第六駆逐隊をエレン・イェーガーが指揮したらどうなるのか?   作:なおちー

1 / 5
ごめん。特に書くことないかな。


空襲。

   「敵機襲来!! 多数接近!!」     

 

  「きゃぁああああ」           

 

           「空襲よ!!」

 

「対空砲火、急げ!! 仰角上げろ!!」

 

       「戦闘機は直ちに離陸しろ!!」

 

 

提督がショートランド泊地に就任して最初に味わったのは

深海棲艦の艦載機による大規模な空襲だった。

 

敵の艦載機が上空を埋め尽くした時、提督は執務室から

逃げも隠れもせず、超然とした態度で椅子に座っていた。

 

鼓膜を破るほどの轟音が鳴る。付近に爆弾が落ちたのだ。

ドドドドド、と閃光が地上から飛ぶ。

基地に備え付けられた対空砲火が、空を舐めるように発射されていく。

 

「ここは……どこだ……」

 

提督帽をかぶったイェーガーは自分の手の平を見つめていた。

空襲に対して何の反応も示していない。

 

ガコン!!と音がして彼の頭上に天井が落ちてきた。

彼は首の骨が折れ、燃え盛るガレキの下敷きになってしまう。

 

やがて提督服に火の粉が燃え移り、彼の体を炎が包んだ。

 

「おい、提督はまだここにいるのか!!」

 

この指揮所では参謀を務める長門が、血相を変えてやってきた。

提督は椅子に座り、両手を机の上に乗せた状態で

鬼となって燃え続けている。返事などできる状態ではない。

 

もう手遅れなのは分かる。

しかし、この基地の指揮官を放置するわけにいかない。

 

 

「陸奥!! 消火活動を手伝ってくれ!!」

 

長門級戦艦 二番艦娘の陸奥はホースを引っ張って来てくれた。

急いで提督に噴射し、ガレキの下から運び出す。

 

その頃には深海棲艦の空母による空襲第一波は終わっていた。

空には去っていく敵の飛行機部隊が見える。

 

基地は一時的に緊張から解かれたが、

基地施設の被害に泣き叫ぶ駆逐艦の声で騒がしくなる。

 

提督の亡骸はひどいものだった。

首はうつむく形で直角に曲がり、半身が黒く焦げてしまっている。

服を脱がせば中は恐ろしい状態となっていることだろう。

 

「テイトクゥ!? テイトク、どうしたんですか!?」

 

「あ……あぁ……金剛お姉さま……まさかこの人が犠牲になるなんて……」

 

金剛シスターズの長女金剛と次女の比叡がやって来た。

彼女達が取り乱すとそれが合図となって他の艦娘たちも集まってくる。

 

皆が口々に言った。

 

空襲警報を出したのになぜ彼は執務室にいたのか。

避難する余裕はあったはず。

誰か近くにいなかったのか。

いや、彼はまだ死んでない。治療の方法はある。

 

戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦と多数の艦娘が集まるこの

ショートランドでは様々な意見が出されたが、

結局認めるしかないのは提督が死んだという事実だ。

 

まもなくして深海棲艦の空襲の第二派が来たが、

長門姉妹や金剛隊を中心とした対空砲火、翔鶴と瑞鶴から発艦した零戦隊の

迎撃によって撃退に成功。二度目の空襲による被害は軽微に終わる。

 

基地は守った。

しかし彼女達にとって大切な提督を失ってしまった。

 

提督の遺体はそのままにしておき、埋葬する手順を皆で話し合った。

 

生前の提督はこう言っていた。

俺は陸地が大好きだから、死んだら大地に埋めて欲しい。

海軍式の水葬はするんじゃないと。

 

参謀役の長門がこのことを皆に伝えると、反対意見は出なかった。

 

「では、私と陸奥が代表して穴を掘るぞ」

 

男一人が入るほどの穴を掘るには時間が掛かる。

長門と陸奥は汗と共に涙も流した。

 

横須賀で就任したときに彼と挨拶を交わしてから

どれだけの時が過ぎたことだろう。

スコップを掘り進めていくと走馬灯が脳裏を横切っていく。

 

哀しいのは金剛シスターズ、翔鶴、瑞鶴、第六駆逐隊、

大井や北上さんも同じだった。長門や陸奥も嗚咽をこらえるのに必死だ。

 

以上がこの基地に配属している全艦娘の名前だ。

この基地には巡洋艦が一隻もおらず、その代わりに

戦艦が多いことから全体としては艦のバランスが悪い編成となっていた。

 

この艦隊を指揮する立場としては戦艦隊の消費する膨大な物資の

管理に忙殺されるわけだが、逆に島を守る立場としては

彼女達の耐久性と強力な火砲が敵に対する威圧となる。

 

この時代の戦艦は、外洋に出て敵を打ち砕くための兵器ではなく、

空母の護衛、敵の島への艦砲射撃など、戦争における

補助的な役割を担う存在となりつつあった。

 

 

「うわあぁぁあぁぁぁぁぁん!! 司令官のバカぁぁああ!!

 どうしてこんなにあっさりと死んじゃうのよおお!!」

 

暁は号泣した。響は帽子を深くかぶって声を押し殺して泣き、

雷と電は二人で身を寄せ合って涙を流し続けていた。

 

見た目は小学生にすぎない第六駆逐隊の娘達にとって、

今まで慕っていた指揮官の突然の死はあまりにも辛すぎた。

 

その彼女達の姿を見て指導的立場である長門でさえもらい泣きし、

ついには「すまないが、代わってくれないか」とスコップを

榛名に手渡した。榛名は無言で受け取り、陸奥と一緒に

穴に収まった提督の亡骸に対し、土をかけ続けた。

 

(お別れの時が来ましたね提督……。

 榛名はいつかこの時が来ることを覚悟はしていました。

 これは仕方ないの事なのですね。戦争ですから……。

 平和な時が訪れるその時まで榛名は戦い続けます。

 もし榛名が沈む時があったら、私の提督の隣へ…)

 

ポタポタと、涙が足元にこぼれた。

今頃自分はひどい顔をしているのだろうと榛名は思った。

そんな榛名を気遣ってか、他の皆はできるだけこちらを

見ないようにしてくれている。

 

榛名は涙をぬぐい、スコップを持つ手にいっそう力を込める。

 

 

「おい。やめろよ」

 

今、何かが聞こえた。

 

榛名は誰かが自分に話しかけたのかと思い、

振り返るが周囲には艦娘しかいない。

今の威圧感の有る男性の声は、一体誰が発したのか。

 

「きゃぁぁあああ!!」

 

陸奥が悲鳴をあげる。

スコップを投げ出してその場で腰を抜かしていた。

榛名も同様にその場にへたり込んだ。

 

なんと、提督が動いたのだ。

提督は首が折れたままの状態で立ち上がった。

 

提督は自らの首を、上下から手のひらで抱え込み、

ゴキッと押し上げて元の位置に戻した。

彼の身体から謎の蒸気が発生し、みるみるうちに

彼のやけどの跡が再生されていき、元の肉体に戻った。

 

「おまえらさ、人を勝手に殺すんじゃねえよ」

 

その眼光を見た時、多くの艦娘が大騒ぎしてその場から逃げ出した。

 

逃げなかったのは彼にゾッコンだった金剛や参謀の長門くらいで、

この時のパニックの様子は言葉では表現しきれないほどだった。

 

提督はどうやら不死身だったようだ。

あるいは彼もまた艦娘の一種でサイボーグの類なのだろうか。

おそらく体の中身は機械で構成されている可能性がある。

 

金剛はこの男に対して普通に話しかけるのだから大物である。

 

「生きてたんですかテイトク!! 体は大丈夫なのですか!?」

 

「ああ、なんともねえよ。俺があの程度の火傷で死ぬねえないだろ。

 それより金剛」

 

「はい。なんですか?」

 

「今は俺の事より敵さんに対する反撃作戦を練る方が先だろう。

 敵の基地までの距離を考えるとさっきの空襲は空母艦載機によるものだ。

 これから空母機動艦隊のメンバーを決めるから皆を呼んでくれないか」

 

「わ……わかりました」

 

金剛は方々に散ってしまった艦娘たちを呼び戻すのに30分もかかった。

 

基地がめちゃくちゃに爆撃されてしまったので建物は使えない。

提督は丸太の上に腰かけ、その前にみんなを集めて作戦の説明を始めた。

しかし誰も聞いてなかった。作戦も確かに大切だろう。

 

今はそんなことよりも彼がどうやって瀕死の状態(と言うより死んでいた)

から復活したのか説明してほしかった。かつて提督ラブだった第六駆逐隊の

艦娘たちでさえ彼を恐れて距離を取っている。

 

「俺の身体のことは……あまり聞かないでくれると助かる……。

 説明すると長くなるんだが、俺はここに就任する前に

 とある軍隊で訓練を受けていたからな。

 普通の人より体が頑丈にできてるんだと思う」

 

「その説明は無理があるのでは」

 

突っ込んだのは霧島だ。

眼鏡を指で持ち上げる知的な仕草が特徴の金剛シスターズの四女だ。

一度怒り出すと手が付けられなくなる気性から

太平洋戦争では「鬼人」として恐れられた。

 

「あなたは確かに死んでいたはずです。

 念のために脈を測ったら止まってたのですが」

 

「脈か……。なんつーか、そういう常識的な発想だと

 俺の身体の状態は測れないんじゃねえのかな」

 

「その沈んだ声はどうしたのですか?

 以前のあなたはもっとチャラけてる感じで、

 明るくハキハキしていました。その年で声変わりしたってことですか」

 

「年か。俺って何歳なんだっけ?」

 

「それを私に訊いてくるとは……。

 あなたの履歴書には就任当時が22歳となっていましたから、

 今は25歳のはずですが」

 

「そっか。俺は25になってたのか。なんか不思議な気分だな。

 俺は自分が10代の時に巨人に食われて死ぬもんだと思っていた。

 死ぬ覚悟は調査兵団に入った時からできていた」

 

「巨人……? 調査兵団というのはあなたの前の世界の記憶ですか」

 

「まあそんなところだ。なあ霧島。こんな尋問みたいなマネは

 やめようぜ。他の皆もますます俺のことを怖がっちまうだろうが」

 

提督・イェーガー。

彼はファイナルシーズンでラインー・ブラウンと

会話している時の目つきと声色で話している。

 

その彼が、大井を見た。

 

「ひぃ!?」

 

大井はイェーガーの異常な目つきに恐怖し、

大好きな北上さんの背中へ隠れる。

 

大井は北上と共に軽巡洋艦として建造されたが、

この基地に来てから多数の魚雷を搭載する重雷装巡洋艦として改造された。

 

「大井。おまえ、俺が怖いのか?」

 

「なな、なんですって……この私が提督如きを怖がるなんて……

 そそそ、そんなことあるわけないでしょ。ね、北上さん?」

 

「大井っち。私の後ろでそんなに強く肩をつかみながら

 言っても説得力なさすぎじゃない?」

 

「そ、そんなぁ。北上さんが私の味方をしてくれないなんて!!」

 

「てゆーかさぁ。実は提督が怖いのは私も同じなんだよね。

 提督って本当に何者なの? 深海棲艦の爆撃を食らって

 生きてる人間を見るのは初めてだよ」

 

「俺は……お前らの提督だ」

 

「うん。それは分かってるんだけどさ」

 

「さっきも言っただろ。俺のことを話すと長くなるっちまう。

 今は作戦会議中だから、さっさと話を前に進めたいんだがな」

 

「そ、そう。ごめんね。だったら好きに話していいよ」

 

「おう。すまねえな」

 

何事にも動じず、たとえ10倍の敵に包囲されても

涼しい顔をする北上でさえ、提督の威圧感に抗うことは難しい。

彼に見られると本能的な恐怖を感じ、足がガクガクと震えてしまう。

むしろ後ろで大井っちがくっついてくれて安心する。

 

「みんな。俺の話を聞いてくれ。今回は反撃に見せかけた威力偵察をする。

 うちの航空戦力は五航戦の翔鶴と瑞鶴。どっちも零戦が少し痛んだようだが、

 艦上攻撃機は健在だ。今回は全機雷装をして出撃してもらう。

 五航戦の護衛に着くのは金剛と榛名、第六駆逐隊だ」

 

全てのメンバーを高速艦艇で固めた。

逃げる敵を追尾するために必要な措置だった。

 

「あの、提督……」

 

翔鶴が挙手する。翔鶴型航空母艦の一番艦娘。

竣工当時は、大日本帝国海軍が建造した初の完成型の空母と呼ばれた。

 

「攻撃機は全機雷装とのことですが、爆装しないのはなぜですか。

 相手が空母ならば空と海からの波状攻撃をするのが

 航空戦の常だと考えられますが」

 

「空から爆弾を落とすよりも航空機が低空から突っ込んで魚雷をぶつけた方が

 命中率が高いと思ったからだ。もちろんこっちの損害はすげえことに

 なるかもしれないが、敵の空母を確実につぶすにはこっちの方が確実だ」

 

「提督、私は妖精さん達が無駄死にするような作戦には同意しかねます。

 飛行機の代わりはあったとしても、操縦者の妖精さん達の代わりは

 いないのですよ」

 

「翔鶴は優しいからな。そう言うと思っていたよ。だが翔鶴。

 戦いとは非情なもんだ。どんなに考え抜いても完璧な作戦なんてない。

 今から航空作戦の具体案を示す。この紙に目を通してくれ」

 

「これは……」

 

それは航空戦の常識からかけ離れたものだった。

瑞鶴と翔鶴から発艦した総勢80機を超える攻撃機を、

順番に雲の中に待機させ、合計で6つの波に分けて波状攻撃をかける。

 

(なぜ一度に攻撃しないの……?)

 

それは戦力の逐次投入を意味し、愚の骨頂といえる作戦内容だった。

敵は空母艦隊だ。敵側の対空砲火が強力であるならば、逐次投入された

攻撃機はいとも簡単に撃ち落され、最悪全滅することも考えられる。

 

「そんな無謀な作戦には同意しかねます」

 

「私も反対だよ!! 提督ったら何を言い出すのよ!!」

 

翔鶴に続いて妹の瑞鶴も憤慨している。

戦争の雌雄を決する正規空母の艦娘としては当然の反応だろう。

 

「安心しろよ。時期を見て俺も出撃する」

 

「はい!?」

 

「はぁ? この男、今なんて言ったの……!?」

 

縁起を担ぐ「鶴」の名前のを冠する姉妹を、提督は驚愕させることになる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。