ふーん』

『よろしく頼むよ、21番』

『言われなくてもやりますー』

 

 コイツがいなくても僕がやっていた。

 そして、遂に叶う。

 

 

「おかえり、13番」

 

 

 引き金にかかった指に力が込められる。

 

 僕は両腕を開帳し、目を閉じてその時を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピ――――、ピ――――――、ピ――――――』

 

 

 ……………?

 何処かでアラーム音が鳴り響いている。

 僕が目を開けると、13番の動きが停止していた。………引き金から指も離れている。

 

 どういう事だ。

 何の音だ、コレ。

 

 困惑して、僕はまさか腕輪の不調かと思って手首にあるそれを確認したが、問題なく動作している。

 残り時間……三分。

 じゃあ、今起きているのは一体何だ?

 

 

 

「………あー、やってくれたか」

 

 

 間の抜けた声に、僕は顔を上げた。

 その瞬間、足で腕を踏み押さえられる。訳も分からないまま、僕の眼の前で13番が腕輪を取り上げた。

 それから無造作に足下へ投げ捨て、銃口を向けて発砲する。

 入念に、粉々になるまで腕輪が破壊された。

 あれ、何で、どうして。

 

 腕輪の破片が彼の爪先で蹴り飛ばされる。

 何で……何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!!!?

 どうして失敗した!?

 何なんだよ、あのアラーム音は!!

 苛立ちに彼を睨み上げると、視線が合った。

 僕を見下ろす瞳に、理性の光が戻っている。

 藤宮天に、戻っている。

 

「何とか間に合った」

「な、何で……」

「何で13番になってないかって?――コレだよ」

 

 藤宮天が首まで覆っているインナーの襟を引いて肌を晒す。

 インナーの下から――チョーカーが現れた。

 一部が赤く点滅している。

 アラーム音は、そこから響いていた。

 

 

「俺の……じゃないな。――リコリコの勝ちだ、21番」

 

 

 理解できない僕に、ただ彼は不敵に笑ってそう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜おまけ「僕の思い出」〜

 

 

 

 それは、ある日の事だった。

 僕と13番は休日に街を歩いていた。

 まだチームを組んで日が浅いし、年も近いから親睦を深めようと頻繁に彼を外へ連れ出すけど、全然楽しそうじゃない。

 何をしたら喜んでくれるんだろう。

 中々に手強いぜ……!

 

 僕がそんな事で思い悩んでいると、いつの間にか13番が足を止めて何かを凝視しているのに気付いた。

 な、何だろうか。

 視線の先を見ると、黒髪の女優がモニターに映されていた。化粧品のコマーシャルらしく、これでもかと彼女の美という美が強調されていた。

 

「どうしたの?」

「いや。髪が綺麗だと思って」

「え?」

 

 僕はそれを見て、うんと唸った。

 もしかして、髪フェチ?

 でも、黒髪か……日本人は黒髪が多いから、白髪の僕は目立ってしまってよく視線を引く。だから休日は帽子の中にしまったりして、極力注目を避けている。

 

「黒髪、好きなんだ?」

「……そうなのか?」

「いやいや、自分の事でしょ」

 

 怪訝な顔で13番が小首を傾げる。

 自分の事についてもかなり疎いらしい。

 

「ふむ」

「どうした?」

「僕さ、髪が白いから目立つんだよね」

「髪が白いのは駄目なのか?」

「駄目じゃないけど、珍しいんだよ。だから衆目を集めちゃうし……そうだ!僕が黒髪に染めればそんな事も無くなるし、13番も喜んで一石二鳥!」

「何で俺が喜ぶ?」

「好きなんでしょ?綺麗って思う程に」

 

 僕が言うと、彼は考え込む。

 そ、そんなに無自覚なのか。

 今だって、黒髪の女優の映像に視線を移して見入っている。

 なら、僕も染めるかな。

 別に髪色に拘った事は無いけど、13番を喜ばすという直近の目的や、今まで悩んでいた不要な注目を浴びるというのも解消できる。

 

 よし、帰りに染めるヤツ買って帰ろう!

 

「21番」

「なに??」

 

 13番が僕を呼ぶ。

 

「21番の白髪も綺麗だと思う」

 

 ……………。

 僕はその一言に固まった。

 よく会社の仲間には変だとか言われたし、注目を浴びるからそうなのかなって思った……帽子で隠すくらいには、コンプレックスになっている。

 綺麗、とは初めて言われた。

 まあ、どうせ黒髪の方が好きなくせに。

 

 ……そうだ!

 

 

 

 

 

 翌朝、僕は13番と任務で合流していた。

 そして出会って早々。

 

「どうした、髪」

 

 彼は――僕の、白と黒の二色を宿した髪を見て驚いていた。

 よし!

 喜んでるかわからないけど、作戦成功!

 

「お洒落だよ!オ・シャ・レ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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