真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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多大なキャラ崩壊を含んでいます。
番外のような物なので、気にしない方はどうぞ。


幕間
それゆけっ、えめるさん!


 ――世界崩壊、同刻。 ホワイトハウスにて。

 

 

 カツカツ、と慌ただしい喧騒に包まれた廊下を歩く。

 私はドラゴンが現れ始めたことで、対応に駆けまわる議員を横目にその部屋の扉を叩く。

 扉の前に立っているSPたちも用件は分かっているのか、引き止めることはない。

 

 形式的に、ノックしただけで私は扉を開いた。

 扉を開けると、そこには丁度通信を終えて顔の前で、悩ましげに手を組んだ金髪の男――、ミュラー大統領の姿があった。

 

 ひとまず、この事態を予測できていたこのミュラー大統領に声をかけることにしよう。

 

「……何か、問題が?」

 

 その一言で、ミュラー大統領は鋭い視線をこちらに投げてくる。

 その気迫はこのアメリカを統治している人間に相応しいものだった。

 

 だが、私を視界に含めると、その気迫は落ち着く。

 そして、私が訪れてくるまで対応していただろう内容をぽつりとこぼす。

 

「南アフリカにも、ヤツらが現れたそうだ。EU、中国、日本……、おそらくロシアにもだろうな。これで5件目――。いや、我が国を入れて6件目か」

 

 やはり(・・・)、ドラゴンの手はこの地球全土に降りかかっているようだ。

 しかし、日本か……。

 ――いや、まずは先に被害状況を確認せねばならない。

 

「……被害状況は?」

 

 目を閉じて、回答を待つ。

 おそらく、具体的な回答は望めないだろう。

 既存の通信方法は混雑して使い物にならないし、軍用回線でも雑音の入る事態に陥っているのだ。

 

「ほかの国については、どうだろうな……。情報がほとんど入ってこないのでね」

 

 ミュラー大統領も首を軽く振りながらそう答えた。そして、剣呑に目を光らせて、こちらを向く。

 

「――まぁ、まともに戦えるのは我々だけだろう」

 

 ギシリッ! と白い手袋が――アイツからの贈り物であるそれが握力で悲鳴を上げる。

 私は思わず、それは違う! と声高に否定したくなった。

 だが、私への信頼ゆえの言葉だと一瞬にして高まった感情を組みふせる。

 

「まったく、キミの予見通りだったというわけだ。キミを今の地位に引き上げたのは、正解だった」

 

 ぎしっと、愁いを帯びた目で大統領は窓の外を見ながら椅子にもたれかかる。

 私と出会った時のことを思い出しているのだろうか。

 

「全ては、閣下が私の言葉を信じて下さったからかと」

 

 私もドラゴンという脅威に対する戦力の保持を全面的に信じてもらえるとは思っていなかった。

 だが、この男はそれをある程度信じたうえで、私にドラゴンと戦える地位とステージを用意してくれた。それに関しては、感謝してもしきれない。

 

「正直なところ……、すべてを信じていたわけではないよ。ただ、私はキミの持つ知識と技術が必要だった……それだけの話でね」

 

 ふっ、とニヒルに笑う大統領はそう言った。なんだか、私にはそれが格好をつけているようにも見え……、いや人を導く立場の男なのだ。ドラゴンと言う脅威を前に、余裕をもって格好をつけ芯の通った姿を見せることが出来るこの男は、本当によく出来た男なのかもしれない。

 

「まぁ、こうしてドラゴンが現れた以上、今はキミの言葉を誰よりも信じているが」

 

 そうであろう。

 むしろ、この状況で信じていないとか言われたら私は寸前までしていた評価を速攻で覆さないといけなくなる。

 

「奴らは強大な相手です。これでも、この国が勝てるかどうかは――」

 

 ……そうだ。これは謙遜などではない。

 ドラゴンはそれほどまでに強大な相手だ。私が数年がかりで対策してきたこの国でも……。

 いや、弱気になるな!

 

 

 私も、――日本で戦っているであろうアイツに格好悪い姿を見せるわけにはいかない!

 

 

「――いえ、全力を賭して勝利しましょう」

 

 力強く、私は頷きながらミュラー大統領に告げる。

 なぜか、私を見ながら大統領は呆けるように目を見開いていたが……、はっと我に返り、コホンと咳払いをして大きく頷き返した。

 

 

「我々は、やれることをやるだけさ。引き続き前線の指揮は頼むよ、エメル」

 

「心得ています、閣下」

 

(勝って見せる……今度こそ、な)

 

 

 そして、この部屋を出て行こうとして――、扉の前で立ち止まる。

 

「……閣下、一つだけ言っておきましょう」

 

「……な、なにかね」

 

 ぐるっ! と勢いよく私は振り返り、拳を胸の前に構え、ずっと言いたかったことを告げる。

 閣下は、ガタッ! と椅子を音を立てて立ち上がり、焦ったようにネクタイを弄りはじめた。

 それは大統領が緊張しているときにするちょっとした癖だった。

 

「閣下――」

 

「う、うむ」

 

 では、聞く態勢が整ったようだな。

 言わせてもらおう。

 

「お言葉ですが、先程『まぁまともに戦えるのは我々だけだろう』とおっしゃいましたね? 違います。断じて否です! はっきり言わせてもらえれば、私がいるこの国よりも戦うことに関しては優れている国があります!!」

 

「……っ(あ、あまりの剣幕にプロポーズでもされるのかと思ってしまった……!!)。

 ほ、ほう、どこかね?」

 

 何故か私の発言にがっかりとして、頭を押さえ冷や汗をぬぐうミュラー大統領。

 何か言っていた気がするが、『何処が戦えるか』と言う質問しか、私の耳には残らない。

 

「ええ、先程あげておりました国の中に含まれます。

 南アフリカ、EU、中国、ロシア――そして、日本」

 

「……随分と、もったいぶって日本を言うじゃないか。つまり」

 

「ええ! お察しの通りです、閣下!!」

 

 ふふふ、と私は笑みがこぼれるのが抑えきれない。

 アイツの話を人にできる機会は少ないからなっ!

 ドラゴンが闊歩するこの時代にこそアイツの存在は認められる!

 隠していた存在だが、もはや隠し立てする必要もないだろう!

 

 と言うか、話しておくべきだ!!

 

「かの、ムラクモ機関かね?(こ、こんなに饒舌なエメルははじめてなんだが、どうしたんだ!?)」

 

「ふふふ。ええ、確かにムラクモ機関に居ます。アイツが数年前に入り込んだからこそ、私も事が起こる前兆だと思い、なおのことドラゴン対策に力を注いだのです!!」

 

「……アイツ?」

 

 何故かミュラー大統領の声が一オクターブほど下がり、剣呑な気配を含む。

 警戒するには及ばない。何故なら、アイツは私の身内であり、愛すべき。

 

 そうっ、愛すべき――。

 

「愛すべき、私の義弟(おとうと)――ハントマン=クサカベ。私と同じ星ではないにしろ、違う世界より訪れた稀代の竜を狩る者(ハントマン)ッ!!」

 

「お、()がいたのか。(……ふむ、これはさっさとドラゴンを駆逐し、挨拶しにいかねばな。うむ、そうだ、速い方がいい)」

 

「ええ、私の愛しい義弟。共に戦う者がおります。――日本は少なくとも立ち上がるでしょう」

 

「そうか。我々も負けてはいられないな……!」

 

 

 私は、脳裏にドラゴンについて熱く語り合った義弟のことを思い出す。

 

 

 ――閃光玉は持って行ったほうがいいな。早く倒せる奴もいる。

   ……あっ! 無駄に暴れる奴もいるから気をつけろ。

 ――稀に、死んだふりをする奴もいるからな。素材回収には気をつけろ。

   石を投げるとか、いっその事、弱点部位に攻撃するとかもありかな?

 ――部位破壊は大事。まぁ、欲しいものがなくても一応全部破壊しとくといいかな。

 ――ぐぐ、エメル姉。女物の服を着せようとするのはヤメテ!

 ――擬態してる竜とか、天井に張り付いてるやつとかもいるから、しっかりと確認をしろよ?

 ――エメル姉!? 男物の服を物理的に阻止しようとするのはヤメテ!?

 ――夜這いは止めろオオオオ!!!

 

「ふふふ、では。行ってまいります、閣下!」

 

「ああ、一匹残らず駆逐して日本を、弟君までの道を切り開いてくれ!!」

 

 

 ――その後、最前線で暴れ回る赤い騎士の服に身を包んだ、妙なことを口走る金髪の女性が確認されたという。 

 

「ハントマーンッ! カリトォッ! クサカベェエエッ!!

 ううぅうぅうう!! 私の想いよハントマンへ届け!! 日本の草壁狩人へ届けッ!!」

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

「へっくし! ……むむ、妙な寒気が」

 

「クサカベ君、平気かい?」

 

「ンだぁ? ……体調管理はしっかりしろよ?」

 

「あー、大丈夫っす。原因は大体わかるんで」

 

 

 ……エメル姉は元気でやってそうで安心だな。

 

 

 そう思った時、相思相愛か!! と妙な電波が届く。

 再び、強烈な悪寒に襲われるクサカベであった。

 

 

 




 次回から、1章に入ります。
 義弟と言う事を話すために、くーるびゅーてぃーは犠牲になったのだ。
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