悪竜退治の英雄な俺が信奉する神様は悪神らしいが、異教の神全部倒したら正義の神にアップグレードするらしい。頑張る、俺、最強チート転生者だから……。 作:風の教主より、伝聞。
「我は美と親愛と風の神なり」
目の前で、美幼女は言った。
ここは御身体が奉られた神聖な場所で、ここでの瞑想を日課にしている俺以外には誰もいなかったはずだ。鍵もかかっている。
「…………」
「フハハ、フハハ……」
彼女は俺に話しかけているのではない。部屋に備え付けられている鏡に向かって、同じようなセリフを繰り返してポーズをとっているようだった。
そんな不審な幼女は、さておいて、少し俺の話をしよう。
俺はいわゆるチート転生というものをした。
前世ではモテずに年齢イコール彼女いない歴を順調に積み重ねていったわけだが、死んでしまう。死因については詳しくはわからないが、仕事での無理が祟った形だと思う。
そして、今世。
中世的な剣と魔法のこの世界に転生したのだが、俺の前世の知識が役に立った。まじめに勉強をして、まじめに働いてきた報いだと思い、神に感謝したものだ。
幼馴染の女の子や、大親友に加え数人のメンバーと旅をして、世界を脅かす悪竜を倒したりもした。
世界を救う旅の途中で、何人もの女の子に言い寄られたのは良い思い出だ。二度の人生を通して、初めてやってきたモテ期だった。
もちろん俺には、心に決めた相手がいた。共に笑い、共に泣き、共に悪竜を討伐した幼馴染の女の子だ。
封印した悪竜を背景に、彼女から俺はお付き合いを申し込まれた。
それを保留にし、全てに決着をつける、先に故郷へ帰っていてくれと、置き手紙をして俺は新たなる旅へ出たのだ。後悔はしていない。
二度目の旅は、俺に好意を持ってくれた女の子たちへの挨拶まわりだ。
もちろん、俺に熱を上げたのは一時の感情で、半分くらいは新しい男と一緒になっていた。そして、残り半分は本気で待っていたのだが、そんな彼女たちを丁寧に振り、代わりの相手を見繕った。
転生チートのおかげで、男を見る目のある俺だったからこそできたことだろう。
そうして、全てに決着を付け、意気揚々と幼馴染たちのいる村へと訪ねた俺だが、そこで見たものは、お腹を大きくした幼馴染の女の子が、大親友とラブラブしているところだった。
まぁ、なんとなく、そんな気はしていた。
仕方がないことだっただろう。
そして、俺に気がついた大親友は邪気のない顔で言ったのだ。
「お前は、この村に留まらないビックな男だもんな。たまには帰ってきて、それで一緒に旅をした俺たちに、お前の子どもを見せてくれよ」
俺はチート転生者ではあるものの、それほど大そうな人間ではない。
邪竜は世界の危機だからこそ倒したが、一緒に旅をしたみんなの力がなければ道半ばで倒れていただろう。
この村で、ちょっと力を自慢しながら、小さな世界でちやほやされて生きていくので、じゅうぶんに幸せな矮小な人間に過ぎないのだ。
というか、俺に好意を持ってくれるような女の子は、全員結婚してしまっている。どうやら、今世も誰とも結婚も出来そうになかった。
未知の世界に旅に出ればいいのかもしれないが、さすがにそれは危険すぎる。婚活が目的の冒険で死ぬのは流石に馬鹿だ。
どう言い訳をしたものかと、考えた末、俺は言った。
「俺は神に祈りを捧げることにした。俺は出家をするぞぉ! リカードぉおおぉおお! きっと、俺たちの旅路を見守ってくれた神にな!」
出家ならば、結婚せずとも不自然でもないだろう。
「出家……だったら仏じゃないか? まぁ、いい。今度は村総出でお前のことを見送るから、置き手紙なんて置いて出て行くんじゃないぞ? 振るにしたってやり方があるだろう。悲しむミーナを立ち直させるために、どれだけかかったか……まったく」
村のみんなは暖かく俺を見送ってくれた。
一瞬でも裏切られたと思った俺は馬鹿だっただろう。それほどにみんなは俺のことを想ってくれていたのだ。
もちろん、年頃の娘で独身の子はいなかったがな。
そうして俺が頼ったのが、この神殿だった。
最初の旅の後で、少し長い間、お世話になったシスターがここで働いていたことを思い出したのだ。
シスターは、どうやらこの神殿を一人で管理していたようで、俺を快く迎え入れてくれた。
人との縁に恵まれていたと実感し、俺は感動して泣いた。
それからは、こうして毎日煩悩を捨て、神に祈りを捧げて生きているのだ。瞑想の修行もしている。
「フハハ、我は美と親愛と風の神なり」
幻覚だろうか。
無茶な修行をし続けたせいで、ついに頭がおかしくなってしまったかと、自分の目を疑う。
密室だったはずだ。瞑想に夢中になっていたとしても、こんな幼女が入る隙間なんてない。
「こんなところに、迷子でしょうか?」
「フハハ、迷子ではない。そろそろ悟りの境地に達し、神である我のことを視認できるようになると思ったゆえ、初対面で神の威厳を見せつけようと、鏡の前でこうやって練習しているのだ。フハハ」
どうやら笑顔の練習か、確かに表情がぎこちなく、若干顔が引き攣っているようにも見える。
「なるほど、神ですか」
確かに、神ならば、御身体の祀られたこの場所にいても不思議はない。そう言われれば、なんとなく、神々しいオーラが出ているような気がしないでもない。
「というか、お主……我が見えておったのか……?」
「ええ、バッチリ。鏡の前でなにをしているのかと思っていたところでした」
「ぬおーぉお。み、見られておった……。我の予行練習が見られておったということか……!?」
顔を赤くして、部屋の隅にうずくまる。愉快な神様だった。
「神様でも、あんなふうに、練習をするものなんですね……」
「仕方ないだろう。千年ほど誰とも話しておらんのだ。お主のような敬虔な信徒は、我のような弱小な神の前にはなかなか現れんよ。もう五百年ほど祈ってるだろう?」
「ははは、確かに……。そんなに経ってしまっていましたか……」
俺はチート転生者だから、その気になれば歳を取らない。それを置いておいても、なぜか、この神殿に仕える信徒は歳を取らなかった。
曰く、神の加護らしい。
「煩悩を捨て、悟りの境地に達するとは、普通の人間には出来ぬことであろう。これからきっと、長い付き合いになる。断片的には懺悔により知っておるが、我に、一度、生い立ちでも話してみぬか……?」
「神様にですか……。そうですね……。実は私は転生者でし
そうして、俺は前世の話から、目の前の神様に話していく。なんとなく話したくなる雰囲気だった。
根掘り葉掘りと言えばいいか、そんなふうに質問をされたが、一つずつ、嘘偽りなく丁寧に答えていく。
そうやって、前世から、今世の話を全て終えたところだった。
「うぅ……、ぐす……っ、お主……そんな辛い人生だったのじゃな……」
「いえ、私なんかまだまだです。私よりも不幸な人間は世の中にはたくさんいますよ」
「いや、お主が許そうとも、我が許せぬ。二度あった人生も、全て己を滅し、他人のために……それなのに、なんの報いも……。本当にほしいものは何一つ手に入らなかった……。神はおらなんだ……あ、我が神であったな……」
「そうですね」
ずいぶんと愉快な神様だなと、俺は思った。
「そうじゃ、ここは一つ。我を抱くのはどうじゃ?」
「いえ、私はすでに貞操を神に捧げた身」
「我が神であるが? 問題ないじゃろ?」
「そうですね」
とはいえど、そうだ。
目の前の幼女はとても美しい。芸術品のようだった。
「ふふん。脱げ脱げ! 我は生娘が好きであるが、お主のようなやつならお情けで抱かれてやっても構わぬ。男は初めてゆえ、うまくできる保証はないがな」
「申し訳ないのですが、その……」
「なんだ?」
全ての服を脱ぎ、惜しげもなく裸体を晒す幼女を見て、俺は言った。
「私は幼女に欲情する趣味はないのです」
幼子、というのは保護される対象であろう。それに欲情するなど、言語道断の所業だ。
「この体はすでに成人しておる。初潮も過ぎた年齢であるよ? その言い方は失礼極まりないものであると思うのだが……」
たしかに、この世界は、成人年齢が若い。子どもを作るのも若い。俺が出家したのが十六のとき。幼馴染も同い年だった。
だけれども、それを踏まえて、目の前神様は、見た目がとても幼女だ。
「しかし……」
「ふん、我の信徒じゃ。我には逆らえぬ。そなたの貞操食らってやる! これは神聖な儀式で修行であるのだから」
「儀式……修行……?」
幼女体から溢れる出る神々しさに、俺は目の前の存在が人ではなく神なのだと、本当の意味で理解した。これは修行だ。
理解してしまえば、その身体を受け入れるのも、決して難しいことではなかった。
実験作です。はっちゃけます。