悪竜退治の英雄な俺が信奉する神様は悪神らしいが、異教の神全部倒したら正義の神にアップグレードするらしい。頑張る、俺、最強チート転生者だから……。   作:風の教主より、伝聞。

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002 儀式

 

 

「男女というのは、なかなかうまく合体できぬものなのだな……。とはいえ、ようやく終わった」

 

「ええ、一息ですね……」

 

 神さまと俺は、共に苦難に立ち向かった戦友のように寄り添っていた。

 

 二人とも経験がなかったからか、なかなかうまくはいかず挑戦は三日三晩にわたってしまった。

 長い間、肌を触れ合わせていたせいか、この神様にとても愛着が湧いてしまっている。

 

「まぁ、お主が生きている間、操は立ててやろう。お主以外の男の信者はとらぬよ。これで我がすぐに他の男の相手をしたなら、流石にお主が報われなさすぎる。我のことを妻とでも思うが良い」

 

「それは、ありがたいですね……」

 

 この歳になって、妻ができるとは思わなかった。

 幸運に感謝し、神様に祈っておこう。

 

「フハハ。もっと崇めよ。もっと奉れー!」

 

「ははー。ありがたや、ありがたや」

 

 少々尊大だが、神様ならば仕方ないだろう。

 どうやら、俺が仕える神様は、とても良い神様のようだった。

 

「して、そうである。生贄を用意してくれぬか? 生娘を五人ほど見繕ってほしいのだが……」

 

「生贄……殺すのですか……!?」

 

「そうなる。まぁ、我……美と親愛と風の神は生贄を必要とする悪神であるが、ほかにもっと悪い神もおる。聖戦に備え、パワーアップは必須であろう」

 

「しかし……」

 

 聖戦、と言われてもあまり納得できないことだ。

 この神殿に長年仕えてきたが、異教徒が襲ってくるようなことはなかった。

 

「無垢なるものは悪に喰らい尽くされるのが必定。この世の摂理じゃ。そして悪を滅ぼすのは……正義か……あるいは、より強い悪じゃよ」

 

「はぁ……」

 

「くく、この世の全ての悪神を滅した時。我は正義の神となる」

 

「それでも、生贄は……。人を殺すだなんてあんまりです……! 羊とか、山羊とかでなんとかならないのですか?」

 

 儀式で生贄が必要というのなら、なにも人間でなくてもいいだろう。俺は敬虔な信徒だから、人でなくていいのならば、百でも二百でも、この神様の為に集めてこれる。

 

「そなた、竜退治の道中で人を殺したことがあるだろう。なにを今さら……」

 

「私が殺したのは、死刑になるようなよっぽどの極悪人です」

 

「今この国はなんの宗教を国教としておる? 場合によっては我の信徒も死刑となる極悪人じゃ。国によって死刑の基準も違うだろうに……そんな曖昧なものに頼っておってはダメじゃな……。かか……っ」

 

「……っ」

 

 神様は尊大に俺のことを笑った。

 俺よりも偉大な神様の言葉は、道理が通っているのかもしれない。

 

「はぁ……揶揄いも過ぎたか。五人くらいならば、生贄の儀の後に反魂の儀を行えば蘇るであろう。そのための触媒も備蓄がある。数少ない信者は貴重であるからな。死なせたままにはしておけんよ」

 

「その触媒はどうやって作られたんでしょう……?」

 

「知らん。昔滅ぼした異教徒から奪い取った。千年ほど前になるか……。あぁ、ただ、竜の血を使っていると噂には聞いたのぅ」

 

「竜の血……」

 

 竜で思い出したが、俺の封印した竜も、後で封印をかけ直さなくてはいけないか。

 もう五百年だ。封印が綻んでいてもおかしくはない。

 

「ともあれ、生き返るのならば、生贄も構わんだろう? さぁ、準備に取り掛かるのだ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 言われた通りに、よくわからない魔法陣を描いて、女の子たちをその上に移動させた。

 

 生贄になった五人を一人ずつ紹介していこう。

 

 まず一人目。

 サリーさんだ。俺をこの神殿に快く迎え入れてくれたのもこの人だった。

 出会った時から、なぜか歳をとっていないが、それは信仰心の賜物らしい。つまり神の御業、改めて俺たちの神様はとても素晴らしいだろう。

 

 二人目。

 リーナちゃん。

 俺の後にここにきた後輩だった。俺の幼馴染だった女の子によく似ている娘だ。

 しかし、別人。そもそも、俺の幼馴染は、子供がお腹にいた。対してこの子は神様が言うに間違いなく生娘だそうだから、他人の空似だろう。

 

 次に三から五人目。

 アリサちゃん。マナちゃん。エリカちゃん。

 左から、信号機みたいな髪の配色の三人だが、この三人については俺はよく知らない。

 修行一筋だった俺とは別に、サリーさんや、リーナちゃんが、近くの村へと炊き出しや清掃など、そんな慈善活動を行なっていた。そのときによく手伝ってくれた心優しい子たちらしい。

 サリーさんや、リーナちゃんが誘った結果、ホイホイと怪しい儀式に付いてきてしまった哀れな子羊たちだ。

 

 そんな五人の生贄たちは、魔法陣の上で、涎を垂らしだらしない笑みを浮かべながら、ビクビクと体を震わせていた。

 

「食事に混ぜたあれ、なんだったんですか?」

 

 祠に大切にしまってあったものだ。儀式に必要だから、それを混ぜろと言われたのだった。

 

「あれは『黒泥風』と言う。一度それを飲み込めば、そよぐ風を感じるだけで法悦に達することができる優れもの。我の権能により完成する、我の作る『神薬』であるぞ?」

 

「やばい薬じゃないですか……!」

 

 明らかに彼女たちの表情は正気じゃない。

 時おり、ピクリと震え、言葉にならない嬌声を上げるのはそういうことだろう。

 

「これの効能が効く間は、痛みも快楽に変わるというわけであるな。何も処置せずに殺されるのは痛いし、怖いであろう? 蘇ったときに心の傷にでもなられていては敵わん。最悪、廃人であるな」

 

「そういえば、同じ食事をとったのに、なぜ私には……」

 

「お主は悟りの境地におる。世俗の快楽には惑わされぬゆえであるな。あんな紛い物ではなく、神である我に仕える本当の法悦しか感じぬであろう」

 

 神様が肢体をこちらに絡めてくる。

 たしかに、彼女との触れ合いに、長い修行の日々で忘れていた楽しさを思い出したかもしれない。神様はとても素晴らしいお身体だった。

 

「これが、悟り……」

 

「他にも、霞を食って生きていけるとか、不老長寿だとか、眠らずに動き続けられるだとか、いろいろあるのぅ」

 

「悟りの境地ってすごいなぁ」

 

 素直に感嘆する。

 まぁ、俺はチート転生者だから、そのくらいは悟りの境地ではなくとも達成する方法はあっただろう。

 

 だが、これがまじめに修行をした成果だ。やはり、まじめに生きていて、いいことはあるものだ。

 

「と、早く殺すのだ。『神薬』の効果はまだ切れぬが、長く影響下にあると最悪廃人になる……そうでなくても脳が快楽を覚えて依存してしまう。サクッと殺してしまうのが皆のためだぞ?」

 

「やっぱり、ヤバい薬じゃないですか!?」

 

「口より手を動かせ、たわけが……っ!」

 

「はい」

 

 用意された剣をサリーさんとリーナちゃんにそれぞれ突き刺す。

 血を溢れさせて、悶えて死んでいくが、その顔はこの上ない快楽に歪められてしまっている。

 血が付着すると面倒だから、服は全て脱がせておいた。

 

 次は、三人の女の子たちだ。

 自分達の体に起こる異常事態に、三人で身を固めあって慰めあっているようだった。

 心苦しいが、この三人にも剣を突き刺し命を奪う。

 

「美と親愛と風の神の御名において、我を信ずる者たちの魂を、我のための聖戦の武具に変えん。そなたらの命を糧に、我は新たなる力を得る」

 

 そうして魔法陣の中心に、空間に散らばる粒子が一塊に集まるようになにかができあがる。

 

「これは……」

 

「拾ってみるがよい」

 

 短剣に、指輪に、これは腕輪だろうか。

 武器、それと装飾品だった。

 

「…………」

 

「む、腕輪。三色の飾りということは、あのおなごら、魂が絡まって一つの呪具となったようであるな……。まともな武器は短剣一つ……。……っ!? 不用意につけるでない!!」

 

「え……っ?」

 

 気がつけば指輪を嵌めていた。

 左手の薬指だ。

 俺の故郷では、婚姻の指輪を左手の薬指に嵌める風習があったが、前世と確か同じだった。ただそれは、俺の村だけの話で、偶然もあるものだなと、昔、感心していた記憶がある。

 

「まだ効果が全てわかってはおらぬ。この儀式には、ある程度は、贄の心が反映されておる。薬漬けにしたゆえに、ないとは思うが、贄の恨みがこもっていないとも限らぬからな」

 

「な……っ、う……っ、取れない!?」

 

 外してみようとしたが、どんなに力を込めても動かなかった。

 

「どうやら、絶対に取れない呪いが篭っているようであるな。よくあること。指輪であってよかったと言えばいいか……」

 

「……取れない……、取れない……ぃい」

 

「腕輪には風の加護か……遠距離からの攻撃をわずかに逸らす程度……我の力らしいと言えばらしいか、贄三人分と考えればしょっぱいのう」

 

「ゔぐ……ぐぉおおお! うががが……取れない……ぃいい!!」

 

「うるさい!! だから取れぬと言っておるだろう!!」

 

「はぁ、はぁ……ですが、こんなの気味が悪い!」

 

 力をこめてみたり、捻ったりしても取れなかった。

 言ってしまえば俺が人を殺して作ったものだ。ずっと肌身離さずなんて、たまったものではない。

 

「我慢せい! 貴様! 男であろうて……」

 

「しかし……」

 

「とにかく、この腕輪と短剣には、なんの呪いもない。肌身離さず持っておれ……。一応、この短剣がなければ異教徒とは戦えぬからな……」

 

「……ぐお」

 

 残った二つを神様は押しつけてくる。

 呪い殺されたりしないか、俺は心配で仕方がなかった。

 

「我、美と親愛と風の神の御名において命ずる。そなたらに安息はない。永き眠りなどはない。その美しき姿のまま、我に仕え、我を敬え」

 

 用意されていた、竜の血を使ったという触媒が輝く。

 五人の傷がたちまちに治り、すやすやと寝息を立て始める。

 

「本当に、蘇るんですね……」

 

「まぁ、最高級の触媒と、神である我の力があれば当然であろう。あのおなごらの身体は綺麗にしておいてやるのだな」

 

「あ、わかりました」

 

「そなたは悟りの境地におるから、妙な考えも浮かばないであろう」

 

 神様の言う通り、俺は無心で彼女たちの身体を丁寧に綺麗にし、服を着せた。

 

 特に彼女たちの身体に関しては、なにも感じなかった。

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