真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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第12話

 

 ――ドサッ。

 

「今回の収穫だよー。ほれ、もってけもってけ」

 

「貴方たちには本当に頭が上がりませんね……。ありがとうございます」

 

 クサカベがシェルターの隔壁の外で、本日の戦果を自衛隊員と一部の民間の人間に手渡す。

 今回の戦果とは、巨大な角を生やした緑色の大鹿と化け物兎『ラビ』だった。

 

 俗にいうと……マモノである。

 

 最初は戦々恐々と食料として扱えるか戸惑っていたソレだったが、食料は日に日に減っていく。どこかで収入せねばならないという気持ちで、食べれそうなマモノを狩り、食してみると既存の肉とあまり変わらないようだった。

 

 ――以前までは、空気に溶けるようにして消えていたマモノ達。

 ドラゴンの襲来以来、マモノを倒した後もその骸は残るようになったのだ。

 

 ドラゴンと何らかの関係があるのだろうか……?

 クサカベは思案気に考えつつ……、ドラゴンの襲来ともに数を増やしたマモノだ。何か繋がりがあるのかもしれない、と結論付け、考えるのを止めた。

 元々どこから発生していたのか分からなかったマモノだ。

 今ここでクサカベが頭を悩ませて考えても答えは出ないであろう。

 

「まぁ腹が満たされれば、活力が満ちるでしょ?

 その内皆には復興を手伝ってもらうんだから、元気でいてもらわないとね?」

 

 おちゃらけてクサカベはそう言う。

 ――だけれど、

 

「……復興なんて、本当に出来るのでしょうか?」

 

 その復興と言う言葉に、そこに居た面々は口を閉ざして暗い顔をする。

 外にいるこの人たちは現状を見ているのだ。

 廃墟になりつつあるセカイと、通常の人間では太刀打ちの出来ないマモノの数々。

 

 だが、だからこそ力を持っているクサカベは大仰に頷きながら答えてやる。

 

「大丈夫、大丈夫っ! 俺たちムラクモの精鋭に任せておきなさいって!

 あー、でも、俺土木作業とかはできないから、そこはみんなに頼りたいなー……なんてな?」

 

 ――不安が無くなりますように。ちょっとでも前が向けますように、と。

 

「はは、そうですね。俺たちも……、出来ることを精いっぱいやらせていただきますっ!」

 

 クサカベ達は寒空の下で笑いあう。

 この先希望がありますようにと。絶望的なこの状況に押しつぶされませんようにと。

 

 そして、何よりムラクモ10班による戦果も上がってきているのだ。

 自衛隊員たちと連携したマモノの殲滅作業。

 そして――。

 

「……都庁の攻略も、だいぶ進んだし――そろそろ本番だしな。暗くなってたらダメさ」

 

 

 ――帝竜と呼ばれる存在の確認された場所で、帝竜の住処の攻略作業。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

 シェルター中に入ったクサカベは、怯えていた避難民の視線を一身に浴びるようになっていた。

 

「く、クサカベさん! まだ、まだなんですか!?」

 

「おー、まだだけど大丈夫。攻略順調だぜー!」

 

「……食料は、配給されるのでしょうか?」

 

「今日は大鹿を一緒に避難してたマタギの兄ちゃんが自衛隊と一緒に捌いてるよ!」

 

「「「クサカベさん、お帰りなさいっ!」」」

 

「ただいまー!」

 

 駆け寄ってくるストレスできつそうな避難民や子ども連れの避難民にはきはきと答えていくクサカベ。シェルター内で避難民にとってのムラクモの顔のようなものになっているのだ。

 

 赤いムラクモ隊員である証の腕章を付けた人達は基本的に、避難民に対して対応をしない――、というか、出来る余裕がない。

 やることが多すぎるのだ。

 研究員はドラゴンの攻略に関する研究、戦闘員はそれこそ周囲に現れるマモノの討伐……。

 

 ドラゴン襲来当初、とてもじゃないが勝手に集まってきた避難民に対して対応できるような余裕はなかった。むしろ、人類にとってドラゴン攻略の邪魔になりそうな要員を排除するような、避難民を受け付けないスタンスがとられようとしていた。

 

 ――そこで、物申したのが10班ナガレとクサカベである。

 

『こんな時だからこそ、皆で力を合わせないといけないんだ!

 僕はそこに才能なんて必要ないと思います!』

 

『人類のためと謳っておきながら、人類排除してどうするよ!

 そんなの元も子もねーだろうが!!』

 

 ナガレとクサカベのナツメ総長への直談判により、避難民の受付を最低限行えるようになった。

 ……まぁその所為で、現実資源や食糧が枯渇方向にまっしぐらになって行っているので、最初のムラクモのスタンスも理解できないわけではなかった。

 

「――ふぅ。……食料も資源も、言いだしっぺがやらないとな」

 

 クサカベは避難民が離れて、誰もいない廊下でそう呟くのだった。

 その表情は、いつものひょうひょうとした物ではなく、少し疲労がたまっている風だったが……パンッと頬を弾いて凛とした雰囲気を保って目的地まで歩きだす。

 

 

 クサカベは知らない話であるが、直談判し最前線で戦うナガレとクサカベの両名は、自衛隊員たちにも認められており、ムラクモに対するイメージの改善が行われてもいる。彼らがもしも受付を行わなければ、人命を守る目的を持った自衛隊員たちとの強い信頼は築くことが出来なかったであろう。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

 クサカベは目的の医務室の扉の前に到着。

 そして扉を開こうとすると――、先に勝手に扉が開いた。

 中から出て来たのは、緑髪に白くてゴツイヘッドセット、赤黒ストライプのボーイッシュな少年が飛び出してきた。その表情は、少々不機嫌そうで――。

 

「えいっ」

 

「ふぇふっ!? ふふぁふぁヴぇ、ふぁなせ!」

 

 思わず、ぐにっー。と頬を引っ張ってみる。

 突如として、頬を引っ張られた緑髪少年は何が起こったんだと年相応な顔を一瞬見せ、――瞬時に思考し終えたのか、ぷんすかっ! と怒りながらクサカベに突っかかる。

 頬を引っ張っていた手を無理矢理ふり払われてしまった。

 

「おおっ? ……このー! いきなり何するんだよぉー!」

 

 頬から腕を振り払われてクサカベは謎の逆切れを見せる。

 無論、クサカベが緑髪の少年をからかって遊んでいるだけだ。

 

「えぇえ!? って、そっちこそいきなり何しやがる!!」

 

 逆切れに緑髪の少年――ミロク、正式名はNAV.3.6が驚愕して、……はっ、と我に返る。

 クサカベにこのシェルターで本格的に顔を合わせたころより、弄られっぱなしなミロクである。

 

 ミロクはムラクモ10班の現場でのナビを行ってくれるナビゲーターである。

 

「ミロクはドラゴン襲来時は観測班として仕事をしており、現在は都庁攻略の手伝いをしてくれている。幼そうな見た目だが、とても頼れる優秀なナビゲーターだ」

 

「何で解説口調!? てか、恥ずかしいだろっ。褒めんな……よ」

 

「見ての通り、若干ツンデレ気質持ちだ。ツンは好意の裏返しなので皆は気を付けてほしい」

 

「お前!! 今度絶対ドラゴンの巣にナビしてやるかんな!!」

 

「デレた!?」

 

「デレてねーよ!! お前の命の危機だよ!!」

 

 赤顔になって頭から煙を吐きつつ、ミロクが怒る。

 クサカベは、ミロクって本当に弄りがいがあるわぁー、とご満悦な様子でケタケタ笑っている。

 

「……クサカベさん。ここ一応病室だからね?」

 

「~~ッ! キリノ、コイツの相手は任せたぞッ!」

 

「――とか言いつつ名残惜しく、後ろを振り返るミロクであった」

 

「解説口調止めろっ!!」

 

 ミロクは恥ずかしそうに大声を出しながら会議室の方向へと走り去っていく。

 それを見届け、クサカベはひょっこり病室から呆れ顔を覗かせているメガネの青年に、あははと頭を下げるのであった。

 そして、外で立ち止まっていたクサカベは医務室の中に入り――、目を丸くした。

 

「ありゃ、遅刻少女。ようやくお目覚めかい?」

 

「あわわ、遅刻っ。すいません、すいませんっ!」

 

 

 なぜなら、1カ月ほど眠りについていた遅刻の黒髪少女こと、シラハがバイタルチェックを受けている最中だったからだ。

 

 





 昨日更新できなかったので、二度目の更新。
 
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