悪竜退治の英雄な俺が信奉する神様は悪神らしいが、異教の神全部倒したら正義の神にアップグレードするらしい。頑張る、俺、最強チート転生者だから……。   作:風の教主より、伝聞。

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001 美と親愛と風の神

「我は美と親愛と風の神なり」

 

 目の前で、美幼女は言った。

 ここは御身体が奉られた神聖な場所で、ここでの瞑想を日課にしている俺以外には誰もいなかったはずだ。鍵もかかっている。

 

「…………」

 

「フハハ、フハハ……」

 

 彼女は俺に話しかけているのではない。部屋に備え付けられている鏡に向かって、同じようなセリフを繰り返してポーズをとっているようだった。

 

 そんな不審な幼女は、さておいて、少し俺の話をしよう。

 

 俺はいわゆるチート転生というものをした。

 前世ではモテずに年齢イコール彼女いない歴を順調に積み重ねていったわけだが、死んでしまう。死因については詳しくはわからないが、仕事での無理が祟った形だと思う。

 

 そして、今世。

 中世的な剣と魔法のこの世界に転生したのだが、俺の前世の知識が役に立った。まじめに勉強をして、まじめに働いてきた報いだと思い、神に感謝したものだ。

 

 幼馴染の女の子や、大親友に加え数人のメンバーと旅をして、世界を脅かす悪竜を倒したりもした。

 世界を救う旅の途中で、何人もの女の子に言い寄られたのは良い思い出だ。二度の人生を通して、初めてやってきたモテ期だった。

 

 もちろん俺には、心に決めた相手がいた。共に笑い、共に泣き、共に悪竜を討伐した幼馴染の女の子だ。

 

 封印した悪竜を背景に、彼女から俺はお付き合いを申し込まれた。

 それを保留にし、全てに決着をつける、先に故郷へ帰っていてくれと、置き手紙をして俺は新たなる旅へ出たのだ。後悔はしていない。

 

 二度目の旅は、俺に好意を持ってくれた女の子たちへの挨拶まわりだ。

 

 もちろん、俺に熱を上げたのは一時の感情で、半分くらいは新しい男と一緒になっていた。そして、残り半分は本気で待っていたのだが、そんな彼女たちを丁寧に振り、代わりの相手を見繕った。

 転生チートのおかげで、男を見る目のある俺だったからこそできたことだろう。

 

 そうして、全てに決着を付け、意気揚々と幼馴染たちのいる村へと訪ねた俺だが、そこで見たものは、お腹を大きくした幼馴染の女の子が、大親友とラブラブしているところだった。

 

 まぁ、なんとなく、そんな気はしていた。

 仕方がないことだっただろう。

 

 そして、俺に気がついた大親友は邪気のない顔で言ったのだ。

 

「お前は、この村に留まらないビックな男だもんな。たまには帰ってきて、それで一緒に旅をした俺たちに、お前の子どもを見せてくれよ」

 

 俺はチート転生者ではあるものの、それほど大そうな人間ではない。

 邪竜は世界の危機だからこそ倒したが、一緒に旅をしたみんなの力がなければ道半ばで倒れていただろう。

 この村で、ちょっと力を自慢しながら、小さな世界でちやほやされて生きていくので、じゅうぶんに幸せな矮小な人間に過ぎないのだ。

 

 というか、俺に好意を持ってくれるような女の子は、全員結婚してしまっている。どうやら、今世も誰とも結婚も出来そうになかった。

 未知の世界に旅に出ればいいのかもしれないが、さすがにそれは危険すぎる。婚活が目的の冒険で死ぬのは流石に馬鹿だ。

 

 どう言い訳をしたものかと、考えた末、俺は言った。

 

「俺は神に祈りを捧げることにした。俺は出家をするぞぉ! リカードぉおおぉおお! きっと、俺たちの旅路を見守ってくれた神にな!」

 

 出家ならば、結婚せずとも不自然でもないだろう。

 

「出家……だったら仏じゃないか? まぁ、いい。今度は村総出でお前のことを見送るから、置き手紙なんて置いて出て行くんじゃないぞ? 振るにしたってやり方があるだろう。悲しむミーナを立ち直させるために、どれだけかかったか……まったく」

 

 村のみんなは暖かく俺を見送ってくれた。

 一瞬でも裏切られたと思った俺は馬鹿だっただろう。それほどにみんなは俺のことを想ってくれていたのだ。

 もちろん、年頃の娘で独身の子はいなかったがな。

 

 そうして俺が頼ったのが、この神殿だった。

 最初の旅の後で、少し長い間、お世話になったシスターがここで働いていたことを思い出したのだ。

 

 シスターは、どうやらこの神殿を一人で管理していたようで、俺を快く迎え入れてくれた。

 人との縁に恵まれていたと実感し、俺は感動して泣いた。

 

 それからは、こうして毎日煩悩を捨て、神に祈りを捧げて生きているのだ。瞑想の修行もしている。

 

「フハハ、我は美と親愛と風の神なり」

 

 幻覚だろうか。

 無茶な修行をし続けたせいで、ついに頭がおかしくなってしまったかと、自分の目を疑う。

 密室だったはずだ。瞑想に夢中になっていたとしても、こんな幼女が入る隙間なんてない。

 

「こんなところに、迷子でしょうか?」

 

「フハハ、迷子ではない。そろそろ悟りの境地に達し、神である我のことを視認できるようになると思ったゆえ、初対面で神の威厳を見せつけようと、鏡の前でこうやって練習しているのだ。フハハ」

 

 どうやら笑顔の練習か、確かに表情がぎこちなく、若干顔が引き攣っているようにも見える。

 

「なるほど、神ですか」

 

 確かに、神ならば、御身体の祀られたこの場所にいても不思議はない。そう言われれば、なんとなく、神々しいオーラが出ているような気がしないでもない。

 

「というか、お主……我が見えておったのか……?」

 

「ええ、バッチリ。鏡の前でなにをしているのかと思っていたところでした」

 

「ぬおーぉお。み、見られておった……。我の予行練習が見られておったということか……!?」

 

 顔を赤くして、部屋の隅にうずくまる。愉快な神様だった。

 

「神様でも、あんなふうに、練習をするものなんですね……」

 

「仕方ないだろう。千年ほど誰とも話しておらんのだ。お主のような敬虔な信徒は、我のような弱小な神の前にはなかなか現れんよ。もう五百年ほど祈ってるだろう?」

 

「ははは、確かに……。そんなに経ってしまっていましたか……」

 

 俺はチート転生者だから、その気になれば歳を取らない。それを置いておいても、なぜか、この神殿に仕える信徒は歳を取らなかった。

 曰く、神の加護らしい。

 

「煩悩を捨て、悟りの境地に達するとは、普通の人間には出来ぬことであろう。これからきっと、長い付き合いになる。断片的には懺悔により知っておるが、我に、一度、生い立ちでも話してみぬか……?」

 

「神様にですか……。そうですね……。実は私は転生者でして――( )

 

 そうして、俺は前世の話から、目の前の神様に話していく。なんとなく話したくなる雰囲気だった。

 根掘り葉掘りと言えばいいか、そんなふうに質問をされたが、一つずつ、嘘偽りなく丁寧に答えていく。

 

 そうやって、前世から、今世の話を全て終えたところだった。

 

「うぅ……、ぐす……っ、お主……そんな辛い人生だったのじゃな……」

 

「いえ、私なんかまだまだです。私よりも不幸な人間は世の中にはたくさんいますよ」

 

「いや、お主が許そうとも、我が許せぬ。二度あった人生も、全て己を滅し、他人のために……それなのに、なんの報いも……。本当にほしいものは何一つ手に入らなかった……。神はおらなんだ……あ、我が神であったな……」

 

「そうですね」

 

 ずいぶんと愉快な神様だなと、俺は思った。

 

「そうじゃ、ここは一つ。我を抱くのはどうじゃ?」

 

「いえ、私はすでに貞操を神に捧げた身」

 

「我が神であるが? 問題ないじゃろ?」

 

「そうですね」

 

 とはいえど、そうだ。

 目の前の幼女はとても美しい。芸術品のようだった。

 

「ふふん。脱げ脱げ! 我は生娘が好きであるが、お主のようなやつならお情けで抱かれてやっても構わぬ。男は初めてゆえ、うまくできる保証はないがな」

 

「申し訳ないのですが、その……」

 

「なんだ?」

 

 全ての服を脱ぎ、惜しげもなく裸体を晒す幼女を見て、俺は言った。

 

「私は幼女に欲情する趣味はないのです」

 

 幼子、というのは保護される対象であろう。それに欲情するなど、言語道断の所業だ。

 

「この体はすでに成人しておる。初潮も過ぎた年齢であるよ? その言い方は失礼極まりないものであると思うのだが……」

 

 たしかに、この世界は、成人年齢が若い。子どもを作るのも若い。俺が出家したのが十六のとき。幼馴染も同い年だった。

 

 だけれども、それを踏まえて、目の前神様は、見た目がとても幼女だ。

 

「しかし……」

 

「ふん、我の信徒じゃ。我には逆らえぬ。そなたの貞操食らってやる! これは神聖な儀式で修行であるのだから」

 

「儀式……修行……?」

 

 幼女体から溢れる出る神々しさに、俺は目の前の存在が人ではなく神なのだと、本当の意味で理解した。これは修行だ。

 理解してしまえば、その身体を受け入れるのも、決して難しいことではなかった。






 実験作です。はっちゃけます。
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