喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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ぼざろ書きますた!

めしくい・ざ・ろっく!
https://syosetu.org/novel/302585/


六話「それまで、暫しの別れ!!」

 

 

 

 

 

 たきなside

 

 

 

 私は今朝受けたDAからの指令が頭から離れなかった。

 

「……契約を切る、か」

 

 私は見慣れた街の道中で呟く。

 今日が最後の日。

 DAは長らく13番を協力関係にある情報屋として繋ぎ止めていたが、もう不要だと判断したらしい。仲介役を務めた私も本部がある東京に異動となったから、確かにタイミングとしては丁度良いのかもしれない。

 でも、彼は別だ。

 要は用済み、死ねと言われたようなものだ。

 これから多くのDAの刺客に襲われるのだろう。

 過去にも多大な被害を出しているので、より対策を練って襲撃されるに違いない。

 でも、同情の余地は無いのだ。

 最初から決まっていた事だから。

 

「ここにいたんですね」

「おっすー」

 

 私が声をかけると、13番が手を挙げる。

 呑気にスマホを眺めながら、停めた車に凭れて待っていたようだ。

 もう随分と長い付き合いになる。

 五、六年ほどだろうか。

 あの頃に比べれば、私も大きくなったと思う。

 背丈は勿論、よく彼も大人っぽくなったと指摘する程度には成長している。まだこれが限界ではないと思うけど……彼が期待していた、美人になれただろうか。

 最近はソワソワしている。

 会話に変化はないか、態度に異変はないか。

 彼の様子を具に観察した。

 ……私を意識する素振りは無いが。

 

「何?」

「……いえ」

 

 昼時か夕刻に合流するので、いつもなら話しながら食事する運びなのだが、今日はそんな風になれない。

 きっと、これから話す内容で彼もそう思う。

 

「例の倉庫街での事件ですが」

「あいよ」

 

 13番からUSBメモリを投げ渡された。

 私はそれを受け取って、まじまじと掌の上で眺める。

 相変わらず情報収集の早い男だ。

 情報屋としては、しっかり有能である。

 彼を切り捨てるというDAの判断は、まだ時期尚早なんじゃないだろうか……。

 

「相変わらず仕事が早いですね」

「そうじゃないと、今時稼げないんだよ情報屋」

「DAに転職してみては?」

 

 そうなれば、という思いも込めて勧誘してみる。

 勿論、私一人の意見が通る組織じゃない。

 幾ら真剣味を含めても、相手にはほとんど冗談にしかならない誘い文句だ。

 でも、もし叶ったなら。

 ついそんな未来を妄想してしまう。

 任務帰りに彼が私を迎えて、その働きを評価する。私の目の届かない所には行かず、ずっと。

 

「絶対に殺されるからヤダ。こうやって情報を売る事で追手の数を減らしてんだからさ」

 

 嫌だと顔を歪めて拒絶された。

 私はUSBメモリをポケットにしまう。

 分かりきっていた反応に、でも笑えない。

 これが最後の情報提供。

 これが……最後の会話。

 私は特にそうしようとも思っていなかったが、自然と同じように彼の隣に移動して車体に背中を預ける。

 取り敢えず、報酬の入った封筒を渡した。

 下卑た笑みを浮かべて、13番が中身を検める。一枚いちまい紙幣を数えていく様子は、不審者でしかない。

 

「ん、今日また増えてね?」

「……そう、ですね」

 

 手切れ金も兼ねているからだろう。

 きょとんとした顔で暫く考えていた彼は、なるほどと勝手に得心顔になる。

 察しが良くて助かるような……悲しいような。

 

「金の切れ目が縁の切れ目、だな」

「実は、今回追っているテロリストの件が片付けば東京支部に転属になるんです」

「へー、おめでとうと言うべきか?」

「はい。本部行きは全リコリスの夢ですから」

 

 私も憧れていた。

 本部に行けるのは力を認められたリコリスだけ。

 皆が憧れるのも当然の理である。

 褒めてくれるだろうか。

 いつもの彼なら、きっと――。

 

 

「なら、俺とも今生の別れだな」

 

 

 っ…………!

 どうして、褒めてくれないんだろう。

 いや、分かっている。

 私が異動になり、以降の仲介役が誰に引き継がれるのかについて話を出さないところから、彼も自身の進退についていよいよ確信したのだろう。

 誰かを気にしている余裕は無い。

 これから、再びDAから逃亡する生活を始めなくてはならない。数年間保守されていた安寧を奪われたのだから、これから彼も必死にならざるを得ないのだ。

 私なんて、気にする暇も無くなる。

 でも……今生の、別れ。

 そんな風に言われて、胸が裂けるような痛みを覚える。

 分からない感情が、溢れ出しそうだった。

 私は自分の胸襟を握りしめる。

 

「……付いて来ないんですね」

「個人契約は結んでないだろ」

「……はい」

「なに?寂しいの〜?」

 

 13番の茶化すような問に、私は黙った。

 いつものように突っ撥ねることができない。

 

「心配してくれて、ありがとうな」

「っ」

「安心しろ。俺がゴキブリ未満でしぶといの知ってるだろ?」

 

 全然頼もしそうじゃない励まし文句で、私の頭を撫でながら13番が笑顔を向けてくる。

 本当に、お別れなんだ。

 契約じゃないと、付いてこないんだ。

 私にあんな甘い言葉を囁いて、いつも頑張ると笑って褒めたりして、自慢だとか言っておいて。

 

「しっかし、たきなともこれでお別れか」

「…………」

「東京に行っても会える確率が低いだろ」

「たしかに、東京支部となれば更に忙しいので会う事もないかもしれません」

「逆にそうなる事を祈るばかりだよ」

 

 そうなる事を祈る、ばかり。

 確かに、次会うときがあれば彼は抹殺対象だ。

 でも……でも!

 会わない事を祈る、なんてその口から聞きたくなかった。

 

 不快。

 不快。不快。不快。不快。不快。

 

 私をこんな風にしたくせに。

 防げないような毒で、あのリコリス達みたいにおかしくしておきながら。

 何でそんな潔く別れられるんですか?

 私以外でも貴方は生きていけるんですね。

 

 ああ……堪らなく、不快。

 

 私は今にも銃を手に取りそうな片手で拳を握って堪える。

 駄目だ、今は駄目だ。

 

「もし東京に俺がいたら、その時は抹殺の命令だろ」

「では、私の手で」

「怖。そこは数年間の友情とかないの?」

「私たちは友人なのですか」

 

 友人じゃ、ない。

 私は貴方の管理者だ。

 何処に行こうと、何処に居ようと、私以外の手中に落ちてはならない。

 私にするように下らない発言で、下らない所作で、下らない気遣いで私みたいな被害者を増やす。増やしておいて責任なんて全く取らない。

 何て悪人だろう。

 処理するなら、絶対に私の手で果たす。

 

「ったく、たきなと俺を引き裂こうなんて……DAも意地悪だな」

「…………」

「安心しろ。もしたきなが俺を殺しに来る事があっても嫌いにならないからさ」

 

 気安く私の肩を叩いて、13番はまたあの笑顔を浮かべる。

 

「ほいじゃ、達者でな」

「精々殺されないように」

「変な事やらかして左遷とかされんなよ」

 

 彼が笑いながら車に乗り込む。

 最後に憎まれ口を叩いて、去っていった。

 それだけ、ですか。

 

 私は走り去っていく車を、睨み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 13番side

 

 

 

 

 

 たきなと別れ、すぐ俺は豆子と合流した。

 不安げに路肩に佇んでいた豆子は、俺の車を見るなりぱっと笑顔になって駆け足で乗り込む。

 即座に車を走らせた。

 たきなの前では余裕な構えで接したが、生憎ともう危険は迫ってきている。

 たきなとの会話中も、そこかしこにリコリスはいた。

 今も追走してきている車が二台。

 これは、かなりシビアだぜ。

 

「社長……?」

「悪い、豆子。……トンズラの時間だ」

「ひっ」

「努力はするが、最悪は豆子だけで逃げてもらう可能性もある」

 

 豆子の手が俺の袖を摘まむ。

 不安にさせたのは申し訳なく思う。

 だが、相手はDAだからな……奴らの力で街中のカメラで常に捕捉されているだろう。カメラの外れた場所に行こうにも、追走する車をまず撒かないといけない。

 捕獲できないから俺と協力関係になったんじゃなかったのかよ。

 今さら全面戦争やりたいってか。

 ……いや、今なら捕まえやすい?

 奴らは豆子の存在を把握しているからこそ、俺が以前よりも逃げにくく、戦いにくいという状況下にあると理解したのだ。

 以前よりも俺の脅威判定が低いのはそういう理由か!

 豆子の存在を認識しているなら尚更戦えない。

 この子を守りながら逃げるのは至難だ。

 うへぇ、仕事が多すぎる……。

 せめてカメラか車、片方に集中すれば逃げられる可能性は上がるのに……!

 

「しししししし社長!?」

「しが多い!どした!?」

「スマホが鳴ってます!」

「着信か、誰から……?」

「非登録番号です!出ますか?」

「応答!」

 

 俺の指示を受けるや豆子が応答ボタンを押す。

 彼女が隣からスマホを俺の耳元へと運んだ。

 

「もしもし!」

『やあ、ボクだ』

「くくくくクルミ!?」

『くが多い。どうした?』

「ごめんッ!今は忙しくてさ、ゲームできないわ!」

『分かってる、逃走中なんだろ』

 

 何で分かってんだよ!!?

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!

 前々から思っていたけど、俺の行動を節々で把握しているような言動があった。

 背後にはリコリス、そして俺の動向を把握しているクルミ……何これ皆で俺の事をいたぶるパーティーでも開催してますか?

 

「アンタの立場は?」

『味方だ、条件付きでな』

「条件付けてまで助ける価値が俺にあるか?」

『惜しい遊び相手だからだ。死なれたり、話せないような環境に拘束されたら困る』

「本当に遊び相手って理由だけかよ!」

『愛してるから、とか言ってほしいのか?』

「そっちの方が胸躍るね!」

 

 こんな状況でする会話ではない。

 クルミの立場があまりに怪しすぎる。

 俺を助けるメリットにおいて、実益があるとは到底思えなかった。遊び相手というのは適当につけた理由以外なら殊更に真意の不気味さが増す。

 コイツがDAと結託していない可能性は?

 ………ゼロ、ではないか。

 俺のような仕方無しで結ばれた協力関係でなければ、DAは極力組織内のみで事案を解決する力を有している。

 クルミに頼るまではない。

 しかし、敵の可能性もまた否めない。

 俺と同等にDAから異例の扱いをされているなら、彼らと結託して俺を誘導し、捕獲する運びとも考えられる。

 

『どうする?』

「ッ……アンタに何ができる」

『ボクはハッカーだ、援護ができる』

「ハッカー、ね」

 

 道理で俺の行動が読み取れるワケだ。

 ……その技術、普段のゲームでも使ってませんよね?

 いや、今はそんな事どうでもいい。

 クルミが選択を迫る。

 その間も、車での逃走は続いていた。

 どうやら追跡する車も二台増えて、いよいよ大所帯になりそうだ。

 このままでは埒が明かない。

 

「どうやって俺らを逃がす?」

『街中のカメラをハッキングしておまえを奴らの目から一時的に消し、各方面に逃走する車のダミー映像を流して撹乱する』

「……できんの?」

『ボクにかかれば簡単だ』

 

 随分と自信があるらしい。

 ……このままでも絶望的だ。

 仕方ない。

 ここはクルミの取引に応じ――――!?

 

 判断を下そうとした瞬間、車のサイドミラーが弾け飛んだ。

 一瞬だけ見えたが、ライフル弾である。

 狙撃、この動く車体を……?

 後ろの追跡する車から撃たれた様子は無い。DAにこんな腕のあるヤツがいるとは……いや、今まで俺に対する狙撃手なども差し向けてきたが、DAの手勢ではいなかった。

 ……DA以外に出来るヤツがいるとすれば。

 

 

「9番の狙撃……!!」

 

 

 マジかよ、ナンバーズまで動いているのか。

 バックミラーで確認したが、よくよく観察すると追跡する車の内の何台かは明らかにリコリス以外が運転している。

 数は……かなり多い。

 なるほど、読めてきたぞ。

 いよいよ本格的に俺を捕まえに来た『会社』の動きを察知したDAが、一網打尽にするつもりで俺と縁を切り、俺ごと処理する心算だな。

 

 DAとナンバーズを争わせて、その混乱に乗じて出るのが得策か。

 ただ、奴らはあくまで俺狙い。

 …………腹を括るか。

 

「乗った。頼むよ、クルミ」

『了解』

「ただし、これから車の運転は助手席に乗る豆子に代わるし、この通話状態も継続して豆子に譲渡する。俺は適当な場所で降りて逃げるから、その間に豆子だけでも逃してくれ」

『おい、その女の面倒までは――』

「俺が逃げやすくなる為だ」

『………』

「後でどうにか合流する。アンタなら、後で俺の位置を捕捉できるだろ。それまでには連絡手段を復活させておくから、その時に頼む」

『……後で報酬は付けさせて貰うぞ』

「おうよ。愛してるぜクルミ」

『おまっ……!?』

 

 俺の通話内容を聞き取っていた豆子が顔面蒼白になっていた。

 くそ、普笑顔の一つでも作って安心させたいのだが、今はとにかく忙しい。

 

「豆子」

「っ、はい……」

「言っておくが、これは『最悪』じゃない。必ずオマエの下に戻ってくる」

 

 それだけ彼女に言って、俺は急加速する。

 

「クルミ!」

『今おまえらの姿を消した。別行動するなら今の内だ』

「オーケー!」

 

 つまり、これから街中を走っている俺の姿と各方面に走る豆子の車のダミー映像がDAやナンバーズを引き付ける作戦だな。

 クルミが作業を開始したと聞いたので信号も無視し、連中を一時的に振り切る。

 奴らは警察でも消防でもないから、この道路内で優先されない。信号に捕まれば、衆目の面前で簡単に動かないだろう。

 その間に距離を稼ぐ!

 9番の狙撃に注意を払いながら、住宅街の方へと入った。

 

 入り組んだ路地、すぐに本道へと復帰できる場所を走り続け、住宅街の中に広がる公園の傍で車を停めた。

 俺は拳銃一丁と泣けなしの弾薬、ナイフの武装と最低限の荷物を持って車を降りた。

 

「社長っ……!」

 

 車内で器用に運転席へと移動した豆子が窓から不安げに俺を見上げる。

 

「心配するな。俺がそう簡単に死ぬと思うか?」

「でも」

「今は泣いていいけど、次に会う時は笑顔で迎えてくれよ。その方が可愛いし、俺的にハッピーだから」

 

 手を振って、俺は車から離れた。

 背後では、遅れて豆子の車が走り出す。

 

 さあ、割と全力の鬼ごっこを始めようか!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二ヶ月後、俺は岐阜の町中にいた。

 新たに用意した端末でクルミとの連絡を取っている。

 

『豆子は、ボクが用意したセーフハウス内で保護してる』

「そりゃ助かる」

『後はおまえだけだぞ』

「そのセーフハウスは何処だ」

『東京。そこ以外は警備網が固いぞ』

「……誘われてるな」

 

 それはクルミも理解しているようだ。

 だが、セーフハウスにいる豆子についての無事は確認済みらしい。

 現状、彼女を監視する目は無いそうだ。

 DAが俺の連れであると認識してはいるが、本人の素性まで特定には至っておらず、結果的に見失った時点で無害だからと放置されている。

 たしかに、豆子の心配はもう無さそうだ。

 それはそうと。

 

「というか、ハッカーだったんだな」

『必要な情報だったか?』

「ゲームで反則してないだろうな?」

『安心しろ。おまえがボクに勝てないのは純然たる実力不足だ、条件はいつだってフェアにしてるんだぞ』

「んぎぎぎ………!!」

 

 ちっきしょおおおお!

 ま、まあ別に?悔しくないけど?

 俺だって成長中だし、クルミの優越感だって今に覆る物だから、甘んじて受け入れてるだけだし?

 

「足は確保した。セーフハウスの位置情報を後で送信してくれ。そこに何日かかけて連中の目を誤魔化しながら進む」

『それはいいが』

「ん?」

『連れが増えてるのは何故だ』

 

 クルミの指摘に、俺は後ろを見た。

 そこでは、ライフルを収納したカバンを担いで空を見上げている男――9番がいる。

 うん、まあ嫌な拾い物をしたな。

 これで従業員が三人に増えてしまったわけだし……人件費。

 

『新人か?』

「そんな感じ」

『…………そうか』

「ところで、豆子の面倒を見てくれた事への追加報酬だけど何が良い?交渉としては事後なのが最悪だが、やって貰ったからには義理を通さないとな」

『そうだな。今回の一件でボクも少し警戒されただろうから、有事の際にボクの護衛でもしてくれ』

「そりゃまた、俺が連中のヘイトを買いそうな立ち回りだな」

『今さらなんだろ?』

「悲しいことにな」

 

 俺は通話を切って、所在なさげな9番の方に向き直る。

 

 あの京都の街で、狙撃してきた9番を直接叩くべく俺も走ったが、距離を詰めたところでコイツは降参した。

 無論、それを信用できるワケではなかったが、スラスラと俺の捕獲に参加している他の面子と作戦の詳細を暴露してくれたので、見逃す……事にするつもりだったのだ。

 それが何を血迷ったのか……。

 

「本当に俺と来るつもりかよ、9番」

「ああ。あんな会社……もう懲り懲りだ」

「……別に良いが、給料は良くないぞ」

「良いさ。後は副業なり何なり見つける」

「あ、あと豆子に手出すなよ」

「オレもう恋人いるから」

「はー!?マジかよ死ッ…………くたばれ!」

「口が悪い」

 

 9番への嫉妬をぐっと堪えて、車に乗り込む。

 今は取り敢えず、生き延びる事が最優先だ。

 死んだら待たせている豆子との約束を破る事になるし、クルミも大迷惑を被る。……もう、たきなに会えない事は至極残念だが、もう道が分かれたのだから惜しんでばかりいられない。

 

「ところで9番」

「ん?」

「いま会社って何処にあんの?」

「安心しろ、関東には無い。DAと対決したあの日以来、東京支部を失ったのはかなりデカい損失って上層部が喚いてるらしい」

「へへ、ザマーみろ」

「13番が戻れば立て直せるともな」

「オロロロロロロ」

 

 誰が戻るか阿呆め!

 

 9番が言うには、現在は関西方面だという。

 理由としては、襲撃を受けた一件で関東付近での活動はDAに捕捉されやすくなった事に加え、俺と互角に戦った『電波塔のリコリス』を警戒しての事らしい。

 あの白髪のリコリスの存在が意外にも牽制として効果的になっているのか。

 俺と接敵するまで、ナンバーズも何人か撤退に追い込んだようだからな。

 まあ、確かにアレは強いわ。

 アイツが戦闘中……あの『アラン』のペンダントなんかに気を取られていなかったら、勝負の行方は分からなかった。

 

 ………東京、また会えるか?

 会いたいけど、会った時はジ・エンドだしな。

 すまない、腹の礼は来世でしよう。

 

「なあ、13番」

「何だ?」

「おまえと一緒に行動してた女の子だが……」

「豆子がどうかしたか?」

「………いや。会社で2番と昔一緒にいるところを見た事があって、懐かしいと思ったんだ」

「2番?」

 

 豆子が2番と一緒だった、だと。

 ナンバーズは隊を率いる事が多々あるし、作戦内ではナンバーズですらない下位の少年兵とツーマンセルを組む機会は誰もが経験している。

 豆子が2番に同行しているのは不思議ではない。

 ただ……俺は2番を知らない。

 俺が会社に入る前に、すでに1番と2番はいなかった。資料では前者のみしか確認できなかったし、後者の分だけ欠如した状況に疑問を抱くほど他人に興味も無かった当時の俺はスルーしていた。

 

「2番って、どんなヤツだった?」

「1番が最強なら、2番は最悪だったな」

「酷評かよ」

「強さなら1番に及ばずともナンバーズ内で突出していた。妙なカリスマ性もあって、少年兵の中には上層部ではなくヤツ自体を崇敬する連中もな」

「…………」

「だが、性格とやってきた所業が最悪と言える所以」

「所業?」

「作戦を満足に遂行できなかったナンバーズを処理する。それが2番のやる事だった」

「……マジかよ」

「ヤツが当時の3〜9番を一度に処刑した事で『再登録』が行われて、オレもその時に選ばれた」

 

 不良品の処分、それが2番の仕事。

 複数名のナンバーズを一斉に殺せるとなると、その実力はとんでもないな。

 これから俺はソイツを相手取る状況になる可能性も考慮しなくては…………俺も脱走兵だしな。

 捕獲できないなら、最悪は処分となる。

 その時に向けられるのが2番かもしれない。

 

「ソイツはまだ生きてるのか?」

「死んだよ」

「……は?」

「突然、兵舎の調練施設で死体になってるところを朝に発見された。2番って死そのものみたいなヤツが首を切られた死体を見て、俺らは驚いたもんだよ」

「………」

「だが、それに上層部は動じてない……というか興味は無かったみたいだ。どうやら、当時は拾ったばかりの13番の衝撃が鮮烈だったみたいだし」

 

 それは、何とも不名誉な事だ。

 

「ん?豆子はどうした」

「2番が死ぬ一月か二月前から一緒にいるところを見たんだよ」

「は?待てよ……俺が入ったばかりってとこから逆算しても、まだ2、3歳だぞ!?」

「だから異様だった。あのクソ2番が子供の面倒を見てたんだぞ?」

 

 話の異様さ、不気味さに俺は顔を顰めた。

 仲間を平然と殺せるナンバーズは、他人の面倒を見れるようなヤツとはお世辞にもいるとは言えない。

 特に2番はその面で際立っているのに、幼児の世話なんてやるか、普通?

 

「その豆子……ってヤツは、それからもたまに訓練中で見かけた」

「へえ」

「4番と一緒に動いてた時期もあったな。……その頃に4番も死んだが」

「…………豆子がやったって、言いたいのか?」

「いいや、無理だろ……あんな無害そうなのが4番、ましてや2番を殺れるとは思えない」

「……だよな」

 

 俺から見ても、豆子は無害だ。

 3番との戦闘後に、簡単に捕まえる事もできた。

 一瞬だけ抵抗せず、銃を向けただけで悲鳴を上げて縮こまっていた。アレが人を殺せる技量どころか胆力があるとも思えない。

 共に行動して三年経つが、不審な動きは無かった。

 杞憂……ということにしておこう。

 

「取り敢えず、今は脱出が優先だ」

「そうだな」

「そして、新たな人生を始めるんだよ!」

「おまえ、本当にキャラ変わってね??」

 

 俺はこれから人生を謳歌するんだよ、慎ましくな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

 私こと錦木千束はセーフハウス一号でカバンからファイルを取り出す。

 今日、資料がミズキ伝にDA情報部から渡された。

 内容は全て13番に関する物らしい。

 何でも、私でしか対抗できないから有事の際には直ぐ出動し、私が鎮圧するのが決定事項で、その為に彼の分析情報がうんたらかんたら………まあ敵を深く理解しとけとかで、資料が回ってきた!

 DAと一時的に協力関係だったけど、解除されて再び敵対関係になったので私にも報告が回ってきたそうだ。

 彼と毎回接触しているリコリスが書いているレポートで、とても丁寧だ。

 さてさて、どんな内容?

 

 読んでいく内に、私は嬉しくなった。

 彼は会社を出て、探偵業というか情報屋?みたいなのを営んでいるらしく、普段から民間の悩み事を解決して金銭を稼ぎ、一人で生活しているという。

 何だか誇らしいな。

 あの時、私との会話で何かを気づいた彼が思い改めてくれたんだ。

 へへ。

 

 次々と設けられた項目の文を読んでいく。

 

「『白髪のリコリスを恩人として尊敬し、生き方の見本としている』………か。いやー、千束さんのファンになっちゃったか!」

 

 尊敬されるなんて照れるなぁ。

 ……今までそんな風に見られた事ってあったっけ。

 何だか新鮮な気分で、同時に悲しくなってきた。

 

 さてさて、次は――。

 

 

「13番の、女性問題?」

 

 

 えーと……必要?

 なんか、変な物出てきたな。

 

 どれどれ?

 

「なになに?『昔は女性の家を転々とし、その女性を籠絡して放置し、ストーカーにまでさせ――』ちょいちょいちょいちょい!?」

 

 い、いやいやいやいや!

 私が会った13番はそんな感じじゃなかったよ!

 もっと硬派って感じで……。

 

「えと、『暗殺に赴いたリコリスを次々に誘惑』………あはは、何かのギャグ?」

 

 駄目だ、コレってドッキリだったり?

 これまでの文章で分かる書き手の真面目さが伝わるからこそ、この項目の内容からギャップしか感じられなくて笑いを取りに来ているとしか思えない。

 13番って、そんな人なの?

 

「えと……好みのタイプは白髪。……へー、そうなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶっちゃけ、戦闘描写わかりにくい?(以下の物は読んだ時の反応)

  • 学べ……書き方を学ぶのだ……!
  • 嘘だ、コイツ……読めるぞ……!?
  • フィーリングなんで別に気にしてないっス。
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