喫茶リコリコで看板娘の奴隷やってます   作:布団は友達

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毎年恒例の誕生日お祝い……だけど去年書くだけ書いてボツにしたやつです。
どぞ。


悪夢ってこういう事

 

 

 その日は何故か目覚めが良かった。

 ご主人様を名乗るだけに飽き足らず年中無休で俺をガチの奴隷扱いする少女――錦木千束に酷使されている日常を始めて早十年。

 俺はこんなにも気持ちのいい朝を迎えた事は無かった。

 ベッドから身体を起こし、腕を伸ばす。

 ウソだろ、マジで軽い。

 今なら空でも飛んで千束のいない世界まで逃げられそうだ。

 

 さて、この気分がご主人様の理不尽で萎える前にそのまま飯でも作るかと思い立ってベッドから出ようとして――。

 

 

「起きるの早いよぅパパ」

 

 

 

 隣から幼気な声がした。

 まだ眠たさを多分に含んでいるそれは、しかし耳に聞き馴染みの無い物である。

 え、誰って以前にパパって聞こえたぞ。

 恐るおそる振り返ると、そこには美しい濡羽色の髪を垂らす幼女。

 小さい手で俺の寝巻きの裾を握っている。

 

「き、君は……――?」

 

 ふと、部屋を見渡して異変に気付く。

 俺がいつも寝ているセミダブルベッドではない、完璧なダブルベッドだ。

 俺は寝台の左側におり、幼女は中央……空白のある右側には誰かがいたであろう皺と取り払われた毛布がある。

 

 異変はそれだけではない。

 

 一つに気付けば、次々と異常な情報を寝起きの五感が拾っていく。

 部屋も見慣れない物が多い。

 千束との体験ウェディング写真が飾られているが……アイツって黒髪だったっけ。

 

「パパ? どうしたの〜」

 

「気にしないでくれ。パパちょっとパパとしての記憶を取り戻そうとしてるところだから」

 

「変なパパ」

 

 幼女が呆れたような息を吐くと同時に部屋の扉が開く。

 そこには――。

 

 

 

「やっと起きたっ! おはよ――ア・ナ・タ♡」

 

 

 

 そこに、いた、のは……

 

「に、21番――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、今何て?

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、聞き馴染みあるけど全く聞きたくなかった冷たく鋭い刃物のような声で目を覚ます。

 知ってる天井……。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………知ってる千束の目だ。

 至近距離に、俺を捉える赤い瞳があった。

 なら、さっきまで俺は夢の中で起きて夢の中で家庭を築いていたそうだ。

 こっちでは体が重い……というか何か乗ってるな。

 

 俺はちらりと腹の上を見やる。

 

 そこには、俺の古傷がある脇腹にぐりぐりと銃口周りの(スパイク)を食い込ませるように押し付けられた千束の愛銃。

 

「誕生日にさ、いつもは先越されるから今年こそは驚かしちゃるぞー! ってテンより早起きしたんだよね」

 

「そうなんだ……へ、へぇ……偉いね……」

 

「それで、目が覚めたら一番に愛しの奥さんを見せてやろうってスタンバイしてたら他の女の名前が聞こえちゃったんだけど……わたし、どうしよっかな〜」

 

「ど、奴隷は退いたら良いと思うな〜って具申致しますぅ……」

 

 

 ドンッ!!

 

 

 銃声が鳴る。

 千束の肩を掴もうと密かに伸ばしていた手が激痛と共に弾かれた。……中指が折れたな。

 

「千束さんが上にいて困ることある?」

 

「な、無いって言いづらいかなぁー……?」

 

「こっちが毎日新しい痕付けても付けても、消える程度にしなきゃって自制してんのにさ……腹立つ」

 

 がしっと脇腹の古傷に服越しだが爪を立てられる。

 

 

 

 

「――いっそ作ろっか」

 

 

 

 

 

 この後、首輪もといチョーカーに付けた緊急事態伝達発信機能を発動し、リコリコメンバーが助けてくれるまでナイフ片手に迫る千束に家中血塗れになりながら逃げました。

 うん、夢見た俺が悪い。

 

 

 

 

千束の誕生日って知ってた人ー!?

  • 愚問だな、知っている。
  • いやん、初耳っ!
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