ナナリーの令嬢修業   作:露草ツグミ

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ナナリーとロックマンが両想いになってから初めての|花神≪タレイア≫祭と、ナナリーが初めて祝うロックマンの誕生日。どんな風に二人は過ごすのでしょうか?
今回は花の季節二月目初日、花神祭当日(午前十時ころ)のお話。

番外編だったのですが、ハーメルンでは第0話として本編に組み込むことにしました。




物語前夜 初めての花渡し
0-1. 花神(タレイア)


 

 ぽかぽかとした暖かな日差しが降り注ぎ、南風が吹いて花が舞い散る。花の季節二月目初日。ドーランは花神(タレイア)祭の喧騒(けんそう)に包まれていた。

 ナナリーは人気のないハーレの前庭にしゃがみこんで花を摘んでいる。心地良い風が頬を撫でて、水色の髪がふわっとふくらんだ。

 ハーレの白い制服の肩に花びらではなく花が落ちてきた。見上げれば空から花が降ってきている。赤、白、薄紅色、黄色……。降ってきた花は地面に落ちることなくふわふわとナナリーの周りを漂っている。

 

「ハーレの受付のお姉さん」

 

 ナナリーは肩に載っていた花を手に取って立ち上がった。ハーレの前庭に黒いリュンクスから降り立った男性を認めると、頬がほんのり赤く染まってくる。

 

「ロックマン」

「君が花を摘んでいるところを初めて見たよ」

「ハーレに飾ろうと思って」

 

 ロックマンが指を振ると、ふわふわ浮いていた色とりどりの花がロックマンの手の中に集まってくる。しゅるっとリボンが巻かれて花束ができあがった。

 

「じゃあ、これも一緒に飾って?」

 

 ナナリーはロックマンの手によって作られた花束を受け取る。

 ロックマンの前髪はいつもより短めでさっぱりしていた。長い金髪は頭の後ろで一つにまとめられており、毛先が切りそろえられている。今日の花神(タレイア)祭では主に王族の護衛を担うと聞いている。見た目を考えて髪を整えたのだろう。

 

「これは君に」

 

 騎士服の胸につけていた赤いキュピレットの花を抜いてナナリーに手渡した。騎士団全員に配られる国王陛下のお気遣(きづか)いのキュピレットだ。

 

「……私に? でも、もらっていいの?」

「もちろん」

「あの、私、今キュピレット持ってなくて……」

「気にしないで。僕は勤務中に花はもらわないことにしているから」

 

 そういえばそうだった。一人の女性から花をもらったら最後、ロックマンは花まみれになってしまうだろう。

 

「明日の約束……覚えてるよね?」

「え? あ、うん、ちゃんと覚えてる」

「よかった。じゃあ、また明日」

 

 ロックマンは手を振ると、黒いリュンクスのユーリに飛び乗った。

 

「ま、待って! ロックマン!!」

 

 ナナリーは摘んだばかりの花の中から赤い花を選んで魔法でロックマンの手元に飛ばした。

 

「ありがとう」

 

 柔らかく笑ったロックマンが空を滑りあがっていく。ナナリーは黒いリュンクスが見えなくなるまで、花びらが舞う空を見上げていた。

 

 

「ナナリー、よかったじゃない~」

「さすが隊長さんね~! こんなに早く隊長さんのキュピレットがなくなってると知った女たちの顔が見てみたいわ」

「所長! ゾゾさん!」

 

 ハーレの扉を少し開けてゾゾさんと所長の顔が覗いていた。花神祭は破魔士も仕事をしないのでハーレは開店休業になるが、毎年所長とアルケスさんがお留守番をしている。今年は所長のご指名でナナリーもお留守番だ。ゾゾさんはアルケスさんと一緒にお昼ご飯を買いに行くと言ってハーレに来ている。

 

「なななな何してるんですか!?」

「うふふふ。で、明日デートの約束をしてるのね?」

「デ、デ、デートなんかじゃないですよ!? ご飯を一緒に食べに行くだけです!!」

「それがデートでしょ? いいかげん恋人だって認めたらどう?」

「そうよ~。明日会う約束してるのに、なんでわざわざ今日キュピレットの花をナナリーに渡しに来たと思う?」

「そ、それは……」

「花神祭当日にナナリーに花を渡したかったからでしょう?」

「そうそう! それに、『自分には恋人がいます』って隊長さんに群がる女どもに知らしめるためよね」

 

 ナナリーの顔がますます赤くなっていく。ゾゾさんと所長の視線から逃れるように花束に顔をうずめた。

 

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