真打7thD ‐2020-   作:唯のかえる

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第4話

 ――都庁内。

 

 ガトウのおっさんが、再び試験の内容を簡潔に言う。

 

「外で伝えた通り、お前らにはこれから『マモノ』を狩ってもらう。

 内容としては、自分の技術を持ってやられない様に連携してチームで狩れ」

 

 用意してあった武器となりそうな得物を候補生たちが装備しながら、周りと相談する様にざわめく。ガトウのおっさんが話を続けようとした時、候補生の中の一人が手を上げた。

 

 ――先ほどの元気のよかった橙髪の少女が、ブンブンと挙手しながら質問をする。

 

「はいはーい! 教官殿っ、『マモノ』って見たことないんですけど、どんな奴なんですか!」

 

「……まぁ、噂では聞いたことあるけどなぁ。

 実際に実物を見たことはないん、で、…ございます?」

 

 そして、慣れない敬語で語尾が可笑しいフードを目深に被ったパーカー男子。

 クサカベは思わず、くすりと笑ってしまった。

 

 

 その時――。 ガッシャン!!

 

 階段の前に立てていたバリケードが吹き飛ぶ。

 幸いなことに、そのバリケードは、誰も人間のいない場所に落ちて、被害はない。

 そこにいたのは、理性の色を無くしてキョロキョロと危ない目つきで眺める中型犬くらいのサイズの『兎の化け物』だ。ウサギに見える部分は胴体までで、尻尾はトカゲのようにひょろ長くなっている。

 

 爪と牙も鋭く長く成長しており、当たれば大怪我すること間違いなしだ。

 

「ひ、ひィッ!?」

 

 候補生の中の誰かが情けない声を出した。

 そんな突然の事態に動揺して、今にも逃げ出しそうな候補生たちに向かってガトウのおっさんが大声を張った。

 

「ダハハハッ!! 良かったじゃねェか、本物が見れて!

 ……そいつが『マモノ』だ。そんなにビビることもねェぜ?

 ちっとばかり凶暴な、獣くらいのもンだ」

 

 クサカベは、横で自動小銃を構えた自衛隊隊員たちを手で制止、ガトウのおっさんに目配せをした。エントランスのマモノは自衛隊が片付けているので、横からの妨害などは基本的にない。

 

 

 ……つまり、今が良いチュートリアルの機会だと言う事。

 

 

「そうだな、ンじゃ。一番遅れてきたチーム、お前らがあれを処理しろ」

 

 ガトウのおっさんがクサカベの視線に頷きながら、候補生に告げる。

 

 その言葉に黒髪少女と元気系少女、パーカー男子が特に臆した様子もなく、候補生の輪の中から抜け出た。候補生たちも一歩下がり、十分に動けるスペースが出来上がる。

 

 

「これがマモノかぁ、なんていうか、『ふぁんたじー』な見た目だね!」

 ――軍用ナイフを器用にクルクルと回して、様になった構えで腰を落とす元気少女。

 

「……タリィけど、そう言うわけだから。――消えてくれや」

 ――ダルそうにではあるが、腰だめにウサギっぽいマモノを睨み付けるパーカー男子。

 

「いざ尋常に、参りますっ!」

 ――スラリと真剣を鞘から抜き放ち、構える黒髪少女。

 

「……(パーティ構成大丈夫だよね? だよね? 前衛特化じゃないよね!?)」

 ――不安で頭を抱えるクサカベ。

 

 

 

 ❀✿❀✿❀✿❀

 

 

 

 最初に動いたのは軍用ナイフを持った元気系少女だ。

 

「――ッ、しっ!」

 

 ダッ! とエントランスの地面を蹴り、壁を蹴り、三次元的に大きく動く。

 『兎の化け物』――仮名『ラビ』はそんな元気系少女に釣られたのか、せわしなく動かしていた視線を元気系少女に固定させ、跳びかかれる様に低く構えた。

 

 その、力の溜めをパーカー男子が見逃さない。

 

 パーカー男子の体から妙に透明な気――、『マナ』がこぼれ、空気が揺らぐ。

 

「『灼火(しゃっか)ッッ!!』」

 

 ボウッ!! とパーカー男子が伸ばした手から、大きく火が出る。

 どうやら、パーカー男子は超能力(サイキック)系のS級才能を持っているようだ。

 溢れ出た火焔は、身構えていたラビに襲い掛かる。

 ……が、それに気がついたラビは溜めていた力で回避する様に大きく跳ねた。

 

 ――そして、

 

『ギギッ!?』

 

 スコンッ!! と、エントランスの床とラビから高い音が響いたのだった。

 

 元気系少女がラビが着地する場所を見極めて、正確無比な投擲を行ったのだ。胴体部分と床を縫い付けられた一撃が致命傷となったのか、ラビはそのまま生体活動を停止させた。

 

「やったやったっ、やったねっ!」

 

 ぶいっ! と、候補生全員に向かって元気系少女がピースサインを決める。

 特に苦戦することなく勝負を決めた辺り、さすがS級能力者と言わざる得ない。

 それを見ていた自衛隊員と候補生たちは、おおーと感嘆の息を吐いて大きく頷いている。

 

「「っ!」」

 

 だが、クサカベとガトウが、元気系少女に向かって飛びかかる。

 

 何故なら、元気系少女が先程ラビが下りてきた階段に背を向けていたこと――。 

 ……もう一匹、ラビが下りてきたせいだ。

 

『キッ!』

 

 ラビが少女の背後から、跳びかかる。

 その鋭い牙は少女の柔らかそうな首を狙っており、当たれば即死コース。

 

 戦場で油断した少女に、贖いの一撃が与えられる。

 

「――えっ? ッッ! きゃあ!?」

 

 ――だが、そんなことは教官が許さない。

 

「――おっさんっ、頼んだ!!」

 

 クサカベの神速の踏み込みが元気系少女を拾う。

 この際、肩で俵を担ぐように捕まえたのは仕方のない事だろう。

 お姫様抱っこで捕まえるより、何倍も速い。

 

 そして、浮かび上がっていたラビにガトウが……。

 いや、ガトウのおっさんはいつの間にか立ち止まっていた。

 

 斬ッ! と、黒髪少女がすでに跳びかかっていたラビを両断していたからだ。

 

 ヒュッ、と血糊を払うように刀を振るう黒髪少女はとても凛々しく、美しかった。

 彼女は心配そうに眉を下げ、荷物のように抱えられるばつの悪そうな元気系少女を見つめる。

 

「……お怪我はありませんか?」

 

「……な、なんとか。……アハ、ハ」

 

 引きつった笑みで、頬をぽりぽりと掻く元気系少女に、その場にいる全員で安堵の吐息をこぼすのであった。

 

 

 

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