クソニブ師匠ポジ切り札系オリ主 作:yakitori食べたいね
『』は仕様です。英語の会話が基本それになっています。
『おい、お前』
そう後ろから話しかけられて俺は体をビクッと震わせた。
『な…何?』
振り向くと、筋骨隆々の大男がこちらに話しかけていた。
『ジョージ…って言うんだっけか』
『そうですけど…何か用事ですか?』
『いやぁ新人だって聞いてよ"挨拶"は大事だろ?』
ジャパンの常識らしいじゃねぇか、と男は続けた。
俺は日本に住んでいるアメリカ人の父が風俗で産んでしまった子供らしい。
ただ成人する今まで父はずっと育ててくれたし、愛も与えてくれた。
本当に感謝しているし俺も父を愛している。
ただ、父の仕事は傭兵業だったのだ。
俺は、父に恩返しがしたかった。
だから、暴力の手段を学んだ。
銃の扱い方や喧嘩の仕方を父から学んだ。
父は厳しかったが、それすらも愛情だと、俺は感じていた。
ただ、今俺は傭兵になったことを少し後悔している。
こんなにすぐに絡まれて、本当に運がない。
『ロックに絡まれるとはあいつも運がないな』
『ああ、全くだぜ』
そんな声が遠くから聞こえる。
この男性は、厄介者扱いをされているらしい。
やばい、殴られるかも。
そんな思考が脳裏を走るが、男は気にせず話を続ける。
『挨拶…いい文化だと思うぜ俺は。お前もそう思うよな?な!』
『は、はい!その通りだと思います』
『そうだよな!お前らぁ!!』
大歓声が建物の中に響く。
『この新人を!祝ってやろうじゃねぇか!』
これは、リンチされる雰囲気だ…!
逃げないと、死ぬ!
『宴だ!!酒と肉を準備しろォ!』
『おぉぉぉ!!』
熱狂が、場を支配した。
…あれ?
『何ぼさっとしてんだジョージ、酒だ酒!』
「めっちゃいい人じゃねぇか!」
つい日本語で叫んでしまった。
ロックは首を傾げていた。
『あー、日本語わかんねーんだわ。英語で頼むぜ。って言うか酒はお前飲めるか?』
『飲めます!』
『良し!だったら飲み比べといこうじゃねぇか!ピッチで準備しろ!』
『はい!』
宴は、たのしかった。
口を大きく開けて笑った。
こんなに笑ったのは子供の時以来かもしれない。
本当に、本当に楽しかった。
ロックはいい奴だった。
見た目でよく勘違いされるらしいが他の荒くれ者どもから新人を守っているらしい。
ただし酒癖が悪い。
陰口を言われていたのはそれのせいらしい。
『ジョージィ…お前めっちゃ呑めるじゃねぇかよ…』
『あはは…自慢なんですよ、お酒強いの』
そうだ、父譲りの酒の強さだった。
顔はあまり似てないと言われるけど、似ている部分があると言われるだけで、そこは俺の誇りの一部になった。
そんな夢のような時間も終わる。
意外とこの人達は細かいところで丁寧で、皿も、コップも全部きちんと片付けていた。
それが面白くて、笑っていると。
ロックも笑って、俺に返した。
最初は、ただの風切り音だけがあった。
誰も気にすることない程度の音。
ふと、ロックの顔を見ると、顔から目元が"ズレ"ていた。
『……は?』
ロックがそう言葉を漏らした。
それと同時に、俺の視点も崩れて落ちた。
急にバランスを失ってしまう。
俺は眩暈を起こしたのだと、勘違いしていた。
彼に心配させてはいけない、そう思って俺は立ちあがろうとした。
…?足が、動かない。
顔を足下に向けた。
そこには本来あるべきはずの場所に、左の大腿から先が、無かった。
確認と同時に、饒舌し難い程の熱さが、俺を襲った。
「ああっ!、あ゛あぁあ゛!!!」
血が溢れている。
止めなければ、止めなければ。
そう思考するが、身体は動かすことができない。
今まで培ってきた技術は、真の極限状態に於いては何の力にもならなかった。
パシャッと水が弾ける音がした。
顔に生暖かい汁がかかる。
これは、何だ。
何だ。
わからない
いや、わかっている。
俺は下に向けていた顔を上げた。
──────其処には、地獄があった。
何人もの人の屍と、血肉でいっぱいになっていた。
恐怖が室内を反響していく。
死に物狂いで大の大人たちが悲鳴をあげる。
人は、理解できないものを恐怖する。
彼らは、何人もの人を殺してきた。
仲間も何度変わったかわからないくらい死んだ。
それが、恐怖している。
「はははははははははは!!!!!」
笑い声が聞こえる。
その声の主の姿は見えず、金属が反射した光だけが見える。
1人は、入念に何度も刻まれて幾片もの肉塊と化した。
1人は、首を飛ばされて血を噴き出して死んだ。
1人は、頭から股下まで、一閃に切り裂かれて死んだ。
1人は、抗おうと足掻いていた。機関銃を構え、仲間に当たることも気にすることなく撃ち続けた。
そいつは、同じ傭兵によって頭を撃ち抜かれて死んだ。
ああ、俺も…死ぬのか。
全てを切り刻んだのを確認した後、俺は意識を手放した。
───ダメだ。
誰かは知らないが、あいつは俺の友達を殺した。
みんな、いい奴だったんだ。
ロックは見た目は怖かったが気のいい奴だった。
痩せっぽちのケイは皮肉屋だったが面白かった。
美人のミンは、ロック以上の酒豪だったけど、優しかった。
他にも、何人も何人も。
沢山のいい人たちをこいつは殺した。
───許さない。
俺が、殺してやる。
そう思って俺は動く落ちていたライフルを杖に立ち上がった。
体に回る血もなく、体力もそれに伴い消費している。
そんなことは体のだるさで嫌と言うほどわかっている。
それでも、一矢報いる。
その意思だけで、俺は立っていた。
前を向く。
ほんの齢10ほどの少年が立っていた。
頭が働かない。
あんな少年が殺したわけないというのに、心の底からアレを殺せと叫んでいる。
「すごいな、それで立ち上がれるのか」
「黙れ、死ね」
「そうか、お前は────
殺す。
俺は支えにしていたライフルを構えた。
バランスを保てず、崩れ落ちる。
だがこれでいい。
このままあいつの眉間を撃ち抜いて…
あれ?どこに消えた?
俺は、忘れていたのだ。
仲間を殺した兇刃は、姿など見せていなかったことを。
そして理解できていなかった。
暗殺される、ということを。
俺は、崩れ落ちたまま、引き金を引くことも叶わず、意識を落とした。
そして、2度と起き上がることはなかった。
───────────────────
衝動が、少し収まった気がした。
切って、斬って、伐って、殺す。
そうする度に、俺の起源が悦楽を得ていく。
別に、悲鳴が好きなわけでも、死体が好きなわけでもない。
ただ、殺さないといけない。
殺さずにはいられない。
俺は、もう戻れない。
友を、彼女達を、斬り刻みたくて仕方がない。
そんな黒い衝動が、俺の心を渦巻いていた。
それと同時に、友を傷つけたくないと言う、心からの叫びも同居していた。
俺は、腰をかけていたトランクケースから腰を上げて、後ろを振り向いた。
バン!とドアが蹴り破られてリコリスが突入してくる。
「遅かったね、任務は全部完了。此処にあった情報とかはこのトランクケースに大体入ってるから」
そう言って俺は腰掛けていたケースを手渡した。
が、まともな返信を見せたのは赤服の少女だけだった。
ベージュや青の服の子達はこの光景に言葉を失い、呆然としていた。
「承知しました。では巫浄さんも下のバンに乗って下さい」
明らかに俺より年上に見える彼女は、わざわざ敬語を使っていた。
「ありがとう、後処理はよろしくね」
敬礼をする彼女を尻目に、俺は建物から出た。
これで、彼女らに会っても溢れはしないだろう。
心の底から安堵する。
そして──
「…つまんね」
張り合いがなかった。
昔は、何度も殺されかけた。
俺も弱かったから、死にかけることは何度かあった。
特に、同業者を狙う時はそれが顕著に現れた。
偶にいる化け物の様な連中は、足を切り落としても正確に俺の眉間を狙ってくる。
何度も、何度も死にかけた。
ただ、その苦痛よりも命を賭ける快楽に、俺は身を委ねた。
俺は友を大切にすることよりも、美味い飯を食うことよりも。
其れを重要視していた。
それが、間違いだったのだ。
俺は、司令からポケットマネーをいただいた。
今回の報酬らしい。
基本的にリコリスには報奨金は与えられないが、大きな仕事を何の損害もなく終わらせた報酬とのことらしい。
俺は適当なコンビニに寄って、ケーキを買った。
コーヒーくらいなら、食堂で飲めるだろう。
ユキとフキもきっと喜んでくれるだろう。
でも、もし甘い物嫌いならどうしよう。
あ、でも2人ともかりんとう好きだったっけ。
なら大丈夫だ。
「ユキは、死んだよ」
─────は?
その一言で、俺の頭は回らなくなった。
手からビニール袋が落ちた。
中身が潰れた音がした。
「…冗談は、よせよ」
そう言う俺の声が聞こえていないように、フキは続けた。
「目の前でね、人質に取られて、何もできなかった」
「やめろ」
「あたしは何も…何もできなかった…」
涙をこぼすその姿は、見ていて痛々しかったが、彼女は話すことをやめなかった。
「ユキは、「ありがとう」って、あんたに伝えてって。最後の最後に言ってた」
「もういい」
「敵も、撃てなかった。結局最後は千束が全部終わらせた」
「もういいんだ」
潤んだ声は以前までの力強さを全く感じさせなかった。
「あたしって…弱いなぁ……」
そう言う彼女に、俺は何も、何も言う事ができなかった。
せめて、彼女に手を差し伸べようとした。
大丈夫だと、安心させたかった。
「───っあ゛?」
瞬間、脳髄が溶けるほどの熱さが俺を襲った。
線はいつもより鮮明に、そして脆く見えた。
空が、線で埋まっていく。
全ての"終わり"が写る視界は、本来なら発狂するほどの物だった。
だというのに、俺は今まで特に支障なく生きてきた。
そこに疑問を持つべきだったのだ。
手のひらが赤く染まる。
殺した人達の血で染まるように。
俺は、手を差し伸べることすらできなかった。
「フキ!!」
後ろから、千束が走って来た。
俺の横を通り過ぎて、彼女はフキを抱きしめた。
「泣いていい、泣いていいんだよ」
フキの目から、熱い水がとめどなく溢れた。
千束は服が汚れることも気にせず、力強く抱きしめ続けた。
俺はそれを眺めることしかできなかった。
『愛してるわ、色』
誰かが、俺の名を呼んだ気がした。