真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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第17話

 

 

 訪れたのは凶報。

 

『ザッ、ザザザッ!! 本部っ、っざ、応答してくれ!!』

 

 突然、インカムから響いたノイズまみれの声で自衛隊に補給物資を運んでいた13班のメンバーは足を止める。同じく、補給物資を受け取っていた自衛隊員も同じようだ。

 

『ざっzざっ。……滅、壊滅!! ああっ、くそっ!! 応援を頼む!!』

 

「うそ……」

 

 思わず、横にいたいつも元気溢れている少女、ユーリシャがそう呟く。

 私も呟きはしなかったが、同じ心境だった。

 だって、討伐隊には、ムラクモ10班には――……!

 

 

『――クサカべ、ザザッんが……死んだ……!!』

 

 

「ッ!?」

 

 足が勝手に動いた。

 S級と呼ばれる才能を駆使して、まるで吹き抜ける一陣の風になったように、戦場となっている屋上へと走り出していた。

 

「シラハ!?」

 

「おいっ!! ……くっ、お前らは追え!」

 

 後ろから、たけし君とウツキちゃんが私の名前を呼んでいた。

 でも、足は止まらない。

 

「――嘘っ! だって……、あの人は……!」

 

 脳裏に紅い髪の――いつも周りを鼓舞する様に戦っていたクサカベさんの姿を思い描く。

 同時に、今戦っているだろう帝竜の一撃を切り払ったあの技量と……力強い背中を。

 

 駆け抜ける私の横に、唐突に気配が現れる。

 敵かと思った私は、刀を走らせようとして――。

 

「そう焦って駆け出しては、危険ですぞ?

 なにより、冷静さを欠いたものから戦場では死んでいきますからな」

 

「はやいよー、シラハちゃん! ……うぅ、味方だよぉ? 斬らないでね……?」

 

 白髪をオールバックで纏めた品の良さそうな紳士の目を細めたセバスさんと、私が刀を走らせようとした事に気がついていたのか、涙目のユーリシャちゃんがいた。

 

「……ご、ごめんなさい!」

 

 私は、並走してきた二人に謝る。

 視野狭窄に陥っていたようだ。

 無いとは思うがもしもドラゴンが現れて襲ってきていたら死んでいたかもしれない。

 

「ふむ。……とにかく急いで現場へ向かうとしようか」

 

「は、はい!」

 

「ちょっとはおちついたみたいでよかったよー!」

 

 

 三人で崩れ落ちた通路を物ともしない速度で、屋上に向かって駆け抜けるのだった。

 ただただ、インカムから響いた声が誤報であることを信じて……。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

 屋上へと続く通路に、討伐隊の構成員であった自衛隊員が満身創痍で伏していた。

 大火傷を負って息絶えたモノ、その身に刻まれた裂傷は敵の強大さを示していた。

 

 

「……、え……ぁ」

 

 

 ダダダダッ! と、激しい機銃の音がする。

 通路の先にまだ自衛隊員とムラクモ十班が戦っているのだろう。

 私は、声にならない声を呑みこんで、……呆然としていた。

 

 セバスさんはその戦闘音が続く方向へ、鋭い視線を投げかけ――……私に何も声をかけず、外へと向かって駆け出して行った。ユーリシャちゃんも、私と同じように――転がって土気色をしたソレを見て絶句したが、苦痛をのみ込むような表情をしてセバスさんの後を追って行った。

 ……私は動けなかった。

 

「どうして……」

 

 私は、致命傷を受けて息をしていないと分かるソレ――、クサカベさんの遺体の頬を撫でた。

 結んでいた髪が解けたのか、顔に流れてくる紅いサラサラとした髪を、そっと顔にかからない様に耳にかけてやる。

 

 ――もう物言えぬ彼の表情は、苦痛と後悔に歪んでいた。

 

 脳裏に過った言葉は、……こうも簡単に人は死ぬのか。というもの。

 

 クサカベさんは、とても強い人だった。

 私に自信のあった剣術は、クサカベさんの見せる舞踏のような剣術が目標になった。

 彼は剣だけでなく、符を使った術まで扱える。

 火を、水を生み出し、サイキッカーのたけし君だってその術にあこがれている節があった。

 ムラクモ機関によって能力ごとに割り振られる職業でも、クサカベさんのためだけに『陰陽師』という枠が作られるほどだ。

 

 ――そんな彼も、こうして死んでいる。

 

「……いやだな。こんな世界……」

 

 クサカベさんは、優しい人だった。

 目を覚ましてからのこの一週間、ふらりと現れては、13班の仕事を担当してくれた。

 不安そうなシェルターの空気を、一蹴して希望を持たせてくれたのも彼だ。

 食料や資源を寝る間も惜しんで、集めに行っていたことも知っている。

 

「……行ってきます。クサカベさん」

 

 私も、私は行かなきゃ。

 戦えるのだから。

 この四肢は、きっと、彼の無念を果たすために動かす時なのだ。

 

 ――パリッ。

 

 軽い、放電の音が聞こえる。

 それは、先程まで気がつかなかったがクサカベさんの横にある根元が折れ曲がったような日本刀から発生していた。

 私にはまるで刀が、自分を使え。と言っているような気がしたのだ。

 

 パリパリと自己主張する様に放電を始めた日本刀を掴む。

 すると、一度大きく刀身がオォンッと鳴いた。

 ――そして、奇妙なほどに私の手に馴染んだ。

 

「……参ります」

 

 呆然としている場合ではない。

 機銃の音と激しい破砕音は続いている。

 行かなくては。 

 

 この刀の銘を私は知らない。

 だけど、お願い。

 クサカベさんの遺志を継いでいるように、思えるの。

 だから――。

 

「――お願い。力を貸してッ!!」

 

 呻く自衛隊達を越えて、セバスさんとユーリシャちゃんたちが突入した戦場へと飛び込む。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

 世界は、空は、瓦礫を吸い込むように世界を反転させていた。

 圧倒的な存在感で、戦場を支配するのは、黒々とした装甲を思わせる鋼を纏う紅い巨竜。

 ――帝竜ウォークライ。

 

 バリィッ!!

 正眼に、構えた私に答えるように、クサカベさんの刀が紫電を走らせ、存在を吼える。

 

 ――今度こそ貴様の最後だ、その首を貰い受けると!!

 

 血が騒ぐ。

 ――『侍』としての血が、奴を殺せと沸騰する様に、脳から全身へと指令を出す!!

 

 

「――刀剣を弾け散らせ、お前を切るッ!!!」

 

 

 黒髪少女は、吼える。

 そして一陣の風となって――白刃(シラハ)を奔らせ、仇へと襲い掛かるのであった。

 

 

 

 ――。

 ―――――。

 ――――――――――――………とくんっ。

 

 消えた心音が、再び生まれる。

 それは奇しくも、――少女が剣士として戦い始めた時だった。

 





 これ、今更だけど。
 7thDと11eyes知らない人でも、ちょっとは楽しんでもらえるのかな……?
 もう少しわかりやすく書くべきだったかもしれない。
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