真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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第13話

 

 ――医務室内にて。

 

「んじゃ、ナツメのばぁさんから『都庁奪還作戦』の説明は受けたんだな?」

 

 クサカベはメディカルチェックとキリノの注射を受けて、涙目で痛そうに腕をさすっている黒髪の少女、シラハに声をかけた。

 彼女は、その声を受けて、簡単に頷き、立ち上がった。

 

 1か月も寝たきりだったのに、内臓器官は問題なし。

 筋肉がちょっとなまっている程度で済んでいるのは彼女がS級能力者だからであろう。

 ……常人だったらまず弱って使い物にならない気がする。

 

「はい。クサカベ教官のいらっしゃる機動10班の後方支援にあたらせていただきます」

 

「なるほどね。……ばぁさんめ、最初は体を慣らさせるつもりか。

 あ、それと、もう教官はつけなくていいぞ」

 

 丁寧に話すシラハに対して、クサカベはあくまでフランクに接する。

 それに、もう試験は終わっているのだ。

 彼女がムラクモ『機動13班』に所属している以上、教官ぶるつもりは一切ない。

 

「……にしても、『13班』か。これがどんな意味があるか聞いてる?」

 

 その質問にシラハは少々戸惑ったように返答する。

 

「……ムラクモの欠番ナンバーだと、聞きました。期待、されているのだと」

 

「うんうん、間違ってない。でもな、それは今後に向けての期待だ。今すぐ戦えるようになれって話じゃない……。遠くない日に俺たち10班の背中を守ってくれりゃそれでいいんだ」

 

 やはり期待を寄せ、プレッシャーをかけていたかと察する。確かに気真面目そうなシラハは努力するだろう。だが、それで潰れられても困るのだ。

 クサカベは、気楽に行こうっ! と声をかける。

 そのクサカベの様子にシラハも緊張がほぐれたのか、ようやく小さく笑みを見せた。

 

 

 そんな時――。

 

 

「クサカベどのーっ! たっだいま帰りましたよー!」

 

 バシンッ! とクサカベの背中に騒がしい何かが張り付く。

 ドッドッド、とがっしりホールドされているために心音までばっちり聞こえ、柔らかなぬくもりも感じるが……。予想のついたクサカベはやれやれ、と――その張り付いた元気系少女の首根っこを掴み、ぷらーんと下げる。

 

「ね、ネコ扱いはやめー、ってシラハちゃんっ! 目が覚めたんだっ!」

 

 心配してたよぉー、とぷらーんと下がった状態で元気系少女は涙ぐむ。

 そして、彼女がここに帰ってきたと言う事は――。

 

「クサカベさんよ、今帰って来たぜ。……って、お前またやったのか?」

 

 パーカーのフードを目深に被った男子が呆れたように扉を開いてこちらを見ていた。

 そして、彼も元気系少女と同じようにようやく目が覚めたんだな、と心配したふうにシラハへと声をかけるのだった。

 

「……ふむ、これで『13班』も全員集合か」

 

 カシャ、とクサカベの横のカーテンが開く。

 そこでは、怠そうにジト目をしてウサギ人形を抱きしめたまま、簡易ベットの上でゴロゴロと転がるゴスロリ少女の姿が……、どうやら、サボっていたようだ。

 どこまでもやる気のない少女へ何と声をかけていいのか分からず、クサカベは口を開閉させた。

 

「お嬢様、そちらにいらっしゃいましたか。探しましたぞ」

 

「げっ、セバス……」

 

 そして、いつの間にか現れたオールバックに白髪をまとめた品の良さげな活発そうな爺さんが現れる。その爺さんを視界に入れた瞬間、サボりゴスロリ少女は嫌そうに顔を顰めるのだった。

 

 ……。

 …………………………。

 

 クサカベは思った。

 いや、そこに集まっていたシラハチームも思った。

 

「「「「いったい何者っ!?」」」」

 

「はっはっはっ、コイツは申し遅れました。

 ワタクシ、お嬢様のお世話係のセバスチャンと申します。気軽にセバスとお呼びください」

 

 何もおかしなところはないと言った風に、その唐突に表れた爺さんは笑いながら自己紹介を行うのであった。

 

 

 でも、正直に言おう。――空気が固まった。

 そして、その空気をぶち殺すと言わんばかりに、天然少女が荒ぶる。

 

「そ、そういえば自己紹介を未だにしていませんでしたね! わ、私の名前はシラハと申します!」

 

 シラハがぺこりと頭を下げながら告げる。

 というか、チーム分けの時に自己紹介している物じゃないのかと思いつつも、クサカベも妙な空気をぶち壊すべく続ける。

 

「以前にも言ったと思うが……、ムラクモ10班のクサカベだ」

 

「あ、はいはーい! アタシの名前はユーリシャって言います。でもー、一応日本人だよ?」

 

 元気系少女――ユーリシャが、クサカベに首をぷらーんされながら手をブンブン振り回して、元気に自己紹介を行う。

 

「……ウツ、キだ。――おい、セバス黙っていろ」

 

 何か言いたそうに片眉を上げた爺さん――セバスチャンにウツキと名乗ったゴスロリ少女が牽制する。もしかしたら偽名かもな……。と、クサカベは適当に辺りをつけ、後で名簿を調べようと決めた。

 

「ふむ……では、先程ももうしましたが――、

 セバスチャンと申します。気軽にセバスとお呼びください」

 

 紳士然とした綺麗な礼を行いながら、堂々と挨拶するセバス。

 

 そして、全員の視線がパーカー男子に集中する。

 うっ、と何故か冷や汗をダラダラと流しながらブツブツと呟くパーカー男子。

 その口は、大丈夫、オレの名前が普通なだけで、こいつ等がちょっとアレなだけだからと――。

 

「おいまて、アレってなんだ」

 

 ピクリと反応するクサカベ。

 その敏感に反応したそぶりにほそく笑みながら、ジト目のウツキはからかうために口を開く。

 

「……ふん。狩人とかいてハント――」

 

「おい、それ以上言うとぶっ飛ばすぞ……!」

 

 狩人=ハントマンで呼ばれるのが、中々辛いものがあるクサカベであった。

 いや、完全に当て字であるのだが、某義姉たちがハントマン呼ぶ所為で身内の周りだと浸透している。……それがとても辛いクサカベなのだ。彼にとってそのネタは逆鱗に値する。

 

 クサカベは青筋を立てながら、だらけたジト目少女のウツキに殺気を放つ。

 その様子に、観念したようなパーカー男子はヤレヤレと自己紹介する。

 

「……たけしだ。普通だろ? 何もおかしくないぜ」

 

 パーカー男子、たけし君はそう名乗った。いや、可笑しくはないんだけど……。

 

「なんかこう、逆にインパクトがあるな」

 

「というか、何で日本名っぽい奴が少ないんだよ!? 俺はそれに驚きだよ!!」

 

 思いっきり突っ込みを入れるたけし君。

 だが、それに異議申し立てるのはこの男。

 

「いや、俺クサカベだぜ?」

 

 無論、クサカベである。

 ――だが。

 

「うるせぇ! ハントマンは黙ってろ!!」

 

 たけし君の逆鱗に触れていくスタイルの突込みによって両断される。

 ぷるぷると振るえるクサカベ。

 ――そして、キレた。

 

「……あぁん? テメェそこに直れ、叩き斬ってやる!!

 『牡籥(かぎ)かけ(とざ)す総光の門――七惑七星(しちわくしちせい)が招きたる由来艸阜(ゆらいそうふう)の勢』」

 

「ぎゃあああ、全員でクサカベさんを止めろッ!! この野郎本気だっ!!!」

 

 少しの間一緒に戦場に出たため、クサカベのこの動作が得物を抜き放つ所作だと、ユーリシャとたけし君とウツキは知っているので焦る。

 

「 『武曲零零(むごくれいれい)、急ぎて律令の如く成せッ!! 真打――!!!』

 ぬぉおお!! はーなーせぇええ!!」

 

「はーっはっは! 良く分かりませんが、禍々しいほどの悪寒を感じますな!!」

 

「クサカベどのーっ! 味方、味方だよぉ!!」

 

「クサカベさんっ、お気を確かに……!!」

 

 みんなが飛びかかる様、クサカベにのしかかる状態で必死に抑える。

 彼がソレを抜き放とうと愛刀の名を呼ぶ瞬間、全員に命に係わるレベルで危機管理能力がアラートを告げたのだ。それはもう、全員マモノを相手にするレベルで本気で止めにかかった。

 

 そのおかげで、身動きを完全に封じられたクサカベは、ぷんすかーっ! と頭から煙を噴き出しているのが収まり、冷静になるまでそこでもがいていたという。

 

 

 

 

 ――余談だが。

 あまりに医務室で騒ぎまくっていたために、外に放り出される様にして追い出されたそうな。

 

 

 




 更新です。
 ここに来てようやく13班が全て揃いました。
 というか、ようやく自己紹介って……。
 分かりにくいと思われるので、キャラ特徴はしっかりと描写していきたいですね。
 
 11eyesネタ。
 やはり、日常で頭に来た時はその刀を抜かねばならぬ。
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