第六駆逐隊をエレン・イェーガーが指揮したらどうなるのか?   作:なおちー

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クロスオーバー作品を書くのは初めてだ。
キーボードをタイプする手が震えるぜ。


暁は一人前のレディー。イェーガーは鬼。

あれから2週間が経過。ショートランド泊地は驚くほど復旧した。

 

海上輸送された資材を使って湾口の整備を初め、各陣地を再構築する。

宿舎が空爆されなかったことは幸いであった。

 

島に常駐する陸軍の工兵は若くてイキの良い兵が多く、

額に大汗をかき、時には陽気に歌いながら重量物を運んでいく。

今の日本の若者には滅多に見られない職務に対する信念や覇気が彼らには存在した。

 

夜になると彼らの宿舎で軍歌の大合唱が聞こえる。

歌に合わせて合いの手を打つ音が、提督達のいる宿舎まで響く。

たまに艦載機の妖精さん達があちら側に混ざろうとするので長門が叱った。

 

酒に酔った陸軍兵が艦娘の寮(宿舎)に忍び込んで

くることがあったのでイェーガー提督が拳でぶっ飛ばし、

多少の騒ぎとなったことがある。結局は仲裁が入って陸軍側が謝罪したが。

 

どこの国でも陸軍と海軍の中は悪い。提督は女たらしで

気が腑抜けていると陸軍からは悪く言われるが、

提督は言い返すこともなく沈黙を貫いた。

 

彼にとって陸軍からの陰口など問題ではなかった。

彼に一番重要なのは

 

(第六駆逐隊のみんなと一緒にカレーが食べたい……)

 

ということだった。

 

ここはソロモン諸島に近い太平洋の南部。

カレーなら基地にある食堂で食べられる。

 

彼の望みはそうではない。暁に作ってもらったカレーか、

一緒に作ったカレーを食べてみたかったのだ。

 

しかしそれには……

 

「あそこにいるのは提督じゃないか?」

「司令官が来たわー!!」

「ひぇぇぇ。ちゃんとやらないと怒られるのですぅ!!」

 

敵が攻めてこない間はひたすら訓練だ。

第六駆逐隊には海上に設置した的に対して

側面から回り込む艦隊運動をしながら主砲弾を撃つ練習をしている。

 

堤防の一角に提督の姿を確認しただけで幼い彼女達は

射撃目標を見失ってしまう。得体の知れない提督が怖いのだ。

 

暁が呆れながら言う。

 

「あの男……なんでいつも上半身裸なのよ」

 

イェーガー提督は、執務中はもちろん訓練の視察中でも上着を着ることを

好まなかった。さすがに下はズボンは履いているが、ショートカットにした

髪の毛を侍のごとく後ろでしばってオールバックにし、ズボンのポケット

に両手を突っ込んで猫背で立っている。どう見ても不良である。

 

オドオドして泣きそうになってる雷に対し、

暁が腰に手を当てて言う。

 

「あんな男にビビってんじゃないわよ」

 

「うぅ~~。でもでも。目つきが怖いのですぅ……」

 

「あいつは堤防に立っているだけで訓練内容なんて見ちゃいないのよ。

 ほら見なさい。またコンクリの上で寝そべって筋トレしてるわ」

 

提督の趣味は、筋トレだった。

始祖の巨人であり調査兵団の兵員でもある彼の肉体は

帝国陸軍の軍人と比べても遜色ない程度、いやそれ以上だった。

 

彼が一度腹筋を始めてしまうと、1時間くらいは同じ動作に没頭する。

彼の流した汗だけでコンクリの上に水たまりができると言われていた。

よくも同じことを続けて飽きないものだと周囲は呆れていた。

 

「ちょ、ちょっと司令官」

 

「ん? 暁か。どうした」

 

「あんたがそこに居るからみんなが怖がってんのよ……。

 腹筋をするなら寝室とか執務室とかでやってよ。

 私の妹達が落ち着いて射撃訓練ができないじゃない」

 

その一言はイェーガーを大いに傷つけたが、

暁はそんなこと知る由もない。

 

「そうか……みんなが怖がって射撃の精度に影響が出ちゃうんじゃ

 申し訳ねえな……。俺はただ、日光に当たりながら

 筋トレした方が気持ち良いからやってただけなんだ。

 すまなかったな。これからは気を付けるよ」

 

「ちょ……別にそこまで謝らなくてもいいわよ。

 部下の艦娘の前で頭を下げるなんて上官らしくないわ」

 

「暁は俺を許してくれるのか?」

 

「許すも何も、私は少し苦情を言っただけじゃない」

 

「暁って優しいんだな。君みたいに俺に何でも

 言ってくれる娘の方が助かる。お互いのことを知る上でもな」

 

「あのさ……その話し方なんだけど、前までの司令官とは

 別人格が宿ってるのかしら。本当にどうしちゃったの?」

 

「いや俺は……俺は確かに変わったかもしれないが、

 提督には変わりないはずなんだが」

 

「じゃあ提督、あなたは鎮守府に軍人として赴任する前は何をしてたの?」

 

「……」

 

「ほら。何も答えられないじゃない」

 

「すまん。本当は暁に隠し事なんてしたくない。

 だが時期が来ないと話せないこともあるんだ」

 

「ふーん。大人の事情って奴?」

 

「ああ。そんなもんだ」

 

「だったら待ってあげるわ。あなたが自分から話すようになるまでね。

 なんたって暁は一人前のレディーだから、人を急かしたりなんてしないのよ」

 

人差し指を前に出し、得意げに胸を張る暁を見て、イェーガー提督は

 

(可愛い……)と思った。

 

彼は艦娘の練度を極限まで上げるとケッコン(仮)ができることを

なぜか知っていた。最初にケッコンする娘は暁にしようと思った。

 

 

それからさらに2週間が経過。艦娘たちは日中は訓練に明け暮れ、

夜は宴会をして盛り上がったりと有意義な時間を過ごしていた。

敵艦隊はまだ攻めてこない。敵側も戦力の補充を待っているのか。

 

陸海軍共同会議の席で、侍ヘアーのイェーガーが

顎の下で両手の指を組みながら発言する。

 

「我が方の戦力は、航空戦力、機動性に富む軽巡洋艦と駆逐艦が絶対的に

 不足しています。ソロモン方面では航空撃滅戦によって

 制空権を得る以外に勝機はなく、これが不可能となれば

 ショートランドを放棄して撤退するほかありません」

 

「撤退は許さんぞ!!」

 

陸軍の偉い人がテーブルを叩く。

 

「航空機の増援なら我が陸軍機を随時得ているではないか。

 あと2か月もすれば新型の戦闘機も受領できる見込みだ。

 そもそも大本営の命令で維持を命じられたこの島を放棄するなどと

 軍の統帥にも関わる愚行だ。断じて許さんぞ」

 

イェーガーが自分より30歳も年上の兵に対しにらみを利かせる。

 

「あんた。何もわかってねえな。敵は空だけじゃなくて海からも

 攻めてくるんだ。敵の海上戦力によってこの島が封鎖されたら

 補給もクソもねえだろ。敵機と敵艦隊に対する防御として

 軽巡洋艦と駆逐艦の増援は必至だ。島を維持するには根本的に戦力が足りねえんだよ」

 

「貴様らには本国から貴重な戦艦を6隻も送られているではないか」

 

「高速船艦の金剛型はフル活用させてもらっているが、

 戦艦だけに弾薬の補給が難しい。燃料よりも弾薬が問題だ。

 弾が足りないと訓練すらできねえんだぞ」

 

「ふん。足りないのは貴様の知恵ではないのか。

 資源の豊富な深海棲艦側と違って我が日本は限られた資源で

 戦うしかないのだ。足りないと言うなら知恵を絞らんか」

 

「おおそうだな。だから考えたよ。ちなみによ……。

 俺がソロモン方面で攻勢に出るために必要な戦力をここに書いておいた。

 あとで大本営に対して提出するつもりだが、みるか?」

 

「よこせ」

 

陸軍の幕僚5名は、それを読んで思わず失笑するか、憤慨した。

 

今度は眼鏡をかけた坊主頭の陸軍の偉い人が口を開いた。

 

「海軍提督、貴様は海軍を自分のおもちゃだと勘違いしているのかね?

 この子供が考えたとしか思えない要求書はなんだ?

 軽巡洋艦が10隻、駆逐艦が15隻。対空機銃や主砲の口径の指定もある。

 それに航空機が空母艦載機と基地航空隊を含めて500機。

 500だと……? ふざけているのか?

 今の大本営にこれだけの戦力を揃える余裕があるわけがないだろうが!!」

 

この将兵はよほど腹が立ったのか、

日本酒の入った瓶を椅子に叩きつけて割ってしまった。

 

「だろうな。どうせ馬鹿にされると思っていたよ」

 

「古くは日清日露戦争の時より我らが陸軍の足を引っ張るのはいつも海軍だ。 

 実に忌々しい。そもそも貴様。なぜ軍服を着ずに裸でいるのだ」

 

「俺は熱がりだからな。上着は着ない方が頭が良く回るんだ」

 

「その髪型もどうにかならんのか。軍人は頭を丸めるのが規則だろうが」

 

「これに関してはすまん。俺のファッションなんだ。見逃してくれ」

 

「ふん。貴様のせいでまずい酒を飲むことになったわ」

 

(そもそも会議中に飲んでんじゃねーよ)

 

20時で会議はお開きになり、まとめた書類をわきに抱えた提督は

いつも以上に沈んだ顔で執務室へと戻った。

執務室では参謀の長門、その補佐役の陸奥が待っていてくれた。

 

長門が腕組しながら言う。

 

「その様子だと話はまとまらなかったようだな」

 

「ああ。陸軍の奴らは現状戦力で本当にこの海域を守れると

 思っているしい。時代遅れの精神論だな」

 

陸奥がお茶を入れてくれたので会釈する提督。

 

「ここから先の展開を予想すると、半年もしない内に

 航空消耗戦により我が方の航空戦力は壊滅するな。

 翔鶴と瑞鶴の機体の補充も半分しか済んでない現状では

 次の襲撃があった場合に対抗するが難しい」

 

「ふーん。つまりこのままだとジリ貧状態になるのね。

 だったら逆にこっちから積極攻勢に出る?」

 

「ああ、俺もそれは考えたよ。陸奥」

 

提督は飲んでいた湯呑をテーブルに置いた。

 

「俺らの最大の戦力はお前たち戦艦だ。

 その火力をもって島の航空基地を一つ一つ叩いて行く従来のやり方も

 悪くはないが、深海棲艦はそれを学習して島の基地ではなく

 大規模な空母艦隊での襲撃を考えているようだ」

 

「神出鬼没な空母が相手では、敵がどこから現れるか

 分からないからこちらから迎撃に出るしかない。

 そうしたら絶対に空母や航空機が必要になるわね」

 

「そうだ。だからこそ航空迎撃戦だけでなく対潜戦もできる

 軽巡洋艦と駆逐艦が欲しかったんだがな。最近になって

 我が方の輸送船が敵の潜水艦の魚雷でどんどん沈められてるんだ」

 

「うむ。敵潜水艦による被害は深刻らしいな」

 

長門がそう言う。

 

「こちらに潜水艦を一隻も送ってこない大本営の考えも理解できないが、

 実は一番重視するべきは航空戦ではなく対潜戦の方かもしれないな」

 

「長門の言うとおりだ。そこで、対潜戦の方だが、俺に考えがないわけでもない」

 

「なんだ? 何か策でも思い付いたのか?」

 

「第六駆逐隊だ。あの子達はまだ子供だが、逆に言えば伸びしろは無限大だ」

 

「まさか……あの子達の練度を上げることで対潜戦を強化するつもりか?」

 

「陸軍の石頭どもに言われたよ。物を要求するよりも知恵を絞れってな」

 

「確かに現状では潜水艦を相手に戦えるのは第六駆逐隊だけだが……」

 

「訓練の強化には反対しないけど、提督はあの子達と

 ちゃんとコミュニケーションが取れてるのかしら?」と陸奥。

 

堅物の仕事人間の姉と違って陸奥は柔らかくて親しみやすい。

陸軍の若い将兵からナンパされたこともあった。

 

「問題はそれなんだ。まあこればっかりは時間をかけて

 分かり合うしかねえだろ。あの子達だって心から

 俺を怖がってるわけじゃないと思うんだ。きっとな」

 

それに対し、長門姉妹は何も答えなかったので空気が気まずくなる。

長門が咳払いする。時刻は22時を過ぎていた。

何とも言えない空気の中、提督と参謀の話し合いは終わった。

 

 

 

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