藤宮天side
錦木千束の誕生日。
この日を迎える度に俺の体は緊張が走る。
たしかに憎きクソご主人様ではあるが、同時にあのクソッタレな世界から一時離脱……出来てるかは不明だが、以前より距離を置く事ができる居場所を作ってくれた恩がほんっっの一欠片ほどある。
だから、そんな人の誕生祝いに対して特に嫌な気分を覚える筈も無いのだが、ご主人様の体は特殊だ。
期限付きの心臓で延命されている。
だから、それまで出来る限り長く生きますようにと毎年神社巡りをしているのだが。
「テン、あと何箇所巡るの?」
「……あと二箇所」
「まだまだデートは続くねぇ」
俺と千束は、神社の鳥居を潜って境内から出る。
昼過ぎともあり、そろそろ食事にしようとも考えていたのだが、例年とは異なり今日はご主人様が同伴とあって彼女に慮はなくてはならない。
任務以外では錦糸町の外まで出る事がないので、普段は食えない物を口にできる一年でも数少ないミラクルデイなのに、よもやご主人様の機嫌を伺う羽目になるなんて。
毎年一人でやれてたのに。
新しい心臓を得た千束は、以前にも増して自由さに拍車がかかっている。
「聞いたよ? 毎年、私の為に色んな所に巡って次の誕生日を迎えられるようにってさ、お祈りしてるんでしょ」
「あーあ。墓まで持っていくつもりだったのに、一体誰がネタバレしたんだか」
「知りたい?」
「教えて欲しいなー」
是非とも教えてくれ。
帰ったら口を糸で縫い付けてやる。
因みにだが、きっとクルミに違いないと思うから容赦なく実行できる。
さあ、罪人の名はァッ!?
「先生だよ!」
そっか、店長か……そっかぁ……。
じゃあ、出来ないね……チッ。
最近の店長も怖くて勝てる気がしないし、ミズキさんは安全圏でふんぞり返ってるけど直接被害が無いから悔しいけど八つ当たりになっちゃうし、たきなは……最近は『犬吸い』とかいって俺の胸に密着して深呼吸する奇行に走ってるからそもそも近づくのも怖い。
クルミなら全力出せるのに。
「まあ、お恥ずかしながら奴隷として主人の健康をお祈りしてるわけだけど……オマエは今日、何で付き合おうと思ったの?」
「え、来たかったからだけど」
「……やりたい事最優先、ですか」
「そ。――あとは、」
千束がにっこりと微笑む。
「私がもし死ぬなら、その日にテンも殺して下さいってお願いしようと思って!」
なる、ほど。
それ神様にお願いして大丈夫なのか。
呪詛返し的な物で千束の寿命が縮まないか心配……なワケねぇだろ勝手に俺の寿命まで決定しようとしやがって思う存分呪詛返しに遭っちまえ!!!
「お、お願いするならお互い長生きしたい……にしような?」
「いやいやいや、違うでしょ」
「はい?」
「短くても長くても、テンが私より長かったり短かったりなんて駄目」
「…………」
「私より先にいなくなって私を一人にするのなんて許さないし、私より長く生きてテンが『私のいない人生』を送るなんて論外!」
天真爛漫な笑顔に反して呪いを吐きまくる。
これ、俺が先に死ぬと一緒に死にかねないし、先に逝きそうになると心中しかねない勢いだな。
じゃあ……残りの二箇所は『千束と寸刻違わず一緒に死ねますように』にしましょ(大泣)。
千束の誕生日って知ってた人ー!?
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愚問だな、知っている。
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いやん、初耳っ!