真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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2章 天空ノ超電磁砲
第21話


 

『――夢か』

 

 一面のセピア色。

 夢の世界だと一目でわかる光景。

 

 少年が一人、床にペタンと座って泣いている。

 

 色の薄い髪色、おそらく白色。

 涙をこぼすその目は閉じていて、瞳の色は知れない。

 小さいころから好きだったのか彼はフードつきの上着、いわゆるパーカー(・ ・ ・ ・)を羽織っていた。

 少年の周りには、誰も居ない。

 だが少年の周りに散らばっている様々なオモチャや絵本、そういった品が泣いている少年以外の存在がそこに居たと証明をしている。

 

 ……その部屋には少年以外、誰も居ない。

 

 きっとそこは、子供が沢山いた場所で――『孤児院』

 活気にあふれていた場所で――『誰も居ない』

 

 みんなが巣立っていった場所だった。

 

 少年の足元から、黒い手がユラリと立ち上って……泣き続ける少年を包み込んだ。

 まるで、殻にこもる様に。

 外が怖いから、隠れるように。 

 

 

 ――暗転。

 

 

『やっぱり、最後まで残ったわね』

『気味が悪いわ。あの子』

『……あの子の持ち物が勝手に動いたって』

『この間のボヤ騒ぎ。あの子の所為らしいわ!』

『ほらっ前いた孤児院が潰れたのだって――』

『シッ! 今こっち見たわ!』

 

 ざわざわ。

 

「……」

 

 ベンチに座って少年は下を向く。

 パーカーのフードを深くかぶって、小さな頭をすっぽりと隠して。

 

 それでも、瞳は少年の見たくない物を映していて。

 ――宙に浮かぶ紅い瞳が、勝手に外の世界を映すのだ。

 

 そして。

 

 ガキンッ!!

 

『!? 今のなによ!』

『フェンスが、壊れてる』

『……あの子の仕業にちがいないわ!』

『は、離れましょ!』

『ひィッ!』

 

 苛立ちをぶつけるように、少年を殻の様に包んだ大きな手が辺りの物を壊すのだ。

 

 

 ――暗転。

 

 

 セピア色の世界は続く。

 小さな頃の、嫌な頃の、チカラが制御できなかった頃の少年の夢。

 

 だが、決まって夢の最後に――。

 

『あらぁ。そんなに閉じこもって、無様な姿ねぇ』

 

 一人の女が現れる。

 自分と同じように、色素の抜けた白い髪。長く、腰まで届くほどだろうか。

 服装は、面積の少ない水着を華麗に着こなし、豹柄の上着を適当に羽織っているだけ。

 まるで痴女。……本人に言ったらぶっ殺されるんだろうな。

 

『オバサン、誰……』

 

 本当に幼かった少年から、少しだけ成長した荒んだ表情の子供。

 そんな子供が、胡乱な瞳で女を見上げる。

 感情は酷く摩耗して、無表情。

 このままいったら、そのまま死んでしまうのではないかという隈までできた酷い顔。

 

『オバ……!? ごほん』

 

 咳払い。

 少しの間。

 少年は、相変わらず黒い掌の作る殻にこもっていた。

 

『彩。そう、彩よ。私の事はそう呼びなさいな』

 

 そう言ってその女――師匠(・ ・)は俺に向かって手を伸ばす。

 話は続く。

 

『PSI。アンタが無意識に撒き散らしてる力よ』

 

『PSI? オバサンは、』

 

 オバサンと口に出した瞬間、少年の口にほっそりとした指が突きつけられる。

 その状態に目を白黒させ、女を見上げると……。

 

『(ニコッ)』

 

 威圧感漂う壮絶な笑みが。

 

『……PSI?』

 

 言い直す。

 ただ、名前を呼ぶ気にはなれなかった。

 

『……見なさいな』

 

 そう言うと彩を名乗った女は、豹柄の上着から煙草を取り出す。

 銘柄は『ピース』

 彼女は煙草をくわえると、ライターを取り出すでもなく、パンッと指を鳴らした。

 

『あっ……』

 

 少年が目を開く。思わず声を上げる。

 火を取り出したわけでもなく、ぼっという音と共に火が灯っている。

 触れることなく火をつけたタバコが、紫煙をゆっくりと立ち上らせる。

 

『大丈夫よぉ。貴方は、一人じゃないの。――さぁ、行きましょう』

 

 これが彼女。

 俺の師匠となる、人との出会いだ。

 ……中々強烈にドSで、見た目以上に頭が逝っている人だったことは俺の中で禁則事項だ。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿

 

 

 

 意識が、浮上する。

 どうやら、最近よく見る夢を見ていたようだ。

 

「サイキッカーの俺がここまで同じ夢をみるのは、何かの啓示なのかねぇ」

 

 独り言がぽつりと零れる。

 そう言ってから、視界が広い事に気が付く。

 どうやらベッドで寝ているうちに、いつも深くまでかぶっているパーカーフードが脱げていたようだ。

 

 PSI能力の師匠が出てくる夢の意味を毎度の如く悩まさせられる。

 

「……意外と、こんな世界になっても元気でやってるって感じだったりしてな」 

 

 まぁ、戦闘力とPSI制御に関しては最強クラスの師匠のことだ。

 こんな殺伐とした世界でも十分何とかやっているだろうさ。

 

 

 ――影の大きな手、紅い瞳。

 

 

「ッ。なんだってんだよ……」

 

 一瞬のフラッシュバック。

 ……考えるのを止める。

 

 現在地は奪還した都庁の四階。

 そこはムラクモ居住区として名前を与えられ、ムラクモ部隊に班ごとに部屋が与えられているのであった。

 ちなみに、13班は人員が他の班より多いためベッドが足りていない。

 ……といっても、夜の見張りやマモノを狩ってきて食料の調達など行うので、ローテーションを組んで使い分け、今のところ問題等はおこっていない現状だ。

 

 戦闘に関しては右に出る者がいないので、俺達が進んでやると言った感じ。

 ……イヤ、あの人(・ ・ ・)の真似だ。

 

(よくもまぁシェルターの時、あの陰陽師様はほぼ一人でこなしていたもんだな。

 数人でローテーション組んでるのにかなり疲れるぞ……)

 

 起き抜けの鈍い頭で思考を走らせていると

 

 ――バタン! ドタドタ!!

 

 ノックもなしにドアが開いて、騒がしい少女が突入してくる。

 そして騒がしく第一声。

 

「あ、たけしどのー! って、めずらしい!! おぉー……これはこれはっ!」

 

「あぁ? ……ああ、フード脱げてたんだったな」

 

「ありゃりゃ、もったいない……。たけしどのって結構イケてるんだからもっと素顔出してこうよぉ!」

 

「……はぁ」

 

 騒がしい奴――ユーリシャにじろじろ顔を見られ、気恥しくなった俺はフードを被りなおす。

 そして、ベッドから立ち上がった。

 ユーリシャの戯言はため息とともに流して――確認。 

 

「で、進展はあったのか?」

 

 俺のその言葉に、ユーリシャはあはは……と頬を掻きながら。

 

「うぅん。クサカベどのは、やっぱりSKYのところで匿われてる可能性が高いって事くらいかな……。進展はなしだよ」

 

「そうか。……まぁクサカベさんなら、その内ひょっこり帰ってくるさ」

 

「……そうかな? ……そうだね。うん。そうだね!」

 

 にかっといつも通りな笑顔。

 クサカベさん曰く、『元気系少女』

 その呼び名どおり、前向きに元気な奴だった。

 ……俺からしたら騒がしいだけなんだけどな。

 

 

 逆サ都庁の帝竜『ウォークライ』を討伐して、都庁を復興してから1週間ほど過ぎた。

 その間には、アメリカ大統領との通信や、帝竜の影響でジャングル化してしまった『渋谷密林』での探索、地下鉄での救援作業など周辺の地域捜査が行われていたのだった。 

 基本的に調査には俺達13班が使われた。

 ……その調査の中で、SKYを名乗る妙にチャラチャラした集団との出会いや一人の『S級』能力を持った少女との出会いなどもあった。

 

 特に、俺達に衝撃を与えた調査は、そのSKYのメンバーの中にクサカベさんを連れて行った青髪の女が居たこと。

 そして――。

 

「まぁあのSKYとかいう連中も、クサカベさんに恩があるみたいだからな。悪いようにはなってねぇさ」

 

「だねぇ。クサカベどのは、顔が広かったみたい!」

 

「……いや、顔が広いと言うか……まぁそれでいいか?」

 

 俺が感じたのは――得体がしれない、だ。

 SKYを構成していたのはチャラチャラした自己中心的と言った感じを感じさせられる、適当な感じの奴らだった。だが適当で自己中心という割には、渋谷に逃げ込んだ人たちの世話を焼いているような面も感じさせられた。

 そして、クサカベさんのことを知っているかのような口調。

 ……そのなかで、割と気になることも。

 

「……ツンデレだったな」

 

「ツンデレだったねぇ……」

 

 

 全体的に仲間以外への接し方がツンデレだった。

 

 

『お前らがその辺で死んでると俺らが嫌だしー、ま、まぁちょっと匿ってやってもいいし?』

 

 ……しっかり匿って、食料配布してたな。

 

『ばーさん、足遅いんだけど! それじゃマモノに食われるし! ま、まぁアタシがおぶってやってもいいし?』

 

 ……そう言ってる時には既にしゃがんで背中を向けているのはなんだ。

 

 と、例を挙げるとこんな感じ。

 トドメに。

 

『『――べ、別にハントマンが人助けやっててかっけーっ!

 って思ったからじゃないからな!! 本当だからな!!!』』

 

 ってなんだ!?

 本当に、クサカベさんって得体がしれないわ。

 

 ユーリシャとそんな会話をしていた時、班のメンバーを集めるためのコールが『NAV3.7』通称ミイナからかかる。

 

 

『コール13班。事態の進展がありました。緊急につき、急ぎ会議室に向かってください』

 

 

 通信によって話をとぎらせ、少しだけ無言。

 オレンジ色の髪の毛を揺らしながらユーリシャが、口を開く。

 

「……きんきゅーってなんだろー?」

 

「……さぁ。まぁ急ぐぞ」

 

 俺だって、分からない。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿

 

 

 

 会議室へと集まった13班に告げられた言葉は、新たな『帝竜』の確認情報。

 物語は、クサカベという異分子がいない間でも刻々と進んでいく。

 

 その最中に、どんな犠牲が払われようとも。

 

 

 ――七竜の物語は、進む。

 

 





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