喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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たきな√の13番の戦闘力=千束√のテンの二倍レベル

・13番のままである事
・奴隷など抑圧される立場にない事

 ……が理由になっている。




一話「ムカつく」

 

 

 

 

 

 楠木side

 

 

「これが今月の分です」

「また、か」

 

 私は執務室の机の上に並べた物を閲覧していた。

 これは情報屋数人――という見せかけで、全て同一人物によって提供された、または我々に回収させた『■■■■■社』と『ナンバーズ』に関する情報である。

 定期的にこういう事があった。

 DAが解決する案件、特に制圧目標の潜伏先などへ先回りでもして仕込んでいるかのように情報の断片が置き去りにされている。

 欠片たちを繋げると、一つの記録として成立した。

 本社襲撃から二年間、こういう事が続いている。

 

「我々が知らない部分ばかりだな」

「少なくとも、『ナンバーズ』の2番を除く1〜24番までの情報は揃いました」

「どれもバケモノ揃いか」

「この情報提供者ですが……」

「おそらくヤツだな」

 

 私も解析した情報部も見解は同じだ。

 提供者の正体は――13番だ。

 日本国内のそこかしこで出没しては、すぐに姿を晦ませる。出現ポイントではリコリス派遣前に交戦の形跡もあり、おそらく■■■■■社の工作員とも争っている。

 情報提供の動機は未だに不明。

 しかし、現在のヤツは単独で動いている。

 DAにも会社にも追われ、または後者に所属していた時の怨恨を抱く別の勢力からも逃げながら、ここまでの事をしているのだ。

 

 一体、何を考えている……?

 

 本部の見立てでヤツは依然危険人物だ。

 DAを認識する犯罪者を野放しにしてはおけない。

 ヤツの存在自体が情報漏洩の元となるのだから直ぐにでも殺すべきだが、抱えている情報量も侮れないので叶うなら捕縛したい。

 ただ、それが出来る実力者がいない事が残念だ。

 

「千束でも対抗できなかったか」

「そのようです」

「なら我々では手も足も出ない、か」

「その、千束によると……手は出せたけど足は出なかった、そうです」

「……アイツは」

 

 私は頭痛を覚えて鼻の頭を揉む。

 13番と戦って唯一生存した貴重な存在なのだから、正確な情報を伝達してほしいのだが……。

 相変わらずワケが分からない。

 

「13番の行方は?」

「最後に確認されたのは京都です」

「京都か……最近、近畿辺りだとよく聞くな」

「はい」

 

 呆れていても仕方がない、いつもの事だ。

 戦闘での殺傷は不可能、捕縛も二年間できていない辺りで我々の実力の不相応さが知れている。

 

 電波塔事件の前までは、DA内でもリリベルの方が精力的に活動していた。テロリスト相手には制圧能力の高さとしても効果的な部隊である。

 ところが、電波塔事件でそれが覆った。

 リリベルが全滅し、千束が独りで敵勢力全員を仕留めた戦果によりリコリスの立場としての強さが増し、作戦への運用でリリベル以上に重要視される事になったのだ。

 ただ、二年前の失態は大きい。

 ■■■■■社では見事な敗北を喫した。

 リコリスもかなり殺され、上層部からの小言もあったな。

 まあ……虎杖司令がここぞと名誉挽回の好機と見て13番をリリベルで捕らえようとしたが、逃げられること十回、その内の半数以上が全員行動不能にさせられた事で彼の目論見も頓挫し、立場の改善は無かった。

 

 現状、DAでヤツを殺せる人材もいない。

 捕獲も失敗の数ばかり重なっている。

 

 こうなった以上、独立治安維持組織としては大変遺憾な措置ではあるが、ヤツには別の手段で干渉し続けるしかないようだ。

 

「京都支部に伝達しろ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たきなside

 

 

 

 サードリコリスの私――井ノ上たきなに任務が下された。

 標的は情報屋として働く青年。

 名前を色々と変えており、元はDAが過去に抹消しきれなかった危険な会社の従業員だった上に、その人物が有する戦闘力や危険度の高さから無視できないので暗殺の指令が出された。

 これまで何度も返り討ちに遭っているらしい。

 ファーストが一名、セカンド八名。

 いずれも生還しているが、毎回逃げられてしまうらしい。

 

 これで私が暗殺に成功したら、かなりの成果として認められるのではないだろうか。

 数多のリコリスが失敗した任務の成功。

 この功績でセカンドにだって昇格できるかもしれない……無論、他にも色々と審査基準はあるからこの任務だけで成就するとは思えないが。

 それでも成功は大きなプラスになる。

 

 相手の戦術面についても知りたい。

 私は先輩リコリスの寮部屋を訪ねた。

 出てきた彼女らに話を聞くが、何やら赤くなってもじもじとしている。

 

「か、彼の事が知りたいの?」

「はい」

「か、彼は素早くて……その……あ、明るくて優しい人なの。危険人物、なんだけど、笑顔も子供っぽくて……ふ、触れると意外と体も逞しくてね?あそこの筋肉なんて――」

「…………………………?」

 

 最初は歯切れが悪かったのに、段々と加速していく先輩リコリスだったが、着実に内容が質問に適さない物へと逸脱していく。

 どれも要領を得ないな。

 彼女は駄目だと直感的に思い、早めに切り上げて別のリコリスに訊く………けど。

 

「あの人の話が聞きたい?」

「はい」

「何の為に」

「任務の為……ですが??」

「そ、そう」

 

 何でホッとしてるんだろう。

 先輩リコリスが胸を撫で下ろす。それから気を取り直すように咳払いし、きつく私を睨めつけるように見た。

 内容は……何かまた脱線していくし、私と代われないかと言われた時は、失礼な話だけど本当に正気を疑った。

 ……雲行きが怪しい。

 何一つ有効な情報が得られていない。

 また別のリコリスに訊こうと進ませる足が重くなる。嫌な予感がしたので、もう次で最後にしようと思った。

 

 そして、予感の通りだった。

 

「べ、別に、絆されたとかじゃない」

「はあ」

「でも……また会いたいな」

 

 

 

 

 ため息しか出ない。

 私は事の異常さ、敵の恐ろしい力の一端を垣間見てしまった。

 目標に接触したリコリスが狂わされている。

 いずれも精神状態が普通ではない。

 一応、情報部に求めて目標に関する記録を共有させて貰い、内容を端から端まで閲覧した。

 集団で襲撃しても仕留めきれず、単独で油断している所を狙おうとも当たらない。返り討ちというが、リコリスはいずれも無事……いや、帰るとあんな精神状態になっているそうだ。

 でも、過去には凄まじい被害をDAにもたらしている。

 油断ならない。

 私は途轍も無く強大な存在を相手にしようとしていると自覚させられる。

 特に、任務内容から至難さが分かる。

 メールで伝達された内容の最後がそれを示していた。

 京都支部も、次の暗殺が失敗すれば本人を取り込む形で決着させよう、と考えているのだ。

 つまり、匙を投げた。

 多少は監視の目を付けつつも、放置するしかない……治安を乱す種を放置する、というのはDAにとっても苦渋の決断だろう。

 私の責任が、知るほどに重くなる。

 

 有益な情報がこれ以上は無いと思い、仕方なく私はターゲットの下へ向かった。

 既にラジアータが位置を捕捉しているらしい。

 示された位置情報へと私は向かい…………そこが商店街である事に唖然とする。

 隠れる気ゼロなのか……?

 私は疑問を抱きながら進む。捕捉されようと殺されも捕まりもしないという自信の表れなのか、単なる考え無しか。

 

 

「見せてやろう、これがマジックだ!」

 

 

 ……いた。

 目標は黒髪をした長身の青年である。

 黒の革ジャケットとその下にシャツ、ジーンズという一般人に溶け込んだ風体だ。

 でも、その眼差しは獲物を狙う猟犬を想起させる独特の鋭さがあって、視線が合うと少しどきりとしてしまう。……どきり?

 何だろう、胸の辺りが一瞬……今は消えている。

 いや、余計な事を考えてはいけない。

 私は頭を振って青年を改めて見た。

 何やら道で子供たちと談笑している。

 手品を披露しているようだった。

 

 手元には、彼を見上げる小学生から借りたであろう五百円玉がある。

 それを観客となる六人の少年少女、それどころか足を止めている人たちにまで見せて――ぱん、と掌で挟む。

 音と動作に、ますます注目が集まる。

 少しして……彼が手を開くと五百円玉が消えていた。

 

「ほいっ」

「うわ、ホントに消えたよ。何かショックー」

「ふははは!任せろ、オマエの大事なお小遣いを再び召喚してやろう――――そらっ!」

 

 五百円玉を貸した小学生が肩を落とすが、彼がぱちりと指を鳴らすと、いつの間にかその指の間に五百円玉が現れた。

 

「本当だ!すげー!」

「反応が現金なヤツだな」

「他には何ができんのー!?見たいみたい」

「ふ、そう慌てるな……今勉強中でこれしか知らん!」

「何だよ、にわかじゃん!」

「へへーん、それに騙されたオマエはどうなんだ〜?」

 

 小学生たちとワイワイ騒いでいる。

 ……何て緊張感が無いんだ。

 もう既に私という刺客がすぐそこまで来ているのに、逃げるどころか気づく素振りすら無い。

 

 私が呆れていると、観衆の一人だった小学生の少女が青年へと歩み寄る。

 

「おにーさん、コレ!」

「えー、何これ花冠?」

「そ!おにーさんの為に作ったんだよ」

「え、マジかよ。良いの?これ付けるとお兄さん多分キミの事好きになっちゃうぞ?」

「良いよ!わたしもおにーさん好きだし!」

「マジかー、最近で一番嬉しい!」

「将来はおにーさんと結婚するね!」

「おう、楽しみにしてるぜ」

 

 青年が嬉しそうに花冠を付ける。

 顔を綻ばせて笑う少女とその頭を撫でる彼は、傍から見れば兄妹なのかと錯覚するくらい親しげだ。

 幸せそうな二人、というか青年に対して不満げに少年たちが声を荒げる。

 

「花ちゃん盗るなよ!」

「そーだ、そーだ!」

「いやいやいや。オマエら……よく考えろよ。この子は『将来』と言ったんだぜ?」

「…………?」

「つまり、それまでにオマエが彼女を振り向かせる魅力的な男になれば良いのさ」

「な、なるほど!」

「天才かよ、にーちゃん!」

 

 少年たちをしたり顔で窘める青年……本当に彼が目標なのか。

 間の抜けた立ち居振る舞いに私の戦意が削がれる。

 

 

「まあ、オマエらが魅力的な男に成長している間も俺がもっと良い男になってるから無理だとは思うけどな!」

「うっせーぞ!胡散臭いにーちゃんのくせに!」

「胡散臭くねーっての!?」

 

 

 小学生と同じ土俵で戦っている……ガミガミと言い合っており、そのやり取りを観衆が笑いつつも温かい目で見守っていた。

 

 さて、どう仕留めるか。

 あの子供たちと観衆が捌けて、青年が一人になったら撃とう。

 人気の無い場所まで移動して欲しいが……。

 そう考えていたら、青年が私の方を見た。

 おもむろに立ち上がって、子どもたちに手を振る。

 

「はいよ。今日はお開き」

「「「えーっ!」」」

「悪いけど妹が来たからな」

 

 えっ。

 妹って――そんな私の戸惑いなど露知らず、さっと普段からそうしているかのように自然な手付きで私の手を取って歩き出した。

 あ、本当だ。

 先輩のリコリスの一人が言っていた通り、大きな手だ。包まれた事で、私の手がどれだけ小さいかというのが分かる。

 手を引く力も優しくて、強制力が無いのについ足が彼を追うように進む。

 不思議な心地だ。

 色々と未知の体験を味わって混乱しているが、不快感が無い自分に一番驚いている。

 離れていく子供たちの羨ましがる声が後ろでした。

 青年は彼らに笑顔を返し、商店街を出ていく。

 

 私と青年は黙々と歩き続けた。

 程よく弛緩した空気で、むしろ話すことが煩わしいという穏やかな沈黙の時間が流れる。

 私もいつの間にか思考を止めて、ただ歩いていた。

 あれ、なんでそうなってるんだろう?

 呆気に取られていると、いつの間にか人気のない路地に着いていた。

 そこで私の手が離された。

 あ……。 

 

「おい、流石に子供の前ではやめてくれ」

「………?」

 

 振り向いた青年――13番が批難するように私を見る。

 

「子供に銃とか倒れる人なんて見せたくないだろ」

 

 何故か悪人のくせに常識を説いてくる。

 な、何を言ってるんだ。

 散々人を殺し、危険人物としてDAにまで認識されている人間が今さら私に上から目線で物を語れる資格があるとでもいうのだろうか。

 平和を乱しているのは貴方なのに。

 貴方たちのような不逞の輩から一般人の生活を私たちが守っているのだ。

 

「悪人のくせに何様ですか」

「それは認めるけど、別に一般民衆を害する気は毛頭無い。生きるのに必死なだけだ」

「その為なら殺人も辞さないのでしょう?」

「そういうのを極力避けるよう生きてる」

「……」

「それにしても、今回は一番幼いな……DAも人手不足か?」

 

 大きな手が頭に乗ってくる。

 反射的に振り払い、銃を相手に向けて構える。

 しかし、一瞬の後には私の手から取り上げられていた銃で頭をこつりと小突かれた。

 何をされたか分からなかった。

 唖然とする私の足元に、彼は銃を落とす。

 

「だから、やめろっての」

「……!」

「さて、俺は立ち食いそば屋に行くわ」

 

 ひらひらと手を振って彼は去っていく。

 逃してはならない!

 私はすぐに銃を拾って構える。

 引き金を――引こうとして、弾倉がいつの間にか抜き取られている事に気付いた。

 13番を見ると、上に立てた人差し指の先で器用に弾倉を回転させている。

 

 

「これも練習中の手品、面白いだろ?」

 

 

 ッ……人を虚仮にしてくれる。

 私はすぐ背負っているサッチェルバッグの下部から新たな弾倉を取り出し、即座に銃身へ装填する。そのまま手早くサイレンサーを装着し、改めて彼を狙った。

 しかし、それより速く手をひらひらと振りながら13番が塀の角を曲がって姿を消した。

 私はその後を走って追う。

 また表通りに戻られたら殺せなくなる。

 

 角の前で止まり、そっと塀から顔半分だけ出して先を覗いた…………いない。

 

 この短時間で姿を消したのか。

 成る程、DAから逃げられ続けるわけだ。

 

「はい、後ろ取った」

「えっ?」

 

 塀の上から、私の背後に黒い影が着地する。

 慌てて振り返って銃を構えるが、またしても手元からするりと抜き取られて、簡単に奪われてしまった。

 ッ、ああもう!

 こうなればとバッグからナイフを抜き取る。

 武器を奪って油断しきっている13番、急所である肝臓の位置に向けて突き放った刃先も指先で挟み取られ、同じように取り上げられる。

 何なのだ、一体。

 どれだけ警戒しても、一呼吸の間で私の手の中に何も残らない。

 

「まだまだ甘いな」

「く……!」

「ようし。これを返して欲しくば……ごめん、考えてなかったわ。どうしよう」

「………はあ?」

「うわ、可愛くねー反応……」

 

 13番がナイフと銃をジャケットの懐に入れる。

 

「君、一日中追いかけて来そうだね?」

「勿論」

「……今日は立ち食い蕎麦、お預けか……」

 

 残念そうに呟いて……………………………

 

 

 

「大人の脚力舐めるなよ小娘!追いつけると思うな!」

 

 

 

 全力で逃げ出した。

 私はその予想外にも程がある行動に呆然自失としていたが、目標に逃げられたとすぐ我に返って追走した。

 ………悔しい事に、捕まる事は無かったけど。

 

 

 

 

 私は夜に司令部から命令を受けて帰投した。

 結果は任務失敗。

 今後は、13番と殺処分以外の方法で付き合っていく形を探すそうだ。

 

 それにしても、不思議な男だった。

 

 体格の割に俊敏で、巧みに気配を消せる。

 何度も見失う私を弄ぶように後ろから小突いたり、時には脇に手を入れて持ち上げられた事もあった。……リコリスは目立ってはいけないのに、周りの視線が集まってあの時は地獄かと思った。

 始終私との戦いを楽しんでいた。

 情報通り追手を殺したりはしないし、ずっと笑顔のまま余裕で私の攻撃を捌いていた。

 

「イライラする」

 

 私は思わず拳を握り、もう二度と会うものかとあの男を心の中で罵りながら部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






たきな√はおまけ時よりイチャイチャしたり曇らせて欲しい?

  • やれ!でなければ撃つ!
  • やめて!じゃないと撃つわ!
  • 鼻の下が伸びる展開なら何でもよい。
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