第六駆逐隊をエレン・イェーガーが指揮したらどうなるのか?   作:なおちー

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ちょっと内容が軍隊的になってるね。
早くラブコメを入れたいのだが。


空母機動艦隊。

(あの男はバカげてるわ)

 

瑞鶴はそう思い、姉と相談した末に多数の空母艦載機を

一度に発艦させて敵を攻撃することにした。

提督はショートランドにおいては統帥上の最高指揮官である。

その彼の命令に反して独断専行するだから、抗命罪は承知の上だった。

 

ショートランドから出てきた空母機動艦隊は、敵の行方を追って

ソロモン諸島近海をさまよい続けた。大型空母2隻と金剛型4隻から発進した

偵察機によって周囲をくまなく探す。この付近の島には敵の航空基地があったが、

 

一か月も掛けて金剛型による艦砲射撃を食らわせたので今は沈黙しているはずだ。

その島を防御する戦艦や巡洋艦を主力とした艦隊も撃滅している。

しかし敵はそのはるか遠くにある基地から空母艦隊をこちらに派遣し、

空襲をしたのだろう。

 

「ねえ翔鶴姉。本当に敵の空母がこの近くに居るのかな」

 

「さあ……どうかしらね。艦載機は爆弾を落とした後だから余裕もないだろうし、

 自分たちの基地まで大急ぎで逃げているんじゃないのかしら」

 

空母艦隊は、翔鶴と瑞鶴を中心に二つの輸形陣を形成。

彼女らを護衛するために戦艦や駆逐艦が周囲に位置するのだ。

上空から見ると、大きな二つの円が海に浮かんでるように見える。

 

「零式水上偵察機より入電……。敵空母らしきものを見ゆ……。

 数は2。戦艦のその他の護衛あり……」

 

金剛から発信した偵察機の報告だ。霧島の目つきがいっそう鋭くなる。

 

「お姉さま。最大船速でそちらに向かいましょう」

 

「う~~ん。それにしては敵の速度が遅すぎるのが気になりま~す。

 罠かもしれませんねぇ。近くの島に敵の別動隊が潜んでいる可能性があります」

 

「確かにそうかもしれませんが、

 我々が提督に与えられた任務は敵の空母を撃滅することです。

 他の艦隊がいたとしてもそれは無視して帰還すればよいのです」

 

「確かに霧島の言う通りネー。了解。それでは……」

 

金剛が翔鶴と目配せし、互いに頷いた。瑞鶴隊にも無線で命令を知らせる。

この艦隊は金剛が旗艦となっていて、

彼女の指示のもとに全艦隊が動くようになっている。

 

翔鶴型航空母艦の2名が、上空に向けて弓を放つ。

弓は上空で分裂して光となり、それがやがて艦載機に変化する。

背中に背負った筒が空になるまで放ち続けた。

 

空を埋め尽くすほどの大群となった雷撃機たちが、左右に分かれて

敵に向かう。敵の艦隊に対し、まず第一波が左翼から攻撃し、

それに続いて右翼から第二派が最後の突撃をかける。

作戦上は完璧と思われた。爆撃機がいないことを除けば。

 

雷撃機とは、その胴体に大きな魚雷を積んだまま敵に突っ込み、

敵の目前にまで達したら魚雷を投下して離脱する。

 

その際は水平方向、すなわち敵の船に対して直線的に移動する。

高度は極端に低く、水面すれすれを飛行する。

 

防御する敵の側からすれば、対空機銃を正面の敵に

向けて水平に打てばいいわけだから、雷撃機の被弾率は高い。

 

あの世界最強の航空母艦、赤城の熟練搭乗員でさえ

死傷率が3割を超えると言われている。

敵の撃沈と引き換えに死ぬことも雷撃機の搭乗員の仕事だ。

 

提督は無謀にも攻撃機を全機雷装にしろと言った。

 

せめて空からの爆撃があれば、敵の迎撃能力を

空へと分散させる効果があったことだろう。

 

 

翔鶴型大型空母2隻から飛び立った雷撃機の群れは、

高度を落として敵艦隊に向けて突撃を開始する。

 

すぐに敵による猛烈な対空射撃が展開され、突撃第一波のうち、

11機も撃墜されて海面に叩きつけられるか、爆破、四散した。

 

敵空母艦隊は空母2隻の他には、

戦艦2、重巡洋艦1、軽巡洋艦3、駆逐艦3だった。

 

深海棲艦はどの艦も対空射撃が巧みで機銃や砲の数も多かった。

その猛烈な砲火の中で、なんとか敵の空母に突撃できたのは3機だ。

 

他の機は敵弾により負傷して離脱するか、目標を誤り空母ではなく巡洋艦に対して

魚雷を発射して離脱、あるいは発射管の故障によって魚雷を撃てずに

終わった機もあった。五航戦の練度はともかく、やはり全機での雷撃には無理がある。

 

敵空母に対する魚雷攻撃は、たったの一発しか命中しなかった。

他の二発は目標を外れた。こんなにも当たらないものかと思った。

 

命中した魚雷も敵に対して致命傷とは至らず、敵空母は

肩部から大きな煙を出しているが、まだまだ戦闘可能な状態だった。

 

(勝てない……)

 

翔鶴はそう思った。敵の空母とは以前も戦闘したことがあるが、

今回の空母はさらに装甲が強化されており対空砲火も異次元となっている。

 

敵の対空砲火はまさに天空をまるごと切り裂くほどの勢いであり、

雷撃機であれば視界を奪われた状態で敵に突っ込むしかない。

皮肉なことに末期の日本海軍と同じ状態を彼女達は繰り返していた。

 

 

翔鶴、瑞鶴から飛び立った突撃第二派が、上空を旋回した。

各小隊ごとに突撃体形を取るために高度をゆっくりと下げていく。

 

(たぶん、今回もダメだと思う)

 

瑞鶴は汗をぬぐった。先ほどの一撃は奇襲に近い形で敵に襲いかかったが、

今度は敵に警戒されている。敵空母は迎撃用の戦闘機を展開する余裕は

ないようだが、こちらの雷撃機を落とすなら対空射撃だけで十分とも取れる。

 

「艦隊は全速前進でーす!!」

 

金剛の指示の元、敵の空母と最大限距離を近づける。

攻撃の成果はどうであれ、攻撃が終わった航空機を

急いで収容するためには互いの距離を詰める必要があるのだ。

 

敵の方も空襲の後の帰り道なのでこちらを追撃することはないだろう。

こちらも攻撃終了後に離脱すればいいのだ。

 

 

しかし、ここで奇怪なことが起こる。

 

零式艦上偵察機と思われる飛行機が、上空に現れた。

その飛行機は、なぜか敵の空母に向かっている。

編隊を組むわけでもなく、単機である。

 

まるで敵を挑発するように空母の直上を旋回するその偵察機に対し、

敵艦隊が対空砲を上空に向ける。もはや火炎の中をさまよう

鳥のようになってしまった偵察機は、それでも必死の回避行動を

続けてなんとか弾を避ける。まさに蛮勇が過ぎる。

 

一見すると無謀な特攻に思えた彼の活躍は無駄ではなく、

その成果は、翔鶴、瑞鶴から発進した第二派の攻撃に生かされた。

 

第二派の方に精鋭部隊を配置していたことも手伝って魚雷の命中率が

飛躍的に増大した。敵空母に魚雷をそれぞれ2発ずつ命中させ、

一隻を撃沈。一隻を中破。他に重巡洋艦1を撃沈,駆逐艦1を大破させた。

 

「攻撃機を収容した後は反転でーす!!」

 

「了解しました!!」

 

翔鶴と瑞鶴は、この時になって初めて計14機の零戦を発艦させた。

万が一別の空母艦隊と遭遇した時の護衛のためだ。

島の防空で使用したため多くの機体が修理中のため機数は少ない。

 

空母まで無事に帰還できた攻撃機を収容し、さらに周囲への警戒を厳とする。

 

この日は幸いなことにショートランドに帰還するまで別の敵に会うことはなかった。

 

敵の戦力には大打撃を与えた。

こちらの損害は、艦載機を合計で23機失う代わりに艦娘への損害はなかった。

 

負傷した機体は45を超えるのだから、敵の対空射撃の強さが分かる。

攻撃隊で無事だった機体の方がめずらしいくらいだ。

もっとも護衛の戦闘機を付けずに突撃したことも一因なのだが。

 

 

基地に帰って真っ先に提督に怒鳴りつけたのは、大型空母の瑞鶴だった。

 

「あんたの考えた無謀な作戦を無理やりやったせいで艦載機の損害がすごいわよ!!」

 

「ああ、確かに護衛もつけずに突っ込むのはやりすぎたな。悪かったとは思ってる」

 

「艦載機の攻撃についてですが、提督……」

 

翔鶴が言う。

 

「報告した通り、私達は提督の命令に逆らって艦載機を一斉に出撃させて

 攻撃を仕掛けました。この件に関しては、現場の私達の判断の方が

 被害を最小限に抑えることに成功したということで不問にしていただきたいのですが」

 

「もちろん不問にする。

 俺が戦力の逐次投入だなんて馬鹿なことを考えたのがいけないんだ。

 翔鶴と瑞鶴の判断は全く正しかった。間違っていたのは俺だ。認めるよ」

 

「あんたねえ!! なに開き直ってるのよ……。それに偉そうに!!」

 

「落ち着きなさい瑞鶴。提督にもきっと何かお考えがあったのよ」

 

「確かに俺が今まで思ってるほど戦争ってのが甘くないってのが分かった。

 それに敵の対空砲火のすさまじさもな。

 俺はあの時上空にいたから、おまえらの大変さが少しは身に染みたよ」

 

空母の姉妹は言葉に詰まる。一体、この男は何を言い出すのか。

 

「雷撃の第二派を支援するために上空を飛んでいた偵察機がいただろう?

 あれを操縦していたのは俺だ」

 

瑞鶴はこの時、今夜にでも移動命令を出そうと決心した。

 

この男は自分が指揮官の身であると知りながら、あの戦場に

ノコノコと偵察機に乗ってやってきたのだ。そもそもこの世界では

妖精さんでもないのに飛行機の操縦ができることがまず異常なのだ。

もう目の前にいる男とこれ以上関わりたくなかった。

 

「瑞鶴。短気なのはあなたの悪い癖よ。提督の言葉を最後まで聞きなさい」

 

「でも」

 

「いいから」

 

瑞鶴は下唇を噛みがら姉に従った。

 

「なあ瑞鶴。お前はもう俺の元では働きたくないと思ってんだろ。

 おまえの目を見れば分かる。だがな。

 俺とお前もここで戦っている目的は同じなんじゃねえのか。

 俺は地球を救うため、世界の平和のために……」

 

 

 ――深海棲艦を一人残らずぶっ殺してやりたいんだ。

 

 

「……っ!!」

 

瑞鶴は全身の毛が逆立つような気がした。

 

この提督の濁った目つき、異様に迫力のある声。

まるで敵の戦艦に主砲を向けられたかのような、

表現しようのない圧迫感を相手に与える。

 

翔鶴はつばを飲み込む。

 

「提督……。本当に、あなたはいったい何者なのですか」

 

「俺は、お前らの提督だ」

 

「それは答えになってないと、霧島にも言われませんでしたか?」

 

「そうだったかな……。悪い。俺は昔のことは何でも忘れちまう性格なんだ」

 

「……そうですか。もういいです。報告は以上です。私達は今日は休みます」

 

「ああ。任務、ご苦労だった」

 

大型空母の姉妹が退出し。扉が閉まる。

 

時刻は、ふたひとまるまる(夜の9時)を過ぎており、

多くの艦娘はお風呂タイムか、あるいは部屋で談笑でもしていることだろう。

 

提督・イェーガーは大本営に送る戦闘報告書の作成、空襲の被害の把握、

武器弾薬の補給の手配、基地にいる陸軍との会議などで多忙を極め、

どうして自分が今この世界に来ているかについて考える余裕がなかった。

 

彼の頭の中では何となく艦娘を戦闘単位として認識はしていたが、

彼女達の性格や個性について考えたことはまだなかった。

 

執務室にはアルバムがあって、彼が就任する前の提督、

すなわちイェーガーが憑依する前の提督が

撮影したのであろう写真がいくつも貼られている。

 

みんな、笑っている。ここではなく内地の鎮守府で

行われたカレー大会の写真が印象的だ。

 

第六駆逐隊の四人の艦娘が、エプロン姿で一生懸命にカレーを作っている。

大会のためにたくさん練習したのか、指に絆創膏を巻いて、なんとも微笑ましい。

 

そんな彼女達の姿を見て、イェーガーはこう思った。

 

(可愛いな)

 

混沌と殺戮、絶望と裏切りが支配する世界で過ごしてきた

彼にとって第六駆逐隊は天使のように愛らしく思えた。

特に誰が良いというわけではなく、全員が可愛いらしいのだ。

 

幼少の頃から一緒に暮らしてきたミカサ・アッカーマンは

家族と言うより姉である。エレンの面倒をよく見てくれて

その代わりに小言もたくさん言われた。

そんな彼が幼女に興味を持つのは自然の流れだったのかもしれない。

 

「高速の駆逐艦か……。この子達をもっと活躍させてやんねえとな」

 

軍服の上着を脱いだ彼の肉体は、文字通り鋼鉄そのものだった。

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