クソニブ師匠ポジ切り札系オリ主 作:yakitori食べたいね
目を開けてみるとそこは肉の壁に包まれた、静かな場所だった。
俺はその中で揺蕩っている。
目をまともに開けられない。
皮膚には水の感触だけがあり、呼吸ができない。
死
にたくない。
あんな体験はもう二度とごめんだ。
痛くて、気持ち悪くて、何より最悪なのは
最高に気持ちが良かったことだ。
もうあんな体験は2度としたくない。
…?溺れない。
まさか、まさかだが…
胎児から転生したのか。
これは、ちょっとキツイな。
狭いし動けないし、何より暇だ。
どうにか目を開こうとするが、半目しか開かずその全てがぼやけている。
さぁここからどうするか。
光…?まさか、生まれるのか。
長かった。本当に長かった。
産まれるのは意外と一瞬だった。
スルッと出てこれたのだ。
目を開こうとするが、明るさに目が焼かれるようだ。
ああ、疲れた。
これからどうしようか。
少し時間が経ち、目が開けられるように成った。
目の前の女性をじっと見る。
ここは病院ではなかったようだ。
バスケットの中に、俺は入れられた。
気持ちばかりのタオルを敷き詰めたものの中に。
捨てられた感じか。
そう俺が考えた後周りを見渡した。
外は雨だった。
少し荒れた川のそばの橋の下だった。
車の走る音が聞こえる。
橋の下とは、随分テンプレというか何というか。
1日が過ぎただろうか。
未だに迎えは来ない。
腹が減った。
そして寒い。
それはそうだ。こちとら産まれたての赤子だ。
何も食事を取っていない。
横を見ると強い雨が降っていた。
降り注ぐ雨の音と走る車の音だけが橋の下に響いていた。
迎えは誰も来ない。
もとより川の直ぐそばで、雨の日には人は通らない。
これは、また死ぬかな。
いやだなぁ…
死にたく、ないなぁ…
息がし辛くなる。
目の前が、ぼやけて、何も見えない。
目が、開けられなくなってくる。
だんだん、暗くなって。
それで…
考え…られな…
彼は、呼吸できなくなっていたのだ。
ただでさえ産声をあげていないのに加え体温低下、体力の消耗で筋肉が動かなくなった。
彼は二度目の死を迎えた。
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また起きた。
起きてしまった。
明るい…な。
瞼を瞑っていても分かる。
此処は何処だ。
目を開く。
俺は、目を開いたことを少し後悔した。
目の前には赤白い線と点が広がっていた。
それは何とも悍ましく、何とも言えぬ感動を俺にもたらした。
俺は機械の中に入っていた。
よくわからない何か。
俺の体に機械が取り付けられているわけではなく、単純にガラスで覆われたものの中に入っていた。
ふと、ガラスに向けて手を伸ばした。
短く、細い、力を込めれば直ぐに折れてしまうその腕がガラスに触れた。
パキリと何かが割れた音がする。
"死"が点から広がっていく。
ガラスの天蓋は、ふと目を離すと無くなっていた。
知らない男が此方を除いた。
誰だ、お前は。
そんな意を込めて俺は男を睨んだ。
当然そんな意思が伝わるはずも無く、男はニヤニヤして笑った。
そんな男の顔にも、線と点が広がっていた。
ああつまらない、此れも、俺が触れれば死ぬのか。
そんな悍ましい思考が脳を巡った。
俺は、そのままの線をなぞろうと手を伸ばし…
途中でやめた。
意味が無い。腹が立ったから殺す?それは馬鹿のやる事だ。
わざわざ死地に飛び込む必要はない。
少し冷静になれ、俺。
二度目の死で興奮していたのかもしれない。
衝動的に行動するのは良く無い。
俺はコイツに不快感を持たれてはいけない。
捨てられてはいけない。
殺されてはいけない。
俺は…死にたく無いのだから。
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あれから、10年が経った。
3歳程から俺はまともな呂律がまわるようになって兎に角媚を売った。
どうやら俺はまともな人間に拾われたわけでは無いらしい。
スパイか何かの養成でもしているのだろうか。
とても子供に施すような教育ではなかった。
他人を蹴落とし、強くなる為の訓練。
白い施設の中で自らを鍛える毎日。
外に出ることは叶わず、毎日テストが行われる。
俺は必死に鍛えた。
体も頭も。
目の前の少年を見る。
彼は刃の潰されたナイフを構えて殺意に塗れた目を此方に向けた。
今は、この施設で週に一回行われる模擬戦だ。
模擬戦とは名ばかりの、殺し合い。
手に持つナイフは刃こそ潰してあるものの鈍器として扱えば子供を殺すのには十分なものだった。
少年が、走り出した。
最短距離で、確実に殺しに来ている。
間合いに入った瞬間、彼はナイフを振りかぶった。
振り下ろされる腕を掴み、捻る。
それだけで彼はナイフを落とした。
苦悶の表情を浮かべる少年を尻目に彼の手首に浮かぶ線をなぞった。
すると、その線の部分は死んだ。
「うわぁああああ!!!」
少年が叫ぶ。
五月蝿い、と言って少年を殴る。
何発も何発も、彼が黙るまで。
『404番、攻撃を中止しろ。…404番!404番!』
それに従い、少年から離れる。
少年は既に意識はなかった。
手から血が滴っている。
『404番、なぜ直ぐに行動を中止しなかった』
「…彼はまだ生きていますが?」
『…もういい、404番、自室にて休憩を取れ』
「承知しました」
俺は頭をカメラに向けて下げ、そのまま訓練場の出口へと向かった。
「お前…いつかぶっ殺してやる…!!」
後ろから少年が負け惜しみを吐いてきた。
その言葉には怨みがこもっていた。
ただ、彼は選択を間違えた。
黙って嵐が去るのを待てばよかったのだ。
そうすれば無駄に藪を突いて蛇を出すことはなかったというのに。
「殺す…か。なら先にやらないとな」
俺は、少年の方へ振り向いた。
少年と目が合う。
「ヒッ…!」
彼は怯えて後ずさった。
俺は、一歩一歩彼へと進んでいった。
「来るな!来るなぁ!!」
彼は落ちていたナイフを拾ってとにかく振り回した。
彼の目の前まで来ると、ナイフが当たりそうだったので、蹴り飛ばした。
「殺される前に、殺さないとね」
そう言って彼の首に手を伸ばす。
「あっ…ガッ…あぁっ!?」
力を込めて、彼の首を握る。
彼は、首元を傷つくほどに掻いている。
せめてもの抵抗をするように。
それが無駄だと伝えるかの如く、力は抜け、顔はどんどん青くなっていく。
「ガッ…はな゛じでぐだざい゛!お願い゛じま゛ず!」
締め上げる力を強くした。
「お゛ね゛…ガ….」
パッと手を離した。
「冗談だよ、殺すわけないだろ?」
俺は笑顔で答えた。
彼は、泡を吹いて倒れた。
「あっ」
やべ、締めすぎた。
俺は逃げる様に訓練場を後にした。
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この施設は、意外と生活自体は充実している。
食事は全て管理されているし、綺麗なベッドで毎日寝る。電子機器こそほぼないが、本なら何冊かあるので暇つぶし程度にはなる。
つまらないのは変わらないが、それでも心の支えにはなっていた。
俺は成績トップなので、施設内でもある程度自由が効く。
反感を持たれたくないという思いも込められているだろうが、飯が美味いのは幸せだった。
訓練を終わらせた後、シャワーを浴びてから食堂へ向かう。
山盛りのご飯と鮭、味噌汁と漬物、後お茶。
やはり味噌汁と米の相性は偉大…!これだけで米が三杯は進む。
口の中に米をかきこむ。
鮭をほぐして取って口に放り込む。
今日も良い塩加減だ…
米は噛めば噛むほど甘みを感じる。
沢庵を取って噛む。
塩辛いっ!だがそれが良い!
それらを味噌汁で流し込む。
嗚呼、至福のひと時…!
「おかわりだ」
「ダメです」
俺は絶望した。
「…!?はっ?何故だ!いつもなら可能だろう!」
「あなた最近食べ過ぎなので食糧の備蓄がちょっと足り無くなってます。このままだと2週間で全員食わせる分が無くなります」
それくらい計算して増やしておけよ…!!
いつものことだろうが!!
「いえ、先週と比べて1日の食事量は約346%の増加傾向にあります」
「あっそうかよ!!」
訓練とは比にならないくらいのストレスが俺にかかった。
食器を持って下げた。
「ふん!!」
その場にいた他の訓練生の心は一つとなった。
あっ食器は丁寧に扱うんだ…と。
特に彼は乱雑に扱ったわけでは無く、丁寧に皿を置いていた。
無駄に苛立ちを制御する彼であった。
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「404番、お前には違う養成所へと向かってもらう」
「…と、言いますと」
「ふん…DA共に情報を抜かれてな、お前にはその交換材料となってもらう。異論無いな?」
楠木め…と溢す彼の表情に、余裕は見られなかった。
「承知いたしました」
交換材料…か。
機密情報と引き換えに人材を受け渡すといったところか。
養成所ってことは此処と大差ないな。
そんでもって司令には媚を売る。
うん、完璧だな。
「明日からもう向かってもらう。今日のうちに用事を終わらせておけ」
「はっ、では失礼します」
そう言って俺は部屋を出ようとドアノブへ手をかけた。
「あ、因みに支部じゃなくて本部だからちゃんと情報抜き取ってこいよ」
は?
最後に、爆弾を投下された。
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「本日付で配属となりました
「宜しく頼みます、君の優秀さはDAにも伝わっているよ。きてくれて嬉しく思う」
「勿体無いお言葉です」
「ではまずは先輩方に挨拶でもしてきたら良い。施設は君も基本自由に使えるようになっているから好きにしてね」
「は、承知致しました。では失礼します」
じゃあね、と言って手を振る名も知れぬ職員を尻目に、俺は食堂へ向かった。
まずは腹ごしらえ、だろ?
本来は巫浄の感応能力と七夜の浄眼…というより妖精眼に近い超能力を兼ね備えて生まれるはずの主人公でしたが、一度目の確実な"死"と呼吸困難による臨死体験により無事直死の魔眼開眼っ!という。